「アカペラで歌う ヘイ アラヴァ (素敵な冠の貴方) 」

         「ヘイアラヴァの日本語歌詞の再考: アカペラのための準備
                「ヘイ アラヴァ 未完の歌詞確定作業:前編」
                「ヘイ アラヴァ 未完の歌詞確定作業:中編」
                「ヘイ アラヴァ 未完の歌詞確定作業:後編」

                             「ポリネシアの歌

 

【はじめに】

この項では、この素人カメラマンにとって思い出深い曲である「ヘイ アラヴァ」をアカペラで歌ったことのご報告を、アカペラで歌うまでの経緯とともに書かせていただきます。以下は次のように進めてまいります。

          【アカペラで歌う ヘイアラヴァ】
          【タヒチ語歌詞と今までに議論してきた日本語歌詞の案】
          【原歌詞と拍】
          【日本語歌詞の修正と拍の配置】
          【日本語歌詞のまとめ】
          【背景動画について】
          【おわりに】




【アカペラで歌う ヘイアラヴァ】
 

これまでの結果を基に次のような日本語歌詞を決定しました。

   Heiarava (素敵な冠の貴方)
            by  E. Teto and D. Naehu

1

 E mārama to tino to tino nehenehe roa  輝く体  その体  麗しい  とても
 To tino hāviti mai te purotu         素敵な  貴方の体  まるでビーナス

2

 'Ua vehihia 'oe               包まれている  貴方は
 mai te roimata o Hina rave'a           あの涙で  ヒナの  囚われの
 Nā te tiare Tahiti e vehi e vehi to tino    ティアレ タヒチが 包む    包む 貴方の体

3
 Ē 'ua hiti te marama             そして 昇る  月が
 Hei ia ravarava e              冠の貴方  素晴らしい
 To mata hamirimiri poiherehia e matou     貴方全ては  大切に  私達で

歌った結果は以下のようになりました。

 

 

 


どの歌でも歌いだしのところが メロディを出すのが一番難しいですが、この歌では特にそう感じました。詩が タヒチ語で、作曲の方も タヒチの方ですから、曲全体として タヒチの香りが強いためだと思います。ポリネシアの歌は一つ一つの母音を要素として成り立っています。その点は日本語も同様ですが、もっと母音同士が明確に区別されています。タヒチはその中心のような所があるので、メロディも母音を追っていく感じで出来ているようで、把握するのが難しく感じました。それで出だしのメロディを把握しきれないので、最初のところだけ背景動画のメロディを追っていくようにしました。そうすると、小池さんの ボーカルの見事なこと。この方、今は、斉藤さん等の元 エテネタヒチアンズの方々と Ekolu Mau Kani というバンドを結成して活動されておられます。




【タヒチ語歌詞と今までに議論してきた日本語歌詞の案】

 

前項「ヘイアラヴァの日本語歌詞の再考: アカペラのための準備」より、タヒチ語歌詞と日本語歌詞の案は以下のようになりました。ただし、二節目の最終行で「Na」とあったものを、下で言及された事実より、「Nā」と変更しました。


  Heiarava (素敵な冠の貴方)
        by  E. Teto and D. Naehu

 1
 E mārama to tino to tino nehenehe roa  貴方の体が輝いている  とても麗しい
 To tino hāviti mai te purotu        貴方の体は素敵  まるでビーナスのよう

 2
 'Ua vehihia 'oe                 貴方は包まれている
 mai te roimata o Hina rave'a          囚われのヒナの涙で
 Nā te tiare Tahiti e vehi e vehi to tino    ティアレ タヒチが覆う 覆う 貴方の体

 3
 Ē 'ua hiti te marama             そして、月が昇った
 Hei ia ravarava e             冠の貴方 素敵ですよ
 To mata hamirimiri poiherehia e matou    貴方全てを私たちは大切にします


この日本語での解釈について、4つの論点が残されていました。

 論点 A  タイトル「Heiarava」の解釈
 論点 B  「e vehi to tino」で「to tino」を目的語として良いか
 論点 C  「hei ia」を「冠の貴方」として良いか
 論点 D  「 mata hamurimuri」で「前から後ろ(まで) 」として良いか

この中で、論点 B については、言語学の先生に「Nā」で始まる行為者強調文では目的語を導く「 'i 」は省略されるのが ポリネシアにおける原則であると教えていただきましたので、解決しました。論点 A と論点 C に関しては、ポリネシアに限らず、この様な使い方があると思います。例えば、喫茶店でのこんな話は如何でしょうか。
 

 お客:店長、最近、あの凄い帽子をかぶってくる彼は顔を出しているかい?
 店長:しゃれた帽子をかぶったり、高級そうなのとか、これは帽子なのですか
    と聞きたくなる様な豪華なのをかぶって来たるするかたですね。
 お客:そう。彼と会うと帽子しか目に入らないから、はてどんな顔だったか、
    思い出せないのですがね。
 店長:二三日前にもお見えになりましたよ。
 お客:いや、あの帽子、なかなか優秀なのですね。
 店長:何かあったのですか?

「その帽子で話題にしたあの方のことですね?」と尋ね返す人は居ません。帽子で話題にした人ですし、「優秀な帽子」なんてありませんから、件のその人に決まっています。逆に、尋ね返してしまえば、この店長は面白味のない人だと思われてしまいます。同様に、この歌の場合も、「ravarava (人を賛美する言葉) 」な「hei (冠) 」といえば、件のその花冠をかぶった女性を指しているに決まっています。そして、そう直接に歌わない所に面白味が出てくるのだと思います。この事が、タイトルと最後の決めの所に出てくるのですから、この歌をどの様に感じてもらいたいかが分かります。

歌の状況は、村の青年の社交界に初デビューする女性がおめかしして現れたところでしょう。最初は暗くて、体中に飾り付けた ティアレ タヒチだけが点々と白く浮き上がります。それも沢山です。この花は沢山がいっぺんに開花するということは無いようですから、沢山の ティアレ タヒチというのは家族がかなり気を入れて飾り付けしたことを示しています。当然、頭にも沢山の ティアレ タヒチをあしらった髪飾りを付けていたでしょう。それで、驚きを込めた二節目のような歌詞になると思います。そして、月の明かりで全てが明らかになった時、冠を付けたような可愛らしい女性が現れたので、そこに現れた家族愛に敬意を表して、第三節の歌詞になるのでしょう。ここには、「やあ、冠を着けた素晴らしい人だ」という丁重な気持ちと、「可愛らしい」という気持ちが、「hei ia ravarava」という言い回しと、「to mata hamirimiri poiherehia」という言い回しに現れているのだと思います。「Ravarava」という形容詞は、日に当たることの少ない生活を送る、上位の人たちを賛美するものです。また、「Mirimiri (優しく触る) 」なんて言うと、日本だと引いてしまいますが、「To mata hamirimiri」について教えてくださった方の話では、タヒチでは日本に紹介できないような開け広げな歌が一般に歌われているということですので、ここの歌にも、その様な タヒチらしい楽しさを感じることができればよいのだと思います。そう考えると、ハワイアンズにおける振り付けも、今更ではありますが、納得できます。

以上より、「to mata hamirimiri」という言い回しが タヒチでどの様に受け止められているのかを示す確証はないままに、なんとなく、この日本語歌詞で良いかと思いました。しかし、勿論、このままでは歌えません。

 

( 1/12  「タヒチでは」と知ったふうな書き方をしましたが、ハワイでも負けては居ないようです。「エ レイ カ レイ レイ:サンライト カーニバル 体験コーナ(8月30日まで)の課題曲」に ビーチ パーティ ソングについて書いたことがあります。肌の露出の多い ポリネシアでは、日本とは随分と感覚が違います。)






【原歌詞と拍】

例によって、歌詞と拍の関係を調べてみます。これが分からないと、日本語歌詞を歌うことが出来ません。色付きの拍記号は節の間の休止です。

   Heiarava
      by  E. Teto and D. Naehu
 

1

 

2

 

3

 




【日本語歌詞の修正と拍の配置】
 

ここにかなり時間がかかりましたので、一行ずつご説明します。日本語のアクセントを下線で示します。アクセントは アクセント辞典 [1] を参考にしました。アクセントには、そこにアクセントを置くという意味と、それ以降を弱く発声するという二種類の区別があるのですが、ここでは両者の区別はしません。


「第一節」

最初の行です
 

 貴方の体が輝いている  とても麗しい

これではとても入りません。そもそも「to tino」を「貴方の体」とする時点で入りません。そこで、思い切って簡略化します。


 輝く 体 その体 麗しい とても

そして、次のように拍を配置します。

 

 

原歌詞の「nehenehe」が「うるわしい」に置き換わるのですが、「nehenehe」の最後の「he」にアクセントを置けるのに対して、「うるわしい」の最後の「い」にはアクセントを置けません。ここが少し物足りないかも知れません。


次の行です。ここで「貴方の体」をフルで入れます。

 

 貴方の体は素敵  まるでビーナスのよう

同様に簡略化します。

 素敵な 貴方の 体  まるで ビーナス

次のように拍を置きます。

 

 

 

 

「第二節」

一行目です。

 

 貴方は包まれている

次のように語順を変えます。

 包まれている 貴方は

次のように拍を置きます。

 

 

 

二行目です。


 囚われのヒナの涙で

語順を変えます。

 あの 涙で ヒナの 囚われの

次のように拍を置きます。
 

 

 

三行目です。
 

 ティアレ タヒチが覆う 覆う 貴方の体

これは、「覆う」を「包む」に変えて、次のように拍を置きます。
 

 

 

 

「第三節」


一行目です。

 そして、月が昇った

語順を変えて拍を置きます。

 

 

 

二行目です。
 

 冠の貴方 素敵ですよ

「素敵」という言葉は既に出てきているので、変えます。

 冠の 貴方 素晴らしい

次のように拍を置きます。


 

原歌詞では最後に「 e 」があるのに対し、日本語歌詞では「素晴らしい」の最後の、アクセントのない「い」を伸ばすだけになるので、少し物足り無いかも知れません。


最後の三行目です。


 貴方全てを私たちは大切にします

元々は「貴方の全ては、私達によって大切にされます」という文であったのを上記のように簡単にしたのですが、それでも入り切らない感じがしますので、もう少し簡単にするとともに語順を変えます。

 貴方 全ては 大切に 私達で

「大切にされます」と言いたいところを「大切に」で切りました。次のように拍を置きます。

 

 

幾つかの行で語順を変えているのは、語の現れる順番を原歌詞とできるだけ同じにしたいからです。




【日本語歌詞のまとめ】

  Heiarava (素敵な冠の貴方)
        by  E. Teto and D. Naehu

1

 

2

 

3

 

 

 

 

【背景動画について】

背景とした動画は 2023年 2月 27日の グランド ステージの動画より取りました。これです。
 

 

 

既に 前項 に書きましたように、ウアケアさんが、かなり、挑発的に見えるのは「ヘイ アラヴァ」が ハワイアンズでは面白みのある歌として解釈されているからだと考えます。この歌は 2013年8月7日 から 2015年6月30日 まで行われた フラガールポリネシアンレビュー「E Komo Mai(エ コモ マイ)」の「タヒチの部」の7番目の演目でも歌われました。しかし、グランド ステージ「未来〜Hau'Oli(ハウオリ )」での衣装は、歌の内容を入れて随分と素敵になっています。衣装の考案と併せて、歌の内容についても検討され、この様に決められたのでしょう。この様な検討がどの様な形で行われたのは知りませんが、多分、ウアケアさんがかなり関わり合って決めたのでしょうから、歌に深く踏み込むウアケアさんの踊りがその議論の結果を反映していることは容易に想像されます。前に書きましたように、この素人カメラマンが ハワイアンズ訪問を始める前に (その時は未だ素人カメラマンではありませんでした) 拝見した動画の中に、ウアケアさんがカメラマンに向かって挑発的に踊っておられたのがあります。ですから、この動画における ウアケアさんについて深く考える必要はありません。

しかし、素人カメラマンの側について考えると、必ずしもそうではありません。当時の キャプテン ラウレアさんが ウアケアさんの様子について随分と気を配っておられたことは既に何れかの項に書きました。

 

(渡辺、ウアケア、ラウレア、仙道、阿部さん)

(グランドステージ 2023.1.30より)

 

その為なのか分からないのですが、この素人カメラマンが ウアケアさんの挑発に預かったことは二度しかありません。一度目は思い出深い回、二度目が 2月 27日です。ウアケアさんは グランド ステージで ソロを踊られる場合には「ヘイ アラヴァ」には出演しません。それ以外の、そして上記の二回を除いて、ウアケアさんは常に素人カメラマンの座る席の反対側で踊っておられました。上の 1月 30日などは、かなり近い場所で踊っておられる方なのです。ある時気が付きました。この様に離れた場所で踊っておられるときには、必ず、キャプテンが真ん中におられ、貴重な二つの日には キャプテンは出演されていなかったのです。素人カメラマンの座る席は事前にお知らせしているのではありますが、単なる偶然なのかも知れません。それはともかく、この素人カメラマンが 2月 27日の「ヘイ アラヴァ」で感激していたことは想像していただけるでしょう。ウアケアさんが途中で少し困ったような表情を浮かべておられるのはそのためかも知れません。何れにせよ、彼が心から楽しめた(る)「ヘイ アラヴァ」はこの日の踊りしかありません。
 

 

 

 

 

【おわりに】

タヒチの歌「ヘイ アラヴァ」をアカペラで歌いました。この項ではその根拠について説明させていただきました。この様に純然たる タヒチの歌は歌いにくい気がします。それでも、何とか歌ってみたというところですので、温かい目で見てくだされば幸いです。アカペラの背景とした動画は、素人カメラマンにとってとても大事な演目動画です。そのことも併せてここで説明させていただきました。「フェヌア モア」を拝見して以来、既に半年の歳月が流れています。もう、この素人カメラマンがこの方の踊りを拝見する機会はありません。ですから、ウアケアさんについて踏み込んで論じるのは、今のこの方には、ご迷惑でしょう。しかし、ハワイアンズの舞台で示された素晴らしい演技を振り返ってみるのは良いことだと思います。彼は、その時、 ウアケアさんの踊りにお目にかかることが出来ます。

さて、次のアカペラでは「ワイピオ パエアエア」を歌ってみたいと考えています。この歌はとても不思議な歌です。歌われる場所には昔 ハワイで最も繁栄した王国がありました。しかし、今は、僅かにタロを栽培する人たちがかようだけの、寂々たる廃墟です。パエアエアとはそのことを指します。そのそこに、「愛が溢れている」と歌われるのです。この曲は、ウアケアさんは踊られませんでした。でも、多くの方々が踊られましたが、どうしても 、ウアケアさんだったらどの様に表現されたであろうか、と思ってしまったのです。その中で、ふと、この方の踊りを思い起こしてしまう演技を拝見しました。その演目動画を背景としたいと思います。

 

 

 

 

【謝辞】

 

ポリネシアの言語について広く研究を行っておられる 塩谷亨先生、室蘭工業大学理工学基礎教育センター ひと文化系領域 言語科学・国際交流ユニット教授、には ポリネシアにおける行為者強調文における原則について教えていただきました。ここに感謝いたします。

 

 

 

【付録 01 : 原歌詞と拍】

   Heiarava
      by  E. Teto and D. Naehu

1
                  ❍           ❍                ❍ ❍ ❍                          ❍               ❍       ❍
     E   mārama   to   tino         to   tino   nehenehe   roa
                 ❍           ❍     ❍ ❍ ❍                          ❍      ❍   ❍                                       ❍❍
     To   tino   hāviti          mai   te   purotu

2
        ❍        ❍         ❍ ❍      ❍  ❍          ❍   ❍
     'Ua   vehihia       'oe
          ❍               ❍           ❍          ❍          ❍       ❍             ❍   ❍
     Mai   te   roimata   o Hina   rave'a
                  ❍                     ❍           ❍         ❍      ❍          ❍                  ❍   ❍             ❍❍
     Nā   te   tiare   Tahiti   e  vehi      e  vehi   to   tino

3
      ❍    ❍            ❍       ❍            ❍          ❍   ❍   ❍
     E   'ua   hiti     te   marama
          ❍      ❍   ❍           ❍              ❍           ❍   ❍   ❍
     Hei     ia     rava--rava   e
                    ❍           ❍              ❍    ❍            ❍               ❍              ❍   ❍
     To   mata   hamirimiri      poiherehia   e matou




【付録 02 : 日本語歌詞と拍】
 

  Heiarava (素敵な冠の貴方)
        by  E. Teto and D. Naehu

1
           ❍         ❍           ❍        ❍              ❍                          ❍             ❍             ❍
 かがやく からだ  そらだ うるわしい とても
              ❍                      ❍                       ❍        ❍ ❍                      ❍            ❍   ❍        ❍❍
 すてきな あたの からだ  まるで ーナス

2
       ❍            ❍              ❍   ❍               ❍      ❍          ❍   ❍
 つつまれて い  あたは
        ❍            ❍       ❍               ❍                ❍          ❍               ❍   ❍
  あ みだで   ヒナの とらわれ
                 ❍               ❍              ❍       ❍            ❍              ❍                   ❍     ❍          ❍❍
 ィアレ  ヒチが  つつむ つつむ あたの からだ

3
       ❍    ❍                ❍       ❍            ❍          ❍   ❍   ❍
 そして のぼる  つ
            ❍            ❍                  ❍             ❍           ❍            ❍   ❍   ❍
 かんむりの あた   すばらし
            ❍        ❍       ❍       ❍            ❍                       ❍                 ❍   ❍
 あべては たいせつに わたしたちで

 

 

 

 

[1] 金田一晴彦[監], 秋永一枝[編], 新明解 日本語アクセント辞典, 第 2版. 三省堂 2024.