「ポリネシアの歌」
「「ドゥ ザ フラ 」: 日本語で歌うための拍についての考察」
「ドゥ ザ フラ (Do the Hula) : 訂正版」
「ドゥ ザ フラ (Do the Hula) の日本語歌詞」
「ドゥ ザ フラ (Do the Hula)(2/12 版)」
【はじめに】
この「ドゥ ザ フラ」については 前項 A「ドゥ ザ フラ (Do the Hula)(2/12 版)」 と 前項 B 「ドゥ ザ フラ (Do the Hula) の日本語歌詞」の2つに分けて議論しましたが、最近、「日本語で歌うポリネシアン」の企画のために細部の見直しをした所、今までの議論には以下の三箇所で誤りが在ったことがわかりました。
(a) 作成者が Don McDiarmid で発表年が 1936年であることが分かった。
(b) 英語歌詞に「moon」を「noon」と誤ったところが在った。
(c) 歌詞中の節分けに誤りがあり、意味を取り違えた行が在った。
具体的な誤りの箇所については、前項 A と前項 B の該当する場所に注意を書き入れることとして、ここでは、簡潔に正しい説明をお示しすることにします。
その前に、お聞きください。
【作成者と発表年】
歌詞データベースの HUAPALA [1] によれば、作成者は Don McDiarmid で 1936年の発表です。後ほどの議論で出てきますので、もうニつの歌と合わせて、再度、発表年をあげておきます。
1936年,「Do The Hula,」 Don McDiarmid HUAPALA [1]
1935年,「Little Brown Gal,」 Don McDiarmid, J. Noble, and Lee Wood
1933年,「My Little Grass Shack in Kealakekua Hawaiʻi,」 Bill Cogswell,
Tommy Harrison, and Johnny Noble HUAPALA [3]
【原歌詞】
HUAPALA [1] のあげる歌詞は以下です。番号は便宜上付けました。番号 0 の節は歌の部分ではなく、歌に対する状況説明 (ナレーション) だと思われます。
Do The Hula, by Don McDiarmid
0
Way out there in mid-Pacific
They have some funny notions
One of them is most terrific
You have to talk with motions
1
Do the hula
If there's anything you'd like to say
It's the only way
You'll find that a trip around the island is fun
When once you`ve begun (*A)
2
Tell of the moon above so high (*B)
The humuhumunukunuku go swimming by (*E)
Talk about the boys all hurrying back
To the little brown gal in the little grass shack
3
Do the hula
If you`d like to whisper I love you (*C)
It's the thing to do
Picking flowers gets them everytime
In a tropic clime
4
When you walk on the silvery sands
You'll never have to talk (*D)
Simply use your hands
5
Do the hula
Go into your dance
Do the hula
Along the road to romance
【若干の議論】
前項 A にあげた歌詞と違う点は、四つです。
(*A) 「When you`ve once begun」が「When once you`ve begun」となる。
(*B) 「noon」としたものが「moon」となる。
(*C) 「If you like」が「if you'd like」だった。
(*D) 「You never have to talk 」が「You'll never have to talk 」となる。
(*E) 「Swimming by」が「go swimming by」となる。(10/16)
最初の (*A) は歌うときの調子の問題なので、重要ではないでしょう。次の (*B) では意味が大きく変わりますので、後でもう少し議論します。最後の (*D) も調子の問題なので、重要ではないと思います。(*C) は、「if you'd like」が良いですね。
上記の言葉の問題とは別に、付け加えて置かなければならないのは、上記の書き方ですと、 (*A) の行は上の行と合わせて
You'll find that a trip around the island is fun, when once you`ve begun.
となることです。これだと、「島巡りは、始めて見れば、楽しいでしょう」となりそうなのですが、それならば文章は
You'll find that a trip around the island is fun, when once YOU BEGIN.
であるべきなのです。わざわざ、時制を違えて「you'VE BEGUN」となっています。これはかなり意図的な書き方です。そうすると、「何を始めたのか」を考え直さなければなりません。「島巡りを始めると」ではありません。時制から言って、「フラを始めたら」です。そうすると、ナレーションの部分が重要になります。その グーグル翻訳を見ましょう。
0
Way out there in mid-Pacific 太平洋の真ん中あたりで
They have some funny notions 彼らは面白い考えを持っている
One of them is most terrific その一つは実に素晴らしい
You have to talk with motions 動きで話さなければならない
Tell of the moon above so high (*B)
The humuhumunukunuku go swimming by
Talk about the boys all hurrying back
To the little brown gal in the little grass shack
I want to go back to little grass shack 小さな草小屋に戻りたい
In Kealakekua, Hawaiʻi ハワイのケアラケクアにある
I want to be with all the kanes and wahines カネやワヒネたちと一緒にいたい
That I used to know long ago 昔知っていた
(中略)
I'm just a little Hawaiian 私は小さなハワイアンです
A homesick island boy 故郷が恋しい島の少年
I want to go back to my fish and poi 魚とポイのいる場所に戻りたい
I want to go back to my little grass shack 小さな草小屋に戻りたい
In Kealakekua, Hawai'i ハワイのケアラケクアにある
Where the humuhumunukunukuāpua'a フムフムヌクヌクアプアアが
Go swimming by 泳ぎに行ける場所
この曲は ホームシックにかかった若い船乗りが、家族の居る家 (草葺小屋) とそこに居る男女、そして海岸で泳いでいる魚 (humuhumunukunukuāpua'a) を懐かしんで居るのを歌ったもので、 1933年に大ヒットしました。当然、「ドゥ ザ フラ」の作者はよく知っているはずです。これに応えて (だと思うのですが)、1935年に、この作者を含むグループが、HUAPALA [2] にあげた次のような歌を発表しました。
Little Brown Gal
by Don McDiarmid, J. Noble, and Lee Wood
1
It's not the islands fair that are calling to me 私を呼ぶのは美しい島々ではない
It's not the balmy air nor the tropical sea 穏やかな空気でも熱帯の海でもない
It's a little brown gal in a little grass skirt 可愛い草スカートの褐色の小さな娘
In a little grass shack in Hawaiʻi ハワイの小さな草の小屋にいる
2
It isn't Waikīkī or Kamehameha's pali ワイキキでも大王のパリでもない
Not the beach boys free with their hoʻomalimali ホオマリマリの浜少年でもない
It's a little brown gal in a little grass skirt 可愛い草スカートの褐色の小さな娘
In a little grass shack in Hawaiʻi ハワイの小さな草の小屋にいる
3
Chorus:
Through that island wonderland ワンダーランドを通り抜け
She's broken all the kānes' hearts 彼女は全ての男の心を打ち砕いた
It's not hard to understand 理解するのは難しくない
For that wahine is a gal of parts 彼女は様々なパーツを持つ娘だから
4
I'll be leaving soon but the thrill I enjoy じき離れるけど、私が楽しむのは
Is not the island moon nor the fish and the poi 島の月でも、魚でもポイでもなく
It's just a little brown gal in a little grass skirt 可愛い草スカートの褐色の小さな娘
In a little grass shack in Hawaiʻi ハワイの小さな草の小屋にいる
ハワイ島から去ろうとしている人が、何が良かったかを述懐して居る歌です。第 4節に言っていることは、「月」や「魚」よりも「草スカートを履いた、小さな草葺小屋の可愛い褐色の娘」が思い出に残ったということです。これは、「My Little Grass Shack in Kealakekua Hawaiʻi」という、しみじみとしたヒット曲を茶化して、そこで懐かしんでいる「魚」や「草葺小屋」と「そこに居る男女」よりは、そこに住んでいる「草スカートを履いた、小さな草葺小屋の可愛い褐色の娘」の方が良いと明るく歌っています。しかも、コーラス部で、その女の子が「草葺小屋」にいる他の男女をメロメロにしてしまっていると歌っています。「月」が初めて出てきましたが、ハワイでは夜景に現れる「月」が大変に印象深いということが常識になっているのでしょう。それに合わせて、「魚」と「草葺小屋」と「人たち」に対して、「ドゥ ザ フラ」では更にその路線を強調して、その「魚」達は「小さな草葺小屋にいる褐色の可愛い娘」のところへ急いで戻っていく男の子たちだと歌っているのでしょう。そうですね、よく見ると「 Little Brown Gal 」は弾け方が少し足りない気がします。作者の Don McDiarmid もそう思ったのでしょう。
日本では、和歌の世界に「本歌取り」というものがあり、元歌に対して、如何に発想を発展させた歌を作るかで知恵比べをするようなところがありましたが、フラの世界でも、正に似たことが行われているわけです。
【原歌詞とコメント】
前項 B と同じように、歌の意味上の区切りごとに「あらまし」を付けてみます。修正の必要のないところは、前項のものをそのまま使います。(10/15 注釈がある場合はこの節の最後にまとめておきます。)
Do the hula if there's anything you'd like to say
It's the only way
You'll find that a trip around the island is fun
When you've once begun
なにか伝えたいことがあるなら、
フラを踊るしかありません。
島巡りが楽しくなりますよ、
フラを始めたらね。
Tell of the moon above so high (注釈 a, 10/15)
Humuhumunukunuku go swimming by
Talk about the boys all hurrying back (注釈 a, 10/15)
to the little brown gal in the little grass shack
月は高くあり、
フムフムヌクヌクが泳ぎ過ぎていく。
まさに、急ぎ戻る男の子たち
可愛い女の子の元へ
Do the hula if you'd like to whisper I love you
It's the thing to do
Picking flowers gets them all the time
in that tropical clime- もし『愛している』と囁きたいなら、フラをする。
- それがやることです。
南洋では、花は摘むほどに咲きます。 - (だから、どんどんと踊ろう。)
- When you walk on the silvery sands
you never have to talk simply use your hands
白銀の砂の上を歩く時、
言葉は必要ありません、
ただ手を使うだけ。
Do the hula go into your dance
フラをしよう。没頭しよう
「talk about」という言い回しには一定のニュアンスがあります。英文法 [4] にあげた Gaba Style ブログに以下の例があります。
Kosuke: Oh, look at Skytree over there!
Miranda: Wow! Talk about a big building!
- Kosuke: あぁ、あそこにあるのがスカイツリーだよ!
- Miranda: わぁ!高い建物っていうのはまさにこのことだね!
つまり、「まさに〜ことだね」というニュアンスを持つようです。
他方で、「tell of」という言い回しにも、ある一定のニュアンスがあるようです。英文法 [5] には以下の例があります。
tell of the arrival of ~ ~の訪れを告げる
つまり、「Tell of the moon above so high」は「月が空高くにある」ことを告げていることになります。そうすると、歌の中では「月が空高くにありますよ」と情景描写をしていることになります。これは、単に「The moon is above so high」と書くのと対して変わらないようですが、ニュアンスとして、そこにありますよと指摘する積極性が加わっていると解釈できる気がします。ただし、日本語だと、あまり区別はできません。)
【日本語歌詞の案】
ハワイアンズでは女性ボーカルが歌っていたことを意識して、以下のような歌詞を付けてみました。女性の方が言葉の切れが良さそうに聞こえるので、このような アップ テンポの曲には有利なのでしょうか。
Do the hula, do the hula フラしよう、フラしよう
Do the hula, do the hula フラしよう、フラしよう
Hula, hula, hula, hula フラ、フラ、フラ、フラ
Do the hula if there's anything you'd like to say
フラしよう、何か 言いたい なら ね
It's the only way
それ だけよ
You'll find that a trip around the island is fun
分かるわ、島 巡りは 楽しいって こと
When you've once begun
踊り 始めたら
Tell of the moon above so high
お月さんは 上に そう高く
Humuhumunukunuku go swimming by
フムフム ヌクヌク 泳ぎ 行き
Talk about the boys all hurrying back
まるで 男の子たち 急ぎ 戻る (10/18)
To the little brown gal in the little grass shack
そう 茶色の 可愛い娘 小さな草小屋へ
Do the hula if you'd like to whisper I love you
フラしよう、 貴方 囁くなら 愛してる って
It's the thing to do
それが やること
Picking flowers gets them all the time
花は 摘むほど 花が 咲く いつも ね
In that tropical clime
そんな トロピカルな とこ
When you walk on the silvery sands
銀色の 砂浜を 歩く とき
you never have to talk simply use your hands
言葉は いらない ただ 手を 使う
Do the hula go into your dance
フラしよう、さあ 貴方の ダンス
If you'd like to whisper I love you
貴方 囁くなら 愛してる って
It's the thing to do
それが やること
Picking flowers gets them all the time
花は 摘むほど 花が 咲く いつも ね
In that tropical clime
そんな トロピカルな とこ
When you walk on the silvery sands
銀色の 砂浜を 歩く とき
you never have to talk simply use your hands
言葉は いらない ただ 手を 使う
Do the hula go into your dance
フラしよう、さあ 貴方の ダンス
Do the hula, do the hula フラしよう、フラしよう
Hula, hula, hula dance フラ、フラ、フラ ダンス
Along the road to romance この先は ロ・マンス
「日本語歌詞のみ」: 歌う都合上少し変えています。詳しくは後の項をご覧ください。
フラしよう
フラしよう、フラしよう
フラしよう、フラしよう
フラ、フラ、フラ、フラ
フラ しよう、 何か 言いたい なら ね
それ だけよ
分かるわ、島 巡りが 楽しいっ てさ
踊り 始めたら
お月さんは 上に そう 高く
フムフム ヌクヌク 泳ぎ 行く
[まるで] 男の 子 [みな] 急いで る
[そう] 茶色の 可愛い娘 [小さな] 草葺 小屋
フラしよう 貴方 囁くなら 愛してる って
それが やること
花は 摘むほど 花が 咲く いつも ね
そんな トロピカルな とこ
銀色の 砂浜を 歩く とき
言葉は いらない ただ 手を 使う
フラしよう、 さあ 貴方の ダンス
貴方 囁くなら 愛してる って
それが やること
花は 摘むほど 花が 咲く いつも ね
そんな トロピカルな とこ
銀色の 砂浜を 歩く とき
言葉は いらない ただ手を 使う
フラしよう
さあ 貴方の ダンス オー イエー
フラしよう、フラしよう
フラ、フラ、フラ ダンス
この先は ロ・マンス
注釈:「 [かざり] 」の所は、「かざり」という言葉を装飾的につけます。例えば、
部屋を [かざり] つける
は「部屋を つける」を二拍で発声するとした時に、二拍目の「つける」の前に「かざり」を短く装飾的に付加するように発声します。これは、英語で拍が取られている所に、英語とは拍の異なる日本語を置くために、便宜的に入れました。
【おわりに】
「日本語で歌うポリネシアン」という私的な企画のため、この「ドゥ ザ フラ」の歌える日本語歌詞を再検討してみました。そうしましたら、出るは出るは、最初の頃の思い込みで間違った記述になってしまったところがです。やはり、新シリーズが始まった当初は、字幕の準備に精神的な焦りがあったからなのでしょう。「ドゥ ザ フラ」について考えてみたのは、この様な アップ テンポの曲でも日本語歌詞の振り付けができるなら、怖いものはなくなるのではと思ったからです。でも、考えてみると、アップ テンポの曲は割と大まかな音声の動きで歌われるので、歌詞のリズムが理解できれば、逆に簡単なのかも知れません。
話は変わって、この私的な企画では歌い手さんと伴奏者を見つけなければならないので始めているのですが、そう簡単でもないですね。歌える日本語字幕を作るのも時間がかかるので、ゆっくりと進めればよいのかも知れません。なにしろ、その後に当然、「日本語で踊るポリネシアン」が来るのですから。その段階になると、唯一、日本語字幕の完成度で企画の成否が決まりますから、慌てないほうがよろしいです。その後には、ポリネシアンの踊りの商業化です。この素人カメラマンがそこまで元気で居られるかは、かみのみぞ知るです。四毒抜きを頑張りましょう。
あと、追加の話なのです。歌は「歌ってもらう」積りで気軽に考えていたのですが、どのように歌うかについては、やはり、きちんとした提案が必要です。歌い方への提案ということは、私も歌って見せなければならないということです。というわけで、毎日、聞き苦しい声を張り上げています。踊るのは流石に不可能ですから、そこは却って気が楽です。
(10/15 「ドゥ ザ フラ」を歌うに当たって、思っていた以上に気楽に考えていたようです。このように アップ テンポな曲を歌うときには、相当に舌が回らないと リズムが取れません。)
[1] Do the Hula , HUAPALA.
[2] Little Brown Gal , HUAPALA.
[3] My Little Grass Shack in Kealakekua Hawaiʻi , HUAPALA.
[4] Talk about, 「使いこなす句動詞」, Gaba Style ブログ.
[5] Tell of ~ とは , 英辞郎 on the WEB.