作者について間違っていましたので修正します。

 

ポリネシアン グランド ステージ の 2024年 3月から始まった シリーズ 「翔~To the

 new world~」の第十三曲目、「Fakateretere(ファカテレテレ)」です。

(5/14  別項「Fakatere tere についての考察」も合わせてお読み下さい。)

 

グランド ステージ での歌と踊りは以下です。


 

上の動画の右側の中ほどのマークを クリック すると全画面表示になるようです。終

わったら右側の上端のマークを クリック すれば戻ります。

 

まず、歌詞を書きます。信頼の置けると思われる HALE AO から採りました。

(5/14 別項「Fakatere tere についての考察」より日本語歌詞を付けてみました。)

 

   Fakatere tere
      by Marotea Mariassouce(以下の修正参照のこと)
1)
 Fakatere tere      旅は続くよ   注1
 Na tokerau e      北風に乗って
 Toku piko haga     私が見た
 Ki ga ruki e       昨日の夢

 

2)
 Viru viru maua      素敵な二人
 Taku moe haga     私の夢の中
 Ua kite au te marania   見つけたんだよ貴方を
 Taku kahaia iti e      私の可愛い花を
 

3)

 Ua peke ko te ragi   流れているよ あの空は
 Ki ruga ki toku kaiga  遥か上を   私の上を

 

4)
 Horo horo         走るよ 走る
 Tamariki        子供達は
 Ki ruga ki ruga       あちら こちらと
 Ki te piriga        砂浜を

 

ハワイアンズでは 1), 2), 3), 4), 3), 4) と歌っています。

 

(5/14   注1:航海をしているのですが、曲の趣旨を考えて旅が続くとしました。)

 

ファカテレテレ は トゥアモトゥ諸島の歌です。トゥアモトゥ諸島は フランス領ポリネ

シア に属しますが、そこの言葉は タヒチ語ではなく、 非常に多数の島嶼からなる諸島

の地域ごとに少しずつ異なる言葉が話されています。一般に〇〇語という場合、言葉

にある程度の規則性があり、ある程度の集団において使われているなどの要件が必要

ですが、トゥアモトゥ諸島では地域ごとの比較的小さな集団が少しずつ異なる言葉、

つまり方言を話していて、「トゥアモトゥ語」と言うにはまとまりが足りません。そ

のため、 トゥアモトゥ諸島で話されている言葉をまとめて パ ウモトゥ方言群 

(Pa'umotu dialect cluster)と呼んでいます。[1]  しかし、面倒ですから、一般には

単に パ ウモトゥ語と呼んでいます。ここの言葉の大きな特色は、タヒチ語で「 ' 」で

表される声門閉鎖(glottal stop)が「 k 」もしくは「 ng 」と発音されることです。

このため、「人」を表す タヒチ語の「 ta'ata 」は トゥアモトゥ諸島では、一般に、

「 tangata 」と発音されることになります。

 

ですから歌の最初の「 Faka tere tere na tokerau e 」は「 fa'ateretere na to'erau e 」

と考えられます。「 fa'ateretere 」は「 fa'a + teretere 」で「 teretere 」は「 tere 」

つまり「旅」ですから、「旅をさせる」という意味になり、「 to'erau 」は「西風も

しくは北西風」ですから、「 na 」の意味を考えていないので不正確ですが、歌の最初

は「北西の風が吹いていく」というようなことになります。

 

( 8/5 追加: 始まり)

Wikipeia によれば、”Fakateretere (na tokerau)" は タヒチ の パペーテ に生まれた

Gabilou (Gabriel Lewis Laughlin)の作とされています。彼の作として紹介されて

いる曲の歌詞は以下です。Paroles de la chanson から採りました。

 

 Fakatere tere
 Na tokerau e
 Toku piko haga
 I na ruki e

 Viru viru maua
 Taku moe haga
 Ua kite au te maragia
 Taku kaha ia itie

 Ua peke
 O te ragi
 Ki ruga
 I toku kaiga
 Horo horo
 Tamariki
 ki ruga ki ruga
  te piriga
 

ハワイアンズ で歌われている「 Fakateretere 」と微妙に違います。例えば、第一節

の最後の行が ハワイアンズ では「Ki ga ruki e 」と歌われていますが、上の歌詞では

「 I na ruki e 」となっています。つまり、Marotea Mariassouce の作とされる ハワ

イアンズ での歌は トゥアモトゥ の方言を強調したもののようです。上掲の Gabilou

の Wikipedia での説明では、1990 年代の末頃に喉の病変で声を出せなくなり、リハ

ビリ に努めた結果、声を出せるようになり、2000 年頃に作曲したものが上掲の曲

であるとなっています。推測すれば、Gabilou は新しく開けた世界に出ていくに当た

り、心に持っていた夢の情景を歌にしたのに対し、Mariassouce は トゥアモトゥ の

歌と言う面を強調して歌ったのでしょう。Gabilou は、生まれから、標準的な タヒチ

語を話すと考えられますから、発音に トゥアモトゥ 方言はあるものの、基本は正統

な タヒチ語であると考えられます。日本語訳については稿を改めて書きたいと思い

ます。

( 8/5 追加: 終わり)

 

以下に、取り敢えずネットで見つけた日本語歌詞と英語歌詞を書きますが、この様な

ことを念頭に置いてご覧下さい。

 

TAHITIAN UKULELE にあった歌詞です。先にあげた歌詞と微妙に違いますが、上の説

明から理由が分かると思います。

 

 (元の歌詞)
 Fakateretere na tokerau e
 Toku piko hanga i na ruki e
 Viruviru maua taku moe hanga
 Ua kite au te marangi au
 Taku kahaia iti e
 Ua peke o te rangi
 Ki runga i toku kainga
 Horo horo tamariki
 ki runga ki runga
 I te piringa

 (英語の歌詞)
 Blowing,
 the wind from the north
 during my sleep
 last night
 she is so pretty
 in my dreams
 I saw this beautiful girl
 my little flower

 

フラのおはなし ハーラウフラ ホオウル イケアオ 名古屋 岡崎 安城 にあった日本語歌詞

です。元の歌詞はやはり微妙に違いますね。

 

 (元の歌詞)

 Fakateretere na tokerau e
 Toku piko hanga i na ruki e
 Viruviru maua taku moe hanga
 Ua kite au te marangi au
 Taku kahaia iti e

 Ua peke o te rangi
 Ki runga i toku kainga
 Horo horo tamariki
 ki runga ki runga ki te piriga
 

 

 (日本語歌詞)
 昨夜寝ている間に
 北から風が吹いていた

 彼女は小さな花の様な美しい女の子
 夢の中で可愛くたたずんでいた

 この地の空を飛び回り
 子供達は大地の上を駆け巡る

 (彼女は)この地の空を飛び回り
 子供達は大地の上を駆け巡る

今後、私も歌詞の解析をやってみたいと思います。


[1] Jean-Michel Charpentier and Alexandre François,  Linguistic Atlas of French 

  Polynesia. Walter de Gruyter GmbH and Université de la Polynésie française, 

  2015.