リマタラの歌詞B版の解析を初めます。A版の一番の解析は既に行っ

ていますが、その解析の後で考察を進めたところも在るので、もう

一度、一番から初めます。

 

歌詞B版は以下です。

 

Fa'ahei ta'oto hia ra vau e
E rima tatara o rimatara e
E tara e e matara e

Motu iti ha'i ha'i ta'u fenua iti e

Ua para ovine hia te porohiti


Ia he'e te hupe na oromona ra e

Ua titi hia te ura e e te rupe e

Puehu te miti puehu te miti

Tatahihiava e

Te ti'a maira te ti'a maira

Aue te niu o tamaeva e

 

まずは歌を聞いて下さい。Esther さんの歌が発音が美しく分かりやすいと思います。

ポリネシア語の「 ' 」の発音にご注意下さい。

 

 

 

一番の一行目から解析を行います。

 

Fa'ahei ta'oto hia ra vau e
	fa'ahei   put a garland around someone's neck or on someone's head
	ta'oto    sleep (n,v), lie down, be recumbent, sleep with someone
	fa'aheita'oto the same as 「fa'aheimo'e」
	fa'aheimo'e  (v,a)to cause dreaming or visions during sleep
	hia     interrogative word of quantity, suffix indicating the 
        passive,
	ra     with lengthening of the last vowel, specifies distance 
        in space or time, or both
	vau     I, me
	e      very often is used at the end of lines in verses of songs
Fa'ahei ta'oto hia ra vau e
わたしは夢をみた

ここで「 fa'aheita'oto hia 」ですが、「 fa'ahei-ta'oto-hea 」と書かれて
「夢を見る」という意味であると考えられます。この様な形で動詞を新たに作る
方法はタヒチ教会関係の文献に多く出てくるようです。幾つか例をあげてみます。

horoa-oioi-hia   早急に与えられる
hopoi-tītī-hia   捕らわれる
mana'o-ore-hia   考えられない

この構成についてはまた触れることになりますが、この言葉の作り方は当時のタヒチ
文化の一つであったと思います。しかし、これは欧米の方々が日本の漫画に憧れる
ような意味での「文化』ではありません。かつて日本のお寺がそうであったように、
タヒチ教会は直接にその地の人々を「指導』するものであったと思われます。
ですから、リマタラがフランスの支配を認める決断をフランス側に伝えた結果、最初
に派遣されてきたのがタヒチの宣教師のグループであり、最初に行われたのが教会の
「再建」で有ったのは偶然ではありません。上記のような合成語は詩歌に使われる
様な美しいものではありません。本当に僅かなタヒチ語の経験しかありませんが、
この歌の特徴であるし、意図的なものであると思われます。この歌が伝えたいもの
がなんで在るかを考える後編でまとめてみたいと思います。

取り敢えずは次の行に移ります。

E rima tatara o rimatara e
	rima    hand, arm, finger, signature
	tātara   untie, to free, liberate, deliver from
	o      possessive
	'o     equivanence (mark of noun predicate), personal article 
        before a proper noun as subject
E rima tātara 'o Rimatara e
リマタラは親指です。
ここで「 o 」は「 'o 」で在るとしました。そうすると、「リマタラは〜です」と
いう構文になります。

E tara e e matara e
	tara	to untie
	tarā	(v,n)to be recovered, and in a good condition, as the 
      country in time of peace
	matara	open, be opend, come undone or loose, be forgiven
	matara	(v,n)to be untied, unloosened, disentangled
	matara	(v,n)to be forgiven a crime
	e    the indefinite article
	e    (conj) and
	e    very often is used at the end of lines in verses of songs
	e...ē	in calling or exclaiming
E tarā ē e matara ē
復活だ、自由だ

ここで「 e 」の使い方はどれなのか、正直、分かりません。しかし、どれを採っても
同じ様な意味になると思います。勿論、この行は先程のリマタラは親指だという理屈に
関係して、(他の指と比べて)自由であると主張しているわけですが、少々しつこい
気はします。辞書で調べてみると、「 tara 」にしても「 matara 」にしても、復活
と言う意味が入ってきます。なんだかドサクサに紛れて「復活だ』と言っている様な、
或いは、むしろこの主張のためにリマタラは親指だと言ったのかも知れません。

次の行に移ります。

Motu iti ha’i ha’i ta’u fenua iti e
	motu   reef, island, islet, atoll, cut(n,v,adj), severed, severing
	iti    little, amall, diminish, become insufficient, (song) dear
	ha'iha'i small, (v, a)to bind up fast to secure, to support
	iti ha'iha'i とても小さな
	ta'u   my, mine (weak possession)
	fenua   high island, land, country, ground, soil terrain
Motu iti ha'iha'i ta'u fenua iti e
私の愛する祖国はとても小さな島です。

ここで「 iti ha'iha'i 」は意味の重複した語の合成ですが、「とても小さい」という
意味合いでよく出てくるようです。

Ua para ovine hia te porohiti
	'ua   verbal particle, perfect aspect
	para	ripe, as fruit; come to a head, as an abcess
	ovine	vineyard 
	hia   interrogative word of quantity, suffix indicating the passive,
	porohiti	red-fruited plant
'Ua para ovine hia te porohiti
Porohiti は豊かに実を付けるようになりました。

ここも「 para ovine hia 」は「 para-ovine-hia 」と言う形で作られた動詞である
と思われます。さて、ovine (羊)です。元々リマタラに羊が居よう筈がありません。
従って、聖書から取られた言葉です。一般的な認識では、我々一般人は「迷える羊」
であり、キリスト教徒は迷える羊を守り導く牧者であリます。その牧者の目的は我々を
成熟した羊とすることです。成熟した羊(我々)は豊かな社会を作り、豊かな文化や
豊かなものを生み出します。「 Para-ovine 」はそのようにすることであり、「 para-
ovine-hia 」はそのようにされることであり、そのようにされた「もの」は豊かな
生産物を生み出すことに成るでしょう。そうですね、「 ovine 」をぶどう園と誤った
解釈をしたときよりは自然な推測ができます。(負け惜しみです。)ここで、少し
追加ですが、「 para 」と「 ovine 」の組み合わせはどうも聖書にはないようです。
教会関係の文書にも無いのではないかと思います。先程の推論が正しいとして、本当
に porohiti が成熟したのだとしても、別に、こんな分かりづらい言葉をもってくる
必要は無いでしょう。しかも、この言葉はわざわざ作ったものかも知れません。
何だか意図的です。「おかけさまで立派になりました』と言っているのでしょうか。
誰に?勿論、タヒチ教会の関係者にでしょうね。でも何でむざむざと? それは
リマタラが小さい島だったからでしょうね。いや、何も知らない人間が考えた
屁理屈です。

説明の最後の二行は当初考えていなくて、歌の中で前の行との関連でつい書いて
しまったものです。しかし、こう考えると何で成熟の意味で「 para 」が使われた
か分かるような気がします。英語では「 ripe 」の意味があります。これは語感と
しては錆びる、もしくは爛熟するというイメージがあります。あまり「立派だ』
というイメージはありません。歌の作者はキリスト教国としてのリマタラを苦々しく
思っているのかも知れません。これだけの知性が在るようですから、ひょっとすると
タマエバ家に繫がるどなたかも知れませんね。

さて、二番です。

Ia he'e te hupe na oromona ra e
  'ia    (before verbs) expresses a wish or desire;
       for an event not yet having occurred or not having been 
       completed at the time of reference. (when, if)
  he'e   slip, slide; evacuate, purge; go out or down (of tides);
       (He'e mai i te motu 島から来る)
       (A he'e noa ite tau = 共同生活の思い出、出版物のタイトルより)
  hupe   dew, night breeze that comes down from the moutain
  nā    before noun sequences; specifies weak possession
  Oromona  The highest mountain (or a height) of Rimatara
  ra    specifies distance in space or time, or both
       with lengthening of the last vowel of the preceding word
'Ia he'e te hupe nā Oromona ra e
オロモナ山の山風がやって来たなら

ここの「 'ia 」の位置づけがよく分かりません。ただし、歌を聞くと「 ia 」
では無いようですので、仮定か条件かの違いだと思います。それで、オロモナの
「山風』とは何でしょうか。ここは海抜が精々が80メートル強の所ですので、
オロモナ山と言うよりはオロモナの丘の様なものです。ですから、一般的に、
強い吹き下ろしの風が在るとも思えません。観光ガイドを読むと、オロモナの上に
はタマエバ家代々の「へその緒」が納められているとあります。つまり、ここでは
タマエバ家の権威(正統性)を指すのではないかと思えます。つまり、タマエバ王、
これから問題としていく時期にはタマエバ女王、の王権が発動されることが暗示
されているのだと思われます。そうすると、次の行に繋がります。

'Ua titi hia te ura e e te rupe e
  'ua	verbal particle, perfect aspect
  titi  adaptor; jib sheet; breast, teat; slave, labor gang prisoner;
      a nail, pin or peg; a bundle of cocoanuts; 
      to pin or peg, to fasten with nails or with stakes in the ground;
      to stick fast, as a mote in the eye;
      a captive in war, a slave; a refugee
  ura   flame, burn wih a flame; Polynesian name of Rimatara Rorikeet
  'ura  red (archaic)
  ura   red; a blaze, a flame of fire; red feathers, formerly saored to
      the god;
  rupe  blackish pigeon, the name of a large land bird, a species 
      of pigeon
  rupe  (myth) a borther of Hina who becamed a pigeon
'Ua titi hia te ura e e te rupe e
炎の赤と鳥よ、彼らは守られた

ここで「 titi hia 」を守られたとしたのですが、それは「 titi 」が船などを
嵐から守るために行う処置を表しているので、「 titi 」を守ると考えてみた
からです。(じつは、それ以前にマイクロソフトの翻訳ツールを使ってみたら守る
という言葉が出てきたので考え始めました。)

Puehu te miti puehu te miti
  puehu  dispersed, scattered about, fall to pieces
       to be blown by the wind; to be scattered or driven away; 
       to be dispersed, as a conquered party in war
  miti   sea, saltwater; salt (v); saline souce, lick (v) (舐める)
puefu te miti puehu te miti
海が吹き払われる 海が吹き払われる

何となく不穏な雰囲気がありますね。リマタラ インコを諦められない側と
タマエバ女王の元で団結した島民(国民)。さて、次がその現場でしょうか。

Tatahi hiava e
	tatahi	dust or wipe off
	tātahi	seashore, seaside, beach
	Hiava	the name of a seaside place of Rimatara
Tatahi Hiava e
Hiava の海辺で

リマタラ島はポリネシアの他の島の例にもれず、環礁で守られています。
リマタラ島の場合はその環礁がかなり陸地に近く、侵入者側はゆっくりと
環礁を超えてくるのは難しいでしょう。(想像です。)リマタラの環礁
には3つの出入り口があり、その一つが「 Hiava Pass 」です。そこが
直接に Hiava の海辺につながっています。攻防戦があるとすれば、こんな
所でしょうか。ここで「 tatahi 」には拭い去るという意味も在ることに注意
したいと思います。頑張ったのです。

或いは「神風」が吹いたのかも知れません。二行上を見ると、実際に風が吹い
たのかも知れません。しかし、重要なことは侵入者を上陸させなかったという
ことです。神風が吹いたとしても、侵入者側が上陸してしまっていれば関係
ありません。ですから、リマタラ側が頑張ったことには変わりはありません。
(6/27追加)

さて次の行です。

Te ti'a maira te ti'a maira
  ti'a  right, straight, just, fair; permissible, approved; doable, 
      possible; stand up, erect straight up and down; delegate, 
  te   動詞的(〜する)
  maira  mai ra
Te ti'a maira te ti'a maira
立ち上がれ 立ち上がれ

捕獲者を押し戻したこともあれば、必死な捕獲者の侵入を許したことも
有ったでしょう。しかし、諦めないということかと思います。

Aue te niu o tamaeva e
  niu   (ancient name for) coconut; foundation (of a wall);
       a medicinal plant
  Tamaeva royal name
Aue te niu o Tamaeva e
やあ それが Tamaeva のやり方だ

ここで始めて「 Tamaeva 」の名前がでてきました。この歌を読んで、分かるのは
リマタラの住人が「タマエバ女王のもとで一致団結」していたように歌われて
居ることです。真実なのか、裏切りがなかったのか、もう歴史の流れに消えて
しまっています。分かっているのはリマタラ インコが現在もリマタラに生存
しているということです。住民が如何に保護しても、ヨーロッパ人が船で持ち込んだ
ネズミがあらゆる島で繁殖して、リマタラ インコの天敵となっているため、
クック諸島の中で唯一ネズミのいない島で繁殖させる試みが行われていると聞きます。

ここで思い出しました。この試みはその島の「女王』の要請を受けて行われることに
なったとプロジェクトの説明にありました。王の居る島にはネズミがおらず、
リマタラはその要請を受け入れたということです。タマエバ家は健在なのでしょう。
そして王族も、王族同士の繋がりも健在であるということでしょうか。グッと来る
話です。

最初のほうに「復活」と言う言葉が有ったり、後で「立ち上がれ」と言う言葉が
有ったりして、或いは、リマタラには王政に戻りたいという思いも在るのかも知れ
ません。と、すれば、なおさらわかりやすい言葉で言うわけには行きません。現在、
タヒチはフランス領でありながら、自治政府がタヒチ大統領を頂いています。
そうすると、仮にリマタラが独立を望むとしてですが、まずはタヒチ政府が支配者
として立ちはだかります。そのタヒチ政府はフランス政府の意向を受けて動くわけ
です。この二重構造が「植民地支配」と言うものなのです。ちょっと先走りました。
後編のところで少し議論したいと思います。或いは、そこが最終報告ということに
成るかも知れません。(6/27追加)

   (中編了)