ぴのこは、こんな筈ではなかった。
別れた男から、取り戻した猫ちゃんがもう10年になる。
そして、去年の夏にやって来た子猫まで飼う羽目になり、
独身の猫女がヤバイんだよと思いながら、溺愛をしていた。
2匹の猫ちゃんを、娘と息子と思って可愛がっていた。
お婆ちゃん猫が外に出たいよと言うと、若い猫ちゃんも遊びに行く。
夜、仕事から帰ってくると、猫ちゃんのお散歩時間になっていた。
いつもは普通に帰ってきてくれていた。
なのに、若い猫ちゃんが、あれ?という間に帰って来なくなった。
ぴのこは、必死で探した。
食いしん坊のボクちゃんは、餌の袋をガラガラ鳴らすと帰ってくる。
だが、帰ってこない。
ガラガラー!!!!
布団おばさんって苦情きてた人いたよね?
ぴのこは、それに近い。
ガラガラー!!!鳴らしながらボクちゃんの名前を呼びまくった。
帰ってこなくなって、早くも1ヶ月が過ぎた。
猫ちゃん探していますのチラシを作り、近所に聞き込み、捜索。
気づけば、3千枚のチラシを、新聞の折込みチラシで配る。
朝、昼、晩、夜中、探し回る。
できる限りの事をして、気がつけば1ヶ月が過ぎた。
知り合いに頼んで、SNSでも宣伝をし、似た猫を見かけたと聞くと、
その場に飛んでいき、探した。
かわいいボクちゃんがいなくなって、ぴのこは気が狂いそうになった。
というか、狂った。
全ての音が、ボクちゃんの鳴き声に聞こえる。
夜になると、玄関で魚を焼いた。
うちわでパタパタ煙を撒き散らしてみた。
やって来たのは、近所の野良猫さん達。
毎日、魚を外で焼いている孤独な女って悲惨すぎるでしょと思った。
ぴのこは、止めていた酒が進み、魚をつまみに酔いどれてきた。
ここで、実はビールが好きな事に気づいた。
ライムを絞ってコロナがお気に入りになってしまった。
すると、ブサイクなガリガリの悲壮感が漂った野良猫さんがやってきた。
毎日、玄関で魚を焼いている内に、より、その猫は近寄ってきた。
止めてくれよ!、ぴのこは、ボクちゃんを探しているのに、
もう1匹猫が増えたら、もっと、ヤバイ猫女になってしまう!
ブサイクだった、ガリガリの体は、ぴのこと出会ってから、
見る見る元気になってきた。
どんどん、近づいてくる。
これが、野良猫の作戦なのか?
外は台風の日だった。
ぴのこが帰ってくると、野良猫さんは家に入ってきて、眠りだした。
もう、住んでるじゃん!!!
覚悟を決めた。可愛いボクちゃんが帰ってきたら、猫3匹でいいよと。
ぴのこと、猫3匹。
大家族じゃないか!ってね。
猫探しのストレスのせいか、知り合いの店に何軒か飲みに行く事が増えた。
もう、焼酎は止めている。
ビール一本派にした。
気づくと、年のせいか、酔いどれが激しくなってきている。
またもや、アル中みたいなメールを知らない間に送っている事にヤバイなと思った。
朝、起きると酔っ払って尻もちをついたのか、尾てい骨が痛い。
車の運転をしている時でさえ、痛くて運転ができない。
幸い、立っている時は大丈夫だった。
お客が来るまで、ぴのこだけ、座っていない。
うつ伏せに転がっていた。
尻の痛みに耐えながらダンサーをやっていた。
他のダンサー達から、痔になったの?と聞かれた。
痔じゃなくて、尾てい骨にTバックが食い込んで痛いと言った。
猫探しで、悲しみがマックス・マックスになった。
気がついたら、家の隣にある公園の木にしがみついていた。
もちろん、酔っ払ってだ。
家の隣が巨大な公園っていいねって思ったが、
猫がいなくなったら、巨大なジャングルで猫がわからない。
夜中に猫探して、懐中電灯を持った、ぴのこは、公園に行っていた。
雨が降りだした。
スコール並の大雨。
は!と気づけば、暗闇で、公園の木を抱いて立っていた。
もう、ぴのこ自身が八つ墓村みたいになっていて、
歩くホラーじゃないか!と思った。
かわいいボクちゃんを探しています。