「やっと会えた!」

いつものコンビニに入ったらいきなり声をかけられた。

声の方を振り返ると見知らぬ、おじさん。

「あの、お会いしたことないと思うんですが‥」と少しびっくりしながら返事をする。

その返事を聞いて、そのおじさんは少し照れ笑いの表情に変わった。

「だよな〜。」



これは私が手伝わせてもらってる畑の友達から聞いた話だ。

冒頭はその話から想像した、見知らぬおじさんと友達の出会いの会話シーン。

「え〜、ナンパされたの?コンビニで?」と冷やかしながら聞いていると、意外な話が続いた。



「いつも車の運転しながら見てたんだよ、あんた達が畑でやってるの。なんだかみんな楽しそうにしててさ。窓を開けてると、笑い声がよく聞こえてくるんだよ。なんかそれがいいなぁ〜って、思ってて。

だからこの道を通ると、今日はいるかなって楽しみになってたんだよ。

そしたらここで、その畑の人がいたから思わずうれしくなっちゃって声かけちゃったんだよ。」

というようなことを、そのおじさんは続けたらしい。

友達はちょっと、いや、かなり驚きながらもその話を聞いて少し言葉を交わして別れた、ということを畑の仲間たちの前でいつもより少し高いトーンの声で話してくれた。



そのおじさんが車で通るという道は畑のすぐそばにある川にかかった橋から続くもので、私たちの手伝う畑、通称「すぎな畑」からは20メートル位は少なくとも離れている。

そんな声なんか聞こえるんだろうか?それも月に数回、時間もその時の気候や都合に合わせてまちまちに集まってるし。

そんなことを口々に言っていると、「あんた達の声はよう通る声だから、きっとあそこからでも聞こえるよ」とたまたまその時だけ畑に来ていた、私達自身大概いい歳をしているけれどそれより落ち着いたお姉様に言われ、みんなハッとして納得した。

みんなどちらかというと周りに物おじせず大きくはっきりとした声でよく喋ったり笑ったりしてたのを、思い出していた。


それにコンビニで話した時同じことを思った友達がおじさんに聞いていたらしく、「いつもいるわけじゃないから、ドクターイエローみたいに、見れたらラッキー✨くらいに思ってたよ」と言ってたのも私たちの会話を聞いて付け加えて教えてくれた。



そしてその話を聞いた私は、じんわりとうれしくなってきた。

ただ楽しく自分たちのためだけに、畑で手を動かしながらも他愛もないことを言って、気晴らししながら過ごしてたその姿が、なんとそれを遠くから見ていた見知らぬ人を幸せな気持ちにさせていた。



畑の仲間たちも畑を離れれば、それぞれ違った生活が待っている。

でも畑にいる時は全く違った年齢や背景をちょっとだけ脇に置いて、苗字ではなく名前で呼び合い、畑の知識や生活の知恵をシェアしあったり、たまには日頃の愚痴も聞いてもらい、でもお互いを大切にしながら、畑仕事をする。

そんな束の間のしあわせな時間をここで過ごしている、と私は感じていた。 



そしてその「その時、幸せでいる」というみんなのあり方のなにかが、通りがかりの見知らぬ人の目を引き心をほんのちょっと動かして、友達に声をかけるまでの行動をおこさせた。


誰かのためではなく、自分のための喜びや幸せが、周りで見ている人喜ばせる。


なんだかそんなことを改めて感じて、私はとてもうれしくあったかいものを心の中に灯されたように感じ、このところ、そのあたたかさと過ごしている。