まだまだ小さくて彼女の揺れがわからなかった頃のこと。
たくさんの新しい感情を知った場所が
無くなっているのは何だか心細い感じがした
記憶に残る部屋はとても大きくて
隣の部屋までは何歩もかかった道のりが
平らになったあの面積からみて今では数歩で済んでしまうほど
時間がかなり記憶を曖昧にさせていたことがわかった
狭い狭い部屋の奥
窓の下は入ってはいけない魔法の場所と
悪いものの隠し場所だったこと
押し入れの隙間はお風呂と繋がっていること
天井を見上げれば優しく喋りかけてくれたこと
すべての感情を取り壊されたようで、
その後にまた人間が家を建てては
新しい温もりを与えるのかと思うと
昔ここにあったことを知っておいて欲しいとさえ
厚かましくも思うのだった
彼女は彼が、私の次に好きだと言った
あの浮き沈みする浴槽で二人
愛が何個もあっていいことを初めて知った
彼女のことはずっと一番に好きだと言った
彼女はずっと一番に好きだよ、と言った
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思想、思考は似るというが
頭の中にある箇条書きされた欲望や
日常が同じだとめっきり厭になるなあと
ぼそりと呟いた。
深い深い部分が垣間見えては不安になる
私とは違う。
きっと、似ることなんてないと思う
似せればあるんだろうけど。
どうしてかいつの間にか
皮肉な方にしか考えられなくなってるから
スカートをたくしあげた時だけ、
同じことしか考えてないようで安心する
それだけ、好きなことと日常のルーティーンが
似てることは強いことだと思っている
比べては、わからなくなる
何でなんだろうってずっと引っ掛かってる
きっとこれからも喉につかえてる。
それはきっと相手もつかえてるからだろうなとも思う。
瞳に映る寂しさと独占欲がぐちゃぐちゃに混ざって
これでよかったんだと堕ち合えた夜に
後悔の朝が来ないことだけが
ぽっかりと空いてた部分を埋めてはきているのが解る
解る、ことは難しいし
本当は何を考えてるのか
自分だって誰のことだって結局わからないけれど
一つ間違ってないのは、
愛しそうに見つめては寂しそうなその空気を
いいタイミングで抱き締めたときだと思った。
そばにいるのに、なあ。
とこっちも寂しくなるから
あ、思想が同じだと落ちたのであった。
簡単にいらなくなればいいのに。
とまた言ってしまいたくなるよアイロニー
怖くなる夜が増えることを知らない。