少年は、烏が鴨の子に襲い掛かったことを知らない。

また鴨の子を救うために、猫が烏を襲ったとは、知ることもない。


そのことを少年は知らずに成長するのだろう。


友達と二人で鴨にパンを与えながら、ここで起きた事実を知ることもなく少年は成長する。


カバンにミルクを入れたまま、少年は猫がやって来るのを待ちわびている。


そこで時が過ぎ行く虚しさを、いつまでも友達と分かち合いながら、ここでの出来事を胸に焼きつけるのだった。



    ―― 完 ――




ここから猫は去ってしまった。


なにより少年は猫を疑った。

最初に少しだけ、猫が鴨に襲い掛かると思い込んだ。


そのことを力強く忠告する少年の気迫は、猫にとって辛いものだった。

あのことが頭に焼きついてしまい、猫は少年に甘えることができなくなった。


猫は少年に愛されたままで、思い出の場所を去りたかった。

いつまでも綺麗な思い出を持ち続けてほしかった。


そんなことを猫は考えていた。


水面に浮かぶ波紋を見つめながら、猫は考えに耽っていた。





まもなく学校の授業は終了した。


その後、少年は友達を連れて公園へ向かった。


カバンの中には、すでにミルクを入れるプレートがある。



猫や鴨の親子を見せた時に、友達が喜ぶ姿が目に浮かぶ。



そのように考えが膨らみながら、いつもの川原に友達を連れて来た。



小川には鴨の親子が待ちわびていた。


しかし、そこには猫の姿はなかった。



この数時間の出来事を、少年は知らない。


猫が、この場を去ったのも分からない。


少年との約束を遂げた猫は、満足したように思い出の場所を去って行った。


少年の言伝(ことづて)は果たされた。


少年の願いを叶えるために、猫は大切なモノを犠牲にした。









    ここのあんぜんは

     ボクがいては

     まもられない











      こ  そ
      の  の
      場  よ
      か  う
      ら  に
      猫  感
      は  じ
      去  と
      っ  っ
      た  て
       。  、