○立製作所の開発本部長まで上り詰めた
Hさんから数日前に連絡が入った

最後に会ったのは福岡へ行く前だから
10年以上は会っていない

もう70半ばくらいだろうか

顔の広い方で
当時は沢山の人達を紹介して頂いた

大した人脈も無かった俺に

のら君は若いんだから
僕の人脈は君に引き継ぐから

それが口癖だった

新橋の狭い居酒屋で
新宿のさつま揚げの旨い飲み屋で
六本木や銀座とか

沢山連れて行って頂いた

だいぶ歳は離れているが
2人でちょっと男の遊びに行った時も

「僕くらいの歳になるとね、
死ぬまでに、後何回食事ができるのか
考えるようになるんだ」

「あっちも一緒でね、
1回の相手がとても大事になるんだよ(笑)」

そんな台詞も
ダンディーに聞こえてしまう
よく笑う方だった



噂では数年前
体を壊されて

ご自分の会社を清算されたと聞いていた


だから俺は
久しぶりに会えるHさん

嬉しくもあり
不安でもあった


福岡に行ってから

何度か電話を頂いてもいたが

絶好調だった俺は

ほとんど毎晩中州で数十万円!

そんな生活をして
謙虚さや感謝の気持ちを
忘れていたのかも知れない


ビジネスの拠点を東京へ戻してからも

なかなか時間もとれず(言い訳だが)
連絡を取ることは無かった


そんな時
携帯へ電話があったのだ

今年に入ってから
ひたすら分刻みのスケジュールで動く俺だったが


池袋まで来てくれると言う



俺はたまらなく会いたくて
無理に予定を空けた


「お~い、のら君」
「元気だったかね?」

久しぶりに見たHさんに
俺は自然と顔がほころぶ

それなりに歳はとられたが
センスの良いスーツに身を包み
ダンディーだ


池袋駅東口の喫茶店に入り

懐かしい話や
今進めているプロジェクトの話をした

Hさん、
いつもの名刺ケースを取り出して

今度はこの人を紹介するからねと

俺が引いてしまうくらいの
ビックネームを出してきた

一緒に居て元気になる!

しばらく間を空けてしまったけれど

これからまた良い付き合いをしようと
言ってくださった


俺はなかなか連絡も取らず
申し訳なかったと

心から詫びた

「いいんだよ、のら君は若いんだから」

久しぶりに聞いた(笑)



池袋駅まで一緒に歩き

駅へ降りる下りの階段で

Hさん、階段を手すりにつかまって下りる


俺は体調が悪いのか心配になり
聞いてみた


うん、


実はね

血友病と言って
血が止まりにくい病気になってしまってね

それが頭で内出血して
6年前に倒れたんだよ

無理しすぎたんだなぁ

だから会社を清算したんだけど

どうも僕は

仕事が好きなんだな

家内には悪いけど

僕を必要としてくれる人がいる限り

家にいるのが出来なくてねぇ

ただ、
倒れて以来
薬を飲んでいるのだが

この薬の副作用でね


足が


不自由になってしまったんだ


階段は恥ずかしいけど

支えが無いと歩けない

Hさん
苦笑いをしている


・・・・・・





自分が浮かれちゃってて


・・・・・


さっきだって

自分のペースで
平気な顔して歩いてたし


それに


俺が忙しいだろうからって

池袋まで行くよだって?


・・・・・・



俺は

ただただ

Hさんの心に

頭が下がった


すいませんでした!!

私はまだまだ若輩でした!


その場で俺は
涙が止まらなくなった