最近、スーパーでも産直市でもトレーサビリティの関係で生産者表示をしているが、そこに生産者の顔写真をつけて打っているところもある。農家の想いを紹介しながら、商品を販売するという戦略だ。しかし、これは実際に販売するだけでなく、飲食店でも○○さんがつくった野菜ということで農家の表示をして、農家のつくった畑や想いを紹介しているお店もある。


私自身はこれは自分のお店のブランディング戦略として有効であると思うし、安心安全と農作物に込められた苦労というストーリーをつけて付加価値をつけるという戦略であるから、この行為に対して全く否定はしない。


しかしながら、日本人の美徳で目立つことはしないという発想からいうと、もともと安心安全なモノをつくるのは当たり前の話であり、わざわざ顔を売る必要はあるのかという意見もある。つまりそこまで商売っ気を出さなくても、わかる人にはわかるという意見だ。この意見も一理あるとわかる。


あんまり、前面に出すようなお店は少々興ざめもしなくもない。入口に緑提灯をかかげ、そして地産地消をかかげる幟を大量に店内に設置されている状況を想像すると、それも度が過ぎると悪ということなのだろう。わざわざお客に紹介しなくてもわかる人にはわかるというご意見、至極最もだと思うし、やはり味でこそ勝負すべきで、その背景にあるストーリーはちょっとした隠し味にしておくほうがよいのかもしれないと思う人もいるはずだ。


先日、蛙が訪れた松山市のビュッフェ形式の飲食店「土に水に風に」というお店は、もともとは神戸のお店だそうであるが、農作物などの材料を近隣から仕入れている、いわゆる地産地消の飲食店である。このお店は店内がお洒落な女性向きの内装になっていることもあり、お客も女性客が7割くらいである。そこに地産地消を標榜しているものとしては、「愛媛産には、愛がある」という卓上の小さな幟1本だけで、客に対して主張しすぎず、それでいてさりげなく地産地消を標榜する。なんとも心にくい演出である。


一方で、愛媛県今治市の「さいさいきて屋」の食堂のように、農家のことは紹介しなくても入口に緑提灯をかかげ、店内でも作物の旬の紹介や食育情報を掲載し、また地産地消を標榜しているところもある。こちらは老若男女問わず多くのお客がやってきていた。これはこれで教育という一面も持っているので賛同できる部分も多い。


結局は、その店のブランドイメージに沿った形を追求することのひとつとして、「地産地消」をそっと客に伝えるのか、じっくりと伝えるのかは経営者の判断やセンスで求められると言うことなのだろう。