最近読んだ本に、「超美術館革命」という本がある。著者は金沢21世紀美術館特任館長さんの蓑豊さん。本の帯には『「ルーブル美術館」館長も驚嘆した』『ピカソもルノアールもない地方の市立美術館に年間130万人もの人が来る!』と書かれてあり、北海道旭川市の旭山動物園の美術館版ともいわれている金沢21世紀美術館の取り組みが紹介されている本である。
とある人に「文化で飯が食えるか!」と言われたことがあるが、この本でははっきり言っている。「文化で街をつくり」、「文化が経済を支える」とまで述べているのは痛快であり、実践事例を交えて述べられており説得力が非常に高く納得することが多い。
翻って市中の美術館や博物館などを見てみよう。多くのお客を集めるのは企画展示であり、常設展ではほとんどお客が見られず、なおかつ赤字垂れ流しの温床とまでいわれ、行政改革の流れで「税金のムダ」「お荷物」とまで思われたり、へたしたら公然と「廃止」と言われている施設すらある。
この本の著者は、「街が美術館をつくり、経済が文化を支える」という従来の考え方をくつがえす必要があると訴えている。著者が実践した大阪市の市立美術館の企画展では、著者がフェルメールの作品展を企画したのだが、そのときにかかった費用は10億円。もちろん税金だ。これだけの大金を税金から出す限り、何としても街に恩返しをしなければならないと感じ、まずやったことが近隣の商店街を巻き込むことだった。
その結果、どうなったのか。最初は半信半疑の商店街の主も、みんな協力をすることになり、結果からいうと、美術館始まって以来の60万人という来館者数を記録し、毎日2時間待ちの列が出き、街が大いに潤うことになり、商店街の店舗は売り上げが2倍から3倍という声もあったそうである。そして、美術館がこれだけ街に影響力を及ぼすとは考えられなかったと感謝され、商店街との連携がすすんでいるということだ。
そんな実績に目をつけた金沢市長が三顧の礼で迎えたのが、この特任館長の著者である。まさしくヘッドハンティングであるが、やはりこういう「外部からの刺激」ということが大事であり、江戸時代の大名は競って名工と呼ばれる職人を自分たちの町に連れてきて住まわせていることからも、やはり有効なことなのだろうと思われるが、この著者のやり方は実に地域づくりの視点そのものである。
ただ、これだけのことが大阪や中核市である金沢でできたとしても、果たして満足に予算のない小さな自治体のミュージアムでできるのかという課題が浮かんでくるが、そこもやはり「知恵の絞りよう」ということなのだろう。ミュージアムによる地域づくり、なかなか奥が深いものであり、ミュージアム関係者、特に学芸員諸君には自分の研究ばかりするのではなく、地域活性化のための視点をもって、地域の中のミュージアムを目指す取り組みをしていってもらいたいものだ。
