金御岳(宮崎県都城市)の坂道ウォーキングは登り降りで約一時間程だ。この山は低く地味だが、息が少し上がる有酸素運動と筋トレ効果の一挙両得な上に、清らかで美しい森林浴が年中無休で無料という付加価値がつく。低く歩きやすい山なので毎日通える事と登り降りのあるメリハリウオーキングで病みつきになった。でも一番の魅力は一時間程の有酸素運動で数多くの嬉しい効果が期待出来るところである。
「脳が生まれ変わる魔法のウォーキング」の佐藤富雄氏によるとウォーキングは毎日一時間以上が効果を出せると言う。有酸素運動で脳がホルモンを分泌する時間として一時間程度がちょうど良いそうだ。歩き始めて15分程すると快感ホルモンのドーパミンやベータエンドルフィンの分泌、40分程で幸福ホルモンのセロトニンの分泌が始まる。更に駄目押しがサイトカインと言うホルモンの分泌だ。このホルモンは免疫力を上げ、細胞の新陳代謝を活発にする。「魔法のウォーキング」では平地歩きが紹介されていて1秒に2歩の歩きだから、脈拍が少し上がる事になる。山坂歩きは早足ではないが、平地より脈拍はさらに上がり、しかも筋トレ効果も3倍高くなる。これはより一層効果的なウォーキングになる。山坂達者にはなんとも心強いご褒美がつくのだ。
金御岳登山に通い始めた頃、坂道を颯爽と歩く初老の男性に追い越された。軽やかな素敵な後ろ姿だった。もう一人は50代の筋骨隆々の男性で、にこやかに余裕で駆け上がって来たから、もっと驚いた。ほう、山坂ウォーキングにはこれもありなのだ、と妙に嬉しくなったものである。この方に後日お話を伺ったところ、「何回通ってもこの山はやはりこたえる」のだそうだ。そう言えば金御岳ウォーキングのお馴染みさんの合言葉は「苦しいけど楽しい」である。この「苦楽」に脳のホルモンが関わっているかも知れない。登り始めのキツサがだんだん苦でなくなるのはもしかして、「ウォーキングハイ」の快感ホルモンが効いてくるせいだろうか。降りる時の開放感、達成感は幸福ホルモンのセロトニンが背中を押しているせいかも。更に有酸素運動は脳の海馬の神経組織をも飛躍的に増やすそうだ。海馬は認知症予防にもなるのだが、この効き目は28時間と言う。ピンピンコロリ運動はやはり毎日がお勧めである。山坂達者の修行にはお天道様と魔法の薬がついているようだ。
三月も終わる頃になると天然ジムは山桜が満開になる。新緑の木々が森を鮮やかに彩り、鶯の独唱も山の木霊と響きあう。鳥も人間も多分猪達もこの極上の空間をお互い仲良く共有して生きていくことだろう。いつでも気軽に通えるうちの山が今ここにあると思うだけで、私はいつもとても幸せだ。山坂達者には若返りのホルモンのご利益もつくに違いない。姥桜もまだまだ現役。自分にだけは負けていられない。当面駆け上がりは無理かもしれないが、颯爽と軽々と闊歩する位まではどうにか出来そうだ。今度、人がいない時にちょっとやってみる気でいる。