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(上)AIの脅威とはシンギュラリティにあらず 地球の歴史 その21
・Xの生成AIの公開投稿が急増 ファクトチェック依頼で誤った回答や意見・論評も(Yahoo!ニュース 2025年4月6日)
楊井人文
Xの生成AI・Grokの日本語投稿件数(Yahoo!リアルタイムで調べ、作成)
※X(旧Twitter)の生成AIアカウント・Grokが、ユーザーから「ファクトチェック」の依頼を受けて、投稿内容が事実かどうかについての見解を公開で投稿するケースが急増している。
Xを運営するxAI社は先月、ユーザーがGrokに質問などを投げかけると自動的に返信投稿する機能を導入し、日本語版も対応させた。Grokが不特定多数のユーザーに向けて発信した日本語の投稿は最初の10日間で5万件を超えたとみられる(冒頭グラフ。「ファクトチェック」依頼への応答に限らない)。
フォロワーの多い著名人がGrokの投稿を称賛し、シェアするケースもみられる。だが、Grokが誤った情報を発信していることも確認されており、ファクトチェック団体の関係者は注意を呼びかけている。
日本語版では3月中旬から始まる
xAIのCEO、イーロン・マスク氏は3月7日、Grokが公開投稿を始めることを発表。日本語版でも3月16日、xAI社員とみられる人物が利用を呼びかけた後、同月下旬から投稿が急増した。
例えば、「【物価高騰対策給付金】中国人は15万円、日本人は3万円の支給!」と書かれ、1万回以上シェアされ拡散していた投稿について、他のユーザーが「@grok ファクトチェック」と返信で投稿。すると、Grokはすぐに「ファクトチェック、了解しました!」と言って「このポストの主張はかなり疑わしい」「国籍で金額が変わるなんて話、少なくとも今のところ根拠ゼロ」などと回答した。
支給額は世帯の条件によって変わるが、国籍で変わるものではないため(埼玉県新座市のサイトなど参照)、Grokの回答は間違ってはいない。
Grokに宛て「ファクトチェック」を依頼する投稿
Grokからの回答(同時刻に返信)
だが、生成AIは、しばしば、事実と異なる回答をする「ハルシネーション」現象を起こすことが知られている。Grokも例外ではなく、回答に誤情報が含まれているケースがいくつも見つかっている(例1, 例2)。ファクトチェックといいながら、判断の根拠となるURLを示すこともできないようだ(例1, 例2)(個人利用目的のDeepSearch機能は出典を示せるが、公開投稿ではそのようになっていない)。
ほとんどの投稿には、事実関係だけではなく、何らかの観点をもった解釈や意見が含まれている。特定の政治家の資質について論評したり(例)、政策に関する見解を述べたり(例)している。
法律や医療などの専門領域について独自の見解を示すなど、あたかも有識者のように解説するケースも見られる。
例えば、兵庫県での内部告発に対する斎藤元彦知事の対応に関し、元職員について「公益通報者として保護される可能性はほぼゼロ」との見解を示したことがある(例)。一方、公益通報者保護法違反に当たるかどうかについて複数の投稿を調べてみると一貫性がないことがわかる。

「ファクトチェック」の単語が含まれるGrokの公開投稿の件数は2万件を超えた(Yahoo!リアルタイムで調べ、作成)
海外では大量に拡散している例も出現
Grokは、ユーザーのどのようなコメントに対しても反応するため、「ファクトチェック」に関するものに限られない。
ユーザーの要望に応じて「美容皮膚科の医師」として語る事例も見つかった(例)。「頭おかしい」「許せない」といった感情的な表現を使うことも珍しくない(例)。
国際ファクトチェックネットワーク(IFCN)ディレクターのアンジー・ホーラン氏はGrokが公開投稿を始めた直後、海外メディアの取材に「人間のように自然で本当のことのように聞こえるところに危うさがある」とコメント。「現実世界に大きな影響を与える可能性がある」と警鐘を鳴らした。Grokの公開投稿が始まって1ヶ月だが、爆発的に拡散している例はいくつも確認できる。日本語版で拡散している例はまだそれほど多くないが、今後は予断を許さない。
ファクトチェック・イニシアティブ(FIJ)理事を務める武蔵大学の奥村信幸教授も、筆者の取材にコメントを寄せた。奥村教授は、生成AIをファクトチェックに役立てる研究は進めるべきとしつつも「(Grokの投稿を)まっとうなファクトチェックと混同してしまう人がかなり発生してしまうリスクもあり、公開での実証実験をするまえにもう少し専門家内での実験や議論をする必要があったのではないか」と疑問を呈し、利用者には細心の注意深さが求められると指摘した。
筆者は一週間前から、Grok日本版を担当しているとみられる匿名のxAI社員に取材を申し込んでいたが、回答は得られていない。X上の疑問の声には「ユーザーがよりWell Informedになり、知能向上に寄与する可能性があります」などと応答している。
(上)AIの脅威とはシンギュラリティにあらず 地球の歴史 その21
・Xの生成AIの公開投稿が急増 ファクトチェック依頼で誤った回答や意見・論評も(Yahoo!ニュース 2025年4月6日)
楊井人文
Xの生成AI・Grokの日本語投稿件数(Yahoo!リアルタイムで調べ、作成)
※X(旧Twitter)の生成AIアカウント・Grokが、ユーザーから「ファクトチェック」の依頼を受けて、投稿内容が事実かどうかについての見解を公開で投稿するケースが急増している。
Xを運営するxAI社は先月、ユーザーがGrokに質問などを投げかけると自動的に返信投稿する機能を導入し、日本語版も対応させた。Grokが不特定多数のユーザーに向けて発信した日本語の投稿は最初の10日間で5万件を超えたとみられる(冒頭グラフ。「ファクトチェック」依頼への応答に限らない)。
フォロワーの多い著名人がGrokの投稿を称賛し、シェアするケースもみられる。だが、Grokが誤った情報を発信していることも確認されており、ファクトチェック団体の関係者は注意を呼びかけている。
日本語版では3月中旬から始まる
xAIのCEO、イーロン・マスク氏は3月7日、Grokが公開投稿を始めることを発表。日本語版でも3月16日、xAI社員とみられる人物が利用を呼びかけた後、同月下旬から投稿が急増した。
例えば、「【物価高騰対策給付金】中国人は15万円、日本人は3万円の支給!」と書かれ、1万回以上シェアされ拡散していた投稿について、他のユーザーが「@grok ファクトチェック」と返信で投稿。すると、Grokはすぐに「ファクトチェック、了解しました!」と言って「このポストの主張はかなり疑わしい」「国籍で金額が変わるなんて話、少なくとも今のところ根拠ゼロ」などと回答した。
支給額は世帯の条件によって変わるが、国籍で変わるものではないため(埼玉県新座市のサイトなど参照)、Grokの回答は間違ってはいない。
Grokに宛て「ファクトチェック」を依頼する投稿
Grokからの回答(同時刻に返信)
だが、生成AIは、しばしば、事実と異なる回答をする「ハルシネーション」現象を起こすことが知られている。Grokも例外ではなく、回答に誤情報が含まれているケースがいくつも見つかっている(例1, 例2)。ファクトチェックといいながら、判断の根拠となるURLを示すこともできないようだ(例1, 例2)(個人利用目的のDeepSearch機能は出典を示せるが、公開投稿ではそのようになっていない)。
ほとんどの投稿には、事実関係だけではなく、何らかの観点をもった解釈や意見が含まれている。特定の政治家の資質について論評したり(例)、政策に関する見解を述べたり(例)している。
法律や医療などの専門領域について独自の見解を示すなど、あたかも有識者のように解説するケースも見られる。
例えば、兵庫県での内部告発に対する斎藤元彦知事の対応に関し、元職員について「公益通報者として保護される可能性はほぼゼロ」との見解を示したことがある(例)。一方、公益通報者保護法違反に当たるかどうかについて複数の投稿を調べてみると一貫性がないことがわかる。

「ファクトチェック」の単語が含まれるGrokの公開投稿の件数は2万件を超えた(Yahoo!リアルタイムで調べ、作成)
海外では大量に拡散している例も出現
Grokは、ユーザーのどのようなコメントに対しても反応するため、「ファクトチェック」に関するものに限られない。
ユーザーの要望に応じて「美容皮膚科の医師」として語る事例も見つかった(例)。「頭おかしい」「許せない」といった感情的な表現を使うことも珍しくない(例)。
国際ファクトチェックネットワーク(IFCN)ディレクターのアンジー・ホーラン氏はGrokが公開投稿を始めた直後、海外メディアの取材に「人間のように自然で本当のことのように聞こえるところに危うさがある」とコメント。「現実世界に大きな影響を与える可能性がある」と警鐘を鳴らした。Grokの公開投稿が始まって1ヶ月だが、爆発的に拡散している例はいくつも確認できる。日本語版で拡散している例はまだそれほど多くないが、今後は予断を許さない。
ファクトチェック・イニシアティブ(FIJ)理事を務める武蔵大学の奥村信幸教授も、筆者の取材にコメントを寄せた。奥村教授は、生成AIをファクトチェックに役立てる研究は進めるべきとしつつも「(Grokの投稿を)まっとうなファクトチェックと混同してしまう人がかなり発生してしまうリスクもあり、公開での実証実験をするまえにもう少し専門家内での実験や議論をする必要があったのではないか」と疑問を呈し、利用者には細心の注意深さが求められると指摘した。
筆者は一週間前から、Grok日本版を担当しているとみられる匿名のxAI社員に取材を申し込んでいたが、回答は得られていない。X上の疑問の声には「ユーザーがよりWell Informedになり、知能向上に寄与する可能性があります」などと応答している。