・15年ぶりの「クリスチャン宰相」 18歳で洗礼受けた石破氏、一方で浄土宗や神道も敬う(産経ニュース 2024年10月7日)

※石破茂首相は18歳のときにプロテスタントの教会で洗礼を受けたキリスト教徒だ。クリスチャン宰相は、平成21年に首相を退任したカトリックの麻生太郎自民党最高顧問以来、15年ぶりとなる。首相は一方で浄土宗の檀家で、神道とも関係が深い。


「人間は神の前には塵芥」

石破首相の母方の曽祖父は明治から昭和にかけての牧師、金森通倫(1857~1945年)。金森は熊本洋学校の生徒でつくるキリスト教グループ「熊本バンド」のメンバーとして活動した後、同志社で新島襄から洗礼を受け、伝道活動を続けた。

4代目である石破首相は、鳥取から上京して慶応高校に通っていたとき、日本キリスト教会世田谷伝道所に所属し、日曜学校の教師も務めた。慶応大入学直前に日本基督教団鳥取教会で洗礼を受けた。

政治家になってから、キリスト教の集会やキリスト教メディアに度々登場している。あだむ書房「石破茂語録 主よ、用いてください」によると、今年4月27日に神戸市内で開かれた「日本国家祈祷会」で次のように語っている。

「議員になろうが大臣になろうが、人間というものは神の前には塵芥(ちりあくた)のような存在なのであって、できることは『罪人の私をお赦しください』ということと『御(み)心ならば御用のためにお用いください』ということしか究極、祈ることしかできないのではないかなと、日々思っているところです」


戦争なくすには「均衡」と「祈り」

また、キリスト教の教えと政治活動の葛藤について「自分たちが正しくて相手が間違っておるという演説はなるべくしないようにいたしております。私ども自民党が間違っていることはたくさんありますし、政治家も間違いだらけです。ただそのときに、相手がいかに駄目で、だから私たちを選んでくださいという言い方をしてはいかんと思います」と指摘。戦争をなくすには「バランス・オブ・パワー」と「平和のための祈り」の両方が大事だとしている。

地方創生担当相だった平成28年には「クリスチャントゥデイ」のインタビューに対し、「私が防衛庁長官だったときに、イラクへ自衛隊を派遣しました。その時も、昨年の安保法制の時も、キリスト者から猛烈な抗議が来ました。大変な抗議です」「正直に言うと、同じ信仰を持つキリスト者からの批判が本当に一番つらいです」と話していた。


浄光会と神道政治連盟

一方で、鳥取県知事や自治相を務めた父、石破二朗氏の家系は代々浄土宗。首相は浄土宗檀信徒の国会議員64人でつくる「浄光会」の会員で、選挙の際は浄土宗から推薦を受けている。「浄土宗新聞」には、今年1月24日に東京・芝公園の増上寺で開かれた浄光会総会で「南無阿弥陀仏」と念仏を唱える首相の写真が掲載されている。

鳥取県八頭町の和多理神社で、自民党総裁選への立候補を表明する石破氏=8月24日
鳥取県八頭町の和多理神社で、自民党総裁選への立候補を表明する石破氏=8月24日
一神教のキリスト教と、法然が開いた浄土宗の念仏の教えが両立するわけがないが、日本人的な宗教観と選挙対策だと思われる。

多くの自民党国会議員と同様に「神道政治連盟国会議員懇談会」の会員でもある。8月24日、鳥取県八頭町の和多理神社に参拝した後、社殿の前で自民党総裁選への出馬表明を行い、こう語った。

「ここは父祖の地。子供の頃、ここで夏祭りがあった。本当ににぎやかだった。子供たちも高齢者もみんな笑顔だった。今、人はいなくなり、夏祭りも行われなくなったが、もう一度、にぎやかな、みんなが笑顔で暮らせる日本を取り戻したい」



・麻生、石破、山谷えり子ら安倍政権にクリスチャンが多い理由(NEWSポストセブン 2013年2月2日)

※麻生太郎・副総理、石破茂・自民党幹事長、山谷えり子・政府開発援助特別委員長……いずれも安倍政権の中枢を担う保守政治家たちである。実は、彼らにはある共通点があることをご存じだろうか。

答えは、「クリスチャン」だ。国内の1%に満たないキリスト教徒が、なぜ政界にこれほど多いのか。その謎を追った。

キリスト教年鑑によれば、日本国内のキリスト教信者や聖職者は107万人で、人口比にしてわずか0.845%に過ぎない(2012年)。政治家のクリスチャンは、この比率からすると明らかに多い。

クリスチャンの文芸評論家、富岡幸一郎・関東学院大学文学部教授が分析する。

「人口ではわずか1%に満たなくても、高等教育を受けたエスタブリッシュメントにクリスチャンが多いからです。明治期にキリスト教が解禁された後、札幌農学校に赴任したクラーク博士の門下で内村鑑三氏や新渡戸稲造氏がクリスチャンとなり、彼らが後に旧制一高(東京大学教養学部の前身)で教職に就いたことで、旧帝大のエリート層にはキリスト教が定着します。

一方、関西ではNHK大河ドラマ『八重の桜』の主人公・新島八重の夫となる新島襄氏が同志社大学を設立してキリスト教を布教します。戦後、アメリカ文化とキリスト教が密接に結びつく中、そこで高等教育を受けた人々が政界に進出し、その結果としてクリスチャン政治家が増えていった」

麻生氏の祖母、雪子さんは牧野伸顕・元外相の娘にあたるが、牧野氏は新渡戸氏を旧制一高の校長に推薦した人物だ。石破氏の曾祖父、金森通倫氏は同志社で新島氏からキリスト教の洗礼を受けた。麻生、石破両氏は、明治期に広がった“東西のエスタブリッシュメント系クリスチャンの本流”に属しているといえよう。

また、新渡戸門下だった南原繁氏、矢内原忠雄氏というクリスチャン教育者が、戦後立て続けに東京大学総長に就いたこともあり、東大出身者、とりわけ官僚にはいまでもクリスチャンの割合が高い。

民主党のクリスチャン議員はいう。

「国会では、米国でクリスチャン議員がやっている『朝の祈りの会』を日本でやろうということで始まった会を月一回で開催しているが、ここには議員だけではなく、財界人や官僚OBも集い、かなり幅広い情報交換をしている。

財務省OBが事務局のような役割を担い、聖書の勉強だけではなく、政策の議論もするし、大震災のときは支援についても話し合いました。クリスチャンではないが谷垣さんもこの会の中心で、キリスト教をきっかけにした一種のサロンのようになっています」

※週刊ポスト2013年2月1日号