以下「櫻井ジャーナル」様より転載
https://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/202412210000/
・「大イスラエル構想」と「オスマン帝国構想」は衝突するのか
2024.12.21

※11月27日にシリア軍を奇襲攻撃、バシャール・アル・アサド政権を倒したハヤト・タハリール・アル・シャム(HTS)はトルコの支援を受けていたが、その歴史を辿るとアル・カイダ系だということがわかる。アル・カイダとはロビン・クック元英外相が2005年7月に説明したように、CIAの訓練を受けた「ムジャヒディン」の登録リスト。つまり共通の政治的な目的を持つ集団でなく、カネ目当ての傭兵にほかならない。
アメリカのバラク・オバマ政権はムスリム同胞団やアル・カイダ系武装集団を使い、2011年3月からシリアに対する軍事侵攻を始めたが、リビアと違って倒せない。そこでサダム・フセイン体制の兵士を吸収して新たな武装集団ダーイッシュ(IS、ISIS、ISIL、イスラム国とも表記)を編成したが、2015年にシリア政府の要請を受けたロシアが軍事介入して西側の計画は潰された。
オバマ政権が2010年8月に承認した「PSD(大統領研究指針)11」で「アラブの春」を始めたが、ロラン・デュマ元仏外相によると、09年にイギリスを訪問した際、イギリス政府の高官からシリアで工作の準備をしていると告げられたという。「抑圧的なアサド政権に対する民衆のデモが勃発した2011年3月」に戦闘が始まったのではない。
アメリカは2017年10からシリアとの貿易を全面的に禁止するなど経済封鎖を開始、国連がシリアの復興に参加することも禁止されている。その兵糧攻めが有効で、アサド政権はイラクのフセイン体制と同じように崩壊したと言えるだろう。
イランの最高指導者であるアリ・ハメネイ師はシリアのバシャール・アル・アサド政権の崩壊について、アメリカとイスラエルの司令室で計画されたことに疑いの余地はないと12月11日に語っている。
アブ・ムハンマド・アル・ジュラニがHTSの指導者とされているが、この人物にしても雇い主の命令に従っているだけ。アサド政権の崩壊が決定的になった頃から、アル・ジュラニはヨーロッパ風のシャツに着替えてイメージ・チェンジを図った。
さまざまな人がアサド政権が簡単に崩壊した理由を分析しているが、いずれにしろ、ガザの住民を虐殺しているイスラエルと戦うヒズボラの兵站線がダメージを受けたことは間違いない。
そのイスラエル軍はシリア領内に対する大規模な空爆を実施、最初の数日で、450回以上の空爆を実施、さらに地上部隊を軍事侵攻させ、ダマスカスに迫っているようだが、アル・ジュラニはシリアからイスラエルを攻撃することを許さないと語り、ガザでの虐殺に触れない。ゴラン高原でもイスラエル軍は占領地を拡大しているのだが、その地下に石油があるとイスラエルの地質学者は判断している。
アメリカやイギリスもこれまでHTSをテロ組織だと指定され、アメリカでは1000万ドルの懸賞金をかけられていたが、すでに西側の同盟者として扱われはじめている。アサド政権の打倒によってアル・カイダ系傭兵の役割は終了、西側の傀儡政権を樹立させようとしているのだろうが、その思惑通りに進むかどうかは不明だ。
ズビグネフ・ブレジンスキーがアル・カイダという傭兵システムを作ったのは1970年代のこと。ソ連軍をアフガニスタンへ誘い込み、ジハード傭兵と戦わせた。ソ連軍が撤退した後、アメリカの傀儡政権としてタリバーンを組織したのだが、石油利権でアメリカの巨大資本と対立、今ではアメリカから敵視されている。雇い主の敵と戦うという役割が終わると、制御が難しくなるようだ。そうしたことがシリアでも起こる可能性がある。
すでにHTSの内部では派閥抗争が始まり、人びとの自由が侵害され、社会は混乱し、略奪、そして路上での処刑が横行していると伝えられている。アサド政権が守ってきたキリスト教徒は特に恐怖を感じているだろう。
さらに、シリアという緩衝地帯の消滅により、今後、スンニ派とシーア派、あるいはトルコとイスラエルが直接衝突する可能性が高まると見られている。HTSが拠点にしていたイドリブには約3万人のウイグル人がいてトルコの軍事訓練を受け、今回のシリア攻撃でも重要な役割を果たしたと言われている。中国にとっても人ごとではない。
そこにアメリカをはじめとする欧米諸国の歴史的な欲望が加わり、混乱を予想する人もいる。中東がバルカン化して混乱することは好ましいとイギリスの支配層は考えていた。
イギリス/シオニストは「大イスラエル構想」、トルコは「オスマン帝国構想」を持っているとも言われているが、そうした構想が共存できるとは思えない。
以下「櫻井ジャーナル」様より転載
https://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/202501090000/
・米国が引き起こした戦乱はエネルギー資源が深く関係している
2025.01.09
※ウクライナ、シリア、ガザ、いずれの戦乱ともエネルギー資源が深く関係している。
ウクライナの戦乱は2013年11月、ユーロマイダンで始まったカーニバル的な集まりから始まった。ロシア軍云々と西側の有力メディアは主張し続けているが、これは事実に反したプロパガンダにすぎない。
2014年に入るとステパン・バンデラを信奉するネオ・ナチのグループが前面に現れて様相は一変。2月に入るとそのメンバーはチェーン、ナイフ、棍棒を手に石や火炎瓶を投げ始め、さらにトラクターやトラックを持ち出す。
2月中旬になると広場で無差別の狙撃が始まり、抗議活動の参加者も警官隊も狙われている。西側の政府やメディアはビクトル・ヤヌコビッチ大統領が狙撃の黒幕だと宣伝していたが、後にネオ・ナチのアンドレイ・パルビーが指揮していたことが判明。2月25日にキエフ入りして調査したエストニアのウルマス・パエト外相もネオ・ナチが実行した可能性が高いと報告している。
ネオ・ナチを操っていたのはアメリカのバラク・オバマ政権。クーデターでウクライナをアメリカの属国にすることが目的であり、ロシアから見ると新たなバルバロッサ作戦の始まりだ。
1991年12月にソ連が消滅するが、その前、90年にウクライナ議会はソ連からの独立を可決した。それに対し、南部のクリミアでは91年1月にウクライナからの独立を問う住民投票を実施、94%以上が賛成している。西側はウクライナ議会の議決を承認する一方、クリミアの議決を拒否した。クリミアを含む南部、そしてロシアに近い東部はロシア文化圏に属し、住民の大半は自分たちをロシア人だと考えていた。
そうした状況だったことから独立を宣言した後のウクライナは中立を掲げるのだが、それは西側の支配層にとって受け入れ難いことだった。そこで、中立政策を潰すためにアメリカはオレンジ革命、そしてネオ・ナチを使ったクーデターを仕掛けたのだ。ウクライナを自分たちの属国にするひとつの理由はロシアに対する軍事的な圧力を強めることにあったが、それ以外にも目的があった。
アメリカにとってヨーロッパは自分たちの属国なのだが、当時、ロシアとの関係を強めていた。ヨーロッパとロシアを結びつけていたのは天然ガスにほかならない。その天然ガスを輸送するパイプラインの多くはウクライナを通過、そこで、ウクライナを制圧することで天然ガスの輸送をアメリカが管理することができる。

クーデター後、ベラルーシとポーランドを経由してドイツへつながるヤマル-ヨーロッパ・パイプライン、ウクライナを経由するソユーズ・パイプラインがアメリカによって寸断された。
それに対し、ロシアとドイツはウクライナを迂回するパイプラインのプロジェクトがあった。1997年にスタートしたノード・ストリームである。最初のパイプランは2011年11月に、また次のラインは翌年の10月に完成した。オバマ政権がクーデターを実行する前の話である。これが「ノルド・ストリーム1」だ。
輸送力を増強するため、2018年位は新たなパイプラインの建設が始まり、21年9月に完成するが、ドイツのオラフ・ショルツ首相は認証しない。2022年9月には「ノード・ストリーム1」と「ノード・ストリーム2」は爆破されてしまう。
ふたつのパイプラインの破壊をアメリカ政府は予告していた。例えばビクトリア・ヌランド国務次官は2022年1月27日、ロシアがウクライナを侵略したらノード・ストリーム2は前進しないと発言、同年2月7日にはジョー・バイデン大統領がノード・ストリーム2を終わらせると主張、記者に実行を約束している。
調査ジャーナリストのシーモア・ハーシュは2023年2月8日、アメリカ海軍のダイバーがノルウェーの手を借りてノードストリームを爆破したとする記事を発表した。工作の拠点はノルウェーだという。ハーシュによると、ジョー・バイデン米大統領は2021年後半にジェイク・サリバン国家安全保障補佐官を中心とする対ロシア工作のためのチームを編成し、その中には統合参謀本部、CIA、国務省、そして財務省の代表が参加している。12月にはどのような工作を実行するか話し合い、2022年初頭にはCIAがサリバンのチームに対し、パイプライン爆破を具申した。
ノルウェー海軍はアメリカと連携、デンマークのボーンホルム島から数キロメートル離れたバルト海の浅瀬で3本のパイプラインにプラスチック爆弾C4を設置、2022年9月26日にノルウェー海軍のP8偵察機が一ソナーブイを投下、信号はノード・ストリーム1とノード・ストリーム2に伝わり、数時間後に爆発したという。
バラク・オバマ大統領は2010年8月にPSD-11を承認、ムスリム同胞団を利用し、地中海の南部や東部の沿岸で体制転覆プロジェクトを始めた。いわゆる「アラブの春」だ。2011年2月にはリビア、そして同年3月にはシリアを傭兵に攻撃させている。傭兵の主力はサラフィ主義者やムスリム同胞団で、アル・カイダ系武装集団とも言える。ハヤト・タハリール・アル・シャム(HTS)もその流れだ。
シリアへの軍事侵略にはアメリカのほか、サイクス・ピコ協定コンビのイギリスやフランス、ムスリム同胞団と関係が深いカタールやトルコが関係している。
このうちカタールとトルコはシリア経由でカタール産天然ガスを運ぶパイプラインを建設する計画を立てていたのだが、同じ時期にイラン産天然ガスをイラクとシリアを経由してヨーロッパへパイプラインで運ぶ計画があり、シリアはカタールとトルコの計画を拒否した。カタールとトルコがシリア侵略に加担した理由のひとつはここにあるとされている。


イスラエルはガザを攻撃、すでに4万5338名のパレスチナ人を殺害している。そのうち約4割が子どもであり、女性を含めると約7割に達し、そのほか医療関係者やジャーナリストも狙われている。
ガザでの戦闘は2023年10月7日に始まったが、同年4月にイスラエルの警官隊がイスラムの聖地であるアル・アクサ・モスクへ突入している。その年の10月3日にはイスラエル軍に保護されながら同じモスクへ832人のイスラエル人が侵入してイスラム教徒を挑発、そして10月7日のハマスによる「奇襲攻撃」に繋がった。
ガザ沖に推定埋蔵量約4500億立方メートルの大規模なガス田を存在するとノーブル・エナジーが発表したのは2010年のことだった。USGS(アメリカ地質調査所)の推定によると、エジプトからギリシャにかけての海域には9兆8000億立方メートルの天然ガスと34億バーレルの原油が眠っている。ビル・クリントン元米大統領はノーブル・エナジーのロビイストだ。
10月7日にハマスがイスラエルを攻撃した直後、ベンヤミン・ネタニヤフ首相は「われわれの聖書(キリスト教における「旧約聖書」と重なる)」を持ち出した。聖書の中でユダヤ人と敵だとされている「アマレク人があなたたちにしたことを思い出しなさい」(申命記25章17節から19節)という部分を彼は引用、「アマレク人」をイスラエルが敵視しているパレスチナ人に重ねたのである。その記述の中で、「アマレク人」を家畜と一緒に殺した後、「イスラエルの民」は「天の下からアマレクの記憶を消し去る」ことを神は命じている。
サムエル記上15章3節には「アマレクを討ち、アマレクに属するものは一切滅ぼし尽くせ。男も女も、子供も乳飲み子も牛も羊も、らくだもろばも打ち殺せ。容赦してはならない。」と書かれている。これこそがガザでイスラエルによって行われていることだと言えるだろう。ネタニヤフによると「われわれは光の民であり、彼らは闇の民」なのである。
いずれの戦乱ともエネルギー資源が関係している。アメリカがベネズエラを執拗に乗っ取ろうとしている理由もそこにあるだろう。ウクライナは現在、そのエネルギー資源を使い、ヨーロッパを恫喝、EU加盟国との関係が悪化している。アメリカからの圧力にもかかわらず、ロシアは今でもヨーロッパにとって重要な天然ガス供給国なのだが、その供給を止めたなら、ヨーロッパは衰退で止まらず、崩壊する可能性がある。
以下「櫻井ジャーナル」様より転載
https://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/202501110000/
・イスラエルにパレスチナ人を虐殺させているのは米英独を含む西側諸国
2025.01.11
著名な医学雑誌「ランセット」は1月9日、2023年10月7日から24年6月30日までの間にガザで外傷によって死亡した人数の推計値が6万4260人に達し、そのうち女性、18歳未満、65歳以上が59.1%だとする論文を発表した。ガザの保健省は24年6月30日時点の戦争による死亡者数を3万7877人と報告しているが、これはランセットの推計値の59%にすぎないということ。この時点で国連などは1万人以上の遺体が瓦礫の下に埋まっていると推定されていた。病気、あるいは飢餓で死亡する人は戦闘で殺される人よりも多いと見られている。非戦闘員の犠牲者が多い理由は、イスラエルがそうした人びとを狙っているからにほかならない。現在、4万5338名が殺されたと言われているので、それにランセットの推計を適用すると7万7000人近くになる。
ガザで戦闘が始まった直後、ベンヤミン・ネタニヤフ首相は「われわれの聖書(キリスト教における「旧約聖書」と重なる)」を持ち出し、その中でユダヤ人と敵だとされている「アマレク人」を家畜と一緒に殺した後、「イスラエルの民」は「天の下からアマレクの記憶を消し去る」ことを神は命じたと主張、パレスチナ人虐殺を正当化している。
サムエル記上15章3節には「アマレクを討ち、アマレクに属するものは一切滅ぼし尽くせ。男も女も、子供も乳飲み子も牛も羊も、らくだもろばも打ち殺せ。容赦してはならない。」と書かれている。これこそがガザでイスラエルによって行われていることだと言えるだろう。ネタニヤフによると「われわれは光の民であり、彼らは闇の民」なのである。
そうした中、ローマ教皇フランシスコは2023年12月21日、ガザでの爆撃は残虐行為であり、戦争ではないと非難、ピエルバティスタ・ピッツァバラ枢機卿がガザへ入れなかったことを批判した。22日にイスラエル当局は枢機卿のガザ入りを許可したが、その日、教皇はイスラエルがガザで続けている子どもの虐殺を改めて非難している。
今年1月10日にジョー・バイデン米大統領はローマ教皇庁を訪問する予定になっていた。アイルランド系でカトリック教徒の家に生まれた人物が大統領に就任したのはジョン・F・ケネディ以来だが、行ったことは正反対だった。その彼が教皇庁訪問をキャンセルしたようだ。バイデンがバチカンを訪問した場合、教皇フランシスコはイスラエルによるガザでの虐殺、そしてその虐殺を支援しているバイデン政権を非難しなければならなかった。教皇もバイデンも訪問を中止したかっただろうと考えられている。
イスラエルは生活物資や軍事物資を国外からの支援に頼っている。そうした支援をする国や団体が存在しなければ、破壊、殺戮、略奪という三光作戦を実行することは不可能だ。SIPRI(ストックホルム国際平和研究所)によると、軍事物資の69%はアメリカから、30%はドイツから供給されている。輸送などでの支援にイギリスが果たしている役割も小さくない。この3カ国の責任は特に重い。
中東で戦火が燃え上がったのは2003年3月のことだ。ジョージ・W・ブッシュ政権がアメリカ主導軍にイラクを先制攻撃させ、サダム・フセイン体制を倒したのだ。侵略の口実として「大量破壊兵器」が使われたが、これは嘘だった。当初の予定ではイラクに親イスラエル体制を築くことになっていたが、これは失敗に終わる。
この侵略に対し、ギリシャ正教総主教区の公式広報官を務めていたテオドシオス・ハンナ大修道院長はアメリカのジョージ・W・ブッシュ大統領、ドナルド・ラムズフェルド国防長官、イギリスのトニー・ブレア首相、ジャック・ストロー外相がキリスト教の聖地、エルサレムの聖誕教会へ入ることを禁じた。この政治家たちをハンナらは破門し、堕落者とみなしたという。この事実を西側の有力メディアは大半が無視したが、イギリスのインディペンデント紙はイスラムの動きに絡め、固有名詞抜きで簡単に触れている。
シリアに対する外部勢力の軍事作戦が始まった翌年の6月、シリアへ入って調査したメルキト・ギリシャ典礼カトリック教会のフィリップ・トゥルニョル・クロス大主教はローマ教皇庁のフィデス通信に対し、「誰もが真実を語ればシリアの平和は守られる。紛争の1年後、現地の現実は、西側メディアの偽情報が押し付けるイメージとはかけ離れている」と報告している。それ以降、現在に至るまで西側の有力メディアは真実を語ろうとしていない。イスラエル絡みだけではないのだ。
自国軍を投入したジョージ・W・ブッシュ大統領とは違い、バラク・オバマ大統領は2010年8月にPSD-11を承認してムスリム同胞団やサラフィ主義者(ワッハーブ派、タクフィール主義者)を傭兵として使い、体制転覆プロジェクトを始めた。リビアやシリアもそのターゲット国だった。西側では「自由の戦士」扱いのHTS(ハヤト・タハリール・アル・シャム)やRCA(革命コマンド軍)も基本的にそうした傭兵集団だと言える
https://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/202412210000/
・「大イスラエル構想」と「オスマン帝国構想」は衝突するのか
2024.12.21

※11月27日にシリア軍を奇襲攻撃、バシャール・アル・アサド政権を倒したハヤト・タハリール・アル・シャム(HTS)はトルコの支援を受けていたが、その歴史を辿るとアル・カイダ系だということがわかる。アル・カイダとはロビン・クック元英外相が2005年7月に説明したように、CIAの訓練を受けた「ムジャヒディン」の登録リスト。つまり共通の政治的な目的を持つ集団でなく、カネ目当ての傭兵にほかならない。
アメリカのバラク・オバマ政権はムスリム同胞団やアル・カイダ系武装集団を使い、2011年3月からシリアに対する軍事侵攻を始めたが、リビアと違って倒せない。そこでサダム・フセイン体制の兵士を吸収して新たな武装集団ダーイッシュ(IS、ISIS、ISIL、イスラム国とも表記)を編成したが、2015年にシリア政府の要請を受けたロシアが軍事介入して西側の計画は潰された。
オバマ政権が2010年8月に承認した「PSD(大統領研究指針)11」で「アラブの春」を始めたが、ロラン・デュマ元仏外相によると、09年にイギリスを訪問した際、イギリス政府の高官からシリアで工作の準備をしていると告げられたという。「抑圧的なアサド政権に対する民衆のデモが勃発した2011年3月」に戦闘が始まったのではない。
アメリカは2017年10からシリアとの貿易を全面的に禁止するなど経済封鎖を開始、国連がシリアの復興に参加することも禁止されている。その兵糧攻めが有効で、アサド政権はイラクのフセイン体制と同じように崩壊したと言えるだろう。
イランの最高指導者であるアリ・ハメネイ師はシリアのバシャール・アル・アサド政権の崩壊について、アメリカとイスラエルの司令室で計画されたことに疑いの余地はないと12月11日に語っている。
アブ・ムハンマド・アル・ジュラニがHTSの指導者とされているが、この人物にしても雇い主の命令に従っているだけ。アサド政権の崩壊が決定的になった頃から、アル・ジュラニはヨーロッパ風のシャツに着替えてイメージ・チェンジを図った。
さまざまな人がアサド政権が簡単に崩壊した理由を分析しているが、いずれにしろ、ガザの住民を虐殺しているイスラエルと戦うヒズボラの兵站線がダメージを受けたことは間違いない。
そのイスラエル軍はシリア領内に対する大規模な空爆を実施、最初の数日で、450回以上の空爆を実施、さらに地上部隊を軍事侵攻させ、ダマスカスに迫っているようだが、アル・ジュラニはシリアからイスラエルを攻撃することを許さないと語り、ガザでの虐殺に触れない。ゴラン高原でもイスラエル軍は占領地を拡大しているのだが、その地下に石油があるとイスラエルの地質学者は判断している。
アメリカやイギリスもこれまでHTSをテロ組織だと指定され、アメリカでは1000万ドルの懸賞金をかけられていたが、すでに西側の同盟者として扱われはじめている。アサド政権の打倒によってアル・カイダ系傭兵の役割は終了、西側の傀儡政権を樹立させようとしているのだろうが、その思惑通りに進むかどうかは不明だ。
ズビグネフ・ブレジンスキーがアル・カイダという傭兵システムを作ったのは1970年代のこと。ソ連軍をアフガニスタンへ誘い込み、ジハード傭兵と戦わせた。ソ連軍が撤退した後、アメリカの傀儡政権としてタリバーンを組織したのだが、石油利権でアメリカの巨大資本と対立、今ではアメリカから敵視されている。雇い主の敵と戦うという役割が終わると、制御が難しくなるようだ。そうしたことがシリアでも起こる可能性がある。
すでにHTSの内部では派閥抗争が始まり、人びとの自由が侵害され、社会は混乱し、略奪、そして路上での処刑が横行していると伝えられている。アサド政権が守ってきたキリスト教徒は特に恐怖を感じているだろう。
さらに、シリアという緩衝地帯の消滅により、今後、スンニ派とシーア派、あるいはトルコとイスラエルが直接衝突する可能性が高まると見られている。HTSが拠点にしていたイドリブには約3万人のウイグル人がいてトルコの軍事訓練を受け、今回のシリア攻撃でも重要な役割を果たしたと言われている。中国にとっても人ごとではない。
そこにアメリカをはじめとする欧米諸国の歴史的な欲望が加わり、混乱を予想する人もいる。中東がバルカン化して混乱することは好ましいとイギリスの支配層は考えていた。
イギリス/シオニストは「大イスラエル構想」、トルコは「オスマン帝国構想」を持っているとも言われているが、そうした構想が共存できるとは思えない。
以下「櫻井ジャーナル」様より転載
https://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/202501090000/
・米国が引き起こした戦乱はエネルギー資源が深く関係している
2025.01.09
※ウクライナ、シリア、ガザ、いずれの戦乱ともエネルギー資源が深く関係している。
ウクライナの戦乱は2013年11月、ユーロマイダンで始まったカーニバル的な集まりから始まった。ロシア軍云々と西側の有力メディアは主張し続けているが、これは事実に反したプロパガンダにすぎない。
2014年に入るとステパン・バンデラを信奉するネオ・ナチのグループが前面に現れて様相は一変。2月に入るとそのメンバーはチェーン、ナイフ、棍棒を手に石や火炎瓶を投げ始め、さらにトラクターやトラックを持ち出す。
2月中旬になると広場で無差別の狙撃が始まり、抗議活動の参加者も警官隊も狙われている。西側の政府やメディアはビクトル・ヤヌコビッチ大統領が狙撃の黒幕だと宣伝していたが、後にネオ・ナチのアンドレイ・パルビーが指揮していたことが判明。2月25日にキエフ入りして調査したエストニアのウルマス・パエト外相もネオ・ナチが実行した可能性が高いと報告している。
ネオ・ナチを操っていたのはアメリカのバラク・オバマ政権。クーデターでウクライナをアメリカの属国にすることが目的であり、ロシアから見ると新たなバルバロッサ作戦の始まりだ。
1991年12月にソ連が消滅するが、その前、90年にウクライナ議会はソ連からの独立を可決した。それに対し、南部のクリミアでは91年1月にウクライナからの独立を問う住民投票を実施、94%以上が賛成している。西側はウクライナ議会の議決を承認する一方、クリミアの議決を拒否した。クリミアを含む南部、そしてロシアに近い東部はロシア文化圏に属し、住民の大半は自分たちをロシア人だと考えていた。
そうした状況だったことから独立を宣言した後のウクライナは中立を掲げるのだが、それは西側の支配層にとって受け入れ難いことだった。そこで、中立政策を潰すためにアメリカはオレンジ革命、そしてネオ・ナチを使ったクーデターを仕掛けたのだ。ウクライナを自分たちの属国にするひとつの理由はロシアに対する軍事的な圧力を強めることにあったが、それ以外にも目的があった。
アメリカにとってヨーロッパは自分たちの属国なのだが、当時、ロシアとの関係を強めていた。ヨーロッパとロシアを結びつけていたのは天然ガスにほかならない。その天然ガスを輸送するパイプラインの多くはウクライナを通過、そこで、ウクライナを制圧することで天然ガスの輸送をアメリカが管理することができる。

クーデター後、ベラルーシとポーランドを経由してドイツへつながるヤマル-ヨーロッパ・パイプライン、ウクライナを経由するソユーズ・パイプラインがアメリカによって寸断された。
それに対し、ロシアとドイツはウクライナを迂回するパイプラインのプロジェクトがあった。1997年にスタートしたノード・ストリームである。最初のパイプランは2011年11月に、また次のラインは翌年の10月に完成した。オバマ政権がクーデターを実行する前の話である。これが「ノルド・ストリーム1」だ。
輸送力を増強するため、2018年位は新たなパイプラインの建設が始まり、21年9月に完成するが、ドイツのオラフ・ショルツ首相は認証しない。2022年9月には「ノード・ストリーム1」と「ノード・ストリーム2」は爆破されてしまう。
ふたつのパイプラインの破壊をアメリカ政府は予告していた。例えばビクトリア・ヌランド国務次官は2022年1月27日、ロシアがウクライナを侵略したらノード・ストリーム2は前進しないと発言、同年2月7日にはジョー・バイデン大統領がノード・ストリーム2を終わらせると主張、記者に実行を約束している。
調査ジャーナリストのシーモア・ハーシュは2023年2月8日、アメリカ海軍のダイバーがノルウェーの手を借りてノードストリームを爆破したとする記事を発表した。工作の拠点はノルウェーだという。ハーシュによると、ジョー・バイデン米大統領は2021年後半にジェイク・サリバン国家安全保障補佐官を中心とする対ロシア工作のためのチームを編成し、その中には統合参謀本部、CIA、国務省、そして財務省の代表が参加している。12月にはどのような工作を実行するか話し合い、2022年初頭にはCIAがサリバンのチームに対し、パイプライン爆破を具申した。
ノルウェー海軍はアメリカと連携、デンマークのボーンホルム島から数キロメートル離れたバルト海の浅瀬で3本のパイプラインにプラスチック爆弾C4を設置、2022年9月26日にノルウェー海軍のP8偵察機が一ソナーブイを投下、信号はノード・ストリーム1とノード・ストリーム2に伝わり、数時間後に爆発したという。
バラク・オバマ大統領は2010年8月にPSD-11を承認、ムスリム同胞団を利用し、地中海の南部や東部の沿岸で体制転覆プロジェクトを始めた。いわゆる「アラブの春」だ。2011年2月にはリビア、そして同年3月にはシリアを傭兵に攻撃させている。傭兵の主力はサラフィ主義者やムスリム同胞団で、アル・カイダ系武装集団とも言える。ハヤト・タハリール・アル・シャム(HTS)もその流れだ。
シリアへの軍事侵略にはアメリカのほか、サイクス・ピコ協定コンビのイギリスやフランス、ムスリム同胞団と関係が深いカタールやトルコが関係している。
このうちカタールとトルコはシリア経由でカタール産天然ガスを運ぶパイプラインを建設する計画を立てていたのだが、同じ時期にイラン産天然ガスをイラクとシリアを経由してヨーロッパへパイプラインで運ぶ計画があり、シリアはカタールとトルコの計画を拒否した。カタールとトルコがシリア侵略に加担した理由のひとつはここにあるとされている。


イスラエルはガザを攻撃、すでに4万5338名のパレスチナ人を殺害している。そのうち約4割が子どもであり、女性を含めると約7割に達し、そのほか医療関係者やジャーナリストも狙われている。
ガザでの戦闘は2023年10月7日に始まったが、同年4月にイスラエルの警官隊がイスラムの聖地であるアル・アクサ・モスクへ突入している。その年の10月3日にはイスラエル軍に保護されながら同じモスクへ832人のイスラエル人が侵入してイスラム教徒を挑発、そして10月7日のハマスによる「奇襲攻撃」に繋がった。
ガザ沖に推定埋蔵量約4500億立方メートルの大規模なガス田を存在するとノーブル・エナジーが発表したのは2010年のことだった。USGS(アメリカ地質調査所)の推定によると、エジプトからギリシャにかけての海域には9兆8000億立方メートルの天然ガスと34億バーレルの原油が眠っている。ビル・クリントン元米大統領はノーブル・エナジーのロビイストだ。
10月7日にハマスがイスラエルを攻撃した直後、ベンヤミン・ネタニヤフ首相は「われわれの聖書(キリスト教における「旧約聖書」と重なる)」を持ち出した。聖書の中でユダヤ人と敵だとされている「アマレク人があなたたちにしたことを思い出しなさい」(申命記25章17節から19節)という部分を彼は引用、「アマレク人」をイスラエルが敵視しているパレスチナ人に重ねたのである。その記述の中で、「アマレク人」を家畜と一緒に殺した後、「イスラエルの民」は「天の下からアマレクの記憶を消し去る」ことを神は命じている。
サムエル記上15章3節には「アマレクを討ち、アマレクに属するものは一切滅ぼし尽くせ。男も女も、子供も乳飲み子も牛も羊も、らくだもろばも打ち殺せ。容赦してはならない。」と書かれている。これこそがガザでイスラエルによって行われていることだと言えるだろう。ネタニヤフによると「われわれは光の民であり、彼らは闇の民」なのである。
いずれの戦乱ともエネルギー資源が関係している。アメリカがベネズエラを執拗に乗っ取ろうとしている理由もそこにあるだろう。ウクライナは現在、そのエネルギー資源を使い、ヨーロッパを恫喝、EU加盟国との関係が悪化している。アメリカからの圧力にもかかわらず、ロシアは今でもヨーロッパにとって重要な天然ガス供給国なのだが、その供給を止めたなら、ヨーロッパは衰退で止まらず、崩壊する可能性がある。
以下「櫻井ジャーナル」様より転載
https://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/202501110000/
・イスラエルにパレスチナ人を虐殺させているのは米英独を含む西側諸国
2025.01.11
著名な医学雑誌「ランセット」は1月9日、2023年10月7日から24年6月30日までの間にガザで外傷によって死亡した人数の推計値が6万4260人に達し、そのうち女性、18歳未満、65歳以上が59.1%だとする論文を発表した。ガザの保健省は24年6月30日時点の戦争による死亡者数を3万7877人と報告しているが、これはランセットの推計値の59%にすぎないということ。この時点で国連などは1万人以上の遺体が瓦礫の下に埋まっていると推定されていた。病気、あるいは飢餓で死亡する人は戦闘で殺される人よりも多いと見られている。非戦闘員の犠牲者が多い理由は、イスラエルがそうした人びとを狙っているからにほかならない。現在、4万5338名が殺されたと言われているので、それにランセットの推計を適用すると7万7000人近くになる。
ガザで戦闘が始まった直後、ベンヤミン・ネタニヤフ首相は「われわれの聖書(キリスト教における「旧約聖書」と重なる)」を持ち出し、その中でユダヤ人と敵だとされている「アマレク人」を家畜と一緒に殺した後、「イスラエルの民」は「天の下からアマレクの記憶を消し去る」ことを神は命じたと主張、パレスチナ人虐殺を正当化している。
サムエル記上15章3節には「アマレクを討ち、アマレクに属するものは一切滅ぼし尽くせ。男も女も、子供も乳飲み子も牛も羊も、らくだもろばも打ち殺せ。容赦してはならない。」と書かれている。これこそがガザでイスラエルによって行われていることだと言えるだろう。ネタニヤフによると「われわれは光の民であり、彼らは闇の民」なのである。
そうした中、ローマ教皇フランシスコは2023年12月21日、ガザでの爆撃は残虐行為であり、戦争ではないと非難、ピエルバティスタ・ピッツァバラ枢機卿がガザへ入れなかったことを批判した。22日にイスラエル当局は枢機卿のガザ入りを許可したが、その日、教皇はイスラエルがガザで続けている子どもの虐殺を改めて非難している。
今年1月10日にジョー・バイデン米大統領はローマ教皇庁を訪問する予定になっていた。アイルランド系でカトリック教徒の家に生まれた人物が大統領に就任したのはジョン・F・ケネディ以来だが、行ったことは正反対だった。その彼が教皇庁訪問をキャンセルしたようだ。バイデンがバチカンを訪問した場合、教皇フランシスコはイスラエルによるガザでの虐殺、そしてその虐殺を支援しているバイデン政権を非難しなければならなかった。教皇もバイデンも訪問を中止したかっただろうと考えられている。
イスラエルは生活物資や軍事物資を国外からの支援に頼っている。そうした支援をする国や団体が存在しなければ、破壊、殺戮、略奪という三光作戦を実行することは不可能だ。SIPRI(ストックホルム国際平和研究所)によると、軍事物資の69%はアメリカから、30%はドイツから供給されている。輸送などでの支援にイギリスが果たしている役割も小さくない。この3カ国の責任は特に重い。
中東で戦火が燃え上がったのは2003年3月のことだ。ジョージ・W・ブッシュ政権がアメリカ主導軍にイラクを先制攻撃させ、サダム・フセイン体制を倒したのだ。侵略の口実として「大量破壊兵器」が使われたが、これは嘘だった。当初の予定ではイラクに親イスラエル体制を築くことになっていたが、これは失敗に終わる。
この侵略に対し、ギリシャ正教総主教区の公式広報官を務めていたテオドシオス・ハンナ大修道院長はアメリカのジョージ・W・ブッシュ大統領、ドナルド・ラムズフェルド国防長官、イギリスのトニー・ブレア首相、ジャック・ストロー外相がキリスト教の聖地、エルサレムの聖誕教会へ入ることを禁じた。この政治家たちをハンナらは破門し、堕落者とみなしたという。この事実を西側の有力メディアは大半が無視したが、イギリスのインディペンデント紙はイスラムの動きに絡め、固有名詞抜きで簡単に触れている。
シリアに対する外部勢力の軍事作戦が始まった翌年の6月、シリアへ入って調査したメルキト・ギリシャ典礼カトリック教会のフィリップ・トゥルニョル・クロス大主教はローマ教皇庁のフィデス通信に対し、「誰もが真実を語ればシリアの平和は守られる。紛争の1年後、現地の現実は、西側メディアの偽情報が押し付けるイメージとはかけ離れている」と報告している。それ以降、現在に至るまで西側の有力メディアは真実を語ろうとしていない。イスラエル絡みだけではないのだ。
自国軍を投入したジョージ・W・ブッシュ大統領とは違い、バラク・オバマ大統領は2010年8月にPSD-11を承認してムスリム同胞団やサラフィ主義者(ワッハーブ派、タクフィール主義者)を傭兵として使い、体制転覆プロジェクトを始めた。リビアやシリアもそのターゲット国だった。西側では「自由の戦士」扱いのHTS(ハヤト・タハリール・アル・シャム)やRCA(革命コマンド軍)も基本的にそうした傭兵集団だと言える