・ツイートまとめ テーマ:ツイートまとめ テーマ:台湾有事計画に警鐘を鳴らす・パリ五輪開会式を分析する・仏蘭西の秘教人脈について

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〇仏蘭西の結社と言えば、大東社であるが、仏蘭西のメーソンは実は大東社系だけではない。仏蘭西と言えば大東社、大東社と言えば理性主義のイメージだが、仏蘭西にはエリファス・レヴィ、アレクサンドル・サン=ティーヴ・ダルヴェードル、ㇽネ・ゲノン、アンリ・コルバンといった秘教人脈も存在し、彼らの多くは非大東社系のメーソンに属している。仏蘭西に関してはこの点が盲点になり得る。

〇仏蘭西では確かに大東社系勢力が主流だと思われるが、仏蘭西が大東社一辺倒だと思い込むと盲点を生むであろう。仏蘭西にはスコッチ儀礼を採用する結社やマルティニスト系の結社も存在するようである。スーフィズムに傾倒した秘教思想家のㇽネ・ゲノンや哲学者のアンリ・コルバンはそちらの系統である。

〇神智学協会のアニー・ベサントは仏蘭西の非大東社系メーソンである「Le Droit Humain」に入会し、英国に持ち帰った。Le Droit Humain(日本語訳だとレ・ドロワ・ユメーと出てきたが、正確な読み方が分からないので原文のまま)はスコッチ儀礼を採用するメーソンだが、女性が入会出来るのが特徴である。

〇女性が入会出来るメーソンを共同フリーメイソンリー(Co-Freemasonry)と言うが、アニー・ベサントは全ての共同メーソンの候補者に「神又は至高存在への信仰」を義務付ける事を要求した。「神又は至高存在への信仰」は英国系メーソンの原則なので、神智学協会が基本的に英国石屋系である事が分かる。

〇アニー・ベサントは社会主義やマルクス主義に傾倒し、労働運動やフェミニズム的な運動を行なっていた。政治的社会的なイデオロギーで見るとかなり大東社系寄りに見えるが、「神又は至高存在への信仰」という英国系石屋の原則を押し通す点で、やはり根本は英国系石屋の系列だったと見るのが妥当と思う。

〇近代魔術の源流的存在であるエリファス・レヴィは大東社系の啓蒙主義者ではなくロマン主義系の詩人だった。英国のブルワー=リットンと交流があって影響を受け、その流れから黄金の夜明け団が生じた。黄金の夜明けの教義はエリファス・レヴィの思想を下敷きにしているとみられる(カバラの重視など)。

〇サン=ティーヴ・ダルヴェードルはオカルト界で定番のアガルタ神話(アガルタ=地下世界にあるとされる都市)を広めた人物だが、陰謀研究の観点からは「シナーキー」という思想が注目される。シナーキーとは秘教的知識を持つエリートによる支配体制のことで、裏権力のオカルト神権体制そのものである。

〇「Le Droit Humain」の創設者のジョルジュ・マルタンはグラン・ロージュ・ド・フランスのメンバーである。グラン・ロージュ・ド・フランスは大東社とは別系統のフリーメイソン組織でスコッチ儀礼を採用している。ダルヴェードルの影響を受けたというルネ・ゲノンもこの結社のメンバーだった由である。

〇以前、アナキズム系新左翼とバトルになった事があるが、その者は大東社シンパである事を仄めかす一方で、「薔薇十字団員」とも名乗っていた。政治思想的には大東社系に、秘教魔術愛好者としては非大東社系結社に、それぞれ首を突っ込んでいたのかもしれぬ。実際に仏蘭西には両方の思想人脈が存在する。

〇アンリ・コルバンはシーア派思想などを研究した哲学者で仏蘭西のイラン学の重鎮である。コルバンは非大東社系フリーメイソンに属し18世紀のマルティニストにしてフリーメイソンのジャン=バティスト・ウィレルモズ(Jean-Baptiste Willermoz)が考案したという基督教神秘主義の儀礼を実践したという。

〇前述の新左翼は政治思想的には明らかに大東社系なのに同時に「薔薇十字団員」とか「魔女」などと名乗り秘教・魔術の類にも傾倒している様子だった。仏蘭西の結社人脈の内、大東社系(理性主義・啓蒙主義)と非大東社系(神秘主義・秘教)の双方に傾倒している仏蘭西被れだったと考えると辻褄が合う。

〇先述の「マルティニスト」とは18世紀仏蘭西の神秘思想家マルティネス・ド・パスカリとその弟子ルイ・クロード・ド・サンマルタンの思想「マルティニズム」を信奉する者を指す。パスカリは「エリュ・コーエン」という基督教神秘主義結社を創設。先述のウィレルモズはエリュ・コーエンのメンバーである。

〇先述の「グラン・ロージュ・ド・フランス」は「グランドロッジ・オブ・フランス→フランスのグランドロッジ」という意味だと思われる。フランス革命~ナポレオン帝政以後に仏蘭西の多くのフリーメイソン組織が大東社の傘下になる中、大東社系に吸収されなかった、象徴主義を実践する結社のようである。

〇グラン・ロージュ・ド・フランスはスコッチ儀礼を採用している。スコッチ儀礼(スコティッシュライト)を取っている点で、広い意味で英国系フリーメイソンの系統に分類出来るかもしれない。スコッチ儀礼はカリブ海の仏蘭西植民地で軍人をしていたアレクサンドル・ド・グラースらがもたらしたという。

〇アニー・ベサントが属していた「Le Droit Humain」はグラン・ロージュ・ド・フランスの系統なので、ベサントが結社員候補者に「神又は至高存在への信仰」なる英国系石屋の原則を義務付けようとしたのも辻褄が合う。実際にグラン・ロージュ・ド・フランス思想的儀礼的に見て英国系石屋に近いと言える。

〇英国のフェビアン協会は社会主義団体だが大東社系ではなく英国石屋系だと見ている。創立メンバーで団体の名付け親だった詩人のフランク・ポドモアはロバート・オウエンの信奉者だった。初期の社会主義者として有名なロバート・オウエンは晩年に心霊主義に傾倒した。心霊主義は英国系石屋周辺の思想。

〇仏蘭西と秘教人脈の関係と言えば、黄金の夜明け団創設者の一人だったマグレガー・メイザースは仏蘭西パリを拠点に活動しており、アレイスター・クロウリーはその手下だった。やはり、仏蘭西に於ける結社勢力の分布としては、大東社系程ではないが英国系石屋の勢力もそれなりに浸透していると思われる。

〇五輪の開会式は予想を裏切らない気味の悪さであった。パリ開催という事で案の定「大東社丸出し」な内容だった。前半に「自由・平等・友愛」という大東社の標語を表現するパートがあったが、特に衝撃的だったのが「自由」の部分である。自らの生首を抱えたマリーアントワネットと思しき人物が登場した。

〇マリーアントワネットが幽閉されていたという建物に自分の生首を抱えた人物が登場して何やら話した所からメタルバンドの演奏が始まり、最後は赤色の煙とクラッカーみたいなものが吹きあがった。彼らの言う
「自由」とは「敵の首を切り落とし、侮辱し、血しぶきを上げる」事だと端的に表現されていた。

〇大東社が掲げる「自由」とは「敵の首を切り落とし、侮辱し、血しぶきを上げる」事、即ち暴力革命思想である。ギロチンは仏蘭西革命当時「痛みを与えない文明的な処刑器具」とされていた。ギロチンはある意味啓蒙思想の象徴である。ギロチンで切られた生首は仏蘭西啓蒙主義を表現したと見る事が出来る。

〇赤い煙で表現された血しぶきは「政敵と見なした者に残虐無残な暴力を徹底して加える」という大東社系イデオロギーの特徴を表している。ボルシェビキがロマノフ一家にした事は大東社の思想的遺伝子の表れだと言えるし、毛沢東の「銃口から革命が生まれる」という思想や文化大革命もここに連なっている。

〇パリ五輪開会式の演出を見てB層の人は「仏蘭西凄い、攻めている」などと思うかもしれないが、あれは大東社国家である仏蘭西共和国の公式イデオロギー、即ち体制側の思想を表現したものに過ぎないので、彼らにとってあれを表現するのに何の困難もないであろう。仏蘭西は左翼が体制側と聞いた事がある。

〇イエスに扮したと思しき全身青色の男性が歌うという不気味な演出があったが、あれはレオナルド・ダヴィンチの「最後の晩餐」のパロディーだと指摘されている。イタリアの絵画だけに大東社の反ローマ・カトリックの思想教義を表現したと解釈出来る。その後バチカンが声明を出し両建抗争を誘発している。

〇「暗闇」と題する踊りでは、ダンサーたちが踊った後に次々に倒れるという演出があった。「惑沈による突然死」を表現したという指摘もある。結社ならこういう陰険極まりない仄めかしをしても不思議はないであろう。彼らは人々を嘲笑愚弄している。彼らの本音は言葉ではなく非言語的な記号操作に表れる。

〇裏権力の本音は裏権力走狗が表で弄する巧言令色そのものの美辞麗句(「五輪は平和の祭典」「多様性が大事」など。IOC会長の式辞などに典型的にみられる)ではなく、シンボリズムという非言語的な記号操作に表れる。五輪開会式の如き非言語的記号で表現する奇怪なシンボリズムにこそ彼らの本音が出る。

〇ダンサーたちが次々に倒れた後に何故かジョン・レノンの「イマジン」を女性歌手が歌い、その後に変な「騎士」みたいなのが出てきた。仏蘭西なので騎士は「ジャンヌ・ダルク」と思いきやどうも違うようである。黙示録に出てくる「四騎士」の「第四の騎士」という指摘がある。第四の騎士は「死」の象徴で、地上の人間に「死」をもたらす存在として黙示録に描かれている。「死」をもたらす「第四の騎士」は「青白い馬」に乗っていると描写される。「青白い」は白よりも「灰色」と訳される場合もあるそうで、騎士の鎧やメタリックな馬の色とも符合する。これはつまり「終末」演出と「人口削減」計画の暗示か?

〇パリ五輪は日本選手に対する不可解な判定が続き日本のネットユーザーの間では反仏蘭西感情が高まっている模様である。「仏蘭西は中国に似ている」とか「ヨーロッパの韓国」とか言われているが、むしろ大東社系イデオロギーが浸透した結果、それらの国々がお腐乱西に似て来たと見るのが正しい気がする。

〇まず中国共産党は仏蘭西帰りの中国人を中心に結成された大東社系の政治組織であるし、韓国では冷戦後に北朝鮮シンパの左派勢力の影響が強まってから反日姿勢をより強めたと思われるので、もしこれらの国々が仏蘭西に似ているとしたら、大東社系イデオロギーの影響によるものという可能性もあると思う。

〇日本のネットユーザーの間で仏蘭西の評判が悪くなって「フラカス」なる言葉も登場。英国は「ブリカス」と呼ばれ、「ブリカスVSフラカス」の両建が成立。フリーメイソンで言うと、日本は明治以後は英国系の影響下で、中国は大東社系の中国共産党に支配されているので、東亜全体でもこの両建構造がある。

〇大東社系は「敵を血祭りに上げる」という露骨な暴力性を持つのに対し、英国系は根底に暴力性を秘めつつ表面は「紳士」を装うなど狡猾さを持っている。日本人は前者は感覚的に端から受け付けないのに対し、後者にはコロっと騙されがちである。よって日本人にとってより警戒を要するのは後者だと言える。

〇国際秘密力の主な侵略手法は➀大東社的な「革命型戦術」と➁英国系石屋的な「憑依型戦術」の二種類があると分析した事がある。前者は侵略対象国を正面から暴力的に叩く(物理的暴力だけでなく文化破壊など思想的攻撃も含む)。後者は侵略対象国に“憑依”するかの如く伝統文化を改竄する等して乗っ取る。

〇パリ五輪の有様を見て仏蘭西嫌いになる人が続出したように、日本人は大東社的な手口にはすぐに反応して受け付けない。だが、味方のフリをして近付いて来たり、持ち上げたりしてくる外国人コメンテーターなどには弱い所がある。日本が明治以後に裏権力にしてやられ続けているのは主に後者の手法による。

〇有名なソ連のスパイ・ゾルゲは親日派の言論人として当時の日本では知られていたようである。ゾルゲの同志である尾崎秀実は日本政府の中枢に入り込んで対大陸政策に影響を及ぼし日支衝突の方向に誘導したとされる。この事から大東社系だからといって必ずしも革命型戦術を取るとは限らない事が分かる。

〇ゾルゲの事を少し書いたが、今ゾルゲがいたらどういう工作をするだろうか。「反日だから日本の悪口を言う」か?否。むしろ親日派を装い、日本人に耳障りの良い事を言うと思う。メディアに露出し世論誘導。同志を政府の顧問として送り込み政策に影響を与える。而して日本を対外戦争に誘導する..と想像。

https://x.com/kikuchi_8/status/1794768962041049219

(了)


・ツイートまとめ テーマ:英国系フリーメイソン人脈に於ける「赤組」(左派・世界連邦派・社会主義系など)についての考察

https://kokuhiken.exblog.jp/33530022/

※カッコ内はフォロワーの方のご意見。

〇ワクワクさんは「英国系 いわゆる青系」と書いておられるので、英国系の全てを青組と捉えておられるのであろう。それに対して私は英国系石屋には青組系と赤組系の2系統があると見ている(青系=右派・赤系=左派と言ってもよいだろう)。認識の相違は「英国系」の捉え方の違いに起因しているようだ。

〇私が神智学協会などのオカルト関係者を「英国系」
と言う場合は、英国系石屋(フリーメイソン)の赤組又は左派という意味である。私とワクワクさんでは「赤組」「青組」の適用範囲が異なるようである。ワクワクさんが仰る赤組はほぼ大東社とイコールなのに対し私の言う赤組は英国系石屋の一部を含む。

〇赤組の中に英国系石屋の一部を入れるか否かで様々な陰謀分析や構図理解での結論が大きく変わってくる。その意味でもワクワクさんの問いはかなり重要だと思う。陰謀追及界には様々な論客がいるが、用語の意味合いが論者によって微妙に異なる場合があるので、文脈などを見て定義を確認する必要がある。

〇陰謀追及界隈でよく使われている「青組」「赤組」は意味やニュアンスがかなり曖昧な用語の典型例である。人によって微妙に意味合いが違っても不思議はない。よって私個人が考える「青組」「赤組」の大よその定義を提示しておく事にする。

〇青組とは。「青」が海を連想するように、青組とは英米系のシーパワー(海上権力・海洋勢力)を担う勢力を指す。ハルフォード・マッキンダー流の地政学戦略を戦略基盤としており、産業としては石油利権、思想的勢力としてはネオコン・基督教右派・シオニスト・旧統一協会など各種右派勢力を抱えている。

〇青組は経済グローバリズム・市場原理主義・軍事的覇権主義が一体となった帝国主義的な世界戦略を基本としている。この大戦略を実行する為の駒としては主に右派的勢力を使う。欧米では基督教右派・基督教原理主義者・シオニスト、日本では旧統一協会系勢力・日本会議・右派系新興宗教などを従えている。

〇赤組とは。赤組は定義が難しいが、青組以外の全ての裏権力派閥と捉えると分かり易い。青組の軍事的な地政学戦略とは対照的に、「平和」「人権」など耳当たりの良いスローガンを掲げながら主に戦争以外の手段で既存国家の廃絶と世界統一構想を推進する。英米系の青組と敵対する国々に肩入れする事もある。

〇赤組を構成する勢力・組織としては、EU・世界連邦運動・大東社以下の各種左派勢力・国連・フェビアン協会・中共・BRICSなどが挙げられる。ヘンリー・キッシンジャーは青組系の戦略家に見えるが、中国と密接な関係で、晩年はウクライナに東部地域の放棄を促すなど青組系と対立する主張も行なっていた。

〇ベサントが属していたル・ドロワ・ユメン(人権?)の創設者ジョルジュ・マルタンはグランロージュ・ド・フランス(フランスのグランドロッジ)のメンバーでした。グランロージュ・ド・フランスはスコッチ儀礼を採用しており、大東社系ではありません(友好関係はあります)。

「アニーベサントってオカルトよりどちらかと言うと大東社に近い人物なんだよ ロッジでも分かるけど、最初にそもそもフェビアン、バーナードショーと付き合ってた訳だし
だからベサントのその後の動き、ユネスコや世界教師運動とか、そのまんま日本の啓明会とか、新百科全書と世界人権宣言とか、とリンクしてる」

〇アニー・ベサントが他の英国系人脈に比べ「大東社に近い」というのは間違っていないと思うが、「大東社系」に分類するのはためらわれる。ベサントはル・ドロワ・ユメン英国支部初代マスターになったが、入団候補者に「神又は至高存在への信仰」という英国系石屋の原則を受け入れる事を要求したという。

〇ベサントは「神又は至高存在への信仰」という教義上の原則とそれに基づく儀礼の実行を要求した。大東社は確か1877年頃にかかる英国系フリーメイソンの原則を破棄する事により英国系から決定的に分裂した経緯があるので、かの原則に固執するベサントを大東社系に分類するのは無理があるのではと思う。

〇「神又は至高存在への信仰」という教義を受け入れるか否かは英国系石屋と大東社を決定的に分かつ指標(メルクマール)である。アニー・ベサントはこの教義を信奉したので、ベサントが如何に左翼的社会運動に傾倒していたとしても根幹的な部分では大東社系ではなく英国系石屋と見るのが妥当と判断する。

〇では、何故、英国系石屋の一部は赤組と言えるのか。それを具体的な事実を挙げて立証したいと思う。ここでは赤組の主要な要素と目されている世界連邦運動を取り上げる。世界連邦運動を大東社系だけのものとするのはミスリードというか、端的に事実誤認である。それは世界連邦運動の歴史を見ると分かる。

〇1946年に始まった世界連邦運動の草創期の賛同者に英国系のエリートが多い。バートランド・ラッセル、ウィンストン・チャーチル、アーノルド・トインビーなどである。そして、世界連邦運動の初代会長にはスコットランド人医師のジョン・ボイド・オアが就任した。オアはグラスゴー大学の学長を務めた。

〇オアが学長を務めたグラスゴー大学は18世紀初頭以来のスコットランド啓蒙思想の重要拠点の一つである。オアはスコットランド啓蒙思想の流れを継ぐ人物と見る事が出来る。さらにオアの母方の祖父はメーソンのグランドマスターだった。これらの点からオアは英国系石屋系統の人物である事は明らかだろう。

〇「啓蒙主義」も実は大東社系か否かを判断する十分な指標たり得ない。英国には百科全書派より古いスコットランド啓蒙思想の流れがあるからである。この思想潮流の祖とされるのがフランシス・ハチソンである。ハチソンの道徳哲学は感覚を重視するもので、理性を重視する仏蘭西啓蒙思想とは対照的である。

〇科学思想ならフランシス・ベーコン以来英国にもあるので、大東社系を特徴付ける指標は「科学」や「科学主義」ではなく「理性主義」だと考えている。理性主義はデカルトに始まりヘーゲルに極まる大陸合理論の系譜である。これに対し英国には経験論の系譜があり、大東社系とは別の科学思想の流れがある。

〇私は大東社系の「理性主義」と対比するのに英国系石屋を「神秘主義」で特徴付けて説明する事が多いが、やや説明不足でミスリードに繋がる危険があったと反省している。英国系石屋には神秘主義だけでなく啓蒙主義(スコットランド啓蒙思想)の要素もあるのである。経験や感覚を重視する啓蒙思想である。

〇世界連邦運動初代会長がスコットランド啓蒙思想の流れを汲むグラスゴー大学学長だったように、英国系石屋の赤組はスコットランド啓蒙思想の流れを汲む可能性があると思う。そこに神秘主義者や魔術系が加わり英国系赤組を構成していると見る。これらの人脈は決して大東社には還元出来ないと考えている。

〇科学思想や啓蒙思想には大陸合理論だけでなく英国経験論の流れもある。先述の世界連邦運動に賛同した哲学者B・ラッセルの分析哲学も英国経験論の流れに属する。「科学」「啓蒙」と名の付くものを全て大東社系に分類してしまうと、思想派閥の構図理解の上で大きなミスリードに繋がる危険があると思う。

〇私とワクワクさんでは「大東社(グラントリアン)」の捉え方が微妙に異なるようである。これも見解に違いが出る要因と思われる。ワクワクさんは科学主義的なものは全て大東社に帰する傾向があるように見えるが、私は先述のように科学とか科学主義は必ずしも大東社を規定する指標ではないと考えている。

〇神智学や心霊主義は科学の発達と科学合理主義の浸透で衰退した基督教信仰に代わる代替宗教として登場した経緯がある。これらは近代の科学合理主義に対抗する為に進化論など「科学」を強く意識し教義に取り入れている。科学の影響があると大東社系になるなら神智学も大東社系という事になってしまう。

〇「オカルト」という言葉も曲者である。この語も論者によって捉え方が全く異なるので要注意。私が思想分析の文脈で「オカルト」という場合は「西洋世界の秘教(隠された知の体系)」という意味合いで使っている。オカルト(秘教)は中世に基督教によって弾圧された様々な神秘思想や学術が含まれている。

〇ルネサンス運動は反基督教運動の面があり新プラトン主義などの古代神秘主義の復興運動でもあった。ルネサンス期に興隆した古代の神秘思想や学術(錬金術・占星術など)は「秘教(オカルト)」と呼ばれるものと大体重なる。隠さないと基督教の教会に弾圧されたから「隠された知」と呼ばれたのだだろう。

〇ルネサンスの後に出た啓蒙思想も基督教に抑圧されたという意味では秘教主義と通底する。その意味で、オカルティストがある側面(政治思想や社会運動などで)で大東社系の思想に接近しても別段不思議ではないと思う。ベサントが大東社系に近付いたとしたらそういう性質のものだったのではと推測する。

〇ベサントは「神又は至高存在への信仰」という英国系石屋としてのデッドラインとも言うべき原則を譲っていない(それどころか他者に要求している)ので、大東社系のイデオロギーに影響を受けた部分があったとしても、根底は英国系石屋(左派・赤組系)に分類さるべき人物というのが個人的な見解である。

〇英国系石屋左派(赤組系。仮称)と大東社系は政治的に近い陣営にいる事が多い。日本だと旧大本教系と左翼系の間で政治的主張にそれほど違いがない場合が多いのに対応する。故に私が英国系石屋と見なす人脈が大東社系に分類されたとしても無理もない事だと思う。しかし、赤組の全てを大東社系とすると大東社系の外延があまりに大きくなり過ぎると考える。狭義の青組以外の全てを大東社系にすると、大東社系の外延が大きくなり過ぎる上に内包がかなり茫漠としてくるのではなかろうか。大東社系を理性主義・非神秘主義とし、神秘主義を含む赤組の一部を英国系とした方が、構図理解に無理がない気がする。

・英国系石屋右派(青組)
・英国系石屋左派(赤組)
・大東社系(赤組)

という分類は、以前から申している日本国内の三大派閥➀旧統一協会系➁旧大本教系➂大東社系にほぼほぼ対応する。もし「英国系石屋左派(赤組)」というカテゴリがないと、➁旧大本教系は大東社系に入れざるを得ない仕儀となる。

「お筆先」を信奉する宗教を理性主義を信奉する大東社系に分類するのはさすがに無理があると考える。旧大本教の教義を実質的に体系化したとされる浅野和三郎は海軍機関学校の教官時代に同僚の英国人神智学徒と交流があり、英国の心霊科学にも傾倒していたので、大東社系ではなく英国系と見るのが妥当。

〇かといって、旧大本教系勢力は反米的な主義主張を持っている事が多いので、青組(英国系石屋右派・英米系シーパワー勢力)に分類する事も出来ない。だが、英国系石屋左派(赤組)にはピタリと収まるのである。旧大本系勢力が信奉する日猶同祖論やスピリチュアリズムなどの思想は英国系石屋に由来する。

〇ワクワクさんの問いはお世辞でも何でもなく本当に陰謀研究に於ける理論上の核心に関わるもの(神秘思想や魔術を中心とした深い学識をお持ちの方と見受けられ批判が高度)なので、そこから滔々と考察が引き出されてきてまだまだ尽きそうにない。でも、長くなり過ぎたのでこの辺で^^;また次回m(_ _)m

〇世界連邦運動は大東社系より英国色が強いように思う。それは歴代会長や草創期の賛同者など人脈的に見ると分かる。会長は英国人やカナダ人が目立ち、イギリス連邦内で回しているようにも見える。今の会長はカナダ人のようである。イギリス連邦を世界レベルに拡大させる構想が世界連邦という可能性も。

〇フランス革命後のフランスは連邦主義ではなく中央集権制が強い。連邦主義が強いのはどちらかと言えば英米系。英国の旧植民地ではイギリス連邦を形成し、米国には連邦主義者(フェデラリスト)がいる。大東社系も世界連邦運動に関わっているが、連邦主義という政治思想はそれ程強いようには見えない。

〇1991年から英国人俳優のピーター・ユスチノフが世界連邦運動の会長を務めた。ユスチノフはナイトの爵位を持ち、フリーメイソンだったという情報もある。また、英国議会と密接な関係にある「ワンワールドトラスト」(そのものズバリな名称の通り世界統一を目指す団体)が世界連邦運動に参加している。

〇英国の最重要裏権力組織RIIAの中心人物だったアーノルド・トインビーやあのウインストン・チャーチルも創設時の世界連邦運動賛同者である。20世紀の青組の代表選手とも言えるチャーチルが世界連邦運動の賛同者だった事には注意したい。青組赤組の区分の相対性や両建同根性を示唆する事実の一つである。

〇英国系の青組派としてはウィンストン・チャーチルを、赤組派としてはバートランド・ラッセルを挙げる事が出来る。前者は大戦時の戦争指導者にして戦後は「鉄のカーテン」演説をした反共主義者。後者は核廃絶運動を行なった平和主義者とされる人物。対照的なこの両者は共に世界連邦運動賛同者である。

〇世界連邦運動の民間スポンサー一覧のトップにロックフェラー財団の名がある。青組と見られているロックフェラーが世界連邦運動のスポンサーで、フォード社がネオコン系のヘリテージ財団を支援する一方でフォード財団が世界連邦運動のスポンサーであるなど青と赤の境界は曖昧でやはり両建同根と感じる。

〇RIIAの研究部長を務めるなど英国系裏権力人脈の中枢にいたと思われるアーノルド・トインビーが賛同する時点で世界連邦運動に英国系石屋(特に赤組系)が関わっているのは間違いないと言える。トインビーは思想や行動を見る限りでは赤組寄りに見える(親中派で創価学会会長の池田大作と対談している)。

〇「世界連邦運動」の「主要設置者(スポンサー)」の「(民間財団等)」という欄の一番上に「Rockefeller Foundation」とあり、二番目は「The Ford Foundation」、三番目は「Open Society Foundation(※ソロス財団)」である。これらが世界連邦運動の有力スポンサーである。https://wfm-yf.org/organization

〇青と赤の区分は世界の権力構造を分析する際にかなり有効な枠組みではあるが、これを絶対視するのは禁物である。現実の裏権力人脈を追ってくと、青と赤の境界が実に曖昧で相互に入り混じっている事が見えてくる。ロックフェラーが世界連邦運動の大口スポンサーである事などが分かり易い例と言えよう。

〇前掲資料の「世界連邦青年会議」という世界連邦運動関連団体を紹介する欄には「会員・ご協力団体、プログラム共催等」という所にローマ教皇庁、日本宗教連盟や神社本庁など国内の各宗教関連団体、日本財団・外交問題評議会(CFR)・戦略国際問題研究所(CSIS)など青組系の組織までが名を連ねている。

〇世界連邦運動は一応は赤組的な運動と見る事が出来るとは言え、関与している人脈・団体を見ると、赤組・青組の双方、各裏権力派閥から幅広く全方向から参加している事が分かる。世界連邦運動は赤組に限定された工作ではなく、裏権力の全体で推進している世界統一構想だと見るのが妥当であるように思う。

〇世界連邦運動は各裏権力派閥が全般的に参加しているので、両建という現象を見極めるには格好の観察対象である。日本国内に限定しても世界連邦運動には右派から左派まで幅広い賛同者がいる事が分かる。例えば、世界連邦日本国会委員会には自民から社民・共産まで左右のあらゆる議員が名を連ねている。

〇考察の続き。英国系フリーメイソンの勢力を「イングランド派(右派)」「スコットランド派(左派)」という風に分けられないかと思案してみたが、どうもそう綺麗に分けるのは難しそうである。例えばスコットランド啓蒙思想はイングランド出身のジョン・ロックの思想(英国経験論の祖)と切り離せない。

〇スコットランド啓蒙思想の祖とされるフランシス・ハチソンはジョン・ロックの弟子の第三代シャフツベリー伯爵の影響を受けているとされる。スコットランド啓蒙思想はイングランド出身のロックに始まる英国経験論の流れにあるので、イングランドとスコットランドを思想派閥として画然と分つ事は難しい。

〇西洋世界の思想派閥をフリーメイソンで分類している理由。フリーメイソンは西洋世界のあらゆる思想を集積し伝播させる配電盤の如き機能を持っていたと見るからである。英仏独の各フリーメイソン組織はそれ自体が西洋思想の分類装置みたいになっているので、思想派閥を分類する枠組みとして適している。

〇英国系と大東社系で大きく二分させるのは、かなりザックリとした分類方法で大雑把に見えるが、それ以上細かく分類すると、かえって分かりにくくなると考えている。英国系石屋を英連合王国の構成国ごとに分ける方法もあるが、思想派閥が必ずしも地域ごとにキレイに分かれているとは限らないのが難点。

〇イングランド出身のロックやシャフツベリーの思想がスコットランド啓蒙に影響を与えるなど、英国を構成する各地域は影響を与え合っているので、地域を完全に分離して考えると、思想史の流れが掴めなくなる恐れがある。英国経験論などの共通項があるので、英国系と大きく括っても特に問題はないと思う。

〇「フェビアン協会は英国系か大東社系か」というのも重要な論点だと思う。私は前者であると判断している。その理由は、組織面と思想面に分けられる。組織面ではフェビアン協会及びその派生組織が英国の支配体制にガッチリ組み込まれており、思想的にはフェビアン主義は英米系の思想的影響が強いと見る。

〇まずは組織面。フェビアン協会の中心人物であるシドニー・ウェッブは英国貴族としての爵位を授与されている。反王政的な大東社系の人物に英国王室が爵位を与えるとは思えない。フェビアン協会が作ったスクール・オブ・エコノミクスには英国王の諮問機関である枢密院から学位授与権が与えられている。

〇スクール・オブ・エコノミクスの建物が新しく建設された際にはジョージ5世やエリザベス2世といった英国国王が開所式を執り行なうなどして関与している。フェビアン協会が母体の一つになって設立された労働党はこれまで何度も英国の政権を担っている。という事は英国王の承認を受けている事を意味する。

〇スクール・オブ・エコノミクスの関係者を見ると、英米系のエリートを中心に英米系の影響下にある国々の有力者が多いという印象を受ける。日本だと麻生太郎などがいる。ゼカリア・シッチンの名前があるのも興味深い。シッチンもメーソンだと言われている。
https://ja.wikipedia.org/wiki/ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスの関係者

〇シッチンの影響を受けているジョイオブサタンはやはり英国系石屋の系統か。フェビアン協会が大東社系組織だとすると、フェビアン協会が設立したロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(LSE)の関係者には仏蘭西系が多いはずだが、実際には英米系が多い。LSEは英米系裏権力派閥の手先養成所だと見る。

〇次に思想面を分析する。フェビアン協会創設の中心人物で名付け親でもあったフランク・ポドモアが社会主義者のロバート・オーウェンに傾倒していた事から、フェビアン主義の源泉の一つにオーウェン主義を想定する事が出来る。オーウェンは晩年に心霊主義に傾倒した。ポドモアも心霊現象に関心を持った。

〇オーウェンが心霊主義に関心を持ったように、元々社会主義と心霊主義は世俗的千年王国思想として親和性を持つ面がある。なので、アニー・ベサントがフェビアン主義者でありつつ心霊主義や神智学に傾倒したのも別段不思議な事ではなく、必ずしもベサントが大東社系になったという事ではないのである。

〇社会主義は必ずしも大東社系の理性主義から出てきたという訳ではなく、幾つかの源泉を想定する事が出来る。古くはプラトンの理想国家論だが、近代以前の英国の思想家だと「ユートピア」を論じたトマス・モアや「新アトランティス」を書いたフランシス・ベーコンも社会主義に影響を与えた可能性がある。

〇前述の事を踏まえるならば、フェビアン協会が社会主義団体だとしても必ずしも大東社系とは限らない訳である。ロバート・オーウェン、トマス・モア、フランシス・ベーコンなどの英国の思想家を考慮すると、大東社系の思想的な影響を想定しなくても、英国に社会主義団体が成立する土壌はあったと言える。

〇フェビアン協会創設時の重要人物であるバーナード・ショーが社会主義に傾倒するきっかけになったのが、ヘンリー・ジョージという米国の思想家の講演を聞いた事であるという。ヘンリー・ジョージは土地に付加する地価税を唯一の財源とし他の税金は全廃すべきだという土地単税論という思想を唱えていた。

〇ヘンリー・ジョージの思想はジョージズム(ジョージ主義)と言われるが、アダム・スミスやデヴィッド・リカードの影響を受けているようである。スミスはスコットランド啓蒙の祖であるフランシス・ハチソンの弟子で、「経済学(古典派経済学)の父」と言われている。という事はジョージの思想的源泉は英国系の経済思想であり、バーナード・ショーが影響を受けたヘンリー・ジョージの社会主義思想は元を辿ると英国に源流があるという事になる。この点でも大東社系という事が否定される。ジョージ主義の土地単税論は地租以外の租税の廃止を謳う点で、リバタリアニズムと親和的な面があるようにも見える。

〇ジョージ主義の土地単税論に見られる「一つの要素(地価税)で他の要素(地価税以外の租税)の全てを代替しそれら他の要素を全廃する」という論理は、「基礎所得を保証する代わりに社会保障を全廃する」というベーシックインカム(思想史的な源流は英国の救貧法かも)の発想にも通じている気がする。

〇ジョージ主義は孫文や日本のキリスト教社会主義者にも影響を与えたという。ジョージ主義は大東社系以外の社会主義思想を考える際に重要な要素になるかもしれない。実際、マルクスとヘンリー・ジョージは論敵同士だったようである。この辺は孫文の国民党と中国共産党の対立をも暗示するかのようである。

〇エンゲルスが「空想的社会主義者」(この呼称自体がマルクス・エンゲルスの思想的立場からの見方なので使い方には注意が必要だろう)と呼んだ社会主義者の中で有名なのは、ロバート・オーウェン、アンリ・サン=シモン、シャルル・フーリエの三人だが、この中で一番大東社ぽいのはサン=シモンである。

〇サン=シモンは大東社のラファイエットの義勇軍の士官としてアメリカ独立戦争に参加した、ある意味で大東社直系の人物。フランス革命の恐怖政治の時代には投獄されていたものの、王侯貴族や上層資本家ではなく労働者を含む生産階級による、生まれによらない支配を説いた点で、大東社的な思想と言える。

〇だが、意外な事にサン=シモンはフーリエと同じくスウェーデンボルグの影響を受けているという。理想的秩序を考えるのにボルグが描いた“霊界”のビジョンに影響を受けたという事のようだ。社会主義は仏革命的なブルジョワ革命思想へのアンチテーゼという面もあるので、非大東社的思想が混ざる事も多い。

〇大東社的な思想を最も体現している思想家は誰なのだろうか。意外と名前が出てこない。ルソーは主意主義的なので、必ずしも大東社的な理性主義に直結はしていない気がする。大東社的思想を典型的な形で保持していた思想家がいるとすれば、フランス人ではないが、アダム・ヴァイスハウプトが思い浮かぶ。

〇アダム・ヴァイスハウプトは同時代の他の思想家・哲学者と比べて突出した所は何もないと思う。あの時代に於けるヨーロッパの理性主義的な啓蒙思想を平均的な形で保持していた実に平凡な思想家だと思う。だが、平凡であるがゆえに、あの時代の啓蒙思想を平均的な形で体現しているとも言えるのである。

〇ヴォルテール、ディドロ、ダランベールなどの百科全書派は大東社が確立する以前の思想家たちなので、必ずしも確立した大東社イズムを体現していると思えない。大東社がある程度確立して少し時間が経った辺りに登場した思想家に典型的な形で現れると思う。その典型例がヴァイスハウプトと思うのである。

〇故に大東社系か否かを思想的に判断する際には、アダム・ヴァイスハウプトの思想教義を指標の一つにしている。ヴァイスハウプトはストア主義の影響も受けつつ「理性」を重視し、新プラトン主義のような神秘主義を否定している。こうした近代イルミナティの姿勢は大東社とも大体重なっていると見ている。

〇社会主義はフランス革命の元になったブルジョワ革命思想をさらに推し進めた近代主義の徹底という側面とブルジョワ革命思想へのアンチテーゼという側面がある。前者だけで見ると、社会主義=大東社系思想に見えるが、後者を考慮すると、社会主義だからといって必ずしも大東社系とは限らない事が分かる。

〇社会主義思想の中でも「科学的社会主義」を標榜するマルクス・レーニン主義は前者のタイプで理性主義的な大東社系の思想教義を色濃く受け継いでいる。サン=シモン主義も基本的には大東社系だが、スウェーデンボリの影響を受けたり「新キリスト教」を標榜したりするなど、神秘主義的な色彩も見られる。

〇サン=シモンの弟子が「社会学」という語を作ったとされるオーギュスト・コントである。「社会学者」と名乗る者に左翼的思想の持ち主が多い(ように見える)のは「社会学」自体が大東社系の学問である事に由来すると見る。コントは「人類」を崇拝する「人類教」なる宗教を作った。この点も大東社ぽい。

〇サン=シモンらを「空想的社会主義者」と呼んだマルクス・エンゲルスらはどうか。マルクスの思想は幾つかの源泉を持っていると見る。それは次のようなもの。
・ヘーゲル哲学
・フォイエルバッハの唯物論哲学
・英国の古典派経済学
若い頃に研究していたエピクロス哲学を入れてもいいかもしれないが。

〇マルクスの思想は「共産党宣言」にみられる政治イデオロギーは完全に大東社系と見る事が出来る。一方、資本論に結実するマルクスの経済学は労働価値説を説く古典派経済学の影響下に形成されたとされ、必ずしも大東社系とは言えない。森嶋通夫氏はリカードとマルクスは理論的に非常に似ているとした。

〇政治勢力としてのマルクス主義者又はマルクス・レーニン主義者は大東社系に分類出来るが、マルクス経済学は大東社系というよりスコットランド啓蒙に連なる古典派経済学の系譜と見る事が出来る。故にマルクスは大東社系か?は微妙な問題である。一思想家の中に英国系と大東社系の要素がある場合がある。

「英国系フリーメイソンか大東社か」というのは、西洋の思想派閥の分類としてはかなりザックリとした大雑把な枠組みである。各派閥を予め細かく概念規定しても後で矛盾が生じる可能性が高いので敢えてそうしている面がある。マルクスのようにいずれの要素もある場合があるので、分析には慎重を要する。

〇マルクスは、共産党宣言に表現されたような政治思想家・政治活動家としては大東社系に連なり、経済学者としてはスコットランド啓蒙に連なっていると見る。20世紀の世界情勢に多大な影響を与えた、政治勢力としてのマルクス主義者、特にマルクス・レーニン主義者、ボルシェビストは大東社系に分類する。

〇マルクスはリカードの理論を受け継いでいるとされる。という事はマルクスを経なくてもリカードから社会主義が生じ得る訳で、詳しくはないが実際に「リカード派社会主義」というのがあるようである。この点からも、フェビアン主義が社会主義だからと言って大東社系に分類する根拠にはならないと言える。

〇百科事典の解説によると、リカード派社会主義では「生産物の全ては労働者に帰属すべき」という「労働全収権」という思想を説く。商品価値が投入労働量で決まるという労働価値説が前提なのは明らかであろう。同じく百科事典の解説によると、リカード派社会主義者の多くはオーエン主義者だったという。

〇リカード派社会主義が登場したのは19世紀前半で、マルクスの登場前である。実際にマルクスにも影響を及ぼしたという。また、リカード派社会主義者の多くが英国の社会主義者であるロバート・オーウェンを信奉するオーウェン主義者だったという。このように、英国では大東社を経由せずに社会主義が生じたので、「フェビアン主義が社会主義だから大東社系」という判断があるとすれば増々その根拠を失う。フェビアン協会が社会主義団体である事は大東社系である根拠にはならないのである。フェビアン協会がエリート主義的である点にも、労働者大衆の組織化を重視する大東社系政治勢力との違いが感じられる。

〇英国系フリーメイソンは社会の有力者・エリートを取り込む事を重視するのに対し、大東社系は一般の労働者大衆を組織化する事を(も)重視する、という違いがあると分析する。フェビアン協会は「革命」を否定し社会の支配層を“教育”(洗脳)する事で新秩序を作ろうとするのに対し、大東社系は労働者大衆を組織化(オルグという)して、武装蜂起をも含む実力行使によって既成秩序を破壊して新秩序を作ろうとする(パリ五輪開会式のマリーアントワネットの生首演出はかかる大東社イズムを象徴したと見る)。世界連邦運動も大衆運動ではなく有力者(政治家宗教家など)への布教を重視しているように見える。

〇もっとも大東社系もエリート主義である事に変わりはないが。大衆の組織化を重視すると言っても真に民衆目線なのではなく、あくまで大衆を“指導”するという前衛エリート主義である。共産党組織の「民主集中制」という中央集権的組織原理に表れていると思う。小泉以降の自民党も大分これに近付いている。

〇これに対して英国系のエリート主義は端から大衆を相手にしない傾向がある。フェビアン協会も中流以上の階級によって創設され、大衆運動ではなくエリートの組織化を重視しているように見える。これは英国の既存の支配層の脅威にならないどころか、改革を名目に権力機構を強化する格好の口実にもなる。

〇「大衆の組織化ではなくエリートの組織化を重視する」という点もフェビアン協会が大東社ぽくない事の傍証の一つ。実際、独逸のベルンシュタインの暴力革命論を放棄した議会主義的な社会主義はフェビアン主義の影響を受けたもののようである。これは暴力革命を重視する大東社イズムからの逸脱であった。

〇アレイスター・クロウリーは自らの魔術は科学だと主張した。よってクロウリーは一種の科学主義者だったと言える。科学主義と言っても大東社系ではなく、生涯の間に怪し気な「魔術実験」を繰り返した事を見ても、フランシス・ベーコン以来の経験論的な科学思想が念頭にあった可能性が高いと推測する。

〇クロウリーが魔術を「意志に従って変化を起こす」技と規定し「全宇宙を意志に従わせる」事を目指した姿勢に自然法則を解明する事で自然を支配する事を目指したベーコン流の科学観と通底するものを感じる。クロウリーが入団したOTOは優生学的な教義を持っていたが、この点はフェビアン主義と共通する。

〇優生学が普及した地域を見ると、英米や独逸が主で仏蘭西への影響はあまり見られない。優生学は英国石屋系の学術と見るのが妥当だと考える。フェビアン協会が優生学を重視した事も彼らを英国系石屋に分類する理由の一つ。戦後日本に優生保護法があった事は、日本がこの系列の支配下にある事を意味する。

〇大東社系勢力が暴力革命論を重視すると言っても今は公然とそういう主張をする事は難しくなった。冷戦が終結しソ連が崩壊した事や彼らが他方で唱える「平和」「人権」の観念と矛盾する事などが影響しているかもしれない。今や暴力革命思想を色濃く継承するのが米国のネオコンという捻じれ現象がある。

〇大東社系勢力が暴力革命に代わり採用したのが、性的少数者を利用するLGBT運動(その他社会的に弱い立場にある人を利用した大衆組織化戦術)や大量の移民難民というピープルパワーを利用する国家破壊戦術などだと分析する。パリ五輪開会式でLGBTとされる人や多様な人種を演者にしたのはその表現と見る。

〇アンティファ(アンチファシズムを掲げる左翼集団)やブラック・ブロック(黒づくめのアナキスト集団)も思想系統としては大東社系だが、実際にはソロス一派の実働部隊という性質が強いと見ている。彼らは大東社チックだが、暴力革命を起こすような力はなく、せいぜい散発的な暴動を起こすにとどまる。

〇暴力革命論は今は人工芝運動に置き換わっており、これは大東社系より米国のネオコン系の常套手段となっている。これも先述した「ねじれ現象」の一つ。ネオコンの源流は大東社系のトロツキー主義者なので、思想や戦略戦術面で大東社系の影響も大きい。だが、政治勢力としては英米系に分類すべきと思う。

〇思想史的な系統では大東社系でも政治勢力として総体的に見た場合は英国系であるなど、思想的系統と政治勢力としての派閥・指揮系統が必ずしも一致しない場合がある。この点も注意が必要だと思う。思想派閥や政治勢力の関係性は込み入っている事も多いので、事実に即して慎重に分析するようにしている。

〇日本の伝統的学問には「事」(事実・事象・現象など)を重視する道と「理」(理論・法則・範疇など)を重視する道がある。「事実に即して慎重に分析する」のは「事」を重視する道と言えるが、そこに自分なりの枠組み・カテゴリを当てはめ整理するのは「理」の適用と言える。やはりどちらも必要と思う。

https://x.com/kikuchi_8/status/1824560772061798805

(了)