・取得は任意でも…アレもコレも“マイナカード”に 携帯契約の本人確認で必要に? 12月には“マイナ保険証”一本化 「事実上の義務化では」指摘も(ABCニュース 2024年6月19日)

※取得は任意のはずのマイナンバーカード。携帯電話の契約時の本人確認で必要となるケースがあり、波紋が広がっています。

携帯契約にマイナカード ICチップ読み取り義務化へ
マイナカードなどICチップ読み取りで“本人確認”義務化へ

現在「対面」で携帯電話を契約する際、運転免許証などの身分証を“目視”で確認する方法がとられていますが、身分証の偽造や不正契約による被害が増えているということで政府は18日、「国民を詐欺から守るための総合対策」を取りまとめました。

「対面」での携帯電話契約の際には、マイナンバーカードなどのICチップ読み取りを義務付け、インターネットなどを通じた「非対面」での契約の際には、スマホなどでマイナンバーカードを読み取る方法に一本化するということです。

政府はこうした取り組みを進め、詐欺グループなどの携帯電話の悪用を防ぎたいとしています。

取得は任意でも…アレもコレも“マイナカード”に

総務省が先月末に発表したマイナカード保有率については、持っている人が73.8%、持っていない人が26.2%ということです。

12月には現行の健康保険証が原則廃止され、マイナカードと一本化した「マイナ保険証」に切り替わります。

木原善隆コメンテーター

現状、マイナカードの取得については「任意」のはずですが、ABCテレビの木原善隆コメンテーターは「事実上のマイナカード義務化ではないか」と指摘します。

「(携帯電話の契約時に)本人確認をきちんとしなさいという目的はわかるんですが、マイナカードじゃなくてもできるわけですよね。マイナカードを持ってる人であればもちろんいいと思いますが、強制するというところに違和感があります。さらに、ICチップの読み取り機を使う民間企業が増えると、逆に情報が漏れてしまう懸念があります」

「また、これは法律ではなく省令で決められるので、国会を通さずとも政府が決めて実施できてしまいます。もう少し国民の意見を聞いてもいいのではないでしょうか」

(『newsおかえり』2024年6月19日放送分より)



・「今度はスマホを人質に」携帯契約、マイナカード読み取り義務化「もう任意ではない」政府の暴挙に集まる怒り(Smart FLASH 2024年6月20日)

※6月18日、政府は犯罪対策閣僚会議を開催し、携帯電話契約時の「対面」での本人確認について、マイナンバーカードなどに搭載されているICチップの読み取りを義務づけることを決定した。

本人確認書類の偽造による携帯電話の不正契約などが相次いでいることを受けた措置で、ICチップがつく運転免許証や在留カードも含む。デジタル庁では、ICチップの読み取りアプリの開発を検討するとしている。

インターネットを通じた「非対面」の契約では、顔写真のない健康保険証などの本人確認書類や、運転免許証の画像を送信する方法は廃止し、マイナンバーカードのICチップ読み取りに原則、1本化する。

政府はこうした対応により、携帯電話を用いた特殊詐欺などの犯罪を減らしたい考えという。

「携帯電話の契約の際、本人確認書類から健康保険証を除く動きはすでに起きており、KDDIとNTTドコモは2023年5月に、ソフトバンクも同年6月に、取り扱いを終了しています。

同年6月に開催されたデジタル社会推進会議(議長・岸田文雄首相)では、デジタル社会の実現に向けた重点計画の改定案をまとめ、非対面での銀行口座の開設や携帯電話の契約の際、本人確認の手段をマイナカードに一本化する方針を明記。運転免許証や、顔写真のない書類での確認は『廃止する』とも明記しています。対面契約でも、マイナカードを使えば、本人確認書類のコピーは取らないようにする方針をすでに決めていたのです」(政治担当記者)

政府としては、計画通りに進めているということだろう。

だが、2024年5月には、マイナカードをめぐって、大阪府八尾市の松田のりゆき市議が、本誌の取材に総額350万円の詐欺被害を訴えるなど、詐欺事件が相次いでいる。松田市議は、偽造したマイナカードを身分証として使われ、スマートフォンを勝手に機種変更された。その後、携帯を止めているにもかかわらず、ロレックスなどを購入されたと証言している。

さらに5月15日、警視庁池袋署は、千葉県船橋市のアパートの一室でマイナカードなどを偽造したとして、有印公文書偽造などの疑いで、いずれも中国籍で住居不定の彭楽楽(ポンローロー)・陸成龍(ルーチョンロン)の両容疑者を逮捕した。

東京新聞が報じたところによると、警視庁は2022年から千葉、東京、大阪で中国人グループの「偽造工場」の摘発を進めており、今回の拠点を4月24日に家宅捜索。偽造されたマイナカード7枚と在留カード約100枚、材料のカード約1万2000枚、プリンター、パソコンなどを押収した。捜査関係者によると、偽造マイナカードの販売額は1~2万円ほど。ラミネートにホログラムが施される在留カードに比べ、「マイナカードはホログラムがないから楽だ」と話すメンバーもいたという。

政府は現行の健康保険証を12月に廃止し、マイナ保険証に一本化する方針を決定している。だが、5月のマイナ保険証の利用率は7.73%と低迷。厚生労働省は利用者を一定以上増やした医療機関に支給する一時金の上限を倍増し、最大40万円に引き上げる方針だ。

その一方で、政府が、携帯電話契約時の「対面」での本人確認について、マイナカードなどに搭載されているICチップの読み取りを義務づけたうえ、インターネットを通じた「非対面」の契約では、マイナカードのICチップ読み取りへの原則1本化を決定したことに、Xでは批判的な声が殺到している。

《マイナカードは任意なのに、マイナ保険証の強制に続く暴挙》

《マイナンバーカードは任意と言ってるけど、作らないと生活に困るならそれはもう『任意』ではない》

《健康保険証を人質にマイナカードを強制しようとしたがマイナ保険証利用率6%と低迷で失敗。今度はスマホを人質にマイナカードを強制しようとする政府》

マイナカード普及のため、アメとムチを繰り返す岸田文雄政権。あまりに強引な政策はさらなる反発を呼びかねない。



・デジタル先進国からマイナカードに疑問符 韓国では「国民の40%がカード紛失」
国内 社会(デイリー新潮 2023年3月6日)

※岸田政権がゴリ押しするマイナンバーカード。2月末には、最大2万円分のポイントをもらうための「駆け込み申請」で人々が役所に殺到する事態となった。しかし、デジタル先進国からは疑問の声も聞かれるのだ。

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「マイナカードはデジタル社会を新しくつくっていくためのパスポートだ」

昨年10月、保険証の廃止をぶち上げた会見でそう述べた河野氏。その発言の影響力は今なお健在で、今年2月には給食費無償化をマイナカード取得者に限定する方針を示した岡山県備前市の吉村武司市長が「マイナンバーカードはデジタル社会の構築に必要なツール」とその理由を述べている。

しかし、カード取得を事実上強制するまでしなければ、本当にデジタル社会は到来しないのだろうか。

この疑問に答えてくれるのは“デジタル先進国”と呼ばれる国々だ。

国連が昨年9月に発表した「電子政府ランキング」で、日本は総合14位。より上位にランクインしたデジタル先進国にもマイナカードに相当する番号カードが存在するのであろうか。


デンマークは「カードなし」
 
まずは1位のデンマークから見ていこう。同国の事情に詳しいジャーナリストの坂井明氏によれば、

「デンマークでは1968年以来、国民にCPR番号という共通番号が付番されています。導入当時にはカード化も検討されたようですが、手続きの煩雑さや費用の面から断念。現在でもカードは発行されていません」

では行政のデジタル化はどのように進められたのか。

「行政のオンライン手続きで使用するのは共通番号とは全く別のIDです。共通番号と異なるIDを使うのは犯罪防止のためで、スマホでパスポートのICチップを読み取り、顔認証も行う厳格な本人確認を経て発行されます。すでに90%以上の住民がこのIDを取得しており、住所変更はもちろん育児ケアの申し込みや遺言も可能。かつてオンライン手続きのために専用カードが使われていた時期もありましたが、セキュリティーの問題からこちらも廃止されています」(同)

マイナカードに相当する番号カードが存在しないデジタル先進国は他にもあって、7位のオーストラリア、10位のアメリカでもそのようなカードは存在しない。

また、11位のイギリスも一度は番号カードの導入が決まったものの、プライバシーや費用の問題から10年に法律が廃止されている。


「カードが必要という理屈がよく分からない」
 
オーストラリア第3の都市であるブリスベンで会社を経営する女性は、

「オーストラリアには納税者番号と医療番号がありますが、どちらも分野別の番号。80年代にオーストラリアカードという共通番号に基づく身分証の導入が議論されたこともありましたが、実現していません」

日本の保険証に相当するカードは存在するというが、

「管理番号と名前が書いてあるだけで生年月日も顔写真も記載されていないため、身分証明書として使うことはない。病院では券面に表示されていない生年月日や既往歴を確認することで他人による悪用を防いでいます。番号カードがなくても行政手続きはほとんどオンラインでできるので、デジタル化のためにカードが必要という理屈はよくわかりません」(同)


40%が紛失
 
一方、3位の韓国では17歳以上の国民に13桁の住民登録番号が付番され、番号が記載された住民登録カードも幅広い分野で利用されている。だが、『韓国 超ネット社会の闇』などの著書があるジャーナリストの金敬哲氏によれば、

「韓国では『政府24』というオンラインサービスがありますが、住民登録番号を使ってワクチン接種証明や家族関係証明書など多くの書類を取得できます」

つまり韓国でもオンライン行政手続き自体にカードは使われない。住民登録カードの廃止も議論の俎上に載っているといい、

「問題の一つはカードの紛失です。一昨年には17歳以上の国民の約40%が10年間のうちに1回以上、カードを紛失していることが分かりました。再発行は10年間で1650万件に上り、1千億ウォンもの費用がかかっていたのです」(同)

いかがだろうか。もちろん番号カードを必要とする事情は国によって異なるため、容易に比較できるものではない。だが、カードを用いずにデジタル政府化を成し遂げた国々がある以上、カードの普及が絶対条件であるかのような河野氏の発言はミスリードと言われても仕方あるまい。必要とされているのは、あくまで丁寧で合理的な説明なのだ。

マイナカードの利点・欠点を知った上で、我々もその是非を熟考すべきだろう。

週刊新潮 2023年3月2日号掲載

特集「『河野太郎』に騙されるな ポイントで駆け込む前に考えたい 『マイナカード』の設計不良」より