・「ケチさと目ざとさにかけては天下一品」「製薬会社とは名ばかり」 小林製薬の強欲すぎる企業体質とは【紅麹サプリ問題】(デイリー新潮 2024年4月12日)

※国を挙げて解決すべき事件
 
小林製薬が作った紅麹成分入りサプリメントを摂取した人に健康被害が相次いでいる。すでに5名もの死者が確認されており、食品をめぐる事件としては近年まれに見るひどい惨事となった。甚大な被害を生み出してしまった、同社の強欲な企業体質を解き明かす。

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倦怠感や食欲不振が止まらなくなり、尿が泡立ち変色し、最悪の場合は死に至ってしまう。

目下、日本中を恐怖に陥れている小林製薬が作った紅麹サプリによる健康被害。原因究明は遠く、どこまで被害が広がっているのかも全容が判然としない。

「今のところ、小林製薬が大阪工場で昨年4~10月にサプリ用として製造した紅麹に、青カビから生成されるプベルル酸なる毒性の強い化合物が含まれていたことは分かっています。しかし、昨年12月に大阪工場は老朽化によって閉鎖され、紅麹の製造に必要な設備は和歌山工場に移されました」(社会部記者)

大阪工場には先月30日、和歌山工場には翌31日、厚労省と各自治体の職員が立ち入り検査を行ったが、

「工場の移転によって物的証拠が集めにくくなり、どのようにプベルル酸が生成されたのか、もしくは混入したのかを突き止めるハードルが上がってしまった。厚労省と各自治体は、原因究明の核となりうる証拠を大阪府警に渡すべく調査を進めていますが、まだかなりの時間がかかるのではないか。プベルル酸が非常に珍しい物質であることも時間を要する一因となっています」(同)

なんとか調査を終えることができた暁には、警視庁も出張ってくる可能性があるという。

「紅麹の製造現場だった大阪工場と小林製薬の本社があるのは大阪市です。本来は大阪府警が受ける事件で、おそらくそうなるとみられていますが、被害者が各地にいるのでもしかすると警視庁なども加えた合同捜査本部が設置されるかもしれません。先月29日に関係閣僚会合が開催されるなど政府がすでに陣頭指揮を執っており、国を挙げて解決すべき大きな事件となっているからです」(同)


業務上過失致死傷容疑での立件も視野に?
 
食品をめぐる過去の事件といえば、2000年に1万3000人以上が食中毒を起こした雪印乳業事件が有名だ。この時、安全に対する注意を怠ったとして、雪印乳業の工場長ら2名が業務上過失致傷などで有罪判決を受けた。法人としての同社も食品衛生法違反での有罪判決となっている。

「今回の小林製薬に関しても同様、現場責任者と会社の両方が立件される可能性が考えられます。ただし、雪印の時と異なり深刻なのは人が亡くなっているところ。まだ時間がかかるとはいえ、当局は小林製薬の現場責任者に対して業務上過失致死傷容疑での立件を目指していると思われます」 (同)

いずれにせよ今は立件以前の段階で、被害の全体像すら見えていない。

「小林製薬が2回目の会見を開き、日本中から厳しい視線を一身に浴びた先月29日の時点では、紅麹サプリを摂取して5名が亡くなり、114名が入院しているとのことでした。しかし、その後も次々に被害を訴える声が上がっています。いまだどのように被害が広がっているのか不明瞭で、予断を許さない状況です」(同)


「ケチさと目ざとさにかけては天下一品」
 
小林製薬は偶然、運悪く事件を起こしてしまったわけではあるまい。大惨事が起きた背景にある特異な企業体質について、同社関係者はこう明かす。

「そもそも、小林製薬は社名に“製薬”と銘打っていますが、処方箋が必要な医療用医薬品を取り扱っていません。商品はすべて薬局などで買える一般用医薬品か健康食品、または日用品の類です。製薬会社とは名ばかりで、本当の姿はケチさと目ざとさにかけては天下一品の小林一雅会長(84)が率いてきた、“アイデア商品屋”なのです」

1919年に設立された同社は、6代にわたって創業家の小林家が経営してきた。かつては薬品の卸売りが主力事業だったが、現代表取締役会長の一雅氏が60年代以降、アイデア商法路線に舵を切り数々の商品をヒットさせて会社を拡大し現在の礎を築いた。

「甲南大経済学部を卒業して62年に入社した一雅さんは自らのアイデアで、69年にトイレ洗浄剤のブルーレットを、75年にはトイレ芳香剤のサワデーを発売して成功させました。まだ日本のトイレの多くがくみ取り式だった64年、アメリカを旅行した時に見た水洗トイレの清潔さや芳香剤の爽やかな香りが、イメージの原点になったと」(同)

75年には、肩こりに効く鎮痛消炎剤の容器を横に曲げ、商品名をアンメルツヨコヨコとして、これもメガヒットに導いたという。76年に4代目社長に就任して以降も、冷却ジェルシートの熱さまシートや洗眼薬のアイボンなど数多くのアイデア商品を、ユニークなネーミングと共に世に送り出していった。

「常々、一雅さんは“小さな池で大きな魚を釣る”というスローガンを述べてきました。これはニッチな市場を開拓し、そのシェアを先んじて押さえる経営戦略です。誰も訪れていない小さな池を見つけて、そこで一番の釣り人になりなさいと。儲かったからといって、長い時間を要し高額な研究開発費を投じなければいけない、医療用医薬品を作るようなことはしない。それよりも社内提案制度を通じて、社員たちにアイデアを出す意識と習慣を徹底させていったのです」(同)


企業のガバナンスに大きな欠陥が
 
04年、弟の小林豊氏に5代目社長の座を譲ると、一雅氏は会長に繰り上がった。13年以降は、長男の小林章浩氏(52)を6代目社長に据えている。19年に豊氏は死去したが、今も一雅氏は代表取締役会長として君臨し続けている。

「カリスマ経営者の一雅さんは一般の社員に声を荒らげるようなことはさほどしませんが、幹部には厳しい。会議で中途半端な提案が出ようものなら、平気で罵声を浴びせます。特に息子の章浩さんには容赦がなかった。ある時、100名以上は集まっていた業界団体の新年会で章浩さんがきつく怒られて、しゅんとしていたのが印象的でした」(同)

このたびの紅麹サプリが原因と思しき健康被害について小林製薬は、今年1月11日に患者から最初の連絡を受けている。しかし、記者会見を開き被害の実態と自主回収を公表したのは2カ月あまりがたった3月22日のことだった。亡くなった5名の中には、この間にもサプリを購入していた人がいたとみられている。

企業ガバナンスに詳しい青山学院大名誉教授の八田進二氏はこう憤る。

「食品や薬を取り扱う企業にとって最大のリスクは健康被害で、そのダメージを最小限に抑えるためには迅速な情報公開が必須です。まずは健康被害を広がらせないための対策を優先するのは当然のこと。社内の人間はどうしてもネガティブな情報を隠蔽(いんぺい)したり問題を先送りしたりしがちなので、そうならないためにも高額な報酬で社外取締役を選任しているわけですが、このおよそ2カ月間あまり彼ら彼女らは何をやっていたのでしょうか。社外取締役も含めた企業全体のガバナンスに大きな欠陥があったと言わざるを得ません」


「章浩さんは優しくて線が細い」
 
先月28日の株主総会では厳しい質問が株主から相次ぎ、社長の章浩氏が涙ぐむ場面もあった。

「社内のイベントで提供するお弁当の種類にまで口を挟んでくる強烈なワンマン会長の一雅さんに対して、章浩さんは優しくて線が細いタイプ。先日の株主総会で泣いているのを見て“やっぱり”と思った関係者は多い」(前出の同社関係者)

章浩氏は15歳の時に母を亡くした。それまで両親の仲は円満ではなかったともいわれるがグレることなく、父の一雅氏に忠実に人生を歩んできたようだ。慶應大経済学部を卒業後、花王での修業期間を経て98年、小林製薬に入社した。

「とにかく小林製薬は一雅さんの存在が大きすぎて、今もそのくびきから解き放たれていません。章浩さんが社長に就任してから10年以上たちますが、これといったヒット商品を生み出せておらず、大まかな経営方針も変わっていない。とはいえ、無駄な投資を極力避ける高収益体質が維持できているので、23年12月期まで26期連続の最終増益を記録してきました」(同)

「週刊新潮」2024年4月11日号 掲載


・「被検者の身長を故意に低く改ざん」「開発責任者に生薬の知識がない」 小林製薬のずさん過ぎる開発体制とは【紅麹サプリ問題】(デイリー新潮 2024年4月12日)

※「開発部門に薬理作用の知識のある人間が少な過ぎる」

小林製薬が作った紅麹成分入りサプリメントを摂取した人に健康被害が相次いでいる。すでに5名もの死者が確認されており、食品をめぐる事件としては近年まれに見るひどい惨事となった。甚大な被害を生み出してしまった、同社の強欲な企業体質を解き明かす。

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1919年に設立された同社は、6代にわたって創業家の小林家が経営してきた。かつては薬品の卸売りが主力事業だったが、現代表取締役会長の小林一雅氏(84)が60年代以降、アイデア商法路線に舵を切り数々の商品をヒットさせて会社を拡大し現在の礎を築いた。

一雅氏と現社長の小林章浩氏(52)、親子2代にわたってケチな“なにわの商人”を貫く小林製薬は、儲けを重視し過ぎるあまりに疑念の目を向けられることもあった。

さる製薬会社関係者は声を潜めてこう語る。

「開発部門に薬理作用の知識のある人間が少な過ぎるんです。10年ほど前は特にひどくて、脂肪を落とすナイシトールという漢方薬のシリーズがあるのですが、プロジェクトマネージャーですら生薬の基礎的知識を持ち合わせていませんでした。漢方の主な原材料は天然由来の生薬ですが、副作用などのリスクがないわけではない。ずさん過ぎる会社の体制に唖然とした記憶があります」

もちろん、開発部門がこの調子だったことでお客様相談室のスタッフも、

「最低限必要な知識すら有していませんでした。だから、顧客からの問い合わせに対して“漢方だから安全ですよ”などと誤った内容の“珍回答”を繰り返していたのです」(同)


「被験者5人の身長を改ざん」
 
薬に対するいい加減な姿勢は、13年に発覚した不祥事からもうかがい知ることができる。それは小林製薬にとって市販薬とはいえ初めての治験が必要な医薬品として、肥満症改善薬を開発していた時に起きた。

「治験の現場でコーディネーターが小林製薬の要望に応じるために、被験者5人の身長を故意に低く記録したのです。データ改ざんが明らかになった後、小林製薬は治験支援を請け負った企業に損害補償を求める方針を発表するなど自らが被害者である旨を強調しましたが、傍目には無理筋でした。治験に求められるレベルがさほど高くない一般用医薬品とはいえ、初めての試みでいきなりこのような雑な過ちが露呈してしまうなんてあり得ない」(同)

この治験では、実施した医療機関の職員も被験者に含まれており、実施の方法自体が医療倫理的に問題視されていたとも。かねて承認済みで治験の要らない薬ばかりを売り、研究開発費を軽視しケチってきたからこそ起きた不祥事だとはいえまいか。

同社は薬に限らず看板商品であるサワデーについても、ずさんな品質管理を行っていた。先の製薬会社関係者が明かす。

「以前宮城県の工場で、飛び散った黄などの蛍光色の塗料をスタッフたちが足で踏みつけ、製造ラインの床を汚している様子を見て、あきれた記憶があります」

また、小林製薬は下請けいじめのうわさも絶えない。

「よく聞くのが、パッケージや原材料を曖昧な契約で仮発注しておいて、後から急にキャンセルを申し出てくるパターンです。小林製薬は常に新商品を売り出し、ダメならラインナップから消すことを繰り返しており、その際の雑な仮発注に下請けが振り回されるのです。すでに仕事が動き出していたら、下請けにとっては大きなダメージになってしまうのですが……」(小林製薬関係者)


「取り締まる専用の法律がないのが問題」
 
以上の企業体質に関して指摘すると小林製薬は、

「皆様にご心痛やご不安をおかけしており、おわび申し上げます。紅麹関連製品の回収およびお客様への対応等に全力を挙げて取り組んでおり、回答を差し控えさせていただきます」

現在、紅麹サプリが機能性表示食品だったことも波紋を広げている。

食の安全・安心財団理事長の唐木英明氏によれば、

「機能性表示食品制度では、ある食品について効果を謳うにあたって、国の審査を必要としません。消費者庁への提出が義務付けられている、有効性と安全性を示す論文の形式さえ整っていれば、申請どおりの内容で機能性表示食品として登録できてしまうのです。費用を抑えて簡単に登録できる制度だといえます」

ただし、提出した論文は消費者庁のホームページで公開される。つまり、審査の必要がない代わりに国民の監視の目にさらされるというわけだが、

「取り締まる専用の法律がないのが問題です。人体に作用する効果を謳っているにもかかわらず、あくまで食品に過ぎないという考え方のもと、食品衛生法などで取り締まることしかできないのです。薬であれば薬機法によって製造工程の基準が厳格に定められていますが、機能性表示食品はそうではない。今回、トクホなども含めた健康食品と一般食品を区別する専用の法律がないことで、安全性が担保しづらいという問題が露呈したと思います」(同)


経営上の危機を迎える可能性も
 
さて、小林製薬はこの先どうなってしまうのか。

企業ガバナンスに詳しい青山学院大名誉教授の八田進二氏に聞くと、

「損害賠償の総額がどれほどになるのか、まだ予測がつかないので何とも言えませんが、訴訟が日本国内だけであれば会社の負担は限定的かもしれません」

同社は8割近くの高い自己資本比率を誇り、実に約1680億円もの内部留保をため込んでいて、財務的に余裕があるように見える。

「内部留保などの数字を見るかぎり、払えないことはないと思います。とはいえ、すでに社会的信用が大きく毀損しているので、長期的に見れば人材が流出したり商品が売れなくなったりして、売り上げが縮小していく。最終的には経営上の危機を迎えてしまう可能性も十分に考えられます」(同)

「週刊新潮」2024年4月11日号 掲載


・【小林製薬・紅麹問題】米国で同じことが起きたら倒産確実、危機管理もお粗末…財務状況を分析した専門家の見解は(デイリー新潮 2024年4月4日)

※被害はどこまで…

小林製薬のサプリメント「紅麹コレステヘルプ」をめぐり、摂取した5人が死亡、177人が入院するなど健康被害は拡大を続けている。同社は因果関係を「調査中」とするが、専門家は同社の「行く末」と「事件の本質」について、興味深い事実を指摘する。

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問題発覚を受け、小林製薬は2025年度の新卒・中途を含めた採用活動の休止を発表。同社は理由について「紅麹への対応を優先」させるためと説明し、採用の再開時期も「未定」とした。

これまで小林製薬といえば、「ヒット商品を連発」するだけでなく、経産省による「健康経営優良法人」に2年連続で認定されるなど、医薬品メーカーのなかでは「勝ち組」として知られた存在だったという。

「同社はもともと医薬品の卸売りを手掛けていましたが、1960~70年代に発売したトイレ芳香洗浄剤『ブルーレット』や『サワデー』などが大ヒット。その後も、ニッチ市場の開拓を得意とし、『熱さまシート』やデンタルフロス『糸ようじ』といったヒット商品を世に送り、テレビCMを通じて認知度も急上昇。00年代以降はアメリカや中国の製薬関連メーカーを買収するなどM&Aも積極的に仕掛け、会社は右肩上がりの成長を続けていた」(経済紙記者)

実際、同社の売上高は前期比4%増の1734億円(23年12月期連結決算)、純利益も2%増の203億円(同)と、「26期連続の最終増益」という記録を更新したばかり。今回の不祥事が経営に及ぼす影響については不透明な部分も多いが、専門家は意外な言葉を口にした。


335億円の“損失”事例
 
同社の有価証券報告書など財務データを吟味したビジネス評論家の山田修氏がこう話す。

「財務的に見ると小林製薬は“素晴らしい会社”というほかなく、特に売り上げに対する純利益率が約12%というのは大変優秀。昨年の上場企業の同利益率は平均で約6.9%。小林製薬も含むメーカーだけに絞ると同4%台となるので、同社の純利益率は平均の2~3倍近くに達する水準です」

すでに小林製薬は健康被害を訴えている約800人に対し「補償」の意向を表明しており、さらに紅麹原料の供給先に対しても製品回収費用を負担するとしている。

「同社のキャッシュフロー残高は昨年末時点で596億円にのぼり、今後、被害が拡大して補償額などが増えても支払い余力は十分あると考えられます。問題は今回の一件による“信用失墜”のダメージの深刻さです。たとえば、化粧品メーカーのカネボウが13年、製造した美白製品の利用者に相次いで白斑様症状が出たことから自主回収に動いた騒動がありました。最終的にカネボウは1万人を超える被害者から集団訴訟を起こされ、私の試算では和解金などで同社は335億円程度の損金を計上したと見られる。さらにその後、売り上げが回復するまでに8年の月日を要しました。メーカーにとって健康被害を発生させた代償はそれほど高くつくという教訓を今に伝えます」(山田氏)


和解金4500億円
 
カネボウのケースと違って、今回は死者が出ている点を踏まえ、山田氏は「アメリカで同じことが起きれば、倒産は避けられない」と指摘する。

「1980年代から90年代にかけ、豊胸手術などに使用される米ダウコーニング社製のシリコンバッグによる、乳がんなどの健康被害が発生。被害者から数千件の訴訟を起こされ、その賠償請求額は20億ドル(約3000億円)にのぼりました。当時のダウ社の売上高は22億ドル(約3300億円)でしたが、相次ぐ訴訟を受け、同社は95年に連邦破産法を申請。2000年に被害者へ総額30億ドル(約4500億円)を払うことで和解が成立し、04年にようやく破産法の適用を除外されました。ダウ社のケースも当初はここまで深刻な事態に発展するとは考えられておらず、今回の小林製薬と同じく、危機管理上の対応を誤ったケースの一つに数えられます」(山田氏)

実は多くの企業経営者にとって「危機管理の模範」として知られる有名なケース・スタディーがある。それが米製薬大手ジョンソン・エンド・ジョンソンが起こした「タイレノール事件」という。

「1982年9月、ジョンソン・エンド・ジョンソン社製の鎮痛剤『タイレノール』を服用した患者が“突然死”を起こす事例が次々と報告。当時の同社CEOはまだ原因が不明だったにもかかわらず、報告直後から『商品を救うよりも、カスタマーを救え』と号令をかけ、自主回収に踏み切った。さらに新聞への一面広告やテレビ放送などを通じ、繰り返し『タイレノールを服用しないこと』と消費者へ注意喚起を呼びかけた。同時に医療関係者などに対し、2か月間で100万回に及ぶプレゼンテーションを行うなどの情報公開にも努めました。原因究明よりも早く、消費者保護の姿勢を徹底させたことで、同社の売り上げは2か月後には事件前の80%にまで回復しました」(山田氏)


長い道のり
 
当時のジョンソン・エンド・ジョンソンと小林製薬の対応には大きな違いがあるのは否めず、山田氏も「企業の危機管理の対応としてはお粗末だ」と批判する。

「結果的に健康被害の公表までに2カ月を要したことが明らかになっており、“隠蔽”と受け取られても仕方ありません。また同社の小林章浩社長は2月9日に決算発表を行っていますが、この時には既に報告を受けていたにもかかわらず、紅麹について一切触れなかった。無責任極まりなく、もはや経営陣の総退陣は避けて通れず、さらに刑事責任を問われる可能性まで囁かれています。一方で今後、被害者が増えたとしても、同社の財務状況から補償などを滞りなく行うのに支障はないと見られ、この点は被害の当事者からすれば朗報です。ただし一度、失った信頼は取り戻すのは容易ではありません。同社の売り上げが回復するのに最低でも5年、ひょっとしたら10年近くかかるかもしれません」(山田氏)

得意の絶頂で迎えた、突然の“重大過失”に「人災」の面はなかったのか。地に堕ちたブランドイメージを回復するには、被害者と誠実に向き合っていく以外に方法はない。