・日本が独裁国家に転じれば、国民は幸せになれるのかーーネットで増える「民主主義否定論者」が見落としている事実(現代ビジネス 2023年12月6日)
加谷 珪一
※全世界的に非民主的な強権国家の影響力が高まっている。強権的な国家はいわゆる民主主義のコストを負担する必要がなく、経済的に有利な状況にある。日本など民主国家の中からも、こうしたコスト負担を嫌悪する意見が散見されるようになっており、事態を放置すれば民主主義の機能不全につながりかねない。
一般的に民主国家を維持するにはかなりの負担がかかるとされている。議会を通じて議論を行なったり、政府が政策について国民に十分に説明し、賛同を得てからでなければ政策を実行に移すことができない。強権的な独裁国家と比べて、合意形成のプロセスに相当な時間や人員を必要とするため、一連の負担のことを「民主主義のコスト」と呼ぶ。
これまでの国際社会は、圧倒的に西側民主国家の影響力が強く、経済規模も大きかった。豊かな先進国は総じて民主国家であり、その圧倒的な経済力を生かし、民主主義のコストを負担するという流れだった。
つまり、経済的豊かさと民主主義はセットであり、そうであればこそ民主主義というのはグローバル社会における完成形と見なされていた。
(中略)
日本国内では、経済の落ち込みで生活が苦しくなっていることが影響しているのか、ネットなどを中心に民主主義を否定する意見が目立つようになっている。民主主義を否定している人たちは、「民主国家では弱者が過剰に保護される」「合意形成のために経済成長が犠牲になる」などと主張している。
民主主義にそうした面があるのは確かだが、ネットで民主主義否定を声高に叫んでいる人たちは重大な事実を見落としている。
もし日本が非民主的な国になった場合、彼らのほとんどは支配する側ではなく、支配される側に回るのは確実である。しかも被支配者側になってしまえば、内容の如何を問わず、政治体制について批判することは即処罰の対象となり、ネット上で自由に意見を言うことなど出来なくなってしまう。
民主主義の弊害を説く人はどういうわけか、(ネットで自分の意見を口にするなど)自分が支配者側にいるような感覚を持っているのだが、それはあくまで願望に過ぎない。
民主主義はコストがかかりすぎると主張するのは簡単かもしれない。しかしながら、ひとたび非民主的な国に転落すれば、万人に門戸は開かれず、特権的な立場の人とそうでない人の、埋めようのない格差が生じるのが偽らざる現実だろう。
加谷 珪一
※全世界的に非民主的な強権国家の影響力が高まっている。強権的な国家はいわゆる民主主義のコストを負担する必要がなく、経済的に有利な状況にある。日本など民主国家の中からも、こうしたコスト負担を嫌悪する意見が散見されるようになっており、事態を放置すれば民主主義の機能不全につながりかねない。
一般的に民主国家を維持するにはかなりの負担がかかるとされている。議会を通じて議論を行なったり、政府が政策について国民に十分に説明し、賛同を得てからでなければ政策を実行に移すことができない。強権的な独裁国家と比べて、合意形成のプロセスに相当な時間や人員を必要とするため、一連の負担のことを「民主主義のコスト」と呼ぶ。
これまでの国際社会は、圧倒的に西側民主国家の影響力が強く、経済規模も大きかった。豊かな先進国は総じて民主国家であり、その圧倒的な経済力を生かし、民主主義のコストを負担するという流れだった。
つまり、経済的豊かさと民主主義はセットであり、そうであればこそ民主主義というのはグローバル社会における完成形と見なされていた。
(中略)
日本国内では、経済の落ち込みで生活が苦しくなっていることが影響しているのか、ネットなどを中心に民主主義を否定する意見が目立つようになっている。民主主義を否定している人たちは、「民主国家では弱者が過剰に保護される」「合意形成のために経済成長が犠牲になる」などと主張している。
民主主義にそうした面があるのは確かだが、ネットで民主主義否定を声高に叫んでいる人たちは重大な事実を見落としている。
もし日本が非民主的な国になった場合、彼らのほとんどは支配する側ではなく、支配される側に回るのは確実である。しかも被支配者側になってしまえば、内容の如何を問わず、政治体制について批判することは即処罰の対象となり、ネット上で自由に意見を言うことなど出来なくなってしまう。
民主主義の弊害を説く人はどういうわけか、(ネットで自分の意見を口にするなど)自分が支配者側にいるような感覚を持っているのだが、それはあくまで願望に過ぎない。
民主主義はコストがかかりすぎると主張するのは簡単かもしれない。しかしながら、ひとたび非民主的な国に転落すれば、万人に門戸は開かれず、特権的な立場の人とそうでない人の、埋めようのない格差が生じるのが偽らざる現実だろう。