・なぜガザは監獄になったのか...ハマス本拠地の歴史をひもとく(Newsweek日本版 2023年10月18日)

マハ・ナサール(アリゾナ大学准教授〔アラブ史〕)

※<イスラム原理主義組織ハマスを生み出したパレスチナ自治区ガザ地区の過去と未来>

ガザを完全封鎖せよ──。10月7日、パレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織ハマスによる奇襲攻撃を受けたイスラエルの政府は、直ちにそう決定した。強固な壁が張り巡らされ、既に「世界最大の野外監獄」と呼ばれるガザに、食料や電気、さらには水の供給も全て停止せよというのだ。

一体ガザとはどういう場所なのか。なぜ、ハマスの本拠地となったのか。こうした問いに答えることが、今後エスカレートの一途をたどると思われる紛争の重要な歴史的背景を理解する助けになるはずだ。

ガザは、地中海の東の突き当たりに位置するイスラエルの、最南端にある海沿いの地区だ。面積はアメリカの首都ワシントンの約2倍で、西側は海、北と東はイスラエル、そして南側はエジプトに囲まれている。

ガザは昔からパレスチナと呼ばれてきた地域の一部で、古くから貿易港として栄えた。パレスチナは20世紀初めまでオスマントルコの統治下にあり、イスラム教徒とキリスト教徒のアラブ人が住んでいた。第1次大戦でオスマントルコが解体すると、イギリスの委任統治領となったが、ガザの知識人の間ではパレスチナの民族自決運動が起こった。


運命を変えたイスラエル建国

第2次大戦後の1948年に、パレスチナがあった場所にイスラエルが建国されると、周辺のアラブ諸国とイスラエルの間で第1次中東戦争が起きた。このときイスラエルがパレスチナ南部の29の村を空爆したため、住民数万人がエジプト軍の管理下にあったガザに避難してきた。

67年の第3次中東戦争でイスラエルが圧勝すると、ガザはイスラエルの占領下に置かれることになった。住民は立ち退きを強いられ、家屋を破壊され、非暴力的な反対運動さえも徹底的につぶされた。国際人権団体アムネスティ・インターナショナルは、この占領が「組織的な人権侵害」をもたらしたと指摘している。

これに対してパレスチナ側は、イスラエルの占領に終止符を打ち、自らの独立国家を樹立するため、87~93年と2000~05年の2度にわたり大規模な武力闘争を展開した。ガザでも1988年にハマスが組織され、ガザにあるイスラエルの拠点を激しく攻撃したため、イスラエルは2005年にガザから撤退した。

06年に行われたパレスチナ立法評議会選挙にハマスは政党として参加し、幅広い腐敗がささやかれていた世俗政党ファタハに圧勝した。ガザでは06年以降選挙は行われていないが、23年3月の世論調査では、選挙があったらハマスに投票すると答えた住民は45%に上った。ファタハ支持者は32%だった。

07年、ハマスはファタハの武装部門と衝突して、瞬く間に勝利し、ガザを完全に掌握した。しかし国連や米国務省は、ガザは今もイスラエルの一部との認識を変えていない。

現在、ガザの人口は200万人を超える。大多数がパレスチナ人で、約半分が18歳以下だ。6~12歳の子供の95%以上が小学校に通っているほか、地元のガザ・イスラム大学に通う学生の57%は女性だ。

ただ、生活環境は厳しく、貧困率は53%に達し、19~29歳の失業率は70%にもなる。23年の世界銀行の調査では、住民の71%が鬱や重い心的外傷後ストレス障害(PTSD)に苦しんでいる。その最大の原因は、過去16年にわたるガザ封鎖だ。

07年にハマスがガザを掌握すると、イスラエルとエジプトは米欧の支持の下、ガザへのアクセスを原則禁止する措置に出た。食料や燃料や建築資材の搬入は制限され、ガザの漁師がどこまで海に出られるかまで制限されるようになった。国連の調べでは23年、ガザから出ることが許されたのは月5万人だった。


一般市民に襲いかかる悲劇

長年の封鎖で、生活インフラは著しく悪化した。飲み水や医療設備も不足している。電気が使えるのは1日6~12時間で、あとは停電だ。NGO「パレスチナ人のための医療支援(MAP)」は、ガザの医療システムは「崩壊寸前」だとしている。

こうした制限は、とりわけ若者や弱者を苦しめている。病人がガザの外で治療を受けたくても、イスラエルの許可証を得られない。優秀な学生が留学のための奨学金を得ても、ガザから出る許可が出ないことも少なくない。国連の専門家は、この封鎖はガザ住民を集団的に罰する措置であり、国際法違反だとしている。

イスラエルは、ガザ封鎖は「テロやロケット弾による攻撃をはじめとする敵対行為」からイスラエル市民を守るとともに、軍民両用品がガザに運び込まれるのを防ぐために必要だと主張している。そしてハマスが暴力を放棄し、イスラエルを承認し、これまでの合意を守れば解除するとしている(ハマスはイスラエルの存在を認めていない)。

ハマス側は、この提案を一貫して拒否してきた。それどころか08年には、ガザの外側にあるイスラエルの人口密集地に対するロケット弾や迫撃砲の発射を強化した。これに対してイスラエルは08~09年、12年、14年、21年の4回にわたり大規模なハマス討伐作戦を展開した。これによりパレスチナ人4000人が死亡したが、その半分以上が民間人だった。国連によると、ガザの住宅、農業、工業、電気・水道への被害は50億ドルを超えるという。

こうした衝突はいずれも「停戦」に至ったが、どれも長続きはせず、対立の根本解決にはなっていない。イスラエルはハマスによるロケット弾攻撃を抑えようとしているし、ハマスを含む武装勢力はイスラエルの提案は信用できないと言う。ハマスが停戦に応じても、イスラエルは攻撃を続け、ガザの封鎖解除を拒んだではないかというのだ。だからハマスは、まずはイスラエルがガザ封鎖を解除するなら、長期的な停戦に応じるとしている。だがイスラエルは、ハマスが暴力をやめるのが先だという立場を崩さない。

ここ数カ月、ガザの状態は一段と悪化していた。IMFは9月の報告書で、ガザの経済見通しは「依然として悲惨」としたが、イスラエルは9月5日、ガザからの商業製品の搬出を全面停止すると発表した。爆発物が見つかったからというのが理由だが、これでガザ経済は一段と打撃を受けることになった。

ハマスがイスラエルへの奇襲攻撃を決定したのは、こうした現状を覆すためだったようだ。しかし、イスラエルによる徹底的な報復と「完全封鎖」は、ガザ市民にさらなる悲劇をもたらしている。


以下「さてはてメモ帳」様より転載

http://glassbead.blog.shinobi.jp/wars/israel%20created%20hamas%20to%20av

・イスラエルは和平を避けるためにハマスを作った 

デイヴィッド・リヴィングストン

https://henrymakow.com/israelcreatedhamastoavoid.html

※イスラエルは平和を望んでいない。イスラエルは

パレスチナ人に戦争を仕掛ける口実としてハマスという組織を作った。

ハマスのロケットは、

イスラエルの空軍に比べれば単なる豆鉄砲にすぎないが、

民族浄化のもうひとつの口実を与えている。

「大衆は世間知らずで、特定の指導者がマキャベリ的な極端な行動に出ることを疑うことができない。 これには、偽の敵(この場合はハマス)を作り出すことも含まれる。そうすることで、イスラエル右派の指導者たちは、プロセスを停滞させたとされる『敵』を非難することができるのだ。」


イスラエル人がハマス(イスラム教徒)を作ったのだ。 しかし、その理由を探る前に、イスラエルが和平を望んでいないことをはっきりさせておこう。 彼らはパレスチナ全土を望んでおり、彼らの好戦的な入植行為がそれを裏付けている。

しかしイスラエルは、パレスチナのさらなる植民地化を進めるために、実際には和平プロセスを停滞させるだけで、「和平」を話し合う意思があるかのように装っている。

だから、口実として提供できるものは何でもする。 メディアのお人好し的な援助によって提示される最も都合のいい策略は、「テロリズム」である。

大衆は世間知らずで、特定の指導者がマキャベリ的な極端な行動に出ることを疑うことができない。 これには、偽の敵(この場合はハマス)を作り出すことも含まれる。そうすることで、イスラエル右派の指導者たちは、プロセスを停滞させたとされる「敵」を非難することができるのだ。


歴史的背景

西側諸国によるイスラム・テロリズムの支援は、今に始まったことではない。 1924年にオスマン帝国が崩壊した後、イギリスとアメリカは自分たちなりの「イスラム」指導者を提供することで、その空白を埋めた。 これはイギリスからの助成金によるムスリム同胞団の創設から始まった。

英国の後援の下、同胞団は今日、イスラム世界における強力な勢力を代表し、イスラムの名においてほとんどすべてのテロ行為の背後にある。

より正確には、同胞団は、ナチスに始まり、CIA、さらにはロシア、フランス、ドイツ、イスラエルなど、数多くの西側諜報機関が共有する道具となってきた。

トルーマン政権とアイゼンハワー政権以来、ムスリム同胞団は素朴なイスラム教徒をイスラムの旗の下に結集させるために利用されてきた。 戦後、アメリカやその他の国々は、「無神論者である共産主義者の脅威」を抑えるために、同胞団を鎖につながれた狂犬のように管理することができた。

しかし、冷戦の崩壊とともに、同胞団は、イラクやアフガニスタンをはじめとする中東や中央アジアで、アメリカ人が追いかけることのできる厄介者として利用されるようになった。


イスラエルとハマス

イスラエルとムスリム同胞団との長年にわたる関係は、分派組織ハマスの創設に役立った。

『Devil's Game: How the United States Helped Unleash Fundamentalist Islam(悪魔のゲーム:アメリカはいかにしてイスラム原理主義を解き放ったか)』の著者、ロバート・ドレフュス[Robert Dreyfuss]によれば、「1967年から1980年代後半まで、イスラエルはムスリム同胞団を支援した:

「1967年から1980年代後半にかけて、イスラエルはムスリム同胞団が占領地に定着する手助けをした。 その同胞団のリーダーであるアーメド・ヤシン[Ahmed Yassin]がハマスの創設を援助したのも、そのイスラム主義的性格がPLOを弱体化させることに賭けてのことだった。」

チャールズ・フリーマン[Charles Freeman]元駐サウジアラビア米国大使によれば、「イスラエルがハマス創設を始めた。それはシン・ベット[Shin Bet](イスラエルの国内情報機関)のプロジェクトであり、PLOを弱体化させるために利用できると考えていた。」

その戦略のひとつの側面が、ヤシンと同胞団が大きな影響力を行使した「村落連盟」の創設だった。 イスラエルは約200人の連盟メンバーを訓練し、多くの情報提供者を雇った。

ニューヨーク・タイムズのデビッド・シプラー[David Shipler]記者は、イスラエルがPLOに対抗して原理主義者たちに資金を提供したことを自慢げに語ったガザのイスラエル軍総督の言葉を引用している:

「政治的に言えば、イスラム原理主義者はPLOの世俗的支持者と対立していたため、イスラエルにとって有益とみなされることもあった。 ヨルダン川西岸の大学キャンパスでは、この2つのグループ間の暴力が時折勃発した。ガザ地区のイスラエル軍総督、イツハク・セゲフ[Yitzhak Segev,]准将は、PLOや共産主義者への対抗手段として、イスラム運動にいかに資金を提供したかを語ってくれたことがある。 『イスラエル政府は私に予算を与え、軍政はモスクに与える』と、彼は言った。」

ドレフュスが指摘するように、「1980年代、ガザとヨルダン川西岸地区のムスリム同胞団は、イスラエルの占領に対する抵抗を支持しなかった。 そのエネルギーのほとんどは、大学のキャンパスでPLO、特にその左翼派と戦うことに費やされた。」

1987年のパレスチナ蜂起の後、PLOはハマスとヤシンを「反動的アラブ政権の直接支援を受けて・・・イスラエル占領と結託して」行動していると非難した。

ヤーセル・アラファト[Yasser Arafat]はイタリアの新聞にこう訴えた: 「ハマスとはイスラエルの創造物であり、シャミール[Shamir]首相の時代には、彼らに資金と700以上の施設(学校、大学、モスクなど)を与えた。」

アラファトはまた、イスラエルのラビン[Rabin]首相がホスニ・ムバラク[Hosni Mubarak]の立ち会いのもとで、イスラエルがハマスの支援をしていることを認めたと主張した。

本質的には、アナリストのレイ・ハンナニア[Ray Hannania]が、『カウンターパンチ』誌に掲載された『Sharon's Terror Child』で指摘したように、「和平プロセスを弱体化させることがハマスの真の標的であり、リクードの政治的野心に加担してきた」のである。 イスラエルとパレスチナの交渉担当者が和平実現に向けて大きな一歩を踏み出そうとしているように見えるたびに、ハマスのテロ行為が和平プロセスを頓挫させ、両者の距離を縮めてきた。」

カレント・ヒストリー誌の『ハマスとパレスチナにおける政治的イスラムの変容」で、サラ・ロイ[Sara Roy]はこう書いている:

「ハマスの指導者が標的にされている一方で、イスラエルは同時に、(パレスチナ自治政府の)究極的な崩壊を確実にする方法として、またパレスチナのナショナリズムを完全に消滅させるための努力として、世俗的なナショナリストの派閥よりもハマスの方を推進するという、古くからの戦略を追求していると主張するアナリストもいる。」


結論

ムスリム同胞団、そしてハマス、アルカイダ、ビンラディンといったその多くの姿は、常に存在し、捏造された「テロリスト」の脅威として機能し、国内での抑圧的な措置や海外での帝国主義的な目的の拡大を正当化するための口実として常に利用されている。

というのも、「政治的イスラム」の脅威に関するあらゆる美辞麗句にもかかわらず、一般大衆の知らないところで、世界中でムスリム同胞団を操ることが、いまだにアメリカの外交政策の柱となっているからである。



・ハマスはイスラエルがPLOのアラファト対策で創設した武装組織

2023.10.11

https://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/202310110000/

※10月7日にイスラエルを陸海空から奇襲攻撃したハマス(イスラム抵抗運動)は1987年12月、シーク・アーメド・ヤシンらによって創設された。

もともとヤシンはムスリム同胞団の一員としてパレスチナで活動していた人物で、ガザにおける同胞団の責任者に選ばれている。シン・ベト(イスラエルの治安機関)の監視下、彼はムジャマ・アル・イスラミヤ(イスラム・センター)を1973年に創設した。1976年にはイスラム協会を設立し、このイスラム協会の軍事部門として1987年に登場してくるのがハマスである。

ムスリム同胞団は1928年、ハッサン・アル・バンナによって創設されているが、その際にスエズ運河会社から資金を提供されたとも言われている。つまり、少なくとも創設当初はイギリスと深い関係にあった可能性がある。

ところで、PLO(パレスチナ解放機構)の中心的な組織だったファタハ(パレスチナ民族解放運動)を率いていたヤセル・アラファトにアメリカやイスラエルは手を焼いていた。そのアラファト対策のためにイスラエルはハマスを創設している。アラファトのライバルを育て、内部対立させることで運動を弱体化させようとしたのだ。そして目をつけたのがヤシン。

ヤシンは2004年3月、イスラエルに殺害されたが、ヤシンが頭角を現す切っ掛けを作ったのはイスラエルである。その年の11月にアラファトも死亡、PLOの影響力は大きく低下する。その後、パレスチナではハマスが主導権を握った。


死亡直後からアラファトの死に疑問を持つ人は少なくなかった。自然死ではなく殺されたのではないかという疑惑だ。​その疑惑をアル・ジャジーラが9カ月に渡って調査​、アラファトが死の直前まで健康だったことを確認した。しかも彼の衣類や歯ブラシなどから放射性物質のポロニウム210が検出されたという。そこで、遺体の調査を求める声が出ている。

アラファトが登場してくるのは第3次中東戦争の最中。1967年3月から4月にかけてイスラエルはゴラン高原のシリア領へトラクターを入れて土を掘り起こし始め、シリアが威嚇射撃するとイスラエルは装甲板を取り付けたトラクターを持ち出し、シリアは迫撃砲や重火器を使うというようにエスカレート、銃撃戦に発展した。

シリアが農民を銃撃、それを止めるためにゴラン高原を占領したとイスラエルは主張したが、1971年から85年まで国連の事務次長を務めたイギリス人のブライアン・アークハートはそれを否定、シリアが攻撃を始めたわけではないと語っている。

エジプトは1967年5月に緊急事態を宣言、2個師団をシナイ半島へ入れてイスラエルとの国境沿いで防衛態勢をとらせた。その直後にイスラエル軍の戦車がシナイ半島の前線地帯に現れたとする報道が流れ、エジプトは予備役10万人に動員令を出す。そしてガマル・ナセル大統領はアカバ湾の封鎖を宣言した。

イスラエルはこの封鎖を「侵略行為」だと主張、アメリカのリンドン・ジョンソン大統領はイスラエルに対して自重するように求めたとされている。

そこでイスラエルの情報機関モサドのメイール・アミート長官がアメリカを訪問、風向きが変わった。帰国したアミート長官はジョンソン大統領が開戦を承諾、イスラエルの撤兵を求めることもないと説明。そして6月5日にイスラエル軍はエジプトに対して空爆を開始、第3次中東戦争が勃発した。この戦争でイスラエル軍はガザ、ヨルダン川西岸、シナイ半島、ゴラン高原を占領している。

この戦争でアラブ諸国の動きは鈍かったのだが、そうした中、果敢に戦ったのがファタハにほかならない。そのスポークス・パーソンだった人物がヤセル・アラファト、後のPLO議長だ。アラブ諸国の民衆はファタハを支持、アラファトの人気も高まっていく。

第3次中東戦争が勃発してから4日後、アメリカは情報収集船の「リバティ」をイスラエルの沖へ派遣した。この時点でイスラエル軍はエジプト軍を粉砕、モシェ・ダヤン国防相はゴラン高原の占領を決めている。

イスラエル軍はリバティがアメリカの船だということを確認した後、ミラージュ戦闘機や魚雷艇で攻撃する。イスラエル軍機はまず船の通信設備を破壊したが、これは救援を呼べないようにするためだ。

それに対し、リバティの通信兵は寄せ集めの装置とアンテナで第6艦隊に遭難信号を発信することに成功、それに気づいたイスラエル軍はジャミングで通信を妨害してきた。

遭難信号を受信したとき、第6艦隊の空母サラトガは訓練の最中。甲板にはすぐ離陸できる4機のA1スカイホークがあった。艦長は船首を風上に向けさせて戦闘機を離陸させ、艦隊の司令官に連絡する。司令官は戦闘機の派遣を承認し、もう1隻の空母アメリカにもリバティを守るために戦闘機を向かわせるように命じるのだが、空母アメリカの艦長がすぐに動くことはなかった。

リバティが攻撃されたことはジョンソン大統領へすぐに報告されたのだが、ロバート・マクナマラ国防長官は第6艦隊に対し、戦闘機をすぐに引き返させるようにと叫んでいる。後にマクナマラはソ連軍がリバティを攻撃したと思ったと弁明しているが、当初の筋書きではそうなっていたのかもしれない。

ジョンソン政権で秘密工作を統括していた「303委員会」で、1967年4月にフロントレット615という計画が説明されたとされている。リバティを潜水艦と一緒に地中海の東岸、イスラエル沖へ派遣するというもので、実際、後にリバティや潜水艦は派遣された。

この計画に含まれるサイアナイド作戦はリバティを沈没させ、その責任をエジプト、あるいはソ連に押しつけて戦争を始めようとしたという推測がある。この推測が事実なら、トンキン湾事件の再現をジョンソン大統領は狙ったということになり、大統領がイスラエルに対し、戦争を自重するように求めたという話は怪しくなる。

この後、アメリカ政府は関係者に箝口令を敷き、重要な情報を公開していない。イスラエルでは機密文書が公開されるのは50年後と決められている。イスラエルが開戦に踏み切った目的、戦争の実態、リバティを攻撃した本当の理由などを知ることのできる資料が2017年には明らかにされるはずだったが、10年7月にベンヤミン・ネタニヤフ首相は情報公開の時期を20年間遅らせることを決めている。勿論、2037年に公開される保証はない。

第3次中東戦争の結果、約43万9000人の新たなパレスチナ難民がヨルダン川東岸へ移動した。それに対し、国連安全保障理事会は1967年11月に242号決議を採択、交戦状態の終結と難民問題の公正な解決、そして戦争で占領した領土からイスラエル軍は撤退するように求めている。

当時の国務長官、ウィリアム・ロジャーズはこの決議に基づいて解決しようとしたようだが、ヘンリー・キッシンジャー大統領補佐官はエジプトとイスラエルだけの部分的な和平にとどめようと考えていた。

第3次中東戦争で人気になったファタハ/PLOをアラブ諸国やイスラエルの政府は警戒、1970年9月、ヨルダン軍が国王を無視してPLOに対する攻撃を開始した。いわゆる「黒い9月」の幕開けである。

ヨルダンは軍隊をパレスチナ難民のキャンプに突入させ、翌年にはPLOの戦闘員約5000名をアジュルーンの森で虐殺している。アラファトの家も特定して戦車の砲撃で破壊、ヨルダン軍はこの攻撃でアラファトを殺したと考えたのだが、間一髪のところで避難している。

この攻撃を見てナセルはフセイン国王に対し、国王が軍を掌握できていないのならエジプト軍を介入させ、停戦させると伝える。さらにカイロに集まったアラブの指導者たちはナセルに対し、アンマンへ代表を送る権限を与えたとも付け加えている。

その代表がアンマンに到着するとヨルダン軍の特殊部隊が張り付いて監視、アラファトが現れたら殺そうとする。そこでアラファトと接触した彼は服を交換し、アラファトをアンマン空港へ移動させたという。

カイロに着いたアラファトはフセイン国王と握手、ヨルダンの内戦は終結した。ナセルが心臓発作で急死したのはその翌日のことである。


・ウクライナとガザを結ぶアメリカの武器弾薬

2023.10.12

※ウクライナでロシア軍が大規模な軍事作戦を始めた可能性がある。​旧ソ連圏諸国を除く国々にガソリンやディーゼルを輸出することをロシア政府が禁止した​ことから、一部の人はそうした展開を推測していた。

アメリカ/NATOの命令でドンバスへ攻め込もうとしてきたウクライナ軍だが、失敗した。ここにきてロシア軍は進撃を開始、ドニエプル川まで押し戻されそうな雲行きだ。ウクライナ軍の第一防衛線は突破されたという。

キエフのネオ・ナチ軍は6月4日に「反転攻勢」を開始、それに対してロシア軍は「スロビキン防衛線」を構築するなど守りを固め、「バンザイ突撃」を繰り返す敵を殲滅してきた。​この防衛線をネオ・ナチ軍は突破できず、8万3千人以上の兵士を戦死させた​と言われている。​昨年2月24日にロシア軍がウクライナに対するミサイル攻撃を始めて以来、約50万人のウクライナ兵が戦死した​という。

ベン・ウォレス前英国防相はテレグラフ紙への寄稿文の中でウクライナ兵の平均年齢は40歳を超えていると認めた​。そのうえでウクライナ政府に対し、もっと多くの若者を前線へ送り出せと要求しているが、これは動員が免除されている大学の学生や研究員、あるいは年少者を戦闘に投入しろと言っているに等しい。「学徒動員」や「少年兵」だ。

そうした中、10月7日に地中海東岸ではガザを拠点とするハマスの戦闘員がイスラエルを陸海空から奇襲攻撃した。数百人の戦闘員がイスラエル領へ侵入したほか、ガザからイスラエルに向かって5000発以上のロケット弾でテルアビブの北まで攻撃されたという。「アル・アクサの洪水」だ。


​今年4月5日、イスラエルの警官隊がイスラムの聖地であるアル・アクサ・モスクの内部へ突入​、​10月3日にはイスラエル軍に保護されながら832人のイスラエル人が侵入​、イスラエル軍は60歳未満のイスラム礼拝者がモスクへ入ることを禁じている。イスラムに対する冒涜だ。

この攻撃でハマスが使った武器の一部はウクライナ軍から闇市場へ流出したものだという話が流れている。アメリカ/NATOがウクライナへ大量に供給した兵器の約7割が闇市場へ流れていると言われ、それがハマスの手に渡っても不思議ではない。

ガザで大規模な陸上作戦を開始するというイスラエル軍も武器は必要になる。ハマスはガザ全域に兵力を分散させているが、地下施設も張り巡らされていると言われている。イスラエル軍がガザに突入すると市民の犠牲者は増えるだろうが、ハマスに勝つことは容易でない。

イスラエルにはアメリカ軍の武器弾薬が保管されていて、それをイスラエル軍は使用してきた。そこにある武器弾薬をウクライナへ供給することでイスラエル政府とアメリカ政府は合意していると言われているが、そうなるとイスラエル軍はガザでの戦闘で弾薬不足に陥る可能性が高い。キエフ政権へ渡さなければウクライナ軍の弾薬不足が一層深刻になる。

現段階でも武器弾薬の生産能力でアメリカはロシアより劣っている。そこでイスラエル、韓国、そして日本にまで声をかけているのだ。アメリカ国防総省は自分たちの倉庫から200万発以上の155ミリ砲弾を渡したと言うが、これはロシア軍が生産した砲弾の数分の一にすぎないとされている。

ハマスによる今回の攻撃はイスラエル政府の計算なのかもしれないが、結果が計算通りになるとは限らない。


・イスラエルはハマスの攻撃を事前に知っていた – 米国議員

RT 2023/10/11

※ハマスによるイスラエルに対する大規模攻撃の 3日前、エジプト当局はイスラエル当局に対し、そのような作戦が差し迫っていると警告していたと米下院外交委員会のマイケル・マッコール委員長が 10月11日、記者団に語った。

マコール氏は国会議事堂での非公開情報会見後、 「エジプトが 3日前にイスラエルに対し、このような出来事が起こる可能性があると警告していたことは承知している」と述べた。

「機密事項にはあまり触れたくないが、警告はイスラエル側に伝えられていた」とマッコール氏は続けた。

AP通信は月曜日、ハマスが「何か大きなこと」を計画しているというエジプトからの再三の警告をイスラエル当局が無視したと報じた。AP通信の報道では、これらの警告がいつ頃行われたとされるのかについては明らかにされていない。

ハマスは土曜日にガザからイスラエルにロケット弾の集中砲火を開始し、その後、戦闘員は国境を越えてなだれ込み、パレスチナ飛び地近くのユダヤ人入植地を襲撃した。

イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相はこれに応じて宣戦布告し、ガザへの空爆を開始した。

その後イスラエルはレバノンとシリアからロケット弾攻撃を受けており、政府統計によると水曜日の時点でイスラエル人 1200人以上が死亡、3200人が負傷している。パレスチナ保健省によると、これまでに少なくとも 1100人のパレスチナ人が死亡、5300人以上が負傷した。

マコール氏がワシントンで記者団に語った直後、匿名のエジプト当局者はタイムズ・オブ・イスラエルに対し、エジプトの工作員は計画されたハマスの攻撃についてイスラエルの当局者に警告したが、この警告はネタニヤフ首相の事務所には届かなかった可能性があると語った。


・スラエル建国から続くパレスチナ人に対するアパルトヘイト政策への怒り

2023.10.17

https://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/202310170000/

※シーモア・ハーシュによると、前回、つまり​2009年に返り咲いた時、ベンヤミン・ネタニヤフはPLOでなくハマスにパレスチナを支配させようとした​。そのため、ネタニヤフはカタールと協定を結び、カタールは協定に基づいてハマスの指導部へ数億ドルを送り始めたという。

こうした経緯があるため、今回のハマスによる攻撃はネタニヤフの偽旗作戦ではないかと推測する人も少なくない。


以下「In Deep」様より転載

https://indeep.jp/false-apocalypse-or-911-2023/

・世界で最高クラスの軍隊と諜報がこんなうっかりを?

※現在、中東で起きていることについて、この事案は、一般的に、武装集団ハマスがイスラエルに「奇襲」をかけたというニュアンスで伝えられます。

しかし、その攻撃の「日」を知り、

「こんな日に国境とか何の警備もしていなかったわけ?」

と不思議に思いました。

攻撃があった 10月7日という日は、ヨム・キプール戦争(第四次中東戦争)から、ちょうど 50年目なのです(正確には、50年と 1日)。

こんなモニュメントの日に、世界最高峰といわれる諜報活動能力を持つイスラエル国防軍が「ふいを突かれた?」。

そりゃないない、とは思いました。


ハマスの攻撃をイスラエル国防軍の諜報部が見逃したのは、あまりにも不自然です。

英ガーディアン紙で取り上げられた、イスラエル諜報部隊のガザでの情報追跡システムは以下のように展開されているのだそうです。


イスラエル諜報部の情報ネットワーク

イスラエル諜報部隊8200のメンバーは、次のように述べた。

「情報提供者のネットワークはパレスチナ占領地をほぼ網羅している。言うまでもなく、イスラエルはペガサス・スパイ・ソフトウェアなどの高度な監視技術を利用してハマスの通信を監視しており、パトロール、カメラ、地動センサーのネットワークを使用してガザとの国境の壁をミリ単位で制御し、遠隔制御システムを使用してガザ地区を監視していることは言うまでもない」

しかし、こうしたすべてにもかかわらず、イスラエル諜報機関はハマスの大規模な攻撃の準備を知らなかったということになる。

国境の壁を突破しようと集結する大量のハマスの戦闘員に気づかなかったと。



世界で最も洗練された情報探知システムをガザ地区の全域に展開しているようで、「国境の壁をミリ単位で制御」しているのに、

「数百人の国境突破はわからなかった」

と。


元イスラエル国防軍の諜報隊員の方も、攻撃のあったその日にツイッターに動画をアップして、「イスラエルが知らなかったはずがない」と述べられていました。エフラト・フェニグソンさんという方です。以下のように述べています。


元イスラエル国防軍の諜報隊員エフラト・フェニグソンさんの見解



私は25年前にイスラエル国防軍の諜報部隊に勤務していました。

…イスラエルは世界で最も先進的でハイテクな軍隊の一つを持っています。なぜ国境突破に対して何の反応もなかったのでしょうか? 

イスラエルがこれから何が起こるかを知らなかったはずがありません。この奇襲攻撃はあらゆる面で計画された作戦のように見えます。何かが非常に間違っています。


さらにはその後、イスラエル軍の国境監視兵が、10月7日以前から、イスラエル軍にハマスの活動についての警告を伝えていたのですが、

「警告は、イスラエル軍に無視された」

と、イスラエルのメディアのインタビューに語っています。


・10月7日以前のハマスの活動を警告する警告は無視されたとイスラエル監視兵士が語る

https://www.zerohedge.com/geopolitical/warnings-about-alarming-pre-oct-7-hamas-activity-ignored-say-israeli-surveillance



軍への警告が無視されたことを告発したイスラエル国防軍戦闘情報隊のヤエル・ローテンヘルグ氏。

※10月7日のハマス軍とイスラエルに対するテロ攻撃は多くの人にとって衝撃だったが、イスラエル国防軍(IDF)の監視兵士たちには衝撃ではなかった。

彼らは、ガザ国境沿いでの警戒すべき観測に対する警告が上層部によって無視されたと述べている。

イスラエルメディアとのインタビューで、イスラエル国防軍戦闘情報隊の兵士たちは、攻撃の少なくとも3カ月前から、ハマスのメンバーがフェンスラインに沿って民兵訓練を行ったり、穴を掘ったり、地図でその地域を調査したり、地表や地質を調査したりしているのを観察したと述べた。爆発物を設置して爆発させることもできる状態だった。

ヤエル・ローテンベルグ氏とマヤ・デシアトニク氏は 10月25日、イスラエルのカン・ニュースのインタビューに応じ、不気味な活動に関する繰り返しの警告の報告に対して、イスラエル国防軍が耳を傾けなかったことに対して怒りを表明した。

このふたりは、ガザ国境から南東 800m弱のナハル・オズ・キブツ近くのハマスの基地攻撃で生き残った唯一の戦闘情報軍兵士だったことで、彼らの怒りはさらに増大した。


イスラエル軍は、「国境監視情報兵士たちの警告を無視」するどころか、10月7日当日には「警護を完全に放棄していた」のです。

ハマスの攻撃が「起きてほしい」としていたかのような動きです。

また、レオ・ホーマンという独立系ジャーナリストの方が書いた記事の以下の部分も、そのようなことでしょうか。抜粋です。


「グローバリストは第三次世界大戦で第二戦線を開く」より

…メディアは、ハマスがイスラエルに奇襲攻撃を開始し、油断していたイスラエル国防軍を捕まえたと伝えている。

世界で最も技術的に近代的で、最も熟達し、最も高度な訓練を受けた治安部隊であるイスラエル国防軍が、この攻撃が来ることを予見していなかったはずはない。彼らが不意を突かれるなどということは考えられないことだ。

イスラエルに対する最後の大規模攻撃である 1973年10月7日のヨム・キプール戦争から 50周年を迎えたその日に、イスラエル国防軍は宿敵からの攻撃に対する準備を何もしていなかったとでもいうのだろうか。

さらに、攻撃当時、国境地帯は無人であり(※ 警備されていなかったということ)、また無防備なまま放置されていた。

危険なガザ国境の数ヤード内で、他国からの観光客が文字通りダンスパーティーをしていた国際音楽祭のすぐ隣のいくつかの地域を含む 29の異なる場所で国境がいとも簡単に突破された? そのようなことは理解できない。


ここまでです。

ここにある「国際音楽祭」というのは、テクノなどをかけて若者たちが踊る Rave と呼ばれる享楽的なイベントで、そこをハマスが襲撃したのでした。ガザに近い場所にもかかわらず、警護ナシでした。

これも、イスラエル国防軍が国境を警備していれば、何のことはなく侵入を阻止できたはずです。

(中略)

もちろん、ここまで書いたようなことが単なる私の思い込みで、報じられている以下のような状況だったのであれば、「奇襲」だったのでしょうが。しかし、それはそれで、今後イスラエルが勝てる可能性はないことを意味するものでもありますが。


・イスラエル国防軍の諜報部隊には、情報収集能力がまったくない

・世界最強と言われるイスラエルの防空システム(アイアンドーム)は、ハマスの砲撃にまったく歯が立たなかった

・イスラエル国防軍は、イスラエルの国境を警備などしない


まあ…やっぱり、そんなわけないよなあとは思います。


・中国 米メディアの「ウクライナ武器のハマスへの転売」に注目(Yahoo!ニュース 2023年10月13日)

遠藤誉中国問題グローバル研究所所長、筑波大学名誉教授、理学博士

※中国政府の通信社電子版「新華網」は、盛んに米メディア由来の「アメリカがウクライナに渡した武器の一部がハマスに渡っているのではないか」という報道を分析している。そこにはアメリカから常に「中国が秘かにロシアに武器支援をしているのではないか」という疑いをかけられてきたことに対する皮肉が込められているのかもしれない。

◆新華網 「ウクライナは対ウ支援武器をハマスに転売か?」
 
10月11日の新華網は<「対ウクライナ支援武器をハマスに転売か?」に対するウクライナの回答は、欧米側の懸念を証拠づけている>という見出しで、ウクライナ支援のために欧米から送られた武器が、結局はハマスなどに渡っていることを、皮肉を込めて報道している。

それ以外にも中国共産党機関紙「人民日報」の姉妹版「環球時報」やその他数多くの政府系メディアの報道をまとめると、おおむね以下のような流れになる。

●10月8日、米下院議員(共和党)のMarjorie Taylor Greene氏がX(ツイッター)に投稿した。曰(いわ)く、「私たちはイスラエルと協力して、ハマスがイスラエルに対して使用したすべてのアメリカ製兵器のシリアル番号を追跡する必要がある。それらの武器はアフガニスタンから来たのか?それともウクライナから来たのか?答えは両方である可能性が高い」と。

●ウクライナ支援のために欧米から送られた武器の一部は、ハマスなど世界各地のテロ組織に転売されているのではないかという問題に関して、2022年12月7日にアメリカのThe Hill(ザ・ヒル)(ワシントンにあるアメリカの政治専門紙)が<Preventing US weapons from escaping Ukraine is a challenge(アメリカの武器がウクライナから流出するのを防ぐのが課題だ)>という見出しの報道をした。ウクライナが武器の転売をしていることは早くから知られている。

●Greene氏のX(ツイッター)に対して、ウクライナ国防情報局は公告で10月9日に、この噂を厳しく非難した(中国の報道にはオリジナル情報へのリンクがないので、筆者が別途ウクライナ国防情報局の公告<Russia’s Special Services Carrying Out Campaign to Discredit Ukraine in the Middle East(中東でウクライナの信用を傷つけるキャンペーンを実施するロシアの特別サービス)>を見つけたので、ここに貼り付ける)。しかし残念ながら、ウクライナ側の弁明は、むしろ中東における武器の由来に関して、ウクライナが関与していることを逆に裏付けるような内容になっている(と中国側は解説している)。というのは、「絶対にウクライナからの転売などあり得ない!」と明確に否定せずに、「これはロシアが、ウクライナ戦争においてウクライナから獲得した戦利品を、ハマスに渡した可能性がある」と弁明しているからだ。万一、アメリカがイスラエル攻撃に使われたハマスの武器のシリアル番号を調べて、それが、アメリカがウクライナに提供した武器であることが判明したときに「それはロシアのせいだ」と弁明できる準備をしているからだ(というのが、中国側の解釈である)。

●また、ウクライナ側は「ロシアが、ウクライナが欧米からの支援によって提供された武器を、テロ組織に転売しているというフェイクニュースを流すことによって、欧米がウクライナに武器支援をしなくなるようにするためのロシアの情報戦に過ぎない」と主張してきたが、実は転売の可能性を最初に言い出したのはアメリカだ(と、中国側は主張している)。(中国の報道の概略は、おおむね以上)

◆最初にウクライナの武器転売を言い出したのはアメリカ
 
たしかに中国が主張する通り、「欧米から提供された武器をウクライナが他の組織あるいは国に転売する危険性がある」という趣旨の警告を発したのはアメリカだ。

ワシントンにあるケイト―研究所(CATO Institute)は、早くも2022年3月1日に、<Sending Weapons to Ukraine Could Have Unintended Consequences(ウクライナに武器を送ることは、意図しない結果をもたらす可能性がある)>という見出しで、「ウクライナに、より多くのアメリカ製武器を提供することは、違法な武器密売の急増を引き起こす可能性がある」を副題とした論考を発表している(作者はジョルダン・コーエン)。論考の中でコーエンは、「ウクライナ戦争が始まる前から、バイデン政権は、あたかもアメリカが関係していないように装う支援行動設計に基づき、ウクライナにさまざまな形での資金調達や武装訓練を提供する以外に、数多くの武器を提供していた。しかしウクライナにはこれまで、武器を闇市(やみいち)に流す習慣があるので、今回のウクライナに対する武器支援も転売されていく可能性が高い」と分析している。

2022年12月になると、世界のいたるところでウクライナの武器横流しへの疑念が報道されるようになり、日本の時事通信も12月20日の記事<国際支援の陰で汚職懸念 武器流用や着服の疑いも―有識者ら「監察機関設置を」・ウクライナ>でウクライナの武器の転売・横流しの可能性を報じている。

事実、ウクライナのレズニコフ国防相が腐敗で9月3日に更迭されており、後任に「国有財産基金」のトップ、ウメロフ氏を就任させることになったようだが、「国有財産基金」って、腐敗のど真ん中ではないかと、ややたじろぐ。

また10月11日には<10億円横領容疑、国防省高官2人拘束 ウクライナ>というニュースが世界のあちこちで報道されているので、ハマスへの武器転売に関するウクライナ国防情報局公告の信用性もガタ落ちではないだろうか。

◆ウクライナの「腐敗度」ランキング
 
前掲の時事通信社の記事<国際支援の陰で汚職懸念 武器流用や着服の疑いも―有識者ら「監察機関設置を」・ウクライナ>では、【2021年の汚職レベル調査で、ウクライナの「清潔度」は180ヵ国中122位。同国政府は14年以降、汚職撲滅に向け専門捜査機関設置などの対策を進めてきたが、「根絶への道のりは長い」(カリテンコ氏)のが現状だ】と書いている。

そこでトランスペアレンシー・インターナショナル(TI)が公開している腐敗認識指数(Corruption Perceptions Index, CPI)の2022年版を見てみると、全180ヵ国の中で、ウクライナは116位(100点満点で33点)と、相変わらず「腐敗度」が高い。

ちなみに中国は45点で65位、日本は73点で18位だ。

もし習近平政権に入ってからの反腐敗運動がなかったら、中国もウクライナと大差ない状況だっただろうが、中国の場合は軍部が腐敗の巣窟になっていたので、習近平としては何としても軍事力を高め産業のハイテク化を進めるために反腐敗運動を強行したが、それがいくらか功を奏しているのだろう。

それでもなお、ウクライナ同様、中国人民解放軍ロケット軍の高官2人が腐敗で更迭されたし、国防部長(国防大臣)も、そのあおりを受けた腐敗なのか、消息不明のままだ。香港メディアがロケット軍高官2人の腐敗疑惑に関して報じているが、中国大陸では、更迭された方の高官に関しては全く触れず、その代わりに昇進した別の2人に関して報道したのみである。まだ罪状が確定していないためとは思うが、それにしても何とも中国的なやり方だ。

したがって、このような中国にはウクライナの武器転売を、こんなにまで大きく取り上げて分析する資格はないようにも思われるのだが、しかし、アメリカに対して「ハマスが大規模奇襲を実行できたのは、アメリカのせいだ!」と言いたいものと推測される。

ところで、中国が取り上げたことによって、より鮮明になったウクライナの腐敗問題を、日本はどう受け止め、どう対処するのかということも考えなければなるまい。日本にはまだ貧乏であるがゆえに自殺する人もいれば犯罪に走る人もいる。そのような日本国民の血税が、総額で76億ドル(約1兆400億円)もウクライナ支援に使われているようだ。日本国民には、そのお金がウクライナの特定の人を潤しているのではないか、あるいはテロ組織に流れてはいないかなど追跡する権利があるだろう。それくらいの「真の善意」はあってもいいのではないかと思う。


遠藤誉

中国問題グローバル研究所所長、筑波大学名誉教授、理学博士
1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。中国問題グローバル研究所所長。筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会学研究所客員研究員・教授などを歴任。日本文藝家協会会員。



「マスコミに載らない海外記事」様より転載

http://eigokiji.cocolog-nifty.com/blog/2023/10/post-e364ab.html

・ハマスがどこにいるか突然正確に知っているイスラエル諜報機関

ケイトリン・ジョンストン

2023年10月13日

※先週、ハマスが何をしようとしているかイスラエルは知らなかったのに、今週、ハマスが隠れている全てのモスクや学校や病院を知っているのは興味深い。

ウソの帝国で皆様が暮らす場合、非常に愚かな多くのことを信じるよう要求される。今週、信じるよう我々が要求されている最も愚かなことは、土曜日のハマス攻撃ですっかり驚かされたほどイスラエル諜報機関が実に無能なのと同時に、執拗なガザ爆撃作戦で破壊している全ての建物が、もっぱらハマスのものに限られていることだ。


本記事執筆時点で、三分の一が子供の1,500人以上のパレスチナ人を殺戮しているガザで継続中の攻撃に関し「ハマスの標的」という表現が、ここ数日ニュースメディアの至るところにある。

「ハマスの標的に対しイスラエルは大規模攻撃を行っている」とCNN見出しにある。

「ハマスの標的に対しイスラエルは「大規模攻撃」を行っている」とABCニュース記事題名にある。

「ハマスの標的に対し、イスラエルはこれまでに6,000発の爆弾を投下したと言っている」とワシントン・ポスト報道にある。

おやおや、これら6,000発の爆弾それぞれが、民間ビルでなく「ハマス標的」を狙ったものだとわかるほど、ガザをイスラエルは実に良く知っているに違いない。

フィラデルフィアの広さの包囲された土地で、ハマスが動力付きパラグライダーやドローンやモーターボートを使用する攻撃準備をしていた時、この正常視力は一体どこにあったのだろう? エジプト諜報機関が攻撃があると彼らに警告した後でさえ、イスラエル諜報機関は、どうして攻撃準備を検知できなかったのだろう。ハマスでさえ自らの作戦の成功規模に驚いたと報じられるほど、どうして彼らは見事に失敗したのだろう? 先週彼らはハマスの活動に対し、モグラのように視力が非常に乏しかったのに、今週はワシの目を持っていると信じるのは本当に合理的だろうか?


水曜、イスラエルが「戦時国際法に従って活動する」ことがいかに重要かバイデン大統領が多少騒いだが、イスラエルがガザで越えてはならない「一線」という概念をアメリカ国家安全保障補佐官ジェイク・サリバンが無視するのを聞く前でさえ、無内容な言い訳にしか聞こえなかった。

主流の帝国擁護者さえ、それを受け入れていない。ロッキード・マーティンが支援するポリティコ記事で、ハマス攻撃の深刻さを考えると「イスラエルの猛烈な反撃は理解しやすい」とアンドリュー・ウォードは述べており「ハマスの野蛮な攻撃に対応する際、イスラエルが戦時国際法を遵守するようバイデン政権は望んでいるが、エルサレムは耳を傾けていないようだ」と書いている。

「注意を払っているというイスラエルの主張に大量の報道が異論を唱えている」とワードは書いている。「モスクや、病院、学校、医療施設、救急車も空爆されている」

「その多くがハマスや戦術を支持していないガザの人々は、この地区が包囲される中、逃げる場所がない」とワードは付け加えている。「7棟の病院と10棟の国連緊急避難所に爆弾の金属片が飛来した。状況が非常に悪化しているため、既に電気、水、物資が不足している病院が遺体安置所に変わる危険性があると赤十字は述べた。」


もちろんイスラエルは戦時国際法を遵守していない。彼らは遵守するふりさえしていない。ガザとレバノンでのイスラエルによる白リン弾の「違法無差別」使用を非難する声明をヒューマン・ライツ・ウォッチが発表したばかりで、イスラエル国防軍の計画はガザを「建物がない」「テント街」に変えることだとイスラエル治安当局者がイスラエル報道機関に語った。

これは全て公に入手可能な情報なのに、ガザでのイスラエル爆撃作戦を説明する際、欧米マスコミは「ハマスの標的」という表現を使う勇気があるだろうか? 申し訳ないが、それは認知症だ。そのようなことをする唯一の理由はプロパガンダ実施に他ならない。

ガザの建物を破壊する際、イスラエルはハマスを標的にしているという主張は、爆撃作戦中、ハマスが地下に避難している事実によって一層損なわれる。ジャーナリストのシャーミン・ナルワニがTwitterで説明した通り「数え切れないほどのイスラエル爆撃作戦後に学んで、ハマス幹部はガザの地下で暮らしている。現在、イスラエルのテロ機によってガザで虐殺されているのはパレスチナ民間人とイスラエル人捕虜だけだ。」

実際、イスラエル諜報機関がハマス攻撃に驚いたという主張と、しかもガザ攻撃でイスラエルはハマスのみを標的にしているという主張は、どちらも非常に疑わしく厳しい精査に値する。パレスチナ文民を殺すのをイスラエルがひどく嫌がったことは一度もなく、パレスチナ領域のガザ殲滅という長年の狙いを正当化するため、イスラエル諜報機関が攻撃を見過ごしたわけではないと確信する理由もない。どちらの主張も誤っている可能性があるが、私がいる場所からは、両方が真実である可能性は非常に低そうだ。

ガザでのイスラエル爆撃作戦を支持したいなら、どうぞご勝手に、土曜日の攻撃に関する公式説明を無批判に受け入れたいなら、ご自由に。ただし私の足に小便をしておいて、雨が降っているとは言わないよう願いたい。


・説明のつかない犯罪性:ネタニヤフ首相はハマスとアルカイダのテロリストを支援している イスラエルはイスラム国やアルカイダに積極的に「協力」している

ミシェル・チョスドフスキー
グローバル・リサーチ編集者

※イスラエルのネタニヤフ首相とその政府の犯罪性と陰湿な役割について疑念を抱いている人たちへ:

1.ネタニヤフ首相はハマスのテロリストを支援し、資金を提供している

「パレスチナ国家の樹立を阻止しようとする者は、ハマスへの支援や送金を支持せざるを得ない......これは我々の戦略の一部である。」

(ベンヤミン・ネタニヤフ、2019年3月のリクード党クネセト議員会議での発言、Haaretz、2023年10月9日、強調)

「ハマスがパレスチナ自治政府のパートナーとして扱われたのは、アッバスがパレスチナ国家の建設に向かうのを阻止するためだった。ハマスがテロリスト集団から、イスラエルがエジプトを通じて交渉を行う組織へと昇格し、カタールから数百万ドルの入ったスーツケースをガザ交差点を通じて受け取ることが許された。」

(Times of Israel、2023年10月8日、強調)


2.ネタニヤフ首相はアルカイダのテロリストを支援し、リクルートした記録もある。
2011年3月の対シリア戦争開始以来、イスラエル国防軍はアルカイダとISISの傭兵を積極的にリクルートしてきた。


3.2つの病院の物語

ネタニヤフ首相は(イスラエル国防軍と最新のMSMの報道によれば)ガザ市のアル・アハリ病院(2023年10月17日)の爆撃を命じたわけではないが、2013年に占領下のゴラン高原にイスラエル国防軍の野戦病院を創設したことは記録されている。

BBCは、アル・アハリ病院への爆撃はイスラエルによるものではなく、ハマスによるものだと主張している。ハマスの背後には誰がいるのか?

「イスラエルは、イスラエル空軍の攻撃がなかったことを作戦記録から明確な証拠を持っていた」

イスラエル国防軍によると「この爆発は、イスラム聖戦と呼ばれるハマスに同調するテロ集団が近くの墓地から発射したロケットの誤射によるものである。(エポック・タイムズ、2023年10月18日)

偶発的なのか、意図的なのか?ハマスとパレスチナの 「イスラム聖戦」(「ハマスに同調する」)の両方がイスラエル諜報機関(モサド)によってコントロールされていることは、十分に立証されている。


4.ネタニヤフ首相の 「アルカイダ病院」

2014年、ネタニヤフ首相はモシェ・ヤアロン国防相、イスラエル国防軍参謀総長のベニー・ガンツ中将とともにゴラン高原のIDF病院を訪れた。ネタニヤフ首相は、「シリア国内におけるグローバル・ジハード勢力の存在と、イスラエルとシリアの国境フェンスを強化するために行われている作業」について説明を受けた。(エルサレム・ポスト、2014年2月18日)


5.負傷したアルカイダの傭兵と握手するネタニヤフ首相

「2014年2月18日、占領下のゴラン高原のシリアとの国境にあるイスラエル軍野戦病院で、負傷した傭兵(アルカイダのテロリスト)の隣に立つイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相とモシェ・ヤアロン国防大臣」

皮肉なことに、 IDF野戦病院はIDF特殊部隊が調整した作戦でアルカイダ傭兵を支援するために設立されたが、 ネタニヤフ首相はイランを「世界中のテログループを支援している」として何気なく非難した。(エルサレム・ポスト、2014年2月18 日)



・マイク・ストーン - ハマス対イスラエルではなく、悪魔崇拝者対人類だ

2023年10月19日

https://henrymakow.com/2023/10/mike-stone---its-satanists-vs-.html

※ハマスとはイスラエルであり、アル・カイダとはイスラエルであり、ISISとはイスラエルである。ISISは文字通りイスラエル秘密情報局の略だ。

イスラエルはこれら3つの組織とその他多くの組織に資金を提供し、運営している。それは統制された野党と呼ばれている。

ジョン・マケインのパソコンから見つかったISISの斬首ビデオの偽物を覚えているだろうか?マケインはあの作戦の実行と資金提供に深く関わっていた。彼はまた、ウクライナ政府転覆の実行と資金提供にも関与していた。

今テレビでご覧になっているのは芝居にすぎない。一部の人間にとっては致命的な結果をもたらす劇場だが、それでも劇場だ。

現在あなたが目にしている、「保守的」な評論家やコメンテーターたちは、「イスラエルとともに立つ」ことを要求しているが、同じ演劇の一部である。彼らはモッキンバード・プレスの一員であり、プロパガンダを広めるために多額の報酬を得ている。

今あなたが目にしている、「保守派」コメンテーターと同じことを言っているクズ政治家たちも、多額の報酬を得ている。しかしそれ以上に、彼らは自分たちがロリコン・レイプ犯であることを暴露されないために必要なことをしているのだ。ジェフリー・エプスタインの武勇伝は何だったと思う?

エプスタインはモサドのエージェントで、自分の島でワイルドなパーティーを開き、著名な政治家、エンターテイナー、社交界の有力者を招待し、彼らが想像を絶する卑劣で醜悪な行為に及ぶ様子を撮影していた。

エプスタインのおかげで、モサドは子どもとの性的恐喝、児童ポルノ、スナッフ・フィルムなどを通じて、ほとんどすべての国会議員を手玉に取った。それとも、イスラエルに関係するあらゆる問題で、彼らがいつも同じ側に立つのは単なる偶然だと思ったのか?

イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は過去4年間、詐欺や収賄などを告発する3つの裁判の被告となった。この数カ月間、何十万人ものイスラエル市民が、ネタニヤフ首相とその政府に抗議するために街頭に繰り出した。バカボックス(=テレビ)を見たか?

戦争状態よりも注意をそらす良い方法があるだろうか?


デジャブの繰り返し

今起きていることは、9.11と大差はない。モサドが資金を提供し、ディープステートのアメリカ人工作員の助けを借りて実行した組織的な攻撃は、報復的な軍事攻撃や他国への侵略を行う口実として誰かのせいにされた。

もしあなたが、どちらか一方を応援したり、デモをしたりしているとしたら、あなたは馬鹿にされているのだ。起こっていることは、パレスチナの人々やイスラエルの人々とは何の関係もない。徹頭徹尾、ディープステートの作戦なのだ。率直に言って、あなたがこの件で感情的になっているのなら、私は驚いている。

暴力の罪のない犠牲者のために感情的に取り乱すのは理解できる。しかし、私が見たり聞いたりしているのは、そういうことではない。私が見聞きしているのは、実際に起きていることとは無関係な、どちらか一方への根深い感情的な執着だ。

私たちは4年間、これまでで最も残忍で強引な心理作戦で、嘘をつき続かれてきた。そのために何千万人もの人々が死に、何百万人もの人々が一生を不自由にされ、傷つけられた。それでも人々は、ウイルスのデマを流したあの嘘つきたちが、今度は自分たちの最新の詐欺について話していることを信じているのだろうか?

誰も予想しなかった「奇襲」?斬首された40人の赤ん坊?おいおい。これは、メディアがこれまで吐いた中で最も露骨な嘘だ。

国民の喉に押し込まれる記事に関しては、鉄則その1を覚えておいてほしい。実際の真実は、メディアが報道していることと正反対なのだ。このことを覚えておけば、もう騙されることはない。



・ハマスはイスラエルがムスリム同胞団から創設、ムスリム同胞団は英国が作った

2023.11.30

https://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/202311290001/

※ガザでの戦闘で注目されているハマスは1987年にムスリム同胞団の中から生まれたが、その際、イスラエルが重要な役割を果たしたことを本ブログでも繰り返し書いてきた。PLOを率いていたヤセル・アラファトの力を弱めるため、ライバルを作り上げることにしたのだ。そこでイスラエルが目をつけたのがムスリム同胞団のシーク・アーメド・ヤシンだ。イスラエルの治安機関であるシン・ベトの監視下、ヤシンは1973年にムジャマ・アル・イスラミヤ(イスラム・センター)を、そして76年にはイスラム協会を設立。そしてハマスは1987年にイスラム協会の軍事部門として作られた。

 ムスリム同胞団は1928年、ハッサン・アル・バンナによって創設されたが、その際、スエズ運河会社の支援を受けている。イギリスのグランド・ロッジをモデルにして、イギリスの情報機関MI6によって組織された。その後、アメリカのCIAに乗っ取られたというが、CIAはMI6を教師として組織されたので、どの程度違いがあるのかは不明だ。

 アル・バンナはムスリム同胞団を組織する過程で「死のカルト」的な思想をイスラムへ持ち込むことになるが、その思想との類似性を指摘されているのが「暗殺教団」とも言われる「ニザリ派」である。

 エジプトのムスリム同胞団は1930年代、カイロの郊外に戦闘員を訓練するための秘密基地を建設したが、教官はエジプト軍の将校が務めていたという。軍の内部に同胞団は食い込んでいたということだ。

 第2次世界大戦の際にムスリム同胞団は秘密機構を創設し、王党派と手を組んで判事、警察幹部、政府高官らを暗殺していく。1940年代にはアンワール・サダトも同胞団と密接な関係にあった。サダトは1970年から81年にかけてエジプトの大統領だった人物だ。(Robert Dreyfuss, “Devil’s Game”, Henry Holt, 2005)

 ムスリム同胞団は1945年2月、そして48年12月にエジプトの首相を暗殺、49年2月には報復でバンナが殺された。その直後に同胞団のメンバーは大半が逮捕され、組織は解散させられたのだが、アメリカとイギリスの情報機関は組織解体から2年半後に復活させている。CIAが新生ムスリム同胞団の指導者に据えたサイード・クトブはフリーメーソンのメンバーで、ジハード(聖戦)の生みの親的な存在だ。

 エジプトでは1952年7月にクーデターで王制から共和制へ移行するのだが、その背後にはCIAがいたと言われている。クーデターの背後にはムスリム同胞団が存在していたものの、実権を握ったのは自由将校団のガマール・アブデル・ナセル。

 この将校団はナショナリストで、コミュニストを押さえ込むために使えるとアメリカは考えたようだが、このクーデターを好ましくないと考えたイギリスは自由将校団の政府を倒そうとする。

 イギリスの動きはアメリカは止めにかかり、ナチスの親衛隊で幹部を務めていたオットー・スコルツェニーのほか、軍人や数百名の元ゲシュタポ将校を送り込んでいる。このグループはエジプトの警察でナチス的な手法を教えた。

 ムスリム同胞団は1954年にナセル暗殺を目論む。その暗殺計画で中心的な役割を果たしたひとりのサイド・ラマダーンは同胞団を創設したハッサン・アル・バンナの義理の息子だ。ナセルはラマダンからエジプトの市民権を剥奪している。

 ラマダンはサウジアラビアへ亡命、そこで世界ムスリム連盟を創設した。西ドイツ政府から提供された同国の外交旅券を使い、ミュンヘン経由でスイスへ入り、そこで1961年にジュネーブ・イスラム・センターを設立した。資金はサウジアラビアが提供したという。この当時、スイス当局はラマダンをイギリスやアメリカの情報機関、つまりMI6やCIAのエージェントだと見なしていたという。(Robert Dreyfuss, “Devil’s Game”, Henry Holt, 2005)

 ところで、イギリスの支配層、つまりシティを拠点とする強大な金融資本は中東を支配するためにサウジアラビアやイスラエルを「建国」した。彼らは19世紀からユーラシア大陸の周辺を支配して内陸部を締め上げるという戦略を打ち出しているが、その戦略にとってスエズ運河は重要な意味を持つ。石油や天然ガスの発見は中東の重要性をさらに高めた。

 こうした戦略は「大イスラエル構想」と合致する。ユーフラテス川とナイル川で挟まれている地域は神がユダヤ人に与えたのだという主張に基づくのだが、ユダヤ教の聖典であるトーラー(モーセ5書)はキリスト教の旧約聖書の最初の部分にあたるが、そこに書かれていることとはニュアンスが違う。ユダヤ教徒はトーラーを守るという条件の下で、その土地に住むことを許されただけなのだ。

 勿論、キリスト教徒やユダヤ教徒だけでなくイスラム教徒も旧約聖書を聖典として扱っているが、それ以外の人びとにとって意味はない。それにもかかわらず、シオニストはエルサレムの南東にあるシオンの丘へ戻る権利がユダヤ人にはあると主張している。

 シオニズムという用語は1893年にナータン・ビルンバウムが初めて使用、96年にはセオドール・ヘルツルが『ユダヤ人国家』という本を出版しているのだが、パレスチナに「ユダヤ人の国」を作ろうとする動きはイギリス政府の方が早い。1838年にエルサレムにイギリスは領事館を建設し、その翌年にはスコットランド教会がパレスチナにおけるユダヤ教徒の状況を調査しているのだ。1891年にはアメリカでウィリアム・ブラックストーンなる人物がユダヤ人をパレスチナに送り出そうという運動を展開し、ベンジャミン・ハリソン米大統領に働きかけている。

 19世紀の後半にイギリスの首相を務めたベンジャミン・ディズレーリはライオネル・ド・ロスチャイルドと親しく、ロシア嫌いで知られていた。ディズレーリは首相時代の1875年にスエズ運河運河を買収した。その際、資金を提供したのはライオネル・ド・ロスチャイルドだった。(Laurent Guyenot, “From Yahweh To Zion,” Sifting and Winnowing, 2018)

 ディズレーリは1881年4月に死亡、その直後からフランス系のエドモンド・ジェームズ・ド・ロスチャイルドはテル・アビブを中心にパレスチナの土地を買い上げ、ユダヤ人入植者へ資金を提供しはじめた。この富豪はエドモンド・アドルフ・ド・ロスチャイルドの祖父にあたる。

 1905年から14年にかけての期間、毎年3万5000人のユダヤ人がパレスチナへ移住、07年にはバーギオラという自警団を編成、09年にはハショメールという組織に発展、それを基盤にして1920年にはハガナが設立された。このハガナがイスラエル軍の中核になる。

 現在、イスラエルの首相を務めているベンヤミン・ネタニヤフの父親であるベンシオン・ネタニヤフはアメリカでウラジミール・ヤボチンスキーの秘書だった。

 ヤボチンスキーは帝政ロシア時代のオデッサ(現在はウクライナ領)で生まれたこともあってか、後に彼はウクライナで独立運動を率いていたシモン・ペトリューラと連携している。ペトリューラはロシアでボルシェビキ体制が樹立された直後の1918年から21年にかけて大統領を名乗るが、その時期に3万5000人から10万人のユダヤ人を虐殺したと言われている。(Israel Shahak, “Jewish History, Jewish Religion,” Pluto Press, 1994)

 1917年11月2日、イギリス外相だったアーサー・バルフォアはウォルター・ロスチャイルドへ書簡を送り、その後、先住のアラブ系住民(パレスチナ人)を弾圧する一方でユダヤ人の入植を進めた。

 1920年代に入るとパレスチナのアラブ系住民は入植の動きに対する反発が強まる。それを抑え込むため、デイビッド・ロイド・ジョージ政権で植民地大臣に就任したウィンストン・チャーチルはパレスチナへ送り込む警官隊の創設するという案に賛成、アイルランドの独立戦争で投入された「ブラック・アンド・タンズ」のメンバーを採用する。この組織はIRA(アイルランド共和国軍)を制圧するために設立され、違法な殺人、放火、略奪など残虐さで有名だった。

 ヤボチンスキーは1925年に「修正主義シオニスト世界連合」を結成するが、その流れの中からリクードも生まれた。1931年にはハガナから分かれる形でイルグンが組織されている。

 その後、ヤボチンスキーはパレスチナに住むユダヤ人に対してイギリス軍へ参加するように求めたが、これに反発したアブラハム・スターンはイルグンを飛び出し、1940年8月に「ロハメイ・ヘルート・イスラエル(レヒ)」を新たに組織する。創設者の名前から「スターン・ギャング」とも呼ばれている。イルグンもレヒもテロ組織と見なされている。

 1933年2月にドイツでは国会議事堂が放火され、これを利用してナチスが実権を握る。この放火はナチスが実行したと言われている。シオニストがナチス政権とユダヤ系ドイツ人をパレスチナへ移住させることで合意したのはこの年の8月。「ハーバラ合意」だ。

 1936年4月にパレスチナ人は独立を求めてイギリスに対する抵抗運動を開始するのだが、39年8月に鎮圧され、共同体は政治的にも軍事的にも破壊された。その際、パレスチナ人と戦った勢力は2万5000名から5万名のイギリス兵や2万人のユダヤ人警察官など。約1万5000名のハガナも含まれている。

 1938年11月にドイツではナチスがユダヤ系住民を襲撃、多くの人が殺され、収容所へ入られ始める。この「水晶の夜」以降もユダヤ教徒はパレスチナでなく、アメリカやオーストラリアへ逃れた。1945年に第2次世界大戦は終結、シオニストは1946年夏までに7万3000人以上のユダヤ人をパレスチナへ運んでいるが、パレスチナへの移住を望むユダヤ人が少なかったため、イラクに住むユダヤ人に対するテロを実行、「反ユダヤ」感情を演出してパレスチナへ移住させたという。シオニストは目的のためならユダヤ人を犠牲にすることも厭わないと言えるだろう。