・リポソーム

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

水溶液中でリン脂質によって形成されるリポソームの模式図。

※リポソーム(英: liposome)は、少なくとも1つの脂質二重層を持つ球形の小胞であり、栄養素や医薬品を投与するための輸送手段として利用することができる。超音波処理(英語版)などの手法で生体膜を破壊することによって調製することができる。

リポソームはほとんどの場合リン脂質、特にホスファチジルコリンから構成されるが、脂質二重層構造との適合性がある限り、卵黄ホスファチジルエタノールアミンなど他の脂質を加えることもできる。不健康な組織に結合するよう、表面リガンドを取り込んだデザインにすることもできる。

よく利用されるリポソームのタイプとしては、複数のラメラ相の脂質二重層からなるmultilamellar vesicle(MLV、多層小胞/ベシクル)、1つの脂質二重層からなるsmall unilamellar vesicle(SUV、小型単層小胞/ベシクル)の他、large unilamellar vesicle(LUV、大型単層小胞/ベシクル)、cochleate vesicle(渦巻型)がある。これらに比べると、1つの小胞がより小さな小胞を含んでいるようなmultivesicular liposomes(MVLs、多胞リポソーム)が使われることは稀である。

似た名称のリソソームや、脂質二重層ではなく単層で構成されるミセル・逆相ミセルと混同しないよう注意が必要である。


発見

リポソーム(liposome)という単語は、2つのギリシャ語の単語 lipo(脂肪)と soma(体)に由来し、組成が主にリン脂質であることから名付けられた。

リポソームはケンブリッジのバブラハム研究所の血液学者Alec D. Banghamによって1961年に発見され、1964年に発表された。BanghamとR. W. Horneが乾燥したリン脂質の負染色(英語版)試料で研究所の新しい電子顕微鏡を試した際、リポソームは発見された。電顕像は明らかに細胞膜に類似しており、細胞膜が脂質二重層構造を持つことの最初の証拠となった。界面活性剤処理の後に内容物を放出する性質(structure-linked latencyと呼ばれる)を持つ閉じた二重層構造であることは、その翌年にBangham、Malcolm Standish、Gerald Weissmannによって明らかにされた。Banghamはこの構造を “multilamellar smectic mesophases”や “Banghasomes”と呼んでいたが、WeissmannはケンブリッジのパブでのBanghamとの議論中に「リポソーム」という名前を付けた。リポソームは彼の研究室が研究していた細胞小器官のリソソームから名付けられ、リソソームも界面活性剤やストレプトリジン処理によって破壊されるstructure-linked latencyを有していた。リポソームは、負染色透過電顕像によってミセルや六方晶相の脂質から容易に区別することができた。


機構

リポソームは水溶液のコアを持ち、脂質二重層の疎水的な膜に囲まれている。コア中の親水性の溶質は、脂質二重層を容易に通過することはできない。疎水的な化学物質は二重層に結合する。したがって、リポソームには親水的な分子も疎水的な分子も搭載することができる。脂質二重層は細胞膜などの他の二重層と融合することができるため、リポソームの内容物を作用部位へと輸送することができる。しかし、この過程は複雑で非自発的である。DNAや薬剤(通常は膜を越えて拡散することはない)を含む溶液中でリポソームを調製し、このリポソームを用いることで脂質二重層を越えた(無差別な)デリバリーが可能となるが、一般的に分配は不均一なものとなる。

また、リポソームは他の方法でドラッグデリバリーを行うようデザインすることもできる。溶解した薬剤が溶液中で荷電するような(すなわち、pHが薬剤のpIの範囲外となるような)低い(または高い)pHでリポソームを形成する。プロトンは一部の膜を通過することができるため、その結果リポソーム内部が中和されると薬剤も中和されて膜を通過できるようになる。このようなリポソームは、細胞への直接的な融合よりもむしろ拡散によってデリバリーを行う。

類似したアプローチとしてリポソームを薬剤の生体内無毒化に利用することもできる。この場合、pH勾配を有する(血中とはpHが異なる)空のリポソームが注入され、リポソームは血流から薬剤を除去しその毒性を防ぐシンクとして機能する。リポソームをドラッグデリバリーに利用する他の戦略としては、エンドサイトーシスを利用したものがある。リポソームはマクロファージの食作用の標的となるような特定のサイズ幅で製造することができ、このようなリポソームはマクロファージのファゴソーム中で分解され、その結果薬剤が放出される。また、リポソームは他の細胞種でのエンドサイトーシスを活性化させるようなオプソニンやリガンドで修飾することもできる。

リポソームを宿主細胞の形質転換やDNAのトランスフェクションに利用する方法は、リポフェクションとして知られている。

遺伝子や薬剤のデリバリーに加えて、リポソームは繊維への色素のキャリアとして、また植物への殺虫剤の、食品への酵素や栄養素サプリメントの、皮膚への美容品のキャリアとして利用することができる。

また、リポソームは造影超音波検査で利用されるマイクロバブル造影剤の外殻としても用いられる。


栄養補助食品

最近までリポソームの利用は主に標的組織へのドラッグデリバリーを目的として利用されていた。しかし、他の状況でのリポソームの多様な能力が発見され続けている。現在では、リポソームによる栄養補助食品の経口投与が実現されようとしている。

極めて少数の栄養補助食品企業が、この新たな利用法へ向けてユニークな分野の開拓を行っている。このリポソーム科学の新たな方向性が採用されている理由の1つには、従来の経口錠剤やカプセルの吸収率やバイオアベイラビリティが低いことが挙げられる。多くの栄養素の経口バイオアベイラビリティや吸収率が低いことは、臨床的によく記述されている。そのため、脂溶性や水溶性の栄養素のリポソーム内への封入は、消化器系による破壊を避け、細胞や組織へのデリバリーを促進する極めて効率的な手法となる。

大量製造されたリポソームの割合に特定の因子が大きな影響を与えることを指摘しておくことは重要である。これらの因子はリポソームへ実際に内包される量やリポソーム自体の実際の品質に影響を与え、リポソームの長期の安定性にも極めて重要な要素である。その複雑だが重要な因子とは、(1)リポソーム自体の実際の製造法、(2)リポソームの調合や製造に用いられたリン脂質の構成と品質、タイプ、(3)内包されたペイロードを保持する、安定で均質な粒子サイズのリポソームを製造する性能、である。これらは栄養補助食品の経口バイオアベイラビリティ向上のためにリポソームを効率的なキャリアとして利用する基礎となる、重要な要素である。


製造法

リポソームの調製法の選択は次のようなパラメータに依存する。

内包される物質やリポソームの成分の物理化学的性質
脂質小胞を分散させる媒体の性質
内包される物質の実効濃度と潜在的毒性
用途やデリバリーに際してさらに必要とされる過程
対象用途に最適なサイズ、多分散性、品質保持期限
バッチ間の再現性と大スケールでの安全で効率的な生産の可能性
有用なリポソームが自発的に形成されることはめったにない。一般的に、有用なリポソームは(リン)脂質を水のような極性溶媒中に分散させるために十分なエネルギーを供給することではじめて形成され、多層の凝集体は数層または単層の脂質小胞へと解体される。

リポソームは、リン脂質のような両親媒性脂質を水中で超音波処理によって分散させることで形成することができる。せん断速度が低ければ多層のリポソームが形成される。元々の凝集体は玉ねぎのように多数の層を形成しており、次第に小さくなって最終的に単層リポソームとなる(これらはサイズの小ささと超音波によって生じる構造欠陥のため、しばしば不安定である)。超音波処理は一般的には「大ざっぱな」調製法とみなされており、封入される薬剤に損傷を与えてしまうこともある。押出法(extrusion)やMozafari法[26]のような新たな手法がヒトでの使用を目的とした製造に利用されている。ホスファチジルコリン以外の脂質を用いることで、リポソームの調製はかなり容易になる。


展望

研究のさらなる進展によって、リポソームは体内の免疫系、特に細網内皮系の細胞による検知を避けることが可能となっている。このようなリポソームは「ステルスリポソーム」として知られている。これらはG. CevcとG. Blumeによって最初に提唱され、その直後にL. HuangとV. TorchilinのグループはPEG(ポリエチレングリコール)を膜の外側に点在させたものを構築した。PEGコーティングによって体内で不活性となり、ドラッグデリバリーのためにより長時間の体内循環が可能となる。現在の研究では、どの程度の量のPEGコーティングが実際にリポソームのデリバリー部位への結合を妨げるかを調査しようとしている。ステルスリポソームの大部分は、PEGコーティングに加えて、標的となるドラッグデリバリー部位に特異的に結合するため、ある種の生体物質がリガンドとして付加されている。これらの標的化リガンドはモノクローナル抗体であったり(イムノリポソーム)、ビタミンや特異的抗原であったりするが、これらは外部からアクセス可能なものでなければならない。標的化リポソームは体内のほとんどすべての細胞種を標的とすることができ、特定の細胞種を標的としない場合は全身にデリバリーが行われる。毒性のある薬剤は、病変部位にのみデリバリーを行うことで全身の毒性を大きく低下させることができる。形態的にリポソームと関連するポリマーソームも同じように利用することができる。また形態的にリポソームと関連し、非侵襲的な経皮的物質デリバリーのために設計された高度に変形可能な小胞はトランスファーソームとして知られている。

ドキソルビシンやダウノルビシンといった、ある種の抗がん剤はリポソームの形で投与される可能性がある。シスプラチンのリポソーム製剤が欧州医薬品審査庁から膵臓がんのオーファンドラッグとしての指定を受けている。

2018年5月に発表された研究では、栄養失調や病弱な植物へ肥料となる栄養素を運搬する「ナノキャリア」としてリポソームを利用する可能性が模索されている。研究ではこれらの合成粒子が栄養素そのままよりも容易に植物の葉に浸透することが示され、作物の収量向上を目的としたナノテクノロジーの利用法のさらなる検証が行われている。


・脂質ナノ粒子とは

非ウイルス性の薬物送達システムとしてmRNAワクチンにも活用

2022.09.06

久保田文

https://bio.nikkeibp.co.jp/atcl/report/16/011900001/17/01/12/00080/

※脂質ナノ粒子(lipid nanoparticle:LNP)は、脂質を主成分とする直径10nmから1000nm程度のナノ粒子。非ウイルス性の薬物送達システム(DDS)として、核酸医薬の送達に利用されている。

 DNAやmRNAといった核酸は、生体内で分解されやすく、医薬品化するためには送達技術が欠かせない。2001年、DNAの送達媒体として、4種類の脂質から成るLNPが開発され、LNPの開発が本格化した。4種類の脂質とは、核酸を保護するとともにエンドソームからの脱出を促す「イオン化脂質(pH感受性脂質)」、LNPを安定化させる「リン脂質」と「コレステロール」、血漿中の蛋白質との相互作用を抑制し、血中半減期を延長させる「PEG化脂質」である。

 2000年代半ばには、Pieter Cullis博士ら、カナダUniversity of British Columbiaの研究チームが、LNPを構成するイオン化脂質として、「親水基に第三級アミンを有する脂質」を報告した。具体的には、親水基に第三級アミンを有する脂質を用いて、エタノール希釈法によって核酸を内包するLNPを形成できるという製剤の原理が開発された。親水基に第三級アミンを有する脂質などから構成されたLNPは、環境(pH)に応じてLNPの電荷が変わり、血中など中性に近い環境では電気的に中性だが、エンドソーム内の酸性環境では正に帯電する。そのため、エンドソーム内で正に帯電したLNPは、エンドソーム膜と相互作用してエンドソームから脱し、その後細胞質内では核酸を解離しやすくなった。

 さらに、2010年ごろからは、マイクロ流路で核酸をLNPに内包する製造技術が確立された。こうした技術開発の結果、LNPはsiRNA医薬やmRNA医薬といった核酸医薬の送達技術として、広く使われるようになった。

 核酸医薬の送達技術としてLNPが初めて実用化されたのは、2018年、米食品医薬品局(FDA)からトランスサイレチン型家族性アミロイドポリニューロパチーの治療薬として承認された、米Alnylam Pharmaceuticals社の「オンパットロ」(パチシランナトリウム)だ。オンパットロは、二本鎖のsiRNAを、4種類の脂質から成るLNPに封入したsiRNA医薬。Alnylam社は、Cullis博士が創業に関わったカナダArbutus Biopharma社と提携し、三級アミンの構造を有するイオン化脂質を含むLNPを送達技術として採用した。

 2020年の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックに対しては、2020年12月、ドイツBioNTech社と米Pfizer社が開発した「コミナティ」(コロナウイルス修飾ウリジンRNAワクチン)、米Moderna社が開発した「スパイクバックス」(コロナウイルス修飾ウリジンRNAワクチン)が英国や米国などで緊急使用許可(EUA)を取得した。いずれも、スパイク蛋白質の全長をコードした長鎖のmRNAを、4種類の脂質から成るLNPに内包したmRNAワクチンであり、世界中でこれまでに数十億ドーズが接種されたとみられている。コミナティやスパイクバックスに使われたLNPは、どちらもアジュバント活性を発揮して、ワクチンの効果増強にも寄与していたとみられている。

 ただ、前代未聞のスピードで開発に成功し、大きな売り上げを上げた2つのmRNAワクチンを巡っては、mRNAの設計や修飾、LNPに関連する訴訟が相次いでいる。LNP関連では、2022年2月、Arbutus社と、同社と米Roivant Sciences社の合弁会社であるカナダGenevant Sciences社が、Moderna社を相手取り、米デラウェア地区の連邦地方裁判所に提訴した。Arbutus社が保有し、Genevant社がライセンスを受けている核酸送達向けLNP関連の特許を、Moderna社のスパイクバックスが侵害していると主張した。ただし、スパイクバックスの製造・販売・流通の差し止め命令などは求めておらず、特許の使用に関する公正な補償を請求している。

 2022年3月には、Alnylam社が、Pfizer社とModerna社を相手取り、米デラウェア地区の連邦地方裁判所にそれぞれ提訴。BioNTech社とPfizer社が共同開発したコミナティ、Moderna社のスパイクバックスについて、Alnylam社が開発した生分解性陽イオン脂質に関連する特許に抵触していると主張し、特許の使用について公正な補償を求めた。このように、LNPの特許の権利関係は複雑化しており、siRNA医薬やmRNA医薬の開発を進める一部の企業にとって、リスク要因となっている。



以下「In Deep」様より転載

https://indeep.jp/mrna-lnp-induces-immunity-inheritable/

・mRNA+脂質ナノ粒子ワクチンは「子孫に免疫性が遺伝する」ことが判明。また、 脂質ナノ粒子自体の炎症性が「鼻腔内接種で死亡率80%」と非常に強力であることも知る

2022年11月1日

※脂質ナノ粒子は極めて強い炎症性を持つ

最近、興味深い論文を読みました。

それは、

「 mRNA と脂質ナノ粒子を合わせた免疫化は、子孫に受け継がれる」

というものでした。

米トーマス・ジェファソン大学の科学者たちによる研究です。

論文は以下にあります。「 LNP 」は、脂質ナノ粒子のことで、mRNA を中に包んで送達するものです。ファイザー社ワクチンの場合なら、ポリエチレングリコール(PEG)というものがそれにあたります。

(論文)mRNA - LNP への事前暴露は適応免疫応答を阻害し、先天性免疫の適応度を遺伝的に変化させる
Pre-exposure to mRNA-LNP inhibits adaptive immune responses and alters innate immune fitness in an inheritable fashion



このタイトルにある、

> 先天性免疫の適応度を遺伝的に変化させる

という部分が本題なのですけれど、しかし、この論文は他にもいろいろと教わる部分が多いものでした。

まず、以前、ファイザー社などのワクチンに使われている脂質ナノ粒子が「中国製ではないか」ということを書いたことがあります。

しかし、先ほどの論文によれば、少なくとも臨床試験までは、ファイザーワクチンで使われていた脂質ナノ粒子は、中国製ではなく「カナダ製」であることがわかりました。

論文には、

> 臨床研究に使用される LNP とファイザーワクチンは類似しており、アクイタス・セラピューティクス社によって製造されている。

とあり、3点の参考文献も添えられていました。

アクイタス・セラピューティクス社(Acuitas Therapeutics)とは、カナダのバンクーバーに本拠を置くカナダのバイオテクノロジー企業です。

少なくとも、初期のファイザー社ワクチンは、このアクイタス社の脂質ナノ粒子が使われていたと考えられます。

ただ、2022年からはファイザー社の生物製剤製造は、すべて中国の無錫バイオロジクス社という企業が行うことになっているため、現在もカナダの脂質ナノ粒子が使われているかどうかはわからないです。

そのように、初期のファイザー社ワクチンの脂質ナノ粒子は、カナダ製であることを知ったと共に、あと、この論文には、

「脂質ナノ粒子は非常に炎症性が高い」

ということにふれられており、これも参考文献が多く添えられているのですが、そのうちのひとつが以下の論文で、トーマス・ジェファーソン大学の研究者たちによるものです。

(論文) 前臨床ワクチン研究で使用される mRNA-LNP プラットフォームの脂質ナノ粒子成分は非常に炎症性が強い

The mRNA-LNP platform's lipid nanoparticle component used in preclinical vaccine studies is highly inflammatory

この論文の「概要」部分から抜粋します。

論文より


mRNA 含有脂質ナノ粒子 (LNP) に基づくワクチンは、COVID-19 に対する 2つの主要なワクチンで使用される有望な新しいプラットフォームだ。

臨床試験と進行中のワクチン接種では、さまざまな程度の防御レベルと副作用が示されている。ただし、報告された副作用の発生要因はまだ十分に定義されていない。

ここでは、前臨床ヌクレオシド修飾 mRNA ワクチン研究で使用された アクイタス社の LNP がマウスで非常に炎症性であるという証拠を提示する。

『これらの LNP の皮内および筋肉内注射は、大量の好中球浸潤、多様な炎症経路の活性化、およびさまざまな炎症性サイトカインおよびケモカインの産生を特徴とする、迅速かつ強力な炎症反応を引き起こした。』

(↑ブログ主注:括弧はブログ主による付加。括弧内の情報は超重要)

鼻腔内に送達された同じ用量のLNPは、肺に同様の炎症反応を引き起こし、高い死亡率をもたらした。メカニズムは未解明だ。

したがって、適応免疫応答の誘導をサポートする mRNA-LNP プラットフォームの効力と観察された副作用は、LNPの高度に炎症性の性質に起因する可能性がある。


ここまでです。

> 迅速かつ強力な炎症反応を引き起こした

というあたりからは、一回目や二回目の接種において、日本でいわゆる「副反応」と呼ばれていたものは、この脂質ナノ粒子、つまりカナダ企業のポリエチレングリコールであった可能性は高いのかしれません。


あと、気になったのは、

> 鼻腔内に送達された同じ用量のLNPは、肺に同様の炎症反応を引き起こし、高い死亡率をもたらした

という部分です。

論文の本文には以下のようにあります。

(論文より)

> 成体マウスに 2.5μg から 10μg/マウスの範囲の LNPを鼻腔内接種し、最大 8日間、健康状態と体重をモニターした。10μgの LNPで処理したマウスの約 80%が 24時間以内に死亡したことがわかった。


「成体マウスの80%が 24時間以内に死亡した」って、すごくないですか。

なぜ、これが気になったかといいますと、最近、中国で、「鼻から吸入するタイプのコロナワクチンが承認された」のです。


しかし、考えてみれば、臨床試験で「成体マウスの80%が 24時間以内に死亡する」ようなものが試験に通るわけもないですよね(米国の新しい二価ワクチンはヒトで臨床試験してないですが)。


……というように、これまで思っていた以上に、脂質ナノ粒子というものの身体への影響は大きいことを知りました。

そして、問題は、ポリエチレングリコールもそうですが、

「脂質ナノ粒子は、ほぼ全身に巡る」

ことです。脳にも入っちゃうんですよね。


子宮頸がんワクチンに含まれるポリソルベート80も、ファイザー社コロナワクチンに含まれるポリエチレングリコールも、どちらも血液脳関門を超えて脳に侵入しますが、特にポリエチレングリコールは、血液脳関門を突破して脳に影響を与えつつ卵巣にも蓄積され影響を与えるというこんな二重の効果を持つ物質は探してもさほどないようにさえ思えます。


少しずつ少しずつ脳が本当に微細なレベルで損傷を受けることになると思いますが、程度は微細ではあっても「時間の経過の中での損傷の蓄積」というものがありますので、長い年月で見た場合の、その影響は予測できるものでさえありません。

そして、やっと本題ですが、論文の「子孫に遺伝する」という部分を取りあげたいと思います。


世代を超えた遺伝的伝播

これまでも、たとえば妊娠しているお母さんや、授乳中のお母さんが mRNA ワクチン接種をした場合、血液や母乳を介して(あるいはエクソソームを介して)赤ちゃんに伝わる可能性については書いたことがあります。

しかし、血液とか母乳とかエクソソームとか、物理的な橋渡しがなくても、「遺伝的に子どもに免疫が伝わる」ことを、この論文の研究は示しています。

まず、論文の概要から、部分的に抜粋します。

この実験では、インフルエンザウイルスを使っていますので、mRNA インフルエンザワクチンと同等だと考えていいと思われます。文中に出てくる「 mRNA - LNP ワクチン」というのは、mRNA を脂質ナノ粒子で送達するというものであり、ファイザー社ワクチンなどと同等の原理です。


論文「mRNA-LNPへの事前暴露は適応免疫応答を阻害し、先天性免疫の適応度を遺伝的に変化させる」より

概要

何億もの SARS-CoV-2 mRNA - LNP ワクチンがすでにヒトに投与されている。ただし、このプラットフォームの免疫効果についての包括的な理解は不足している。

mRNA - LNP ベースの SARS-CoV-2 ワクチンは非常に炎症性が高く、炎症の誘導に関与する合成のイオン化可能な脂質成分は生体内で長期間持続する。実験室では、生涯の半分だった。

慢性炎症は免疫の枯渇と無反応につながる可能性があるため、mRNA - LNP への事前暴露が適応免疫応答と自然免疫の適応度に及ぼす影響を調べようとした。

mRNA - LNPまたは LNP単独への事前曝露は、標準的なアジュバントを使用して克服できる適応免疫応答の長期的な阻害につながることがわかった。

……興味深いことに、mRNA - LNP プラットフォームに事前に曝露されたマウスは、獲得した免疫形質を子孫に伝えることができ、インフルエンザに対するより優れた保護を提供した。

要約すると、mRNA - LNP ワクチンプラットフォームは、適応免疫応答と感染に対する異種保護の両方に影響を与える長期的な予期しない免疫学的変化を誘発する。したがって、私たちの研究は、このプラットフォームが人間の健康に与える真の影響を判断するには、さらなる研究の必要性を強調している。


ここまでです。

この中の、

> mRNA - LNPまたは LNP単独への事前曝露は、標準的なアジュバントを使用して克服できる適応免疫応答の長期的な阻害につながることがわかった。

というのは、理解が難しいですけれど、「標準的なアジュバント」というのは、従来のワクチンで使用されていた送達剤ということだとすれば、「脂質ナノ粒子を使わないほうが、ワクチンとしての効果もいいのでは?」と解釈しましたが、どうなんですかね。

それで、論文は最初、脂質ナノ粒子が「適応免疫応答の阻害」について長く書かれているのですが、mRNA ワクチンが、免疫を抑制する、あるいは低下させることについては、以前にいくつかの論文などもご紹介していますので、省略します。

以下の記事などをご参照下されば幸いです。


[記事] コロナワクチン後天性免疫不全症候群(VAIDSとも)への警告に関する論文からも、ストレートな曝露を受けた小さな子どもたちへの懸念がさらに
 In Deep 2022年5月4日

[記事] ガン化していく世界 : ふたつの免疫抑制/免疫不全が発生するメカニズムを論文から知る
 In Deep 2021年10月26日


私などは、「スパイクタンパク質」ばかりに気をとられていた部分があるのですが、この論文に、「抗体、B細胞およびT細胞応答の低下を示した」とありまして、

「脂質ナノ粒子単体で、十分に免疫は阻害される」

ようです。

それで、その「遺伝する」可能性を示した部分をご紹介して締めさせていただきます。

実験の内容を簡単に書きますと、


・オスとメスの成年マウスに mRNA インフルエンザワクチンを接種する

・接種したオス・メスと、接種していないオス・メスを全パターンで交配させる

・生まれたマウスの子どもに人工的にインフルエンザを感染させる


というもので、その結果です。

これも抜粋です。



論文のセクション「mRNA-LNPへの事前曝露によって誘発される免疫変化は遺伝する可能性がある」より

脊椎動物の次世代への免疫形質の伝達が最近報告された。ヒトでは、父親がBCGワクチン接種を受けていた乳児で全体的な死亡率が低いことが報告されており、母親の SARS-CoV-2 感染は、新生児のサイトカイン機能の増加と非特異的免疫刷り込みに関連していることわ示されている。

また、訓練された免疫は、B型肝炎ウイルスに感染した母親の新生児に伝染することが示されている。

mRNA - LNP プラットフォームは非常に炎症性であり、それに事前にさらされるとインフルエンザへの異種感染に対する耐性が高まることが観察されたため、これらの形質のいくつかは子孫に受け継がれる可能性があるという仮説を立てた。

この仮説を検証するために、インフルエンザ PR8 HA をコードする mRNA - LNP 10μgを成体 WT B6 のオスおよびメスマウスの皮内に免疫した (※ ワクチンを接種した、と同義です)。

免疫化の 2週間後、抗 HA ELISA によって免疫化の成功についてマウスをスクリーニングし、次のように交配させた。

・予防接種を受けたオスと受けていないメス ( DI; 父だけが予防接種を受けている)

・オス、メス両方が予防接種を受けている ( DMI; 父と母が共に予防接種を受けている)

・予防接種を受けていないオスと、予防接種を受けたメス( MI;母が防接種を受けている)

・オス、メスどちらも予防接種を受けていない( DMN; 父と母が共に予防接種を受けていない)

8~ 10週齢の第 1、第 2、および第 4腹児の子孫に、亜致死量 (※ 時間が経過すると回復可能な量)の PR8 インフルエンザを鼻腔内接種し、体重を 14日間監視した。

DI グループ (※ 父だけが予防接種を受けている)の第 1腹児のマウスは、インフルエンザ感染に対して有意に優れた耐性を示し、免疫化されていない親から派生した同腹児よりも体重減少が少ないことがわかった。

MI (※ 母が防接種を受けている)または DMI (※ 父と母が共に予防接種を受けている)グループのマウスは、体重減少からの完全な保護を示した。

これは、母体の抗 HA 抗体によって提供される受動免疫によって大部分が媒介された可能性がある。 DI グループから派生した 2番目の同腹子は、予防接種を受けていない親の同腹子と違いはなかった。

MI の同腹子は保護の大幅な低下を示したが、それでも DMN (※ 父と母が共に予防接種を受けていない)親からの同腹子よりも上だった。

DMI の同腹児は、体重減少から完全に保護されていた。 4回目の同腹子では、DI と DMN マウスは類似したままだったが、MI と DMI マウスは同程度だった。それでも DMN の同腹子と比較して有意に保護されていた。

これらのデータはすべて、親の mRNA - LNP ワクチンによって誘発された免疫変化が子孫に受け継がれることを支持しており、オスとメスの両方のマウスがこの伝達に重要な役割を果たしている。



ここまでです。

この中の「父だけが予防接種を受けている」場合でも、「インフルエンザ感染に対して有意に優れた耐性を示し」とあり、母親の血中などを通さなくとも、mRNA ワクチンの抗体が子孫に伝わっていることを示します。

まあ、オスには精子という物理的なものもありますので、それを介してなのかもしれないですし、そのあたりを考慮してもしなくとも、この研究を読む限りでは、

「お父さん、お母さんどちらが接種していても、子に伝わる」

ようです。

それらは、もちろん一時的な中和抗体として機能するのかもしれません。

しかし、その後、たとえば、子どもに遺伝された中和抗体が非中和抗体(感染増強抗体)になるのかどうかなど、いろいろわからないことはありますが、ともかく遺伝するということのようではあります。

私は「今後、長くスパイクタンパク質戦争が続く」というようなことを書いたこともありましたけれど、「脂質ナノ粒子戦争」のほうも強力な要素のひとつなのかもしれません。

コロナワクチンって知れば知るほど総力戦ですね。