・ゼレンスキー氏、バフムートは壊滅状態と説明 「ロシアに占領されていない」と記者会見でも(BBC 2023年5月21日)
※ウクライナとロシアの間で昨年から激しい攻防戦が続く東部バフムートについて、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は21日午後、ロシアによって完全に破壊されてしまったと英語で述べた。さらに同日夜の記者会見でもバフムートの状態についてあらためて質問されると、今日の時点でバフムートは「ロシアに占領されていない」とゼレンスキー氏は言明した。
広島で開かれている主要7カ国首脳会議(G7サミット)のため来日中のゼレンスキー氏は、ウクライナはバフムートを掌握しているのか記者団に質問されると、「残念なことで、悲劇だが、今日のところはバフムートは私たちの心の中にだけある」と答えた。
「もうあそこには何もない。ただ地面と、大勢の死んだロシア人しかいない」のだとも説明。
「我々の防衛者たちは、強力に働いた。もちろんその見事な働きを、私たちはありがたく思っている」と述べた。
この発言が一部に誤解され、大統領が陥落を認めたとの報道が一時的に出たものの、ウクライナ大統領府はすかさずこれを否定。バフムートは都市として完全に破壊されたと大統領は答えたのであって、ロシアに制圧されたと認めたわけではないと説明した。
さらに同日夜の記者会見でもバフムートの状態についてあらためて質問されると、ゼレンスキー氏は戦況の詳細は話せないとしたうえで、今日の時点でバフムートは「ロシアに占領されていない。この言葉にいくつもの解釈の余地はない」と言明した。
ワグネルは制圧を主張
20日にはロシアの雇い兵組織「ワグネル」代表のイェフゲニー・プリゴジン氏が、自分たちがバフムートを制圧したと動画で主張。「押さえていない部分がところどころあるなどと、さまつな指摘は誰もできない」と述べていた。ロシアのウラジーミル・プーチン大統領はこれに祝意を示した。
プリゴジン氏はまた、ワグネルの部隊は休養のため今月末に離脱し、ロシア軍に主導権を渡すとした。
プリゴジン氏はこれまでも、バフムートの全部や大半を制圧したと主張してきたが、その後も戦闘は続いた。
今回の動画でも背景で爆発音が聞こえており、戦闘が同市周辺で続いていることがうかがえる。
プリゴジン氏の動画を受けて、ウクライナのハナ・マリャル国防次官は、事態は「深刻だ」と認めながらも、ロシア側による制圧の主張を否定していた。
国防次官は21日には通信アプリ「テレグラム」で、ロシアはバフムートを包囲できず、逆にウクライナ軍が「半分」街を取り囲んだのだと書いた。
「郊外の側面で私たちの部隊は前進を続けている。そのため、敵がバフムートにいるのは非常に難しい」とマリャル次官は述べている。
アナリストたちは、バフムートはロシアにとって戦略的な価値はほとんどないものの、ウクライナ侵攻を開始して以来最も長期間にわたる攻防戦が続いていただけに、勝利はロシアにとって象徴的な意味を持つと指摘する。
アメリカなど西側諸国は、バフムート攻略戦でロシアは2万~3万人の兵を失ったとみている。
ウクライナ側も相当の被害を受けている。バフムートの街は今や完全な廃墟と化し、住民は残っていない。
米政府は約517億円の追加支援発表
ゼレンスキー大統領の発言は、ジョー・バイデン米大統領との首脳会談に際して記者質問に答えてのもの。
その場でバイデン氏は、アメリカ政府がウクライナに3億7500万ドル(約517億円)規模となる追加の軍事支援を提供すると発表。ゼレンスキー氏はこれに感謝した。
国務省発表によると、38回目となる追加支援には、高機動ロケット砲システム「HIMARS(ハイマース)」の砲弾や対戦車兵器の補充、医療用装甲車両やトレーラー、トラック、部品などの提供が含まれるという。
(英語記事 Bakhmut: Zelensky says city is destroyed as Russia claims victory)
・バフムート陥落という現実を前に立ちすくむG7
2023.05.21
https://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/202305210000/
※ワグナー・グループを率いるエフゲニー・プリゴジンは5月20日、バフムート(アルチョモフスク)の「解放」を宣言、25日から部隊を撤退させると発表した。その際、セルゲイ・スロビキン上級大将とミハイル・ミジンチェフ上級大将に謝意を表している。
スロビキンは昨年10月、ドンバス、ヘルソン、ザポリージャの統合司令官に任命された軍人。第2次チェチェン戦争を経験した後にシリアで司令官を務め、アル・カイダ系の武装集団やダーイッシュ(IS、ISIS、ISIL、イスラム国などとも表記)などを敗走させた。
バフムートの前、ワグナー・グループは岩塩の採掘場を利用した全長200キロメートルという「地下要塞」が建設されていたソレダルを制圧している。その直後、ワレリー・ゲラシモフ参謀総長が軍事作戦の統合司令官に就任し、スロビキンは副官になるのだが、指揮の実態に変化はない。その頃、ウクライナでの戦闘はロシア軍対NATO軍という様相を強めていた。
ミジンチェフも有能な指揮官としてしられ、マリウポリを解放した作戦を指揮していた。ここは戦略的に重要で、2014年2月にクーデターでキエフを制圧したネオ・ナチ体制はマリウポリに戦車部隊を突入させ、制圧している。
マリウポリを占領、拠点化していたのはネオ・ナチを主力とするアゾフ特殊作戦分遣隊(アゾフ大隊やアゾフ連隊とも言われる)。内務省に所属する親衛隊の中核で、ロシア軍の攻撃を封じるため、住民を人質として使った。
ジョー・バイデン政権はウクライナでロシア軍が「ジェノサイド」を行っていると主張、それを西側の有力メディアは宣伝しているが、解放されたマリウポリ市民は異口同音に親衛隊の残虐行為を告発していた。その様子を撮影した映像がインターネット上に流れている。アメリカの情報機関に従属しているハイテク企業はそうした映像を削除したが、削除しきれていない。世界に人が実態を知ることができたということだ。それを知らないとするなら、情報を西側の支配者に依存していることを意味している。
親衛隊などが住民を人質にして立てこもっていたのアゾフスタル製鉄所からも住民が脱出、そのひとりであるナタリア・ウスマノバの証言をシュピーゲル誌は3分間の映像付きで5月2日に伝えたが、すぐに削除してしまう。彼女は親衛隊の残虐な行為を告発、ロシアへ避難し、戻る場所はドネツクしかないとし、ウクライナを拒否する発言が含まれていたからだ。
シュピーゲルが流したウスマノバの証言映像は西側メディアにとって都合の悪いものだった。シュピーゲル誌はこの映像をロイターから入手したとしているが、その前にロイター自身も彼女の証言映像を流していた。それは約1分間の映像で、彼女がロシア軍を批判しているような印象を受けるように編集されていた。
西側の有力メディアはアメリカ/NATOのプロパガンダ機関として機能しているが、その仕事を妨害してきたのが事実を伝えるジャーナリストだ。ドンバスにもドイツ人ジャーナリストのアリナ・リップ、フランス人ジャーナリストのアン-ローレ・ボンネル、カナダ人ジャーナリストのエバ・バートレット、フランスの有力メディアTF1やRFIのスタッフ、またロシアやイタリア人の記者もいた。ゴンサロ・リラもそうしたジャーナリストに含まれる。アメリカ/NATOはドンバスの現実を伝えるジャーナリストに対する弾圧を強め、ドイツ人ジャーナリストのパトリック・バーブは職を失い、アリナ・リップは銀行口座を接収された。
マリウポリをネオ・ナチの手から解放したミジンチェフに対する西側支配層の憎しみは強いようで、罵詈雑言を浴びせてきた。それほど優秀なロシア軍の将軍がワグナー・グループに入っている。この軍人が本当の指揮官ではないかと考える人もいる。
ワグナー・グループは傭兵会社で、囚人を兵士に使っているというような話も西側では流されているが、ロシア軍の内情に詳しい人物によると、GRU(参謀本部情報総局)やFSB(連邦安全保障局)の指揮下にあるという。
プリゴジンは5月5日、弾薬の不足と多数の死傷者を主張して部隊を撤退させると宣言しているが、ミジンチェフが本当の指揮官だとする推測やGRUやFSBの指揮下にあるという情報が正しいなら、プリゴジンの発言は茶番、あるいは心理作戦だったのだろう。
ウォロディミル・ゼレンスキー政権がウクライナ軍の兵士に死守を命じたバフムートは陥落した。「玉砕」を強いられ兵士は数カ月の戦闘で約6万人が死傷、ロシア軍側はその1割以下だと言われている。
プリゴジン発言の2日前、クレムリンが2機のドローン(無人機)で攻撃された。施設は損害を受けず、死傷者もいなかった。ECM(電子対抗手段)が使われた可能性がある。
ロシアのトリー・ペスコフ大統領報道官は5月4日、攻撃目標を決めたのはアメリカ政府であり、ウクライナ政府は命令を実行しただけだと語っているが、その可能性は高い。
クレムリンに対する攻撃があった5月3日にゼレンスキー大統領はフィンランドを訪問してスウェーデン、ノルウェー、デンマーク、アイスランドの首相と会談、4日にはオランダにあるICC(国際刑事裁判所)を訪れているが、13日にはイタリアを訪問、さらにローマ教皇フランシスコと会い、14日にはドイツとフランス、15日にはイギリスを訪れた。
5月19日にゼレンスキーはサウジアラビアがイランやシリアとの関係修復を示すアラブ連盟の首脳会談に乗り込んだものの、相手にされない。ロシアや中国との戦争を意識しているであろうG7首脳会談が19日から広島で始まったが、ここでは歓迎された。アメリカやイギリスの帝国主義者にとってウクライナはロシアを疲弊させ、あわよくば解体させるための生贄だ。
ソ連が消滅した後、ネオコンはアメリカが唯一の超大国になったと信じ、中国やロシアは簡単に潰せると思った。CFR(外交問題評議会)が発行している定期刊行物、フォーリン・アフェアーズ誌の2006年3/4月号に掲載された論文はそうした心情を表していると言えるだろう。キアー・リーバーとダリル・プレスはその論文の中で、アメリカが近いうちにロシアと中国の長距離核兵器を先制第1撃で破壊する能力を持てるとしている。その幻想の中で生きてきた人々は現実の前で立ちすくんでいる。
・民主主義、人権、自由を唱えているが、実態は帝国主義国の集まりにすぎないG7
2023.05.17
https://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/202305170000/
※G7の首脳会談が5月19日から21日にかけて広島で開催される。アメリカのジョー・バイデン大統領、イギリスのリシ・スナク首相、カナダのジャスティン・トルドー首相、フランスのエマニュエル・マクロン大統領、ドイツのオラフ・ショルツ首相、イタリアのジョルジャ・メローニ首相、日本の岸田文雄首相、そしてシャルル・ミシェル欧州理事会議長、ウルズラ・ライエン欧州委員会委員長が参加する予定だ。
参加国は「主要国」や「先進国」と自称しているが、有体に言うならば、アングロ・サクソン系国とアメリカに従属する国々の首脳によるセレモニーにすぎず、経済力においても軍事力においても中国やロシアを中心に集まりつつあるグループより劣る。
G7は1975年11月にG6として第1回首脳会談をフランスのランブイエで開く。その時の参加国はアメリカ、イギリス、フランス、西ドイツ、イタリア、日本。その前年にウォーターゲート事件でリチャード・ニクソン大統領が失脚、ジェラルド・フォードが新大統領に就任している。
フォード大統領はデタント(緊張緩和)派を粛清、好戦的なネオコン(新保守主義)が台頭、経済的には新自由主義が世界の中流になった。新保守主義も新自由主義も実態は帝国主義だ。
その帝国主義国はシリアやウクライナでロシアに敗北、矛先を東アジアへ向けてきた。G7の首脳会談を日本で開催する意味はこの辺にあるのかもしれない。
アメリカとイギリスは2021年9月、オーストラリアとAUKUSなる軍事同盟を創設した。ジョー・バイデン米大統領はオーストラリアへ売却する3隻のバージニア級原子力潜水艦を2030年代の初めに建造すると伝えられている。その潜水艦を動かすためにはアメリカの軍人が乗り込む必要があり、事実上、アメリカ海軍の潜水艦だ。
日本の「エリート」はAUKUSへの加盟に興味を示し、山上信吾オーストラリア駐在大使はキャンベラのナショナル・プレス・クラブで2022年11月14日、日本がオーストラリアの原子力潜水艦を受け入れる可能性があると表明している。
ウォルフォウィッツ・ドクトリン(ネオコンの世界制覇プラン)に基づき、ジョセイフ・ナイは1995年2月に「東アジア戦略報告(ナイ・レポート)」を発表した。日本をアメリカの戦争マシーンへ組み込むと宣言したのだ。松本サリン事件、地下鉄サリン事件、國松孝次警察庁長官狙撃事件などを経て日本はアメリカの戦争マシーンに組み込まれた。
G7の会談でも話し合われるらしいウクライナでの内戦は2014年2月にネオコンがネオ・ナチを利用したクーデターでビクトル・ヤヌコビッチ大統領を排除したところから始まる。
クーデターの準備は2010年の大統領選挙でヤヌコビッチが勝利した頃からはじまるのだろうが、実際に動き始めたのは13年11月。キエフのユーロマイダン(ユーロ広場、元の独立広場)で「カーニバル」的な集会を開くところから始まったのだが、その時のEUは話し合いで解決しようとする。
話し合いで解決したならヤヌコビッチ政権を倒して傀儡体制を樹立することは困難。そこで国務次官補だったビクトリア・ヌランドは怒る。ジェオフリー・パイアット米国大使と電話で「次期政権」の閣僚人事について話している際、ヌランドは「EUなんかクソくらえ」と口にし、その音声が2014年2月上旬にインターネットへアップロードされた。
クーデター後に内戦が始まるが、ドンバスの反クーデター軍がキエフのクーデター体制軍より強い。そこで戦力を増強するための時間が必要になった。そしてドイツとフランスが仲介して成立させたのがミンスク合意だ。これはアンゲラ・メルケル元独首相が昨年12月7日にツァイトのインタビューで、またその直後にフランソワ・オランド元仏大統領が証言している。
クーデターから8年かけて兵器を供与、兵士を訓練、ドンバス周辺に地下要塞を建設した。攻撃の準備ができたと判断したアメリカ/NATOはドンバスの周辺に部隊を集結させる。
ところが、2022年2月24日にロシア軍はウクライナの軍事基地や生物化学兵器の研究開発施設を巡航ミサイルなどで攻撃し始め、集結していたウクライナ軍は大きなダメージを受けたようだ。
その直後、イスラエルの首相だったナフタリ・ベネットはアメリカと調整しながら停戦交渉の仲介に乗り出し、3月5日にモスクワでプーチンと数時間にわたって会談。ゼレンスキーを殺害しないという約束をとりつけたベネットはドイツへ向かい、オラフ・シュルツ首相と会うのだが、その日、ウクライナの治安機関SBU(事実上CIAの下部機関)のメンバーがキエフの路上でゼレンスキー政権の交渉チームに加わっていたデニス・キリーエフを射殺した。
4月9日にはボリス・ジョンソン英首相がキエフへ乗り込んでロシアとの停戦交渉を止めるように命令、4月30日にはナンシー・ペロシ米下院議長が下院議員団を率いてウクライナを訪問、ゼレンスキー大統領に対し、ウクライナへの「支援継続」を誓い、戦争の継続を求めている。
アメリカとイギリスは2011年春、フランス、イスラエル、サウジアラビア、カタール、トルコと連携してリビアやシリアに対する侵略戦争を始めた。ネオコンは1980年代からイラクのサダム・フセイン体制を倒してシリアとイランを分断して個別撃破するという戦略を立てていたが、2001年9月11日にニューヨークの世界貿易センターとバージニア州アーリントンの国防総省本部庁舎が攻撃されてから10日ほど後、ドナルド・ラムズフェルド国防長官の周辺はイラク、シリア、イランのほかレバノン、リビア、ソマリア、スーダンを攻撃リストに載せていた。
イラクのフセイン体制を倒すというネオコンの計画は1990年8月に始動する。当時、クウェートがイラクの油田を盗掘しているという問題が発覚、イラクは軍事的な解決へ傾いていく。
それに対し、アメリカ国務省のスポークスパーソンだったマーガレット・タトワイラーは1990年7月24日、アメリカはクウェートを守る取り決めを結んでいないと発言、25日にはエイプリル・グラスピー米大使がサダム・フセインと会談、その際にブッシュ大統領の指示に基づいてアラブ諸国間の問題には口を出さないと伝えている。31日には下院のヨーロッパ中東小委員会で、アメリカは湾岸諸国と防衛条約は結んでいないとジョン・ケリー国務次官補が語っている。
7月29日にサウジアラビア政府はイラクとクウェートとの会談が31日にジェッダで始まると発表、ジッダには戦争を回避する目的でアラブ諸国の代表が集まることになる。
こうした動きに不審を抱いたPLOのヤセル・アラファト議長はアメリカ支配層の少なくとも一部がフセインを罠にかけようとしているのではないかと疑う。そこで彼はバグダッドへ飛び、フセインに対して挑発されてもクウェートを攻撃するべきでないとアドバイスする。アラファトはクウェートへも行き、ジェッダでイラクとの金銭的な問題を解決するように提案するが、クウェート側は聞く耳を持たなかったという。
ヨルダンのフセイン国王もアラファトと同じ懸念を抱き、ジェッダで首脳会談が開かれる前日、アラファトと同じことをクウェートの代表団に話したが、やはり聞く耳を持たなかったようだ。
ジョン・F・ケネディ大統領の報道官を務めたピエール サリンジャーによると、アメリカとイギリスはクウェートに対し、「話し合いで妥協するな、強硬姿勢で望め」と圧力をかけていたという。
イラク軍のクウェート侵攻を受け、アメリカ政府は間髪を入れずにイラクからの石油輸入を禁止、アメリカにあるイラクの資産を凍結、艦隊をペルシャ湾に派遣する。8月5日にはイラク政府の軍を撤退させるという提案を拒否、6日には国連安全保障理事会が決議660を採択する。イラクの軍事侵攻を非難し、即時、無条件の撤退を求めたのだ。
その一方、アメリカ下院の人権会議という非公式の集まりで「ナイラ」なる少女がイラク軍の残虐性を涙ながらに告発、アメリカで好戦的な雰囲気を高めることに成功した。この「告発劇」は広告会社ヒル・アンド・ノールトンが演出したもので、主演の少女はアメリカ駐在クウェート大使の娘。つまり全くの作り話だった。
嘘で人びとの心理を操り、戦乱を引き起こして国々を疲弊させて略奪するという手法はアングロ・サクソンを支配する人びとの常套手段だ。民主主義、人権、自由などを唱えているが、それは侵略、破壊、殺戮、略奪を実現するための方便にすぎない。
・侵略と略奪で築かれた近代ヨーロッパ文明が崩れ始め、新しい時代へ入りつつある
2023.05.19
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※イギリスの支配者は19世紀から世界制覇を目指している。ユーラシア大陸の周辺を海軍力で支配し、内陸部を締め上げるという戦略を立てたのだが、それを可能にしたのはスエズ運河の完成だと言えるだろう。その戦略をアメリカは引き継ぎ、ロシアや中国と戦争を始めた。
アメリカとイギリスによる海上封鎖戦略に対抗するため、中国は海上ルート(海のシルクロード)と陸上ルート(陸のシルクロード)を合わせた「一帯一路(BRI)」を計画、2015年にはロシアが進めてきたユーラシア経済連合(アルメニア、ベラルーシ、カザフスタン、キルギスタン、ロシア)と連結させると宣言している。
海上ルートの支配力を強化するため、アメリカ軍は2018年5月に「太平洋軍」を「インド・太平洋軍」へ作り替え、日本を太平洋側の拠点に、またインドをインド洋側の拠点と位置付けた。インドネシアは両海域をつなぐ場所だしている。
日本に続き、韓国、台湾、フィリピンへの支配力を強め、最近ではタイに従属政権を作る道筋ができたが、インドとインドネシアはアメリカと一線を画している。海のシルクロードはアメリカの脅威にさらされているわけだ。
そうしたこともあり、インドのムンバイからイラン、アゼルバイジャンを経由し、ロシアのサンクトペテルブルグを鉄道、道路、船でつなぐ「南北輸送回廊」が作られている。5月17日にロシア政府とイラン政府はイランのラシュトとアスタラを結ぶ鉄道の建設に関する調印式を催した。すでにアスタラとアゼルバイジャンのサリヤンを結ぶ道路は開通している。
ロシアや中国は交易で世界を安定化させ、ビジネスにつなげようとしているが、近代ヨーロッパは11世紀から15世紀にかけて中東を「十字軍」で侵略し、財宝や知識を手に入れるところから始まっている。
スペインやポルトガルは15世紀に世界各地で略奪を開始、1521年にはエルナン・コルテスが武力でアステカ王国(現在のメキシコ周辺)を滅ぼして莫大な金銀を奪う。それ以降、金、銀、エメラルドなどを略奪、先住民を使って鉱山を開発した。この時に略奪した財宝の総額は明確でないが、「近代ヨーロッパ文明」の基礎になったことは間違いないだろう。イギリスはスペインやポルトガルが盗んだ財宝を海賊に襲わせ、奪っていた。
南部アフリカの侵略でもイギリスは富を築いた。1866年にアフリカの南部地域でダイヤモンドが発見され、86年にはトランスバール(南アフリカ北東部)で大量の金が発見される。それを知ったセシル・ローズは南アフリカへ移住、ダイヤモンド取引で財をなし、デ・ビアスを創設した。ローズに融資していた金融機関はNMロスチャイルド&サンである。
その後、トランスバールへの侵略に失敗したローズはイギリスへ戻ってナサニエル・ロスチャイルドと会う。ロスチャイルドはウィリアム・ステッド、レジナルド・ブレット、そしてアルフレッド・ミルナーと緊急会談を開いて対策を練る。このグループの人脈は今でも大きな支配力を維持している。
ロスチャイルドは金融界に君臨する大物であり、ステッドは多くのメディアを支配して情報操作を行っている。ブレッドは心霊主義の信者としても知られているビクトリア女王の相談相手で、後にエドワード7世やジョージ5世の顧問を務めた。
1899年から1902年にかけての南アフリカ戦争でトランスバールとオレンジは併合され、イギリス領になっていたケープ植民地とナタールに新しく併合した2領地を合わせてできたのが南アフリカ連邦だ。その後オランダ系のボーア人とイギリス系の白人は手を組んでアパルトヘイト(人種隔離政策)を推進、有色人種を支配するシステムを作り上げていく。
一連の動きで重要な役割を果たしたローズは優生学を信奉していた。彼は1877年6月にフリーメーソンへ入会、その直後に書いた『信仰告白』の中でアングロ・サクソンは最も優秀な人種であり、その居住地が広がれば広がるほど人類にとって良いことだと主張している。領土を拡大して大英帝国を繁栄させることは自分たちの義務であり、領土の拡大はアングロ・サクソンが増えることを意味するとしている。
そのアングロ・サクソンはアメリカ、オーストラリア、フィリピンなど世界各地で先住民を虐殺しているが、優生学を信奉する彼らは良心の呵責に悩むことがなかった。そうした侵略の手先として選ばれたのが日本人だ。
近代ヨーロッパの支配者は略奪した財宝や軍事力を使い、世界を荒らし回ってきたのだが、すでに経済力も軍事力が衰え、支配システムが揺らいでいる。そのシステムを支えるため、彼らは教育、情報の厳しい統制、支配層にとって都合の良い幻影の刷り込みなどで一般大衆を洗脳、人びとの心理を操る一方、各国のエリート層をコントロールするために買収と恫喝を駆使、それが通用しない場合、暗殺やクーデター、場合によっては軍事侵略を使う。ウクライナのビクトル・ヤヌコビッチ政権もクーデターで倒された。
ジェフリー・エプスタインが行なっていた未成年の男女を世界の有力者に提供する工作には買収と恫喝が含まれている。この工作は有力者の歓心を買う手段であると同時に、隠し撮りすることで恫喝の材料にも使われる。エプスタインの事実上の妻だったと言われている女性はギスレイン・マクスウェル。彼女の父親はイギリスのミラー・グループを率いていたロバート・マクスウェル。この3名はいずれもイスラエル軍の情報機関(AMAM)に所属していたと言われているが、ロバートは1991年11月にカナリア諸島沖で死体となって発見された。
・ウクライナで敗れたネオコンは戦争に活路を求める
2023.05.26
https://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/202305260001/
※東アジアでの軍事的な緊張を高めているジョー・バイデン政権から中国問題の中心人物が離れようとしていることに注目する人がいる。ウェンディ・シャーマン国務副長官が今年の夏に退任すると伝えられているが、それにとどまらずNSC(国家安全保障会議)で中国担当シニアディレクターを務めてきたローラ・ローゼンバーガー、そして国務副次官補として中国と台湾の問題を担当するリック・ウォーターズも退任するようだ。
バイデン政権における軍事戦略の責任者はジェイク・サリバン国家安全保障補佐官だろう。つまりサリバンの立てた戦略が失敗、アメリカの支配システム崩壊を早めているだけでなく、彼自身の立場も危うくしている。
第2次世界大戦後、アメリカでは金融資本と結びついたシオニスト、つまり米英の帝国主義者が国際戦略を動かしてきた。ネオコンもその中から現れたと言える。ウィンストン・チャーチルが「最初のネオコン」と呼ばれる一因はそこにあるのだろう。
ウクライナを戦乱の中へ投げ込んだものネオコンだ。2010年の大統領選挙で東部や南部を支持基盤にするビクトル・ヤヌコビッチが当選、それを嫌ったアメリカのバラク・オバマ政権は2013年11月にクーデターを始動させ、14年2月にヤヌコビッチ大統領の排除に成功した。ウクライナの東部や南部では7割以上がロシア語を話し、東方正教会の信徒が多く、ヨーロッパ志向の強い西部とは違う。西部は歴史的にナチズムとの関係も深い。
年が明けるとネオ・ナチが前面に出て暴力的な様相を強め、そのメンバーはチェーン、ナイフ、棍棒を手に石や火炎瓶を投げ、トラクターやトラックを持ち出してくる。ピストルやライフルを撃っている様子を撮影した映像がインターネット上に流れた。
そうした展開の中、EUは混乱を話し合いで解決しようとしたが、これに怒ったのがアメリカのビクトリア・ヌランド国務次官補。ウクライナ駐在アメリカ大使のジェオフリー・パイアットに対し、電話で「EUなんかくそくらえ」と口にしている。
ヌランドは副大統領だったジョー・バイデンや彼の国家安全保障補佐官を務めていたサリバンと連絡をとりあっていた。この3名がウクライナにおけるクーデター工作の中核グループだったということだ。このグループは現政権でも健在。そこにアントニー・ブリンケン国務長官が加わっている。
ユーロマイダンでは2月中旬から無差別の狙撃が始まり、抗議活動の参加者も警官隊も狙われた。西側ではこの狙撃はヤヌコビッチ政権が実行したと宣伝されたが、2月25日にキエフ入りして事態を調べたエストニアのウルマス・パエト外相はその翌日、逆のことを報告している。バイデン政権を後ろ盾とするネオ・ナチが周辺国の兵士の協力を得て実行したということだ。
ヤヌコビッチを支持していた東部や南部では反クーデターの機運が高まり、クーデターから間もない3月16日にはクリミアでロシアへの加盟の是非を問う住民投票が実施されて95%以上が賛成(投票率は80%以上)する。オデッサでは反クーデター派の住民をネオ・ナチが虐殺、東部のドンバスでは内戦が始まった。
バイデン、ヌランド、サリバン、ブリンケンを含むネオコンのグループ、その背後にいる金融資本はバイデン政権誕生の直後に「ルビコン」を渡った。撤退は許されないのだが、彼らはロシアや中国を簡単に倒せると信じていたようだ。西側の有力メディアはその前提でストーリーを組み立てていたのだが、現実は違った。見通しの間違いを取り繕うために嘘をついてきたが、それも限界に達している。
軍事的に重要な場所だということもあり、ウクライナ軍とロシア軍はバフムート(アルチョモフスク)で数カ月に渡り、激しい戦闘を繰り広げてきた。ロシア側は傭兵会社とされるワグナー・グループの部隊が戦ってきたが、その会社を率いるエフゲニー・プリゴジンは5月20日、バフムートの「解放」を宣言、25日から部隊を撤退させると発表した。
その際、プリゴジンはセルゲイ・スロビキン上級大将とミハイル・ミジンチェフ上級大将に謝意を表している。スロビキンは昨年10月、ドンバス、ヘルソン、ザポリージャの統合司令官に任命された軍人であり、ミジンチェフはネオ・ナチのアゾフ特殊作戦分遣隊(アゾフ大隊やアゾフ連隊とも言われる)が占領していたマリウポリの解放作戦を指揮していた。
そこで、反クーデター派の住民を人質にし、暴行を働き、虐殺していたネオ・ナチを支持してきた人びとにミジンチェフは嫌われている。5月4日からワグナー・グループの副司令官に就任しているが、実際の司令官はミジンチェフだったのではないかという見方もある。
バフムートでアメリカ/NATOが操るウクライナ軍がロシア軍に敗北したわけだが、これはウクライナ全体の戦闘でもアメリカ/NATOが敗れたことを意味する。
すでにイギリスが提供した巡航ミサイル「ストーム・シャドー」による攻撃を開始しているが、撃墜されているようだ。被害が聞こえてこない。バイデン政権はウクライナに対するF-16戦闘機の供給を容認したが、5月21日のインタビューでサリバンはクリミアに対する攻撃を容認する発言をし、ロシア側の反発を招いた。
5月25日にはアメリカ/NATOがウクライナへ供給した3隻の無人艇が天然ガスをハンガリーやトルコへ運んでいる「トルコ・ストリーム」を警備していたロシアの艦船を攻撃、1隻の無人艇が衝突したようだが、爆発しなかったようだ。
この攻撃を実行するためにはロシアの艦船がどこにいるかをリアルタイムで知る必要がある。その情報をウクライナへ提供してたとみられているのがアメリカのドローン「RQ-4(グローバルホーク)」。攻撃当時、近くを飛行していた。同じ頃、バルト海ではアメリカのB-1爆撃機2機がロシア領空付近を飛行し、ロシア戦闘機に迎撃されている。
昨年9月26日から27日にかけての間に天然ガスを運ぶ2本のパイプライン「ノードストリーム(NS1)」と「ノードストリーム2(NS2)」が破壊され、天然ガスが流出した。ロシアとドイツがバルト海に建設したものだ。
調査ジャーナリストのシーモア・ハーシュはアメリカ海軍のダイバーがノルウェーの手を借りて実行したと書いている。彼によると、アメリカのバイデン大統領は2021年後半にサリバン国家安全保障補佐官を中心とする対ロシア工作のためのチームを編成した。その中には統合参謀本部、CIA、国務省、そして財務省の代表が参加している。12月にはどのような工作を実行するか話し合い、2022年初頭にはCIAがサリバンのチームに対し、パイプライン爆破を具申したという。
こうした中、注目されているのがNATOの軍事演習「エア・ディフェンダー23」。6月12日から23日まで実施されるNATO史上最大の空軍展開演習で、25カ国から最大1万人が参加、派遣される航空機は220機に達するという。敗北を容認できなネオコンが正気だとは思わない方が良い。
※ウクライナとロシアの間で昨年から激しい攻防戦が続く東部バフムートについて、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は21日午後、ロシアによって完全に破壊されてしまったと英語で述べた。さらに同日夜の記者会見でもバフムートの状態についてあらためて質問されると、今日の時点でバフムートは「ロシアに占領されていない」とゼレンスキー氏は言明した。
広島で開かれている主要7カ国首脳会議(G7サミット)のため来日中のゼレンスキー氏は、ウクライナはバフムートを掌握しているのか記者団に質問されると、「残念なことで、悲劇だが、今日のところはバフムートは私たちの心の中にだけある」と答えた。
「もうあそこには何もない。ただ地面と、大勢の死んだロシア人しかいない」のだとも説明。
「我々の防衛者たちは、強力に働いた。もちろんその見事な働きを、私たちはありがたく思っている」と述べた。
この発言が一部に誤解され、大統領が陥落を認めたとの報道が一時的に出たものの、ウクライナ大統領府はすかさずこれを否定。バフムートは都市として完全に破壊されたと大統領は答えたのであって、ロシアに制圧されたと認めたわけではないと説明した。
さらに同日夜の記者会見でもバフムートの状態についてあらためて質問されると、ゼレンスキー氏は戦況の詳細は話せないとしたうえで、今日の時点でバフムートは「ロシアに占領されていない。この言葉にいくつもの解釈の余地はない」と言明した。
ワグネルは制圧を主張
20日にはロシアの雇い兵組織「ワグネル」代表のイェフゲニー・プリゴジン氏が、自分たちがバフムートを制圧したと動画で主張。「押さえていない部分がところどころあるなどと、さまつな指摘は誰もできない」と述べていた。ロシアのウラジーミル・プーチン大統領はこれに祝意を示した。
プリゴジン氏はまた、ワグネルの部隊は休養のため今月末に離脱し、ロシア軍に主導権を渡すとした。
プリゴジン氏はこれまでも、バフムートの全部や大半を制圧したと主張してきたが、その後も戦闘は続いた。
今回の動画でも背景で爆発音が聞こえており、戦闘が同市周辺で続いていることがうかがえる。
プリゴジン氏の動画を受けて、ウクライナのハナ・マリャル国防次官は、事態は「深刻だ」と認めながらも、ロシア側による制圧の主張を否定していた。
国防次官は21日には通信アプリ「テレグラム」で、ロシアはバフムートを包囲できず、逆にウクライナ軍が「半分」街を取り囲んだのだと書いた。
「郊外の側面で私たちの部隊は前進を続けている。そのため、敵がバフムートにいるのは非常に難しい」とマリャル次官は述べている。
アナリストたちは、バフムートはロシアにとって戦略的な価値はほとんどないものの、ウクライナ侵攻を開始して以来最も長期間にわたる攻防戦が続いていただけに、勝利はロシアにとって象徴的な意味を持つと指摘する。
アメリカなど西側諸国は、バフムート攻略戦でロシアは2万~3万人の兵を失ったとみている。
ウクライナ側も相当の被害を受けている。バフムートの街は今や完全な廃墟と化し、住民は残っていない。
米政府は約517億円の追加支援発表
ゼレンスキー大統領の発言は、ジョー・バイデン米大統領との首脳会談に際して記者質問に答えてのもの。
その場でバイデン氏は、アメリカ政府がウクライナに3億7500万ドル(約517億円)規模となる追加の軍事支援を提供すると発表。ゼレンスキー氏はこれに感謝した。
国務省発表によると、38回目となる追加支援には、高機動ロケット砲システム「HIMARS(ハイマース)」の砲弾や対戦車兵器の補充、医療用装甲車両やトレーラー、トラック、部品などの提供が含まれるという。
(英語記事 Bakhmut: Zelensky says city is destroyed as Russia claims victory)
・バフムート陥落という現実を前に立ちすくむG7
2023.05.21
https://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/202305210000/
※ワグナー・グループを率いるエフゲニー・プリゴジンは5月20日、バフムート(アルチョモフスク)の「解放」を宣言、25日から部隊を撤退させると発表した。その際、セルゲイ・スロビキン上級大将とミハイル・ミジンチェフ上級大将に謝意を表している。
スロビキンは昨年10月、ドンバス、ヘルソン、ザポリージャの統合司令官に任命された軍人。第2次チェチェン戦争を経験した後にシリアで司令官を務め、アル・カイダ系の武装集団やダーイッシュ(IS、ISIS、ISIL、イスラム国などとも表記)などを敗走させた。
バフムートの前、ワグナー・グループは岩塩の採掘場を利用した全長200キロメートルという「地下要塞」が建設されていたソレダルを制圧している。その直後、ワレリー・ゲラシモフ参謀総長が軍事作戦の統合司令官に就任し、スロビキンは副官になるのだが、指揮の実態に変化はない。その頃、ウクライナでの戦闘はロシア軍対NATO軍という様相を強めていた。
ミジンチェフも有能な指揮官としてしられ、マリウポリを解放した作戦を指揮していた。ここは戦略的に重要で、2014年2月にクーデターでキエフを制圧したネオ・ナチ体制はマリウポリに戦車部隊を突入させ、制圧している。
マリウポリを占領、拠点化していたのはネオ・ナチを主力とするアゾフ特殊作戦分遣隊(アゾフ大隊やアゾフ連隊とも言われる)。内務省に所属する親衛隊の中核で、ロシア軍の攻撃を封じるため、住民を人質として使った。
ジョー・バイデン政権はウクライナでロシア軍が「ジェノサイド」を行っていると主張、それを西側の有力メディアは宣伝しているが、解放されたマリウポリ市民は異口同音に親衛隊の残虐行為を告発していた。その様子を撮影した映像がインターネット上に流れている。アメリカの情報機関に従属しているハイテク企業はそうした映像を削除したが、削除しきれていない。世界に人が実態を知ることができたということだ。それを知らないとするなら、情報を西側の支配者に依存していることを意味している。
親衛隊などが住民を人質にして立てこもっていたのアゾフスタル製鉄所からも住民が脱出、そのひとりであるナタリア・ウスマノバの証言をシュピーゲル誌は3分間の映像付きで5月2日に伝えたが、すぐに削除してしまう。彼女は親衛隊の残虐な行為を告発、ロシアへ避難し、戻る場所はドネツクしかないとし、ウクライナを拒否する発言が含まれていたからだ。
シュピーゲルが流したウスマノバの証言映像は西側メディアにとって都合の悪いものだった。シュピーゲル誌はこの映像をロイターから入手したとしているが、その前にロイター自身も彼女の証言映像を流していた。それは約1分間の映像で、彼女がロシア軍を批判しているような印象を受けるように編集されていた。
西側の有力メディアはアメリカ/NATOのプロパガンダ機関として機能しているが、その仕事を妨害してきたのが事実を伝えるジャーナリストだ。ドンバスにもドイツ人ジャーナリストのアリナ・リップ、フランス人ジャーナリストのアン-ローレ・ボンネル、カナダ人ジャーナリストのエバ・バートレット、フランスの有力メディアTF1やRFIのスタッフ、またロシアやイタリア人の記者もいた。ゴンサロ・リラもそうしたジャーナリストに含まれる。アメリカ/NATOはドンバスの現実を伝えるジャーナリストに対する弾圧を強め、ドイツ人ジャーナリストのパトリック・バーブは職を失い、アリナ・リップは銀行口座を接収された。
マリウポリをネオ・ナチの手から解放したミジンチェフに対する西側支配層の憎しみは強いようで、罵詈雑言を浴びせてきた。それほど優秀なロシア軍の将軍がワグナー・グループに入っている。この軍人が本当の指揮官ではないかと考える人もいる。
ワグナー・グループは傭兵会社で、囚人を兵士に使っているというような話も西側では流されているが、ロシア軍の内情に詳しい人物によると、GRU(参謀本部情報総局)やFSB(連邦安全保障局)の指揮下にあるという。
プリゴジンは5月5日、弾薬の不足と多数の死傷者を主張して部隊を撤退させると宣言しているが、ミジンチェフが本当の指揮官だとする推測やGRUやFSBの指揮下にあるという情報が正しいなら、プリゴジンの発言は茶番、あるいは心理作戦だったのだろう。
ウォロディミル・ゼレンスキー政権がウクライナ軍の兵士に死守を命じたバフムートは陥落した。「玉砕」を強いられ兵士は数カ月の戦闘で約6万人が死傷、ロシア軍側はその1割以下だと言われている。
プリゴジン発言の2日前、クレムリンが2機のドローン(無人機)で攻撃された。施設は損害を受けず、死傷者もいなかった。ECM(電子対抗手段)が使われた可能性がある。
ロシアのトリー・ペスコフ大統領報道官は5月4日、攻撃目標を決めたのはアメリカ政府であり、ウクライナ政府は命令を実行しただけだと語っているが、その可能性は高い。
クレムリンに対する攻撃があった5月3日にゼレンスキー大統領はフィンランドを訪問してスウェーデン、ノルウェー、デンマーク、アイスランドの首相と会談、4日にはオランダにあるICC(国際刑事裁判所)を訪れているが、13日にはイタリアを訪問、さらにローマ教皇フランシスコと会い、14日にはドイツとフランス、15日にはイギリスを訪れた。
5月19日にゼレンスキーはサウジアラビアがイランやシリアとの関係修復を示すアラブ連盟の首脳会談に乗り込んだものの、相手にされない。ロシアや中国との戦争を意識しているであろうG7首脳会談が19日から広島で始まったが、ここでは歓迎された。アメリカやイギリスの帝国主義者にとってウクライナはロシアを疲弊させ、あわよくば解体させるための生贄だ。
ソ連が消滅した後、ネオコンはアメリカが唯一の超大国になったと信じ、中国やロシアは簡単に潰せると思った。CFR(外交問題評議会)が発行している定期刊行物、フォーリン・アフェアーズ誌の2006年3/4月号に掲載された論文はそうした心情を表していると言えるだろう。キアー・リーバーとダリル・プレスはその論文の中で、アメリカが近いうちにロシアと中国の長距離核兵器を先制第1撃で破壊する能力を持てるとしている。その幻想の中で生きてきた人々は現実の前で立ちすくんでいる。
・民主主義、人権、自由を唱えているが、実態は帝国主義国の集まりにすぎないG7
2023.05.17
https://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/202305170000/
※G7の首脳会談が5月19日から21日にかけて広島で開催される。アメリカのジョー・バイデン大統領、イギリスのリシ・スナク首相、カナダのジャスティン・トルドー首相、フランスのエマニュエル・マクロン大統領、ドイツのオラフ・ショルツ首相、イタリアのジョルジャ・メローニ首相、日本の岸田文雄首相、そしてシャルル・ミシェル欧州理事会議長、ウルズラ・ライエン欧州委員会委員長が参加する予定だ。
参加国は「主要国」や「先進国」と自称しているが、有体に言うならば、アングロ・サクソン系国とアメリカに従属する国々の首脳によるセレモニーにすぎず、経済力においても軍事力においても中国やロシアを中心に集まりつつあるグループより劣る。
G7は1975年11月にG6として第1回首脳会談をフランスのランブイエで開く。その時の参加国はアメリカ、イギリス、フランス、西ドイツ、イタリア、日本。その前年にウォーターゲート事件でリチャード・ニクソン大統領が失脚、ジェラルド・フォードが新大統領に就任している。
フォード大統領はデタント(緊張緩和)派を粛清、好戦的なネオコン(新保守主義)が台頭、経済的には新自由主義が世界の中流になった。新保守主義も新自由主義も実態は帝国主義だ。
その帝国主義国はシリアやウクライナでロシアに敗北、矛先を東アジアへ向けてきた。G7の首脳会談を日本で開催する意味はこの辺にあるのかもしれない。
アメリカとイギリスは2021年9月、オーストラリアとAUKUSなる軍事同盟を創設した。ジョー・バイデン米大統領はオーストラリアへ売却する3隻のバージニア級原子力潜水艦を2030年代の初めに建造すると伝えられている。その潜水艦を動かすためにはアメリカの軍人が乗り込む必要があり、事実上、アメリカ海軍の潜水艦だ。
日本の「エリート」はAUKUSへの加盟に興味を示し、山上信吾オーストラリア駐在大使はキャンベラのナショナル・プレス・クラブで2022年11月14日、日本がオーストラリアの原子力潜水艦を受け入れる可能性があると表明している。
ウォルフォウィッツ・ドクトリン(ネオコンの世界制覇プラン)に基づき、ジョセイフ・ナイは1995年2月に「東アジア戦略報告(ナイ・レポート)」を発表した。日本をアメリカの戦争マシーンへ組み込むと宣言したのだ。松本サリン事件、地下鉄サリン事件、國松孝次警察庁長官狙撃事件などを経て日本はアメリカの戦争マシーンに組み込まれた。
G7の会談でも話し合われるらしいウクライナでの内戦は2014年2月にネオコンがネオ・ナチを利用したクーデターでビクトル・ヤヌコビッチ大統領を排除したところから始まる。
クーデターの準備は2010年の大統領選挙でヤヌコビッチが勝利した頃からはじまるのだろうが、実際に動き始めたのは13年11月。キエフのユーロマイダン(ユーロ広場、元の独立広場)で「カーニバル」的な集会を開くところから始まったのだが、その時のEUは話し合いで解決しようとする。
話し合いで解決したならヤヌコビッチ政権を倒して傀儡体制を樹立することは困難。そこで国務次官補だったビクトリア・ヌランドは怒る。ジェオフリー・パイアット米国大使と電話で「次期政権」の閣僚人事について話している際、ヌランドは「EUなんかクソくらえ」と口にし、その音声が2014年2月上旬にインターネットへアップロードされた。
クーデター後に内戦が始まるが、ドンバスの反クーデター軍がキエフのクーデター体制軍より強い。そこで戦力を増強するための時間が必要になった。そしてドイツとフランスが仲介して成立させたのがミンスク合意だ。これはアンゲラ・メルケル元独首相が昨年12月7日にツァイトのインタビューで、またその直後にフランソワ・オランド元仏大統領が証言している。
クーデターから8年かけて兵器を供与、兵士を訓練、ドンバス周辺に地下要塞を建設した。攻撃の準備ができたと判断したアメリカ/NATOはドンバスの周辺に部隊を集結させる。
ところが、2022年2月24日にロシア軍はウクライナの軍事基地や生物化学兵器の研究開発施設を巡航ミサイルなどで攻撃し始め、集結していたウクライナ軍は大きなダメージを受けたようだ。
その直後、イスラエルの首相だったナフタリ・ベネットはアメリカと調整しながら停戦交渉の仲介に乗り出し、3月5日にモスクワでプーチンと数時間にわたって会談。ゼレンスキーを殺害しないという約束をとりつけたベネットはドイツへ向かい、オラフ・シュルツ首相と会うのだが、その日、ウクライナの治安機関SBU(事実上CIAの下部機関)のメンバーがキエフの路上でゼレンスキー政権の交渉チームに加わっていたデニス・キリーエフを射殺した。
4月9日にはボリス・ジョンソン英首相がキエフへ乗り込んでロシアとの停戦交渉を止めるように命令、4月30日にはナンシー・ペロシ米下院議長が下院議員団を率いてウクライナを訪問、ゼレンスキー大統領に対し、ウクライナへの「支援継続」を誓い、戦争の継続を求めている。
アメリカとイギリスは2011年春、フランス、イスラエル、サウジアラビア、カタール、トルコと連携してリビアやシリアに対する侵略戦争を始めた。ネオコンは1980年代からイラクのサダム・フセイン体制を倒してシリアとイランを分断して個別撃破するという戦略を立てていたが、2001年9月11日にニューヨークの世界貿易センターとバージニア州アーリントンの国防総省本部庁舎が攻撃されてから10日ほど後、ドナルド・ラムズフェルド国防長官の周辺はイラク、シリア、イランのほかレバノン、リビア、ソマリア、スーダンを攻撃リストに載せていた。
イラクのフセイン体制を倒すというネオコンの計画は1990年8月に始動する。当時、クウェートがイラクの油田を盗掘しているという問題が発覚、イラクは軍事的な解決へ傾いていく。
それに対し、アメリカ国務省のスポークスパーソンだったマーガレット・タトワイラーは1990年7月24日、アメリカはクウェートを守る取り決めを結んでいないと発言、25日にはエイプリル・グラスピー米大使がサダム・フセインと会談、その際にブッシュ大統領の指示に基づいてアラブ諸国間の問題には口を出さないと伝えている。31日には下院のヨーロッパ中東小委員会で、アメリカは湾岸諸国と防衛条約は結んでいないとジョン・ケリー国務次官補が語っている。
7月29日にサウジアラビア政府はイラクとクウェートとの会談が31日にジェッダで始まると発表、ジッダには戦争を回避する目的でアラブ諸国の代表が集まることになる。
こうした動きに不審を抱いたPLOのヤセル・アラファト議長はアメリカ支配層の少なくとも一部がフセインを罠にかけようとしているのではないかと疑う。そこで彼はバグダッドへ飛び、フセインに対して挑発されてもクウェートを攻撃するべきでないとアドバイスする。アラファトはクウェートへも行き、ジェッダでイラクとの金銭的な問題を解決するように提案するが、クウェート側は聞く耳を持たなかったという。
ヨルダンのフセイン国王もアラファトと同じ懸念を抱き、ジェッダで首脳会談が開かれる前日、アラファトと同じことをクウェートの代表団に話したが、やはり聞く耳を持たなかったようだ。
ジョン・F・ケネディ大統領の報道官を務めたピエール サリンジャーによると、アメリカとイギリスはクウェートに対し、「話し合いで妥協するな、強硬姿勢で望め」と圧力をかけていたという。
イラク軍のクウェート侵攻を受け、アメリカ政府は間髪を入れずにイラクからの石油輸入を禁止、アメリカにあるイラクの資産を凍結、艦隊をペルシャ湾に派遣する。8月5日にはイラク政府の軍を撤退させるという提案を拒否、6日には国連安全保障理事会が決議660を採択する。イラクの軍事侵攻を非難し、即時、無条件の撤退を求めたのだ。
その一方、アメリカ下院の人権会議という非公式の集まりで「ナイラ」なる少女がイラク軍の残虐性を涙ながらに告発、アメリカで好戦的な雰囲気を高めることに成功した。この「告発劇」は広告会社ヒル・アンド・ノールトンが演出したもので、主演の少女はアメリカ駐在クウェート大使の娘。つまり全くの作り話だった。
嘘で人びとの心理を操り、戦乱を引き起こして国々を疲弊させて略奪するという手法はアングロ・サクソンを支配する人びとの常套手段だ。民主主義、人権、自由などを唱えているが、それは侵略、破壊、殺戮、略奪を実現するための方便にすぎない。
・侵略と略奪で築かれた近代ヨーロッパ文明が崩れ始め、新しい時代へ入りつつある
2023.05.19
https://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/202305190000/
※イギリスの支配者は19世紀から世界制覇を目指している。ユーラシア大陸の周辺を海軍力で支配し、内陸部を締め上げるという戦略を立てたのだが、それを可能にしたのはスエズ運河の完成だと言えるだろう。その戦略をアメリカは引き継ぎ、ロシアや中国と戦争を始めた。
アメリカとイギリスによる海上封鎖戦略に対抗するため、中国は海上ルート(海のシルクロード)と陸上ルート(陸のシルクロード)を合わせた「一帯一路(BRI)」を計画、2015年にはロシアが進めてきたユーラシア経済連合(アルメニア、ベラルーシ、カザフスタン、キルギスタン、ロシア)と連結させると宣言している。
海上ルートの支配力を強化するため、アメリカ軍は2018年5月に「太平洋軍」を「インド・太平洋軍」へ作り替え、日本を太平洋側の拠点に、またインドをインド洋側の拠点と位置付けた。インドネシアは両海域をつなぐ場所だしている。
日本に続き、韓国、台湾、フィリピンへの支配力を強め、最近ではタイに従属政権を作る道筋ができたが、インドとインドネシアはアメリカと一線を画している。海のシルクロードはアメリカの脅威にさらされているわけだ。
そうしたこともあり、インドのムンバイからイラン、アゼルバイジャンを経由し、ロシアのサンクトペテルブルグを鉄道、道路、船でつなぐ「南北輸送回廊」が作られている。5月17日にロシア政府とイラン政府はイランのラシュトとアスタラを結ぶ鉄道の建設に関する調印式を催した。すでにアスタラとアゼルバイジャンのサリヤンを結ぶ道路は開通している。
ロシアや中国は交易で世界を安定化させ、ビジネスにつなげようとしているが、近代ヨーロッパは11世紀から15世紀にかけて中東を「十字軍」で侵略し、財宝や知識を手に入れるところから始まっている。
スペインやポルトガルは15世紀に世界各地で略奪を開始、1521年にはエルナン・コルテスが武力でアステカ王国(現在のメキシコ周辺)を滅ぼして莫大な金銀を奪う。それ以降、金、銀、エメラルドなどを略奪、先住民を使って鉱山を開発した。この時に略奪した財宝の総額は明確でないが、「近代ヨーロッパ文明」の基礎になったことは間違いないだろう。イギリスはスペインやポルトガルが盗んだ財宝を海賊に襲わせ、奪っていた。
南部アフリカの侵略でもイギリスは富を築いた。1866年にアフリカの南部地域でダイヤモンドが発見され、86年にはトランスバール(南アフリカ北東部)で大量の金が発見される。それを知ったセシル・ローズは南アフリカへ移住、ダイヤモンド取引で財をなし、デ・ビアスを創設した。ローズに融資していた金融機関はNMロスチャイルド&サンである。
その後、トランスバールへの侵略に失敗したローズはイギリスへ戻ってナサニエル・ロスチャイルドと会う。ロスチャイルドはウィリアム・ステッド、レジナルド・ブレット、そしてアルフレッド・ミルナーと緊急会談を開いて対策を練る。このグループの人脈は今でも大きな支配力を維持している。
ロスチャイルドは金融界に君臨する大物であり、ステッドは多くのメディアを支配して情報操作を行っている。ブレッドは心霊主義の信者としても知られているビクトリア女王の相談相手で、後にエドワード7世やジョージ5世の顧問を務めた。
1899年から1902年にかけての南アフリカ戦争でトランスバールとオレンジは併合され、イギリス領になっていたケープ植民地とナタールに新しく併合した2領地を合わせてできたのが南アフリカ連邦だ。その後オランダ系のボーア人とイギリス系の白人は手を組んでアパルトヘイト(人種隔離政策)を推進、有色人種を支配するシステムを作り上げていく。
一連の動きで重要な役割を果たしたローズは優生学を信奉していた。彼は1877年6月にフリーメーソンへ入会、その直後に書いた『信仰告白』の中でアングロ・サクソンは最も優秀な人種であり、その居住地が広がれば広がるほど人類にとって良いことだと主張している。領土を拡大して大英帝国を繁栄させることは自分たちの義務であり、領土の拡大はアングロ・サクソンが増えることを意味するとしている。
そのアングロ・サクソンはアメリカ、オーストラリア、フィリピンなど世界各地で先住民を虐殺しているが、優生学を信奉する彼らは良心の呵責に悩むことがなかった。そうした侵略の手先として選ばれたのが日本人だ。
近代ヨーロッパの支配者は略奪した財宝や軍事力を使い、世界を荒らし回ってきたのだが、すでに経済力も軍事力が衰え、支配システムが揺らいでいる。そのシステムを支えるため、彼らは教育、情報の厳しい統制、支配層にとって都合の良い幻影の刷り込みなどで一般大衆を洗脳、人びとの心理を操る一方、各国のエリート層をコントロールするために買収と恫喝を駆使、それが通用しない場合、暗殺やクーデター、場合によっては軍事侵略を使う。ウクライナのビクトル・ヤヌコビッチ政権もクーデターで倒された。
ジェフリー・エプスタインが行なっていた未成年の男女を世界の有力者に提供する工作には買収と恫喝が含まれている。この工作は有力者の歓心を買う手段であると同時に、隠し撮りすることで恫喝の材料にも使われる。エプスタインの事実上の妻だったと言われている女性はギスレイン・マクスウェル。彼女の父親はイギリスのミラー・グループを率いていたロバート・マクスウェル。この3名はいずれもイスラエル軍の情報機関(AMAM)に所属していたと言われているが、ロバートは1991年11月にカナリア諸島沖で死体となって発見された。
・ウクライナで敗れたネオコンは戦争に活路を求める
2023.05.26
https://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/202305260001/
※東アジアでの軍事的な緊張を高めているジョー・バイデン政権から中国問題の中心人物が離れようとしていることに注目する人がいる。ウェンディ・シャーマン国務副長官が今年の夏に退任すると伝えられているが、それにとどまらずNSC(国家安全保障会議)で中国担当シニアディレクターを務めてきたローラ・ローゼンバーガー、そして国務副次官補として中国と台湾の問題を担当するリック・ウォーターズも退任するようだ。
バイデン政権における軍事戦略の責任者はジェイク・サリバン国家安全保障補佐官だろう。つまりサリバンの立てた戦略が失敗、アメリカの支配システム崩壊を早めているだけでなく、彼自身の立場も危うくしている。
第2次世界大戦後、アメリカでは金融資本と結びついたシオニスト、つまり米英の帝国主義者が国際戦略を動かしてきた。ネオコンもその中から現れたと言える。ウィンストン・チャーチルが「最初のネオコン」と呼ばれる一因はそこにあるのだろう。
ウクライナを戦乱の中へ投げ込んだものネオコンだ。2010年の大統領選挙で東部や南部を支持基盤にするビクトル・ヤヌコビッチが当選、それを嫌ったアメリカのバラク・オバマ政権は2013年11月にクーデターを始動させ、14年2月にヤヌコビッチ大統領の排除に成功した。ウクライナの東部や南部では7割以上がロシア語を話し、東方正教会の信徒が多く、ヨーロッパ志向の強い西部とは違う。西部は歴史的にナチズムとの関係も深い。
年が明けるとネオ・ナチが前面に出て暴力的な様相を強め、そのメンバーはチェーン、ナイフ、棍棒を手に石や火炎瓶を投げ、トラクターやトラックを持ち出してくる。ピストルやライフルを撃っている様子を撮影した映像がインターネット上に流れた。
そうした展開の中、EUは混乱を話し合いで解決しようとしたが、これに怒ったのがアメリカのビクトリア・ヌランド国務次官補。ウクライナ駐在アメリカ大使のジェオフリー・パイアットに対し、電話で「EUなんかくそくらえ」と口にしている。
ヌランドは副大統領だったジョー・バイデンや彼の国家安全保障補佐官を務めていたサリバンと連絡をとりあっていた。この3名がウクライナにおけるクーデター工作の中核グループだったということだ。このグループは現政権でも健在。そこにアントニー・ブリンケン国務長官が加わっている。
ユーロマイダンでは2月中旬から無差別の狙撃が始まり、抗議活動の参加者も警官隊も狙われた。西側ではこの狙撃はヤヌコビッチ政権が実行したと宣伝されたが、2月25日にキエフ入りして事態を調べたエストニアのウルマス・パエト外相はその翌日、逆のことを報告している。バイデン政権を後ろ盾とするネオ・ナチが周辺国の兵士の協力を得て実行したということだ。
ヤヌコビッチを支持していた東部や南部では反クーデターの機運が高まり、クーデターから間もない3月16日にはクリミアでロシアへの加盟の是非を問う住民投票が実施されて95%以上が賛成(投票率は80%以上)する。オデッサでは反クーデター派の住民をネオ・ナチが虐殺、東部のドンバスでは内戦が始まった。
バイデン、ヌランド、サリバン、ブリンケンを含むネオコンのグループ、その背後にいる金融資本はバイデン政権誕生の直後に「ルビコン」を渡った。撤退は許されないのだが、彼らはロシアや中国を簡単に倒せると信じていたようだ。西側の有力メディアはその前提でストーリーを組み立てていたのだが、現実は違った。見通しの間違いを取り繕うために嘘をついてきたが、それも限界に達している。
軍事的に重要な場所だということもあり、ウクライナ軍とロシア軍はバフムート(アルチョモフスク)で数カ月に渡り、激しい戦闘を繰り広げてきた。ロシア側は傭兵会社とされるワグナー・グループの部隊が戦ってきたが、その会社を率いるエフゲニー・プリゴジンは5月20日、バフムートの「解放」を宣言、25日から部隊を撤退させると発表した。
その際、プリゴジンはセルゲイ・スロビキン上級大将とミハイル・ミジンチェフ上級大将に謝意を表している。スロビキンは昨年10月、ドンバス、ヘルソン、ザポリージャの統合司令官に任命された軍人であり、ミジンチェフはネオ・ナチのアゾフ特殊作戦分遣隊(アゾフ大隊やアゾフ連隊とも言われる)が占領していたマリウポリの解放作戦を指揮していた。
そこで、反クーデター派の住民を人質にし、暴行を働き、虐殺していたネオ・ナチを支持してきた人びとにミジンチェフは嫌われている。5月4日からワグナー・グループの副司令官に就任しているが、実際の司令官はミジンチェフだったのではないかという見方もある。
バフムートでアメリカ/NATOが操るウクライナ軍がロシア軍に敗北したわけだが、これはウクライナ全体の戦闘でもアメリカ/NATOが敗れたことを意味する。
すでにイギリスが提供した巡航ミサイル「ストーム・シャドー」による攻撃を開始しているが、撃墜されているようだ。被害が聞こえてこない。バイデン政権はウクライナに対するF-16戦闘機の供給を容認したが、5月21日のインタビューでサリバンはクリミアに対する攻撃を容認する発言をし、ロシア側の反発を招いた。
5月25日にはアメリカ/NATOがウクライナへ供給した3隻の無人艇が天然ガスをハンガリーやトルコへ運んでいる「トルコ・ストリーム」を警備していたロシアの艦船を攻撃、1隻の無人艇が衝突したようだが、爆発しなかったようだ。
この攻撃を実行するためにはロシアの艦船がどこにいるかをリアルタイムで知る必要がある。その情報をウクライナへ提供してたとみられているのがアメリカのドローン「RQ-4(グローバルホーク)」。攻撃当時、近くを飛行していた。同じ頃、バルト海ではアメリカのB-1爆撃機2機がロシア領空付近を飛行し、ロシア戦闘機に迎撃されている。
昨年9月26日から27日にかけての間に天然ガスを運ぶ2本のパイプライン「ノードストリーム(NS1)」と「ノードストリーム2(NS2)」が破壊され、天然ガスが流出した。ロシアとドイツがバルト海に建設したものだ。
調査ジャーナリストのシーモア・ハーシュはアメリカ海軍のダイバーがノルウェーの手を借りて実行したと書いている。彼によると、アメリカのバイデン大統領は2021年後半にサリバン国家安全保障補佐官を中心とする対ロシア工作のためのチームを編成した。その中には統合参謀本部、CIA、国務省、そして財務省の代表が参加している。12月にはどのような工作を実行するか話し合い、2022年初頭にはCIAがサリバンのチームに対し、パイプライン爆破を具申したという。
こうした中、注目されているのがNATOの軍事演習「エア・ディフェンダー23」。6月12日から23日まで実施されるNATO史上最大の空軍展開演習で、25カ国から最大1万人が参加、派遣される航空機は220機に達するという。敗北を容認できなネオコンが正気だとは思わない方が良い。