※ブログ主注:バングラディシュでのRCTとは以下のもの


・“マスク着用率高い地域は感染率低い” 米大学など調査(NHK NEWS web 2022年1月25日)

※マスクの着用が新型コロナウイルスの感染予防に効果があるかを検証するため、アメリカの大学などのグループがバングラデシュで大規模な調査を行ったところ、マスクの着用率が高い地域では新型コロナに感染する人の割合が低かったとする研究結果を発表しました。

この研究はアメリカ イェール大学などのグループが行い、科学雑誌の「サイエンス」で発表しました。

グループは、おととし11月から去年4月にかけて、バングラデシュの農村部のおよそ600の自治体を対象にマスクを配って着用の啓発を行った自治体と行わなかった自治体で新型コロナウイルスの感染に違いがあるかを調べました。

その結果、マスク着用の啓発を行わなかった自治体ではマスクの着用率は13.3%だったのに対し、啓発を行った自治体では着用率が42.3%と高くなり、新型コロナの感染が疑われる症状が出た人の割合は11.6%低くなっていたということです。

また、抗体の検査でもマスクの着用率が高い自治体は感染率が低い傾向がみられたということです。

グループでは、マスクが新型コロナウイルス対策に役立つという明確な証拠が得られたとしていて、マスクの着用率がさらに上がれば、感染を防ぐ効果もより高まるとみられるとしています。


・「マスクの着用」が確かにCOVID-19の感染者数を減少させることが600もの村を対象にした実験で判明(Gigazine 2021年9月20日)

※「マスクの着用」は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック初期から、感染拡大を防止する方法として世界的に推奨されてきました。「マスクを着用したくらいで本当に感染が抑制できるのか?」と疑問に思っている人々もいるかもしれませんが、バングラデシュの村に住む合計30万人を超える人々を対象にした大規模な実験により、サージカルマスクの着用がCOVID-19の拡大を抑制することが示されたとの査読前論文が、非営利団体であるInnovations for Poverty Actionのウェブサイトで公開されました。


多くの科学者は、パンデミックの当初から「マスクの着用がCOVID-19の感染を抑制する」と主張してきました。しかし、理論やシミュレーションを基にしてマスク着用のメリットを研究することはできても、現実世界においてマスクの着用が感染防止にどれほど役立つのかを研究することは困難です。そこでイェール大学やスタンフォード大学、バングラデシュの非営利団体・GreenVoiceなどの国際的な研究チームは、バングラデシュにある600の村を対象にして、現実世界でランダム化比較試験を実施することにしました。


バングラデシュでは2020年5月下旬からマスクの着用が義務づけられ、違反者には罰金が科されることになっていたものの、実際に着用している住民の割合は2020年6月時点で約26%に過ぎなかったとのこと。また、マスクでしっかりと鼻と口を覆っている人に限定すると、割合は約20%まで減少したそうです。

2020年11月から2021年4月にかけて行われた実験では、ランダムに選んだ300の村を「実験群」としてマスクの着用を奨励するプログラムを実施し、残り300の村は「対照群」として介入を行いませんでした。調査対象となった600の村には合計で約34万2000人を超える成人が住んでおり、実験群に割り当てられたのは約17万8000人、対照群に割り当てられたのは約16万4000人だったそうです。実験群と対照群の村はテスト開始時点におけるCOVID-19の症例数、人口、人口密度などが類似しており、全ての村は少なくともお互いに2km以上離れていたとのこと。

研究チームは約8週間にわたる介入の中で、毎週または2週間に1回の割合で各家庭や公共の場所でマスクの無料配布を実施し、介入群の村のうち3分の2にサージカルマスクを、残る3分の1に布製マスクを配布しました。また、配付時にバングラデシュのシェイク・ハシナ元首相やクリケットのスター選手であるシャキブ・アル・ハサン氏を起用したマスク着用のプロモーションビデオを見せたり、イスラム教の宗教指導者であるイマームが金曜日の礼拝でマスクの着用を推奨したり、「マスクプロモーター」を通じてマスクを着けていない人に着用を促したりする介入が行われました。


実験の結果、介入が行われなかった対照群ではマスクの着用率が13.3%にとどまっていたのに対し、介入群では着用率が42.3%と約3倍に達したことがわかりました。この結果は、実験期間中ずっと確認されていただけでなく、実験が終わった5カ月後の時点でも、実験群の村におけるマスク着用率は10%高かったそうです。さらに、「マスクの着用で安心した人々が逆に社会的距離を縮めてしまうのではないか?」という懸念とは裏腹に、社会的距離を守る住人の割合は対照群の24.1%に対し、介入群では29.2%でした。

また、住民がCOVID-19のような症状を経験したかどうかを調査したところ、介入群は対照群と比較して症状を示す割合が10%近く低いという結果になりました。さらに、症状を示した人の3分の1を対象にした血液検査では、介入群におけるCOVID-19陽性率は対照群より9.3%低いことも判明したそうです。なお、サージカルマスクが無料配布された村ではCOVID-19の症状を報告する割合が12%減少した一方、布製マスクが配布された村は減少率が5%にとどまったとのこと。

研究チームは、「私たちの研究結果は、『マスクの着用はCOVID-19症例の10%しか予防できない』と解釈されるべきではありません」と指摘。これは、介入によってマスクを着用するようになったのが「100人中29人」に過ぎず、マスクを着用する人の割合も介入群でさえ42.3%にとどまっていることが理由です。もし、コミュニティのマスク着用率が100%に近くなれば、さらに介入群と対照群の差は大きくなるだろうと研究チームは主張しています。

イェール大学の経済学者で論文の筆頭著者であるJason Abaluck氏は、「今回の研究で、『マスクが集団レベルでのCOVID-19対策の有効なのかどうか』に関する科学的議論は、基本的に終わりになると思います」と述べました。


※ブログ主注:この実験に対する批判は以下

https://togetter.com/li/1948527


・バングラデシュのマスク研究から何を結論すべきか?

https://himaginary.hatenablog.com/entry/20210919/effect-size

※バングラデシュでのRCTの結果を基に、マスクはコロナ感染防止に有効である、という報告が出されたが、UCバークレーの機械学習の研究者であるBen Rechtが「Effect size is significantly more important than statistical significance.」と題したブログエントリでその結果に疑問を呈し、タイラー・コーエンが表題のコメント(原文は「What should we conclude from the Bangladesh mask study?」)を付けてそれにリンクした。以下はエントリの概要。

マスク着用がコロナ感染を減らすというバングラデシュでのクラスターランダム化比較試験(クラスターRCT)の報告は、マスク支持派の間では自説を支持する実証結果として歓迎されているが、統計的曖昧さがあるため、同報告から言えることはあまりないのではないか。
クラスターRCTということで、研究では患者ではなく村をランダム化した。サンプルサイズは大きく見えるが(34万人)、村単位で処置を適用したため、実効サンプル数は600に過ぎない*1。人口動態特性を基に村はペアに分けられ、片方の村は処置群、もう片方は対照群にランダムに割り当てられた。処置群の300の村は、無料のマスク、マスクの重要性の情報、地域の指導者によるロールモデル、対面でのリマインダーを8週間受け取った。対照群の300村は処置を一切受けなかった。
研究では、有症状者数(処置群13,273、対照群13,893)、血液検査への同意者数(処置群5,414、対照群5,538)、コロナ抗体検査のために血液が採取された人数(処置群5,006、対照群4,971)を正確に報告しているが、不思議なことに、実際の陽性者数はプレプリントのどこにも掲載されていない。
報告によれば、対照群の人の0.76%が有症状で血清反応陽性となったのに対し、処置群ではその数字は0.69%であった。リスクは1.1だけ減少したのであり、論文の著者たちはこれは統計的に有意であるとしている。
しかし、陽性率の計算法が論文では明確に示されていないため、人数を通算して計算したのか、各村で計算したものを平均したのかが不明である。
仮に1万人の村と6000人の村の2つのペアがあり、前者で処置村に136人、対照村に75人の陽性者が出て、後者で処置村に0人、対照村に46人の陽性者が出たとする。
人数を通算すると、処置群は136/16000=0.85%、対照群は121/16000=0.76%となり、対照群の方が1.1倍良いことになる。
各村で計算したものを平均すると、処置群は(136/10000+0/6000)/2=0.68%、対照群は(75/10000+46/6000)/2=0.76%となり、処置群の方が1.1倍良いことになる。
いずれにせよ、この例では32,000人に対する15人の違いを論じていることになる。結果の数字が小さい時には、問題が特に難しくなる。
効果量が小さくて測定に敏感である時には、統計的有意性に助けを求めるのが常である。著者たちは「正規の群と独立性による一般化最小二乗法(GLM)」と述べているが、要は正規分布からサンプルされたものとして通常の最小二乗回帰を走らせた、ということである。表の注記からすると、各村の陽性率を平均が村クラスターの変数とその他の何らかの共変量の関数である正規分布に従うものとしたように思われる。それから村単位の陽性率をモデルで推計し、それを平均して処置群と対照群の最終結果を計算したようである。
ガウス分布のモデルは、コーディングを容易にし、通常の計量経済学の様式で結果を報告することを可能にするかもしれないが、ほぼ確実に間違っている。負の数を取れないカウント数は正規分布に従うはずがない。実際、300村中36で感染者数がゼロであるが、ガウス分布が良い近似になっていればそうした結果はまずあり得ない。著者たちはモデルの前提を調整することなく単にそれらの村を回帰から除いているが、それは平均陽性率の過大評価につながる。
論文ではそこからp値と信頼区間を計算しているが、モデルが正しくない場合はそれらの数字は無意味である。
論文の著者たちは自分のような批判者を予期して頑健性のチェックを行っており、主モデルの前提を排してカウント数がポアソン分布に従うとしたモデルでも効果量は同様だった、としている。しかし、ポアソン分布は独立事象が一定の割合で起こるモデルであり、感染に無関係な心臓発作のモデルとしては良いが、感染モデルとしてはやはり現実的ではない。感染はランダムではなく、他の患者との相互作用によって複雑な動学的拡散が生じ、お馴染みの流行曲線が生成される。数学的に言えば、同様のアルゴリズムで計算される一般化された線形モデルが同じ効果量の推計値を出しても不思議ではないが、両モデルとも間違っているので、両者の計算結果を掲載しても何かの保証になるとは思われない。
こうした統計分析を提示するよりは、陽性者の生データを掲載して読者が解釈できるようにすべきではなかったか? 有症状者数が人数単位で正確に報告されているのであるから、猶更そうである。
ワクチンのRCTと比較すると問題がはっきりする。RCTが因果推定の「黄金律」であるとするならば、ワクチン研究はRCTのもっとも純粋な形であり、RCTの「黄金律」である。ワクチン試験は盲検化が容易であり、臨床的均衡*2がほぼ常にあり、世界人口からほぼむらなくサンプリングでき、統計的な検証が普通にできる。ファイザーワクチンの場合、効果量は非常に大きく(リスク減少が20倍)、信頼区間は独立した2値ランダム変数からの正確な計算にきちんと基づいている。そもそも効果量が大きいので信頼区間はそれほど重要ではない。カプラン・マイヤー曲線を眺めればmRNAワクチンの驚くべき効果は堪能できる。
残念ながら、もちろん大抵の効果量は20の水準にはなく、2以下が普通であり、今回のマスク研究では1.1以下だった。そうした研究は珍しくない。
効果量ではなくp値を巡って争うのは、木を見て森を見ないことである。アーネスト・ラザフォードの有名な言葉に「実験で統計学が必要になったら、もっと良い実験をすべきだった、ということだ」というものがある。それをより穏当にした指針が科学的調査に適用されるべきと考える。即ち、効果量が小さくて精緻な統計学が必要になったら、効果が本物ではないことを意味するのではないか。
*1:サンプルサイズ(sample size)、サンプル数(number of samples)の表記は原文ママ。

*2:cf. Clinical equipoise - Wikipedia。こちらの資料では「臨床実験においては、いずれの治療法がよいかわからない状態にのみ複数の治療法の比較を行うことが正当化されるが、この「いずれの治療法がよいかわからない状態」について、臨床的平衡 clinical equipoise という概念が提唱されている。科学的な証拠に基づく理論的均衡は臨床家の好みや意思決定の複雑さにより変動するので、もろく崩れやすい。これに対して、臨床的均衡すなわち臨床的エキスパートの間でいずれの治療法がよいかのコンセンサスが存在しない状態が比較実験を行うことで disturb されると期待できる場合にのみ、比較実験を開始することが許される、という考え方である。」と解説されている。


・バングラデシュのマスク研究から何を結論すべきか?・再訪

https://himaginary.hatenablog.com/entry/20211128/mask-rct-revisited

※以前、バングラデシュでのマスク着用に関するRCTについて、Ben Rechtによる批判的な検証を取り上げたことがあった。その後、研究者がデータを公開したとのことで、Rechtが公開自体は賞賛しつつも改めてそのデータを批判的に検証している(H/T タイラー・コーエン)。以下はその概要。

公開されたデータは:
対照群(nC):300村の163,861人、陽性者数(iC)=1,106人
処置群(nT):300村の178,322人、陽性者数(iT)=1,086人
この結果には、以下のような問題点がある:
34万人以上を8週間検証して差はわずか20人。
マスクでは盲検は不可能なので、当然ながら盲検ではない。
処置群では、マスク促進以外に、社会的距離などの他の措置に関する教育も行われた。
研究者による検査に同意して研究対象となった人の比率は、処置群が95%、対照群が92%。この差だけで観測された差を拭い去ってしまう。
血清反応による陽性は、検証以前に感染していた可能性があるため、コロナの指標としては粗い。
生物統計学では、実際の症例数ではなく、相対リスク減少の指標である有効性を見ることが多いが、それは効果を誇張する。
同指標はRR=(iT/nT)/(iC/nC)として計算されるが、マスク研究ではRR=0.9で、感染のリスクの改善率は1.1xに過ぎない。ちなみにmRNAワクチンのRRは0.05で、改善率は20xとなる。
ワクチンの学界では有効性EFF=1−RRという指標も使われる。RR=0.9ならばEFF=10%である。0%から20%の有効性は無きに等しいとされ、20%の有効性のワクチンが承認されることはない。また、有効性は非線形性という点でも難点がある。有効性の10%と20%の差は非常に小さいが、85%と95%ではリスク減少にして7倍と20倍という大きな差がある。
研究ではサージカルマスクと布マスクの違いも見ているが、そこでは有効性の馬鹿馬鹿しさがさらに明らかになる。サージカルマスクのデータは以下のようになっている。
対照群(nC):190村の103,247人、陽性者数(iC)=774人
処置群(nT):190村の113,082人、陽性者数(iT)=756人
差は18人で、有効性は11%と低い。
一方、布マスクのデータは以下のようになっている。
対照群(nC):96村の53,691人、陽性者数(iC)=332人
処置群(nT):96村の57,415人、陽性者数(iT)=330人
10万人超の研究で差は僅か2人なので、差の数字に意味はないが、有効性を計算すると7%になる。
この場合、7%も11%も「効果なし」として扱われるべきで、その差に大した意味はない。また、このような結果についてはp値のような統計量を計算することにも意味はない。



・「マスク有効」をうたった研究の結果は、実は『マスク無効』だった〜バングラディシュRCTの実際

日々予め幸せ

2021年12月12日

https://note.com/jinniishii/n/ne9c6ce3fbcc9

※バングラディシュのRCTで初めて「マスク有効」と言ってるけど?
 
これまでご紹介した通り、マスクの有効性を調べた質の高い臨床研究ではマスクの効果は尽く否定されてきました。

ところがイェール大学の研究グループがバングラディシュの600の村で行った「ランダム化試験」と名乗る試験で「有意差」が出たと発表、長らくプレプリントのままでしたが、12月2日にようやく『Science』に掲載されました。(『Science』の名が廃りますね)

「マスク着用と身体的距離を推奨された村では、推奨されなかった村に比べて症状と血清SARS-CoV-2 IgG陽性が13.3~42.3%減った」というのです。 


本当は有意差がなかった
 
この研究は掲載日と同じ12月2日に疑義がつきました。

(バングラディシュマスク試験におけるサンプリングの偏りに関する注釈)

データを再解析したところ、実はマスク・距離群とコントロール群の感染者数には有意差がなかったのです。



そして、ランダム化されていたはずのマスク・距離群とコントロール群の人口には大きな有意差があったのです。
 
マスク・距離群の人口は170,497人、コントロール群の人口は156,938人。(13,559人の差)

そしてコ○ナ様の症状があり抗体陽性になった人がマスク・距離群で1,086人、コントロール群で1,106人でした。(20人の差、32万7千人以上参加した研究で)



これは有意とするにはあまりに小さすぎる差で、もし仮に個人でランダム化してあったとしてもp=0.34と有意差無しです。

(確率1/2で二項検定した場合。この研究はもともと村ごとのランダム化であって、個人はランダム化されていません)

この研究では、症状があり抗体陽性になった人の「率」でマスクの効果が主張されています。つまり人口という分母で割られているのです。

症状があって抗体陽性となった人が10%減少したという結果は、分子である症状があって抗体陽性となった割合が約2%低下したことではなく、分母である群の人口が約9%多かったことによって導き出されています。


なぜ分母(人口)がちがうのか?
 
マスク着用の増加や身体的距離の増加以上に、マスク・距離群とコントロール群で最も大きく異なっていたのは、この研究データに参加するように持ちかけられた世帯数でした。そして人口は減ったとされる感染者の「率」の分母に含まれるのです。

解析すると、世帯数の差はp=10の-11乗と有意でしたが(Wilcoxon検定)、症状があって抗体陽性となった人の数も率も有意差は出ませんでした。
 
症状はあっても抗体が確認されなかった「率」では有意差が出ましたが、「数」では出ませんでした。

介入はマスク着用・身体的距離といった行動には大きな効果をもたらしたものの、症状と抗体陽性者数への効果はずっと小さなものであり、有意水準をクリアするものではなかったのです。(つまり、マスク着用や距離はとったけど感染は減らさなかった)


なぜ両群の人口に差が出たのか?
 
参加者の募集は2段階で行われました。まず、盲検化された(マスク・距離群かコントロール群か知らない)スタッフが世帯の地図を作り、次に、盲検化されていない(マスク・距離群かコントロール群か知っている)スタッフが世帯ごとに研究への参加の同意を取ったのです。


実は「ランダム化」されていなかった?
 
最初の地図を作る段階で、マスク・距離群の村の方が4.5%世帯数が多くなっていました。このマッピング行動のマスク・距離群とコントロール群の差はわずかながら有意でした(p=0.0072)。スタッフは盲検化されていたはずなのに、偶然とは言えないほど人口が多い村の方がマスク・距離群に入れられたのです。


マスク群の分母(人口)が多くなるように仕組んだ
 
そして2段階目で、盲検化されていない(マスク・距離群かコントロール群か知っている)スタッフによる研究への参加の同意を求めた世帯数にはマスク・距離群とコントロール群で極めて有意な差が出ました(p=10の-11乗)。その結果、マスク・距離群とコントロール群の世帯数には8%の差が付き、全体の人口では9%の差がついたのです。(つまり両群の人口の差は偶然ではありえず、意図的に人口に差をつけたということ)

この参加を求められた人口の差が、マスク着用や身体的距離以上に両群にとって最も大きな差をもたらしていたのです。
以上がコーネル大学のHPに掲載された疑義になります。
 
この論文一つをもって鬼の首を取ったかのように、他の全てのRCTで否定されていることは全部無視して「マスクは有効なんだ」と主張している方々、惜しかったですね^^

(☝️ぜんぜん惜しくないけど)

それにしても雑誌名だけで中身は関係なく持ち上げる風潮はなんとかならないでしょうか(NEJMとか)。テレビに出たらえらい気になってピースしてる子どもよりたちが悪いです。雑誌もテレビもスポンサーさえつけばデマでも何でも出すのにね。


マスク有効と「するための」様々な手口
 
しかもこの論文、最初からマスクだけでなく身体的距離とかいろんな介入をしちゃってますから、もともとマスク単独の効果は言えません。(マスク単体では有意差が出ないことを自覚していたのでしょうね)

さらに言えば、イェールの解析でもp=0.05とギリギリ有意と言えない値。有意差とは、p値が有意水準を『下回っている』ことで、一般的には甘めでも0.05を有意水準としてp<0.05を有意とします。p=0.05ではギリギリ有意ではないのです。

『有意差が出なかった』ということは、この論文のままでも、マスクの『有意な効果』は否定されていたということです。(再確認ありがとう〜)


さらなる手口
 
さらに、この研究には不自然なところがたくさんあります。まず、なぜバングラディシュで研究を行ったか?ということです。

バングラディシュと言えば、マカオやシンガポールのような島国都市国家を除けば世界で最も人口密度の高い、そして貧しい国です。

そんな国ですが、人口あたりコ○ナ感染者数はイェール大学のあるロックダウンやマスク義務化を行ったアメリカより研究開始まではるかに少なかったのです。



バングラディシュでも2020年5月マスクが義務化されたようですが、着用率は26%にとどまっていたそうです。(そもそも買えない人が多いかもしれません)

それでもコ○ナ感染者も死者もアメリカに比べればほとんどいませんでした。



そんな国でわざわざマスクの大規模試験を行なったのは、

①その巨大な人口を使って「こんなに多くの人数で研究したから確からしい」という印象を与えたかったから。
②サンプル数が大きいほど有意差が出しやすくなるから。逆に言えば32万人以上でやらないと20人の差すら出せないことが研究前からわかっていたから。(よく勘違いされていますが、有意差はサンプル数が多いほど出しやすくなります。だから製薬会社は大規模試験に巨費を投じるのです。明らかに効果のあること、例えばパラシュートの効果で有意差を出すのにサンプル数は少なくていい)

☝️これはドクチン95%有効という結果を出したNEJM論文と基本的には同じ手口です。発症者だけを取り出せば95%有効になりますが、膨大な非発症者にはほとんど差がありませんでした。(図は本間先生のブログからタイトル一部変更)



③マスク着用させる参加者にお金を払ったので、貧しい国の方がコストが安く上がるから(=買収しやすい)
 でしょう。


マスクの有害性を無視
 
この研究では、マスクの副作用を「有害事象は報告されなかった」の一言で済ませていますが、そんなはずはありません。

実はアメリカと比べると微々たるもので全く分からなくなりますが、バングラディシュだけで見ると5月にマスク義務化されてから感染者・死者とも急増していました。

 👇バングラディシュのコ○ナ感染者数。5月から急増。(比較に日本)



 👇バングラディシュのコ○ナ死者数。5月から急増。(比較に日本)



バングラディシュでは暑くて湿度が高く、マスクはすぐ湿って呼吸を妨げ、カビや雑菌の温床となるでしょう。当然、熱中症にもムコール症(カビ感染)にもなりやすいでしょう。そうしたことを全部無視して「報告されなかった」って、報告させなかったのが事実でしょう。


研究期間中にドクチンを開始

この研究は、2020年11月から2021年4月に行われました。正確な日付が書かれていないいい加減さもさることながら、この期間の感染者数のデータを見ると、これまでにない大きな感染者の波が来ていることがわかります。



そしてその波はこれまで多くの国で見てきた通り、ドクチン接種数の波によって引き起こされた波でした。



ということは、この研究期間に感染者数が出る最大の要因は接種であり、マスクや距離の効果など埋もれてしまうことになります。(実は逆効果だとしても)

接種の波が感染者の波を引き起こすことは逆に世界で最も人口密度の低い国モンゴルでも確認されます。



この研究でコントロール群で多く接種させていたとまでは言いませんが、少なくとも研究期間中にあった感染者数に大きな影響を与える要因を検討から外していたことは間違いありません。


多くの人がこの論文の問題を指摘

この論文に疑義を呈している人は多くいます。こちらは日本語でとてもわかりやすいので紹介します👇。

バングラデシュでのマスクRCT(ランダム化比較試験)論文は著しく信頼性に欠ける – 高橋剛 公式サイト
takahashi-goh.net
https://takahashi-goh.net/mask05

「50才以上では有意差が見られるが、50歳以下では有意差が見られない」
「マスク村だけ身体的距離をとっており、マスクのRCTとは言えない」
「成人のマスク着用が75%を超えると報酬がもらえる」
「症状のある人の4割しか抗体を検査されていない」
 
ことを指摘されています。

色々な意味で、穴だらけの論文なのです。

イェール大学の名前の由来となったエライヒュー・イェールは東インド会社総督でした。

バングラディシュを含むインドを植民地支配していた東インド会社、その欺瞞に満ちた支配はバングラディシュが独立した今もこんなところに現れているのですね。

(追記)コーネル大学HPに載っているこちら👇につきまして、(しっかりコ○ナ検閲を受けています)




以下のようなコメントをいただきました。

「疑義に全くなってないと思います。
 感染した人の数ではなく割合を見るべきなのは当たり前でしょう。
 盲検にならないのだから対照群で参加者が減るのも当然です」

「割合を見るべきなのは当たり前」とのことですが、マスコミが感染者数について報道する時、割合で報道されているでしょうか?

「昨日の感染者数は○○○人です」

と言ってるのではないでしょうか?(テレビ見てないから知りませんけど)

「昨日の感染率は日本人口の0.00013%です。」

とは言わないでしょう。

「もうすぐ2年になりますが、累積でも98.6%の人は感染してません」

とも言わないでしょう。

恐怖を煽りたい時は、感染者だけに注目させようとするのです。

膨大な非感染者を無視することで、マスクに効果があったかのように見せかけるのです。

以前ご紹介した👇で取り上げた研究でも、同じ手口を使っています。

マスク推奨のサギ手法
https://note.com/jinniishii/n/nc7c023169140

またもし割合で見るならば、母数が公平でなくてはなりません。この研究では、盲検かされていたはずの村のマッピングの時点ですでに有意な差がついていたのですから、公平とは言えないのです。

「盲検にならない」のではなく、盲検化したはずのところもそうなっていなかったのですから、ランダム化比較試験(RCT)とすら呼べません。

そうした様々な手口を使ってさえ、マスクの有効性は示せなかった、それがこの研究が明らかにしたことではないでしょうか。




・マスク公開議論〜科学とは何か?

日々予め幸せ

2022年12月30日

https://note.com/jinniishii/n/n59d6ca95f5c4

※反論8:バングラディシュのRCT以外はゴミである(1時間20分)
 
宮澤大輔先生はscience誌に載ったバングラディシュのRCTから、マスクに20%の感染予防効果があると仮定することを提案されています。

この論文については、私も以前にまとめました。

この論文については、まずランダム化が不適切であった時点で、ランダム化比較試験として破綻しています。
 
マスク着用群の村でも平均42%の村民しかマスクしておらず、6か月の試験期間中5ヶ月後にはマスク着用率に10%しか差がありませんでした。
 
そしてマスク着用群の村民はソーシャルディスタンスも取るように説明を受け、8週間後にマスク着用率が高い村の村長にはお金190$を与えていました。(190$はバングラディシュの平均収入の4ヶ月分)
 
そして結果はまず症状の有無のアンケートです。「マスクの感染予防効果を証明したい」と説明されてお金をもらっていれば、マスク着用群の村民は症状があったとは言いにくかったことは十分想像されます。
 
そして症状があったと回答した者のうち約40%だけの血液検査をしてIgG抗体を比較しSARS-CoV2の感染率を比較しています。これでは無症状感染や抗体を作らなかった人の感染は見つけることができません。
 
それで全体で症状では11%、抗体保有率では9.5%の差が出たと言います。しかしこの11%、9.5%の母数はコントロール群(マスクとソーシャルディスタンスの説明を受けなかった群)の症状・抗体保有率に対してです。どちらも全体の被験者からすればわずかしかいないので、全体を図にするとこうなります。



これでマスクに感染予防効果があったと言えるでしょうか?被験者全体の有症状者の抗体保有率を比べるとマスク・距離推奨群で0.641%、コントロール群で0.710%です。10万人あたり641人対710人、半年間で10万人に69人有症状感染者が違ったという結果です。(血液検査されなかった有症状者に同じ割合抗体保有者がいたとしても172人の差)
 
生徒数1000人の学校なら1日あたり0.37人、3年に1人くらいしか変わらないということです。

宮澤大輔先生は、高齢者のサージカルマスクに限って35%効果があったと言いますが、これはサッカーに例えるなら、前半10分間だけは勝っていたと言うようなものです。その35%にしても全体の被験者からすればごくごくわずかです。
 
この研究プロセスと結果が、マスクが感染予防に有効だとする根拠と言えるでしょうか?

そもそもこの研究はなぜバングラディシュで行われたのでしょう?バングラディシュの人口が多く、世界最大の人口密度を誇り、そして貧しいからです。バングラディシュ人と日本人の生活はあまりに違います。

それまでほとんどのRCTでマスクの有意な効果は否定されていたので、バングラディシュなら有意差が「出せる」だろうと、有意差を「出すための」様々な工夫を凝らして行われたのです。

それでもこの程度の差だったのです。

また宮澤大輔先生は私が紹介した統計学者がバングラディシュの論文以外はゴミだと認めたと言いましたが、彼のツイートはこうです。




現時点ではRCTは16研究しかなくプロセスを含めて文句なくその有効性を示せたものは1つもない上に介入シーンに拘るならメタ解析に移るほど数もないですから、メタ解析で語る段階では無いでしょう。これについて同意されるなら、あまり人の研究をゴミとは言いたくないですが認めますよ。

— 雑煮にあん餅(Ph.D)@小田原ういろう売り (@mesiasan) December 16, 2022
 

雑煮にあん餅さんは「プロセス含めて文句なくその有効性を示せたRCTは1つもない」と言っています。

1つもないということは、バングラディシュのRCTも文句なく有効性を示せていないということを意味します。それに対して宮澤大輔先生も「科学者として正しい判断ありがとうございます」と答えているのです。

宮澤大輔先生はどこで「バングラディシュのRCTだけは有効と認められた」と解釈されたのでしょうか?

それでも私はこの研究結果がゴミだとは思いません。
 
マスクに感染予防効果は高く見積もってもほとんどないこと、マスクをしなくても99%以上の人は有症状感染しないことを示す重要な論文だと考えます。