ブログ主コメント:時数の制限で書けませんでしたが、タイトルの趣旨は、保険証の廃止の撤回は当然のこととして、そもそもマイナンバー制度を廃止せよ、ということです。

































































































・誰得?マイナ保険証ない人向け「資格確認書」 本人申請が必須で有効期限は最長1年、自動更新は未定(東京新聞web 2023年2月21日)
 
マイナンバーカードと健康保険証を一体化させた「マイナ保険証」に絡み、岸田政権がまた物議を醸す仕組みを打ち出した。未取得者向けに保険証代わりの「資格確認書」を発行するという。取得には申請が必須で、有効期限は最長1年間。本人にも事務窓口にも手間がかかりすぎないか。面倒ならマイナカードを作ってね、と言わんばかりの対応だが、いったい誰が得をするのか。


◆取得に当初は有料化検討
 
2024年秋に健康保険証を廃止し、マイナ保険証への一本化を目指す岸田文雄首相は昨年10月、マイナカードを持たない人も保険診療を受けられるように「保険証に代わる制度をつくる」と表明。デジタル庁や総務省、厚生労働省が中心となって同12月から対応策を検討していた。
 
今月17日に公表した中間取りまとめでは、保険証の代わりとなる紙の資格確認書を発行する方針を明示した。当初は有料化も検討されたが、自民党内部からさえ「懲罰的にお金を取るのはおかしい」と反対の声が上がり、発行は無料になった。
 
一方で、取得するには本人申請が必要で、有効期限は最長1年とした。期限が切れたら更新もできるが、国民健康保険証のように自動更新されるかは未定だ。
 
厚労省の担当者は「基本的に必要な人が必要な時に申請するもの。自動更新していくかはそれも踏まえて検討する」と話し、更新時も申請が必要となる可能性に含みを残した。窓口の費用負担も、現行の保険証と同様に、マイナ保険証より重くなる。


◆うっかりすると無保険扱いに?
 
本人負担だけでなく、医療機関の窓口での新たな混乱の種になりそうだ。
 
首都圏で在宅医療に携わる木村知医師は「すでにマイナ保険証と従来の保険証が入り乱れている。もう1種類入ってきたとき、窓口がかなり混乱するのではないか。ただでさえ、コロナ対応で苦心しているのに、事務手続きを煩雑にして現場の足を引っ張ることはやめてほしい」と訴える。
 
制度の枠組みも大きく変わる。厚労省によると、現在の健康保険法では、保険料を支払っている被保険者に対し、健康保険組合などの保険者が健康保険証を発行・送付することが義務付けられている。今後は被保険者が申請しないと交付されなくなり、マイナ保険証がない人はわざわざ資格確認書の取得・更新の手続きを強いられることになる。
 
マイナ保険証への一体化に反対してきた全国保険医団体連合会(保団連)の本並省吾事務局次長は「資格確認書の取得が任意で1年限定となると、保険料を適切に支払っている人でも、うっかり申請を忘れるなどし、医療機関の窓口で資格喪失や無保険扱いとなることが懸念される」と語る。
 
問題は、医療現場にとどまらない。
政府の審議会では、老人介護施設の関係者らから「現在は緊急時の受診などに備えて施設で保険証を預かっているケースが大半だが、センシティブな情報があるマイナ保険証になると、預かるのは難しい」とマイナ保険証の一本化に懸念の声が上がった。
 
政府は資格確認書はそうした高齢者らへの対応策としているが、本並氏は「該当する高齢者は国内に数百万人いる。そうした人たちが新たに資格確認書を申請するのも大変だし、受ける自治体側も大変。現行の保険証で対応できていたことに、膨大な社会コストを払うことになる」と指摘した上で続ける。「政府がマイナ保険証ありきで、当事者のことを考えずに制度を考えたために、無用の混乱を招いている。国民も医療機関も望んでいない保険証の廃止は撤回すべきだ」


・<社説>マイナ保険証 給付の平等性を損なう(東京新聞web 2023年3月6日)

※政府は健康保険証とマイナンバーカードが一体化したマイナ保険証を持たない人たちに「資格確認書」を発行する方針だ。確認書での窓口負担は割高に設定されるという。カードを持たないだけで不利益を被ることは差別に等しい。方針の撤回を求めたい。
 
政府は来年秋に現行の健康保険証を廃止し、マイナ保険証に切り替える方針だ。ただ、情報漏えいやプライバシー侵害への懸念からカードの作成をためらう人は少なくなく、政府はマイナ保険証に代わる資格確認書の発行を決めた。
 
確認書は更新が可能だが、有効期間は最長一年に限定される。さらに窓口負担には上乗せ価格が設けられるという。
 
同じ保険料を払いながら、なぜマイナ保険証を持たない人たちだけが不利益を被るのか。給付の平等性を損なうのではないか。
 
寝たきりの高齢者らにも影響は及ぶ。カードの発行には市町村窓口での対面による本人確認が必要だが、こうした高齢者らのために簡略化が検討されている。だが、窓口確認は不正取得の防止のためだ。安易に緩めていいのか。
 
現行の保険証に不具合がないのに、手間と税金をかけて不便を強いることは納得しがたい。
 
保険医療機関に対しても、政府は省令でマイナ保険証に対応するシステムを導入するよう義務付けている。しかし、全国保険医団体連合会の昨年秋の調査では、導入した医療機関の約四割で不具合やトラブルが発生している。
 
災害などで停電やインターネット接続が不調になれば、稼働しない不安もあり、保険証を残すべきだという声は根強い。システム管理費を担えないため、廃業を検討している診療所も出てきている。
 
先月二十二日には、東京都内の医師や歯科医師約二百七十人がマイナ保険証義務化は憲法違反だとして、国に義務化の撤回を求める訴えを東京地裁に起こした。
 
国民の生命と健康を守ることは政府の最優先の責務であり、カードの普及のために保険証を使うとは本末転倒だ。カードの取得は任意ではないのか、という疑問に政府は正面から向き合うべきだ。



・マイナンバー利用拡大、法改正なしでも可能に 関連法案を閣議決定(毎日新聞 2023年3月7日)

※政府は7日、個人に割り振られた12桁のマイナンバーの利用範囲を拡大する関連法案を閣議決定した。マイナンバーを使う事務手続きは現在、社会保障と税、災害対策の3分野に限定されており、取り扱いができる行政機関、用途などが厳しく規定されている。マイナンバー法で規定されたマイナンバーの用途について「準ずる事務」を実施する際は、法改正ではなく省令の見直しだけで可能とする。

より簡素な変更を可能にすることでマイナンバーの利便性を向上させる狙いがある半面、行政の恣意(しい)的な用途拡大につながる恐れもある。

マイナンバーとひも付ける公金受取口座の登録を促進する新制度も創設。年金給付に関し行政機関が既に口座情報を把握している場合、本人に確認したうえでマイナンバーとひも付いた公金受取口座として登録する。

政府は現行の健康保険証を2024年秋で廃止し、マイナンバーカードと健康保険証を一体化した「マイナ保険証」へ切り替える方針。切り替えを視野に関連法案には、マイナンバーカードの未取得者や紛失した人などが保険診療を受けられる「資格確認書」を発行する規定も盛り込んだ。

また、マイナンバーカードの申請時に必要となる顔写真について、1歳未満の乳児は5歳の誕生日まで顔写真は不要とする。



・このままでは「マイナンバーカード」が次々に失効していく…政府が"保険証廃止"を強引に進める本当の理由(2023年7月6日 プレジデントオンライン)

※■原因は「ヒューマンエラー」とするデジタル大臣

コンビニで住民票が取れるというのが「便利さ」のウリだったマイナンバーカード。ところが請求したら別人の証明書が誤交付されるケースが出て大きなニュースになった。その後も、「公金受取口座」が他人のマイナンバーに紐付けられていたり、別人にマイナポイントが付与されたケースが相次いで明らかになった。本格運用が始まったマイナンバーカードを健康保険証として使う「マイナ保険証」でも本人以外の情報が紐付けられているケースが大量に発覚した。マイナンバーカードを巡る混乱はとどまるところを知らない。

河野太郎デジタル大臣は大半の原因は「ヒューマンエラー」にあるとしている。デジタル庁が作ったシステムの問題ではない、と言わんばかりだ。確かにマイナンバーカードに保険証など別のカードの情報を紐付けようとすると、役所の窓口で役人が関与するケースが増える。ログインしていたマイナポータルの画面からログアウトせずに次の人のデータを入力して別人の情報が紐付けられたケースなどヒューマンエラー、つまり人による誤りが起きているのは間違いない。


■マイナ保険証にいたっては「悲惨」そのもの

また、例えば小さな子供の公金受取口座に親の銀行預金口座番号を紐付けるなど、結果的に「他人」を紐付けたものが多数見つかった。その数、6月7日に河野大臣が発表した時点でなんと約13万件。家族ではない他人の口座が誤登録されていたものも748件見つかった。子供でも本人名義の口座を登録しなければいけないという情報が徹底されていなかった「ヒューマンエラー」というわけだ。

マイナ保険証にいたっては「悲惨」そのものだ。6月13日時点で加藤勝信厚労大臣が明らかにした他人の情報が登録されていたケースは7372件。医療機関でマイナ保険証を使った際に「無効」などと表示され、患者が窓口で医療費の10割負担を求められるケースも相次いだ。加藤大臣は6月29日の会見で、カードで加入する保険を確認できなくても、8月診療分からは窓口では本来の3割負担などで支払い可能とする対応策を公表した。マイナ保険証を初めて使う場合には従来の保険証も持っていくように呼びかけるとしており、何ともトホホな対応を迫られている。


■現場努力だけでは「ヒューマンエラー」を防げない

政府はマイナンバーカードの普及に躍起になっており、最大2万円分のポイントの付与などで作成を呼びかけた。その結果、7月2日現在では累計9737万枚と人口の77.3%が取得するまでに広がっている。今年1月末に60.1%だったものがポイントの付与をきっかけに一気に高まったが、これが逆に窓口の業務を爆発的に増やし、ヒューマンエラーを助長した面もある。

それでもIT(情報技術)の専門家からすれば、数百件のシステムエラーがあったとしても、1億枚近くある母数を考えれば、わずかな比率だということになるのだろう。7月2日のNHKの日曜討論には河野大臣が出演、「マイナカード問題 どう対応?」というタイトルで放送されたが、討論というよりも問題沈静化を図るための国民への説明という感じだった。

出演者が個人認証制に肯定的な専門家だったということもある。さすがに、「役所もミスをするという認識を国民が持つ必要がある」というシンクタンク研究員の発言には、現場でシステム作りを担っている埼玉県戸田市役所の大山水帆デジタル戦略室長が「役所では絶対間違いが起きないような仕組みにしなければいけない」と嗜めていた。もっとも、各自治体でデジタル化に取り組める人材が圧倒的に足りない実態なども強調。現場の努力だけではヒューマンエラーの再発が防げない危機感を示していた。


■デジタル化しても「仕事の仕組み」が変わっていない

なぜ、こんなにデータの紐付けでトラブルが起きるのか。それは単なる「ヒューマンエラー」なのかというとそうではない。DXというのはデジタルトランスフォーメーションの略で、デジタル化と共に、それまでの仕事の仕組みを変えていくことを示している。デジタル化すれば仕事が変わる、というのではなく、仕事のやり方や流れをデジタル化できるように変えていくということが重要になる。この「X」(トランスフォーメーション)ができていないことが日本のDX化が進まない最大の原因なのだ。

例えば、マイナンバーカードに別人の公金受取口座が紐付けられてしまった最大の理由は、銀行口座の「氏名」が「カタカナ」になっていることだ。一方、マイナンバーに登録されている氏名は「漢字」のみ。カタカナの読みが入っていないので、システムで自動的に名寄せをすることができない。データの大本になる戸籍にはそもそも読み仮名がないのだ。住民基本台帳にはカタカナの読みを入れている市町村もあるが、検索する便宜上のもので、その読みが本当に正しいかどうかを示したものではない。つまり、銀行口座のカタカナ氏名と住民基本台帳の読みが一致するとも限らないのだ。


■混乱は必至の「戸籍法改正」

政府は急きょ、6月に閉幕した国会で法改正を行い、戸籍に読み仮名を必須とする戸籍法改正を行った。法律が施行されると1年以内に本籍地や住所地の役所に行って読み仮名を申請しなければならない。その時、誤った読み仮名を申請してしまう「ヒューマンエラー」のリスクは残る。預金口座のカタカナと戸籍上の読みが違っているケースもあるに違いない。名前の読みを証明しようにもパスポートはローマ字で、表記も複数認められているケースがある。

届出がなかった人には住民基本台帳などの読みを「了承したものとみなす」ことになりそうだが、混乱は必至だ。そもそも戸籍に使われている漢字には当用漢字や人名漢字以外のものもあり、誤字が登録されているものすらある。文字が違ったり、読みが違えば、コンピューターは同じデータとは判断せず、つまり別人と扱うわけだ。

そもそも、戸籍の人口と住民基本台帳の人口も大きく違うし、海外に1年以上赴任する場合など、転出で住民票はなくなる。そういう仕組みになっているのだ。


■個人を「本人」と特定する仕組みがバラバラ

健康保険のデータを管理する健康保険組合のデータとマイナンバーのデータが一致しないのも同様の問題だ。健康保険証には読み仮名があるが、住民基本台帳の読み仮名と同じである保証はない。登録する時点で確認している組合はほとんどないからだ。また、健康保険証には写真もないし、名前も本名ではなく通称を保険証の表氏名欄に記載することを認めているケースもある。

つまり、個人を「本人」と特定する仕組みが年金や保険など制度ごとにバラバラでそれをきちんと整理する「X」、すなわち仕事の見直しをこれまでやってこなかったわけだ。それを一気にマイナンバーカードに紐付けて、従来の健康保険証を廃止するというから大混乱が生じているわけだ。健康保険証にマイナンバーを利用し、その保険証でもマイナ保険証でも問題なく保険が使えるようになってから、一体化すれば簡単に移行できたはずだ。

今回の不祥事を受けて、マイナンバーカードを返納する動きが広がっている。本人が役所に行って手続きをすれば、一度公布されたカードでも無効にできるのだ。それだけではない。実はマイナンバーカード自体に有効期限がある。カード自体は発行から10回目の誕生日を迎える日まで。カードの交付が始まったのは2016年1月なので、2025年1月以降失効するカードが出始める。さらにカードに付いているICチップの電子証明書の有効期限は5年なので、役所に出向いて更新しなければいけない人が出始めている。これを放っておくとカードは無効になってしまう。


■保険証廃止はマイナンバーカードを存続させるため

河野大臣がNHKの日曜討論で、「マイナンバーカードという名前を変えるべきだと個人的には思う」と発言して、その後、松野博一官房長官が否定する場面があった。これは番号よりもICチップの電子証明書が重要なカギの役割をしているためだ。

つまり、ポイントを大盤振る舞いしてやっと8割に達したカードが、国民に使われなければ次々に失効していく。おそらく保険証を強制的に廃止しようとしているのは、利便性を増すためではなく、マイナンバーカードを存続させるためだろう。結局、デジタル化を進める「D」側の人たちは自分たちのペースで自分たちの考えるデジタル化を進めようとしているのだろう。一方で「X」側にいる役所などの職員も旧来の仕事の仕方を極力見直さないで済ませようとしている。

結局最後は、「世界で最も複雑なシステム」(政府に近いIT専門家)と言われる膨大な仕組みが出来上がるのだろう。複雑になればなるほど「ヒューマンエラー」は生じる。マイナンバーを巡る混乱は残念ながらまだ当分続くことになりそうだ。

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磯山 友幸(いそやま・ともゆき)
経済ジャーナリスト
千葉商科大学教授。1962年生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。日本経済新聞で証券部記者、同部次長、チューリヒ支局長、フランクフルト支局長、「日経ビジネス」副編集長・編集委員などを務め、2011年に退社、独立。著書に『国際会計基準戦争 完結編』(日経BP社)、共著に『株主の反乱』(日本経済新聞社)などがある。