・「コロナ疑い客」宿泊拒否可能に 厚労省、法改正へ(日本経済新聞 2022年7月14日


※厚生労働省は新型コロナウイルスの感染が疑われる客の宿泊を拒否できるようにするためルールを見直す。従業員や他の宿泊客の安全や安心を確保し、旅館やホテル業界の経営改善を後押しする。今秋に召集する臨時国会に旅館業法の改正案を提出し、2023年の施行をめざす。

同省は14日、コロナ禍での旅館やホテルに関する制度見直しの方向性をまとめた。感染症の流行時に限り、発熱やせきなど感染症が疑われる症状をもつ客の宿泊を拒否できるようにする。

旅館業法は感染症の診断といった明確な証明がなければ、客を拒んではならないと定める。現行では従業員や他の宿泊客の安全確保が難しく、安定した運営との両立に支障をきたすケースが生じていた。

発熱症状がある場合に旅館やホテル側が客に医療機関の受診などを求め、正当な理由なく応じなければ宿泊を拒否できるようにする。症状のない客でも感染対策に応じなければ、拒めるようにする。

旅館やホテル業界はコロナ禍の需要減で大きな打撃を受けた。政府はルールを見直し、観光産業へのテコ入れと経済活動の早期回復を狙う。

観光庁によると、コロナ禍前の19年の国内旅行消費額は21兆9312億円だった。21年は9兆1835億円に落ち込んでいる。日本は感染拡大防止の観点で米欧に比べて厳しい水際対策を続ける。外国人客が早期にコロナ禍前の水準に戻るのは期待しにくい。まずは国内観光客の需要を呼び起こし、経済回復につなげる。

感染拡大時に事業者側が緊急対応しやすい仕組みも整える。チェックイン時に宿泊客が書く「宿泊者名簿」について、感染対策との関連が薄い職業欄をなくす。現在は法律上の記載項目となっていない携帯電話の番号といった連絡先を追加する。感染が確認された際、保健所などがすぐに連絡できるよう法的に位置づける。

感染症に関係なく「迷惑客」も新たに拒否できるようにする。対応が難しいサービスを繰り返し要求された場合などを想定する。「迷惑客」の判断基準といった詳細については、新たな指針を策定する。

今回の法改正と並行し、厚労省は宿泊客が差別を受けないようにするルールづくりを進める。例えば、がんなどの病気をかかえる人は体温が高めになることがあり、不当な扱いを防ぐための指針を定める。有識者から「がん治療に関わる症状や副作用などを理由に、宿泊を必要以上に制限されないようにしてほしい」との声が上がっていた。


・マスク着用や手指消毒を拒否…感染対策しない客は「宿泊お断り」、厚労省が法改正目指す(読売新聞オンライン 2022年7月15日)



※厚生労働省の有識者検討会は14日、新型コロナウイルスなど感染症の流行時に感染対策を行わない宿泊者について、ホテル・旅館業者が宿泊を拒否できる制度の創設を提言した。同省は今秋の臨時国会で旅館業法の改正案の提出を目指す。

現行法では、事業者が宿泊拒否できるケースとして〈1〉感染症への感染が認められる〈2〉賭博など風紀を乱す行為をする恐れがある――などの場合と規定。しかし、コロナ禍で発熱やせきなど症状があるだけでは宿泊を拒否できず、事業者側からは「感染対策に従わない場合、宿泊を拒否できる根拠を明確にしてほしい」との声も上がっていた。

新制度案では、マスク着用や手指消毒など基本的な感染対策をとらない人の宿泊を拒否できるようにする。症状がある人には医療機関の受診を求め、拒まれた場合も同様に宿泊拒否の対象とする。対象となる感染症については今後、法令で定める方針だ。

ただ、過去にはホテル事業者がハンセン病の元患者の宿泊を拒否するなど不当な差別事案も起きている。このため従業員の研修を事業者の努力義務にする方向で検討する。