・中国の個人情報 驚きの実態 身分証と番号で行動筒抜け?(FNNプライムオンライン 2022年4月5日)

※日本では、マイナンパーカードについて「個人情報を管理されるのでは」との懸念などから普及が進んでいない。
一方、中国では生まれた時から個人番号などで管理される。
身分証は、さまざまな場面で求められるが、多くの国民は受け入れているのが現状だ。
中国が進める個人情報の管理は行きすぎなのか?
FNN北京支局の河村忠徳記者が解説する。
FNN北京支局・河村忠徳記者「中国で国民の個人情報が、どれほど政府に管理されているかをお伝えします。まず、その象徴が身分証です。これは、中国の国民全員が16歳になると作るもので、個人番号などの情報が記されています。そして、登録時には指紋情報と顔写真が撮影されます。この身分証は多くの人が常に携帯していて、実際に至るところで身分証の提示が求められます。例えば、公園に入る際にも『身分証』の提示が必要になります。ほかにも飛行機や高速鉄道、そして長距離バスの移動、銀行口座の開設、ホテルの宿泊、携帯電話の契約の手続き、学校の入学、就職、婚姻届など、人生のあらゆる場面で身分証が必要になります。この『身分証さえ1枚あれば』、ほとんどの手続きができて便利という声もありますが、言い換えると、この身分証によって個人情報が確認されないと、生活できないのが現実とも言えます」
河村忠徳記者「さらに、スマートフォンのアプリを使った個人情報の管理も進んでいます。その1つが電子マネーです。中国ではスマホで電子マネーを通じて、すべての支払いが完了し、現金を使うことがほぼありません。実際に、わたしも2021年9月に赴任し、きょうに至るまで現金を使ったことがありません。こうしたスマホの電子マネーを通じて、お金の流れも当局に一目瞭然となっています」
河村忠徳記者「また、北京では一般のコロナ対策として、『健康宝』というアプリが導入されています。これはコロナ対策という名目で導入されたアプリですが、人の『健康』だけでなく『行動』まで管理します。今は、建物などに入るたびにアプリのQRコードの読み取りなどが求められています。ただ、この健康宝には日本のコロナアプリとの大きな違いがあります。それは、身分証番号など個人情報と紐付けられていることです。そのため、誰がどの建物に入ったかなど個人の行動履歴が記録され、当局はこれを確認することができるんです。このように、中国の国民は徹底した個人情報の管理下に置かれていますが、それは生まれた日から始まっています。中国人は、生まれた日に18桁の個人番号が国から与えられ、この番号は、一生変わることはありません。そして子どもが生まれた際の『出生届』をどこに提出するかというと、日本では自分が住む最寄りの役所に提出しますが、中国の場合は最寄りの『公安局』、日本でいう『警察署』に提出するんです。生まれてすぐに個人情報を警察が管理するというのは、日本人にとっては違和感がありますが、これは中国ではあたり前のことなんです。ある中国人は、『人間は悪いことをしてしまう生き物で、最初に警察が管理しておけば、悪い事件が起きてもすぐに解決できる』とメリットを語っていました。確かに、治安の維持という面では役立っているんです。中国では警察が『身分証』の提示を求めた場合、国民は必ず応じなけれはいけないと法律で決まっています。これにより、2018年には北京市だけで殺人などさまざまな犯罪を起こし逃亡していた6,000人余りの摘発につながったということです。身分証が捜査に役立った例としては、ほぼ強制的に行われているコロナのPCR検査で、身分証の提示を拒んでいた男がいて、警察が確認すると、実は指名手配中の男だと判明し、逮捕されたという例があります。また、ある女性は、身分証の提出が必要な鉄道に乗る際、偽造した身分証を提示したことで、検挙されました。この女性が、なぜ身分証を偽造する必要かあったのかというと、実は当時、交際していた男性に対し、年齢をさば読みしていて、『本当の年齢がわかってしまう正式な身分証を使用できなかった』ということでした」
このように完全に個人のプライバシーが、すべて筒抜けになる中国の身分証に対して、中国国民はどう感じているのか、街で聞いてみた。
女性「いろいろな物を持たなくてよいので便利です。身分証とスマホがあれは、どこにも行けます」
男性「わたしは良いと思います。身分証で管理すると、どこかで、事故に遭ってもすべて判明するので」
河村忠徳記者「男性が話したように、先月、中国の広西チワン族自治区で起きた旅客機の墜落事故の際、乗客はこの身分証を提示していたことから、すぐに特定につながり、家族への連絡もできたと言います。実際に話を聞いた中国の人たちは、個人情報を政府が管理することに抵抗はありませんでした。それはなぜかというと、中国人の中には、国家や政府は自分たちを守ってくれる『お父さん』や『お母さん』と考える人が一定数いるからです。こうした中国の徹底した個人情報管理は、わたしたち日本人や欧米諸国から見るとマイナスに見える部分がありますが、多くの中国人はこれを社会の安全にとって、『必要なこと』として受け入れています。では、日本は国民の個人情報をどう扱っていくのか、治安の維持や、便利さの一方でプライバシーが犠牲になることをどこまで許容するのか、日本と中国の政治や社会の体制は違いますが、色々と考える必要があると思います」
加藤綾子キャスター「中国では、徹底した個人情報管理とかが便利だとか、安全だという認識につながっているんですね」
キヤノングローバル戦略研究所研究主幹・宮家邦彦氏「僕は、この間、マイナンバーカードのアプリを初めてやったんだが、それは便利ですよ、いろんなものが、情報があってね。だけどね、今の話を聞いてたら、どっちがいいのかなと思いますよね。こういうカードを見た時に思い出すのは、エストニア。全員がこういうカードを持っていて、いろんな情報が入ってるんですよ。だけど、エストニアは、面倒な行政手続きから、国民をどうやって解放するか、という観点で作られている。だけど、中国の話を見ると、どうも個人を解放するというよりは、行政が、個人をどこまでコントロールするか、そのために使われているような気がする。そうであれば困るなと思います。中国人は勝手な人も多いけど、本当の自由を知らないんじゃないですか。本当の自由を知ったら、そんなことは言えませんよ」

※日本では、マイナンパーカードについて「個人情報を管理されるのでは」との懸念などから普及が進んでいない。
一方、中国では生まれた時から個人番号などで管理される。
身分証は、さまざまな場面で求められるが、多くの国民は受け入れているのが現状だ。
中国が進める個人情報の管理は行きすぎなのか?
FNN北京支局の河村忠徳記者が解説する。
FNN北京支局・河村忠徳記者「中国で国民の個人情報が、どれほど政府に管理されているかをお伝えします。まず、その象徴が身分証です。これは、中国の国民全員が16歳になると作るもので、個人番号などの情報が記されています。そして、登録時には指紋情報と顔写真が撮影されます。この身分証は多くの人が常に携帯していて、実際に至るところで身分証の提示が求められます。例えば、公園に入る際にも『身分証』の提示が必要になります。ほかにも飛行機や高速鉄道、そして長距離バスの移動、銀行口座の開設、ホテルの宿泊、携帯電話の契約の手続き、学校の入学、就職、婚姻届など、人生のあらゆる場面で身分証が必要になります。この『身分証さえ1枚あれば』、ほとんどの手続きができて便利という声もありますが、言い換えると、この身分証によって個人情報が確認されないと、生活できないのが現実とも言えます」
河村忠徳記者「さらに、スマートフォンのアプリを使った個人情報の管理も進んでいます。その1つが電子マネーです。中国ではスマホで電子マネーを通じて、すべての支払いが完了し、現金を使うことがほぼありません。実際に、わたしも2021年9月に赴任し、きょうに至るまで現金を使ったことがありません。こうしたスマホの電子マネーを通じて、お金の流れも当局に一目瞭然となっています」
河村忠徳記者「また、北京では一般のコロナ対策として、『健康宝』というアプリが導入されています。これはコロナ対策という名目で導入されたアプリですが、人の『健康』だけでなく『行動』まで管理します。今は、建物などに入るたびにアプリのQRコードの読み取りなどが求められています。ただ、この健康宝には日本のコロナアプリとの大きな違いがあります。それは、身分証番号など個人情報と紐付けられていることです。そのため、誰がどの建物に入ったかなど個人の行動履歴が記録され、当局はこれを確認することができるんです。このように、中国の国民は徹底した個人情報の管理下に置かれていますが、それは生まれた日から始まっています。中国人は、生まれた日に18桁の個人番号が国から与えられ、この番号は、一生変わることはありません。そして子どもが生まれた際の『出生届』をどこに提出するかというと、日本では自分が住む最寄りの役所に提出しますが、中国の場合は最寄りの『公安局』、日本でいう『警察署』に提出するんです。生まれてすぐに個人情報を警察が管理するというのは、日本人にとっては違和感がありますが、これは中国ではあたり前のことなんです。ある中国人は、『人間は悪いことをしてしまう生き物で、最初に警察が管理しておけば、悪い事件が起きてもすぐに解決できる』とメリットを語っていました。確かに、治安の維持という面では役立っているんです。中国では警察が『身分証』の提示を求めた場合、国民は必ず応じなけれはいけないと法律で決まっています。これにより、2018年には北京市だけで殺人などさまざまな犯罪を起こし逃亡していた6,000人余りの摘発につながったということです。身分証が捜査に役立った例としては、ほぼ強制的に行われているコロナのPCR検査で、身分証の提示を拒んでいた男がいて、警察が確認すると、実は指名手配中の男だと判明し、逮捕されたという例があります。また、ある女性は、身分証の提出が必要な鉄道に乗る際、偽造した身分証を提示したことで、検挙されました。この女性が、なぜ身分証を偽造する必要かあったのかというと、実は当時、交際していた男性に対し、年齢をさば読みしていて、『本当の年齢がわかってしまう正式な身分証を使用できなかった』ということでした」
このように完全に個人のプライバシーが、すべて筒抜けになる中国の身分証に対して、中国国民はどう感じているのか、街で聞いてみた。
女性「いろいろな物を持たなくてよいので便利です。身分証とスマホがあれは、どこにも行けます」
男性「わたしは良いと思います。身分証で管理すると、どこかで、事故に遭ってもすべて判明するので」
河村忠徳記者「男性が話したように、先月、中国の広西チワン族自治区で起きた旅客機の墜落事故の際、乗客はこの身分証を提示していたことから、すぐに特定につながり、家族への連絡もできたと言います。実際に話を聞いた中国の人たちは、個人情報を政府が管理することに抵抗はありませんでした。それはなぜかというと、中国人の中には、国家や政府は自分たちを守ってくれる『お父さん』や『お母さん』と考える人が一定数いるからです。こうした中国の徹底した個人情報管理は、わたしたち日本人や欧米諸国から見るとマイナスに見える部分がありますが、多くの中国人はこれを社会の安全にとって、『必要なこと』として受け入れています。では、日本は国民の個人情報をどう扱っていくのか、治安の維持や、便利さの一方でプライバシーが犠牲になることをどこまで許容するのか、日本と中国の政治や社会の体制は違いますが、色々と考える必要があると思います」
加藤綾子キャスター「中国では、徹底した個人情報管理とかが便利だとか、安全だという認識につながっているんですね」
キヤノングローバル戦略研究所研究主幹・宮家邦彦氏「僕は、この間、マイナンバーカードのアプリを初めてやったんだが、それは便利ですよ、いろんなものが、情報があってね。だけどね、今の話を聞いてたら、どっちがいいのかなと思いますよね。こういうカードを見た時に思い出すのは、エストニア。全員がこういうカードを持っていて、いろんな情報が入ってるんですよ。だけど、エストニアは、面倒な行政手続きから、国民をどうやって解放するか、という観点で作られている。だけど、中国の話を見ると、どうも個人を解放するというよりは、行政が、個人をどこまでコントロールするか、そのために使われているような気がする。そうであれば困るなと思います。中国人は勝手な人も多いけど、本当の自由を知らないんじゃないですか。本当の自由を知ったら、そんなことは言えませんよ」