・ロシア軍は3日以内に食糧弾薬尽きる ウクライナ側が分析(Newsweek日本版 2022年3月25日)

※──食糧事情は悪化し、キエフ郊外で村人に食べ物をねだるロシア兵が出現。3週間にわたり車列が停滞していることで、補給が破綻した可能性がある
プーチンは、兵士に食糧と燃料の「自給自足」を命じていている......

補給線の弱さが指摘されるロシア軍に関し、ウクライナ軍総参謀本部は新たに、進軍中のロシア部隊の燃料・弾薬・食糧がいずれも3日以内に枯渇するとの認識を示した。

軍参謀本部は、「入手できている情報によると、ウクライナで活動中のロシア占領軍が備蓄している弾薬および食糧は3日分に満たない。燃料に関してはタンクローリーで補給が行われるが、これについても状況は類似している。占領軍は兵士集団の需要に応えるだけの補給ルートを構築することができなかった」と指摘している。

この分析はウクライナ軍参謀本部が3月21日、Facebookへの投稿を通じて明かした。手元食糧の節減や現地での略奪などを通じ、3日を超えて持ちこたえている可能性があるが、前線のロシア部隊の切迫した状況を示している。

当初短期戦を意図していたロシアは、戦闘の泥沼化にあえぐ。24日時点の戦況について英BBCは、首都包囲を試みていた部隊が「防御陣地を掘り地雷を設置している模様で、近いうちの大規模な攻撃は想定していない可能性がある」とするアナリストの見解を報じた。

■ 車列停滞で大動脈が停止

首都包囲に向かうロシア軍の車列は、3月1日ごろから停滞している。この車列こそ、前線のロシア部隊に燃料と食糧を届ける生命線であった可能性が指摘されている。

元ノキア重役でありウクライナ侵攻を精力的に分析している著述家のトミ・アホネン氏(フィンランド出身・香港在住)は、単一の補給線に頼ったロシア側のリスク管理の甘さを指摘する。各戦闘車両は1日分の燃料と食糧を搭載していたが、2日目以降は後方からの補給に頼る計画だった模様だ。

氏のツイートよるとこの補給線こそが64キロの車列であり、その構成は8台あたり1台ほどの武装車両がエスコートするほかは、2800台のほぼすべてが輸送トラックとなっていた。「この40マイル(64キロ)の車列は、(前線にいるとされる7個師団の)7万の兵士ではない。7万の兵士に1日分として供給される、燃料、弾薬、食糧だ。」

この大動脈が停滞したことで、前線の活動は大混乱に陥った。

■ リスク分散せず「華麗な失態」演じる

車列の停滞を受けロシア側は、防御に必要な最低限の弾薬についてはヘリによる緊急輸送を実施した。しかし、攻撃用の重火器と燃料は重量があるため、空輸が難しい。

7個師団を動かすには1日あたり910万リットル(鉄道タンク車69台分)の燃料が必要となるが、この輸送が途絶えたことでロシア軍の活動は目に見えて弱体化する。

アホネン氏は次のように総括している。「核心に入ろう。ロシアの侵略立案者たちは、燃料補給車すべてを40マイルの車列という同じバスケットに入れた(リスクを分散しなかった)ことで、華麗な失態を演じたのだ。」

プーチンは現在、兵士に食糧と燃料の「自給自足」を命じているが、これは略奪による現地調達を意味しており、兵站の破綻を実質的に認めた形だ。

アホネン氏はさらに踏み込み、ウクライナ軍が戦略的にあえて停滞車両を破壊しなかったとも推察している。これにより、補給地点目前にまで到達した車列の前進にロシア側が腐心するよう仕向け、他の兵站ルートの構築を遅らせたとの読みだ。

ウクライナ側にそこまでを企図する余裕があったかは定かでないが、いずれにせよ、64キロに及ぶ単一の輸送網に頼ったロシア側の戦略ミスは否めないだろう。

■ 食糧ねだるロシア兵

食糧配送網の破綻により、ここ数日、ロシア兵がウクライナ市民に食糧を乞い、今後はウクライナのため戦うと誓った話が報じられるようになった。英エクスプレス紙は、キエフ郊外の村に複数のロシア兵が現れ、「食べ物はありませんか」とねだったと報じている。

同紙に対し、キエフの市民はこう証言している。「そしていえることは、彼ら(ロシア兵ら)は攻撃する気がない……悪意があるのは彼らの指揮官たちだ」「しかし個々の兵士たちは、助けてくれ、なにか食べるものをくれ、という状態だ」「だから、この侵略をはじめたウラジーミル・プーチンは厄介な事態に陥った。侵略をはじめたものの、彼の兵士たちは腹を空かせていて戦う気がないのだ。」

さらには、英ミラー紙の報道によると、走行不能になったロシア戦車の内部をウクライナ側が捜索したところ、消費期限が2015年の戦闘食を搭載していたという。ロシア軍の食糧事情は極度に悪化している模様だ。


・ロシア、軍事作戦の第1段階ほぼ完了 ロ軍死者1351人=国防省(ロイター 2022年3月25日)

※ロシア国防省は25日、ウクライナにおける「軍事作戦」の第一段階はほぼ完了したとし、ウクライナ東部ドンバス地域の完全「解放」に焦点を当てると表明した。

国防省の発表は、ロシアがウクライナの激しい抵抗に直面する中、より限定された目標に切り替えている可能性を示唆した。

ロシア国営通信社によると、ドンバス地域では現在、親ロシア派がルガンスクの93%、ドネツクの54%を掌握しているという。

国防省はまた、他のウクライナ都市を攻撃する可能性も排除しないとしたほか、ウクライナ上空に飛行禁止区域を設置するいかなる試みにも直ちに対抗すると言明した。

また、ウクライナの戦闘でこれまでにロシア軍の死者は1351人、負傷者は3825人になったと発表。その上で、プーチン大統領が設定した目標を達成するまで、「作戦」は続けられるとした。


6: ニューノーマルの名無しさん 2022/03/26(土) 01:11:23.35 ID:MJmL4Uw10.net
2/21 キエフまもなく陥落
2/22 キエフ陥落まで秒読み
2/23 キエフ48時間後に陥落
2/24 キエフNATOに見捨てられ陥落
2/25 キエフ過去一の陥落危機
2/26 キエフそろそろ陥落
2/27 ロシア主力投入キエフ陥落
2/28 そろそろ確実に陥落
3/1 制空権喪失 キエフ陥落まで間近
3/2 今まで以上にキエフ陥落の危機
3/3 あと96時間後くらいに陥落
3/4 そろそろアカンよ?陥落するよ?
3/5 キエフはもうじき陥落
3/6 あと48時間後くらいにキエフ陥落の可能性
3/7 徴兵したからキエフ陥落間近か?
3/8 24-96時間後にキエフ陥落の危機
3/9 キエフ中心地から15km地点まで進軍、これまでで最高の陥落危機
3/10 東側で装甲車が破壊され少し押し戻されたが依然陥落危機
3/11 90機のヘリがキエフに向かったので48時間後にキエフ総攻撃
3/12 迫るキエフ包囲軍!兵糧攻めで陥落危機か
3/13 ロシア軍キエフ中心地から25kmまで進軍して陥落危機
3/14 キエフ包囲間近で168時間以内に陥落濃厚
3/15 キエフで35時間の外出禁止令でまもなく陥落危機。東欧首脳会談開催
3/16 アルメニア、南オセチア方面軍参戦でキエフ陥落寸前
3/17 兵站再編でキエフ包囲完成へ
3/18 マリウポリ包囲完成、陥落間近で次はキエフへ
3/19 キエフ包囲作戦進む。あと48時間で168時間のリミット
3/20 キエフ郊外にミサイルを撃ったのでキエフ陥落は時間の問題
3/21 キエフのショッピングセンターが砲撃され、キエフ陥落は秒読み
3/22 キエフ国際空港に戦火迫り35時間の外出禁止令で陥落危機。
3/23 キエフ包囲が破られてもNBC兵器使われ陥落可能性大
3/24 ウクライナ軍、キエフ北西部でロシア軍を包囲か?! キエフ陥落はこの後すぐ!
3/25 東部ロシア軍、キエフ中心地から55kmまで転進も、ロシア軍揚陸艦「オルスク」怒りの大爆発でキエフ陥落危機は維持
3/26 ロシア軍、軍事作戦の第一段階を完了を表明。次はキエフ陥落か


・すでに十数回の大統領暗殺を阻止…プーチンをイラつかせるイギリス特殊部隊「SAS」の仕事ぶり(PRESIDENT Online 2022年3月25日)

木村 正人

※なぜロシア軍はウクライナの掌握に苦戦しているのか。在英ジャーナリストの木村正人さんは「情報戦を支える英米の存在は大きい。イギリスの英特殊空挺部隊(SAS)も陰でウクライナ軍を支えており、すでにゼレンスキー大統領の暗殺は十数回阻止されている。その役割は大きいとみられるが、決して表には出てこない」という――。

ウクライナを救い続けるイギリスの特殊部隊「SAS」とは

ロシアによるウクライナ侵攻がいまだ終息の兆しを見せない中、英大衆紙によると、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は強力な防諜網により十数回の暗殺計画を生き延び、複数の工作員を殺害した(同大統領顧問)という。

既に報じられているように、数だけで見ればウクライナ軍に対してロシア軍の規模は圧倒的だ。にもかかわらず首都キエフはいまだ陥落せず、むしろロシア軍の侵攻をはねのけている。

そのウクライナ軍を支えているとされるのが、英特殊空挺部隊(SAS)だ。

SASは、要請さえあればすぐにゼレンスキー大統領を救出できるよう、70人が米海軍特殊部隊(ネイビーシールズ)150人と共に、バルト三国の一つ、リトアニアの僻地にある軍事基地で夜間訓練を重ね、スタンバイしているという。

そのSASとは何者なのか。ゼレンスキー氏と連日のように電話で連絡を取るボリス・ジョンソン英首相のマックス・ブレイン報道官は16日、筆者の質問に「SASについてはお答えできない」とだけ語った。

特殊任務の実態については「藪の中」

SASはただ訓練を重ねているだけではない。

ロシア軍侵攻前に100人以上のSAS隊員などがウクライナに送り込まれ、軍事顧問として同国の特殊部隊に対空・戦車ミサイルの使い方や狙撃、破壊工作などの訓練を施していると報じられた。暗殺防止策も含まれているのは想像に難くない。

関与しているのは現役部隊だけにとどまらない。イラクやアフガニスタンで戦ったSASの退役軍人による精鋭チーム十数人も欧州諸国の資金で民間軍事会社に雇われ、ウクライナ入りしたとされる。さらに十数人が現地に向かったという。

13日にはウクライナ軍が外国人義勇兵の訓練に使用としているポーランド国境近くのヤーヴォリウ軍事基地がロシア軍の攻撃を受け、少なくとも35人が死亡、うち3人は元英軍兵士だと英紙デーリー・テレグラフは伝えた。これについてもブレイン報道官は「英政府は確認していない」と口を固く閉ざした。

SASの特殊任務については情報公開が求められる時代になっても、依然として厚いベールに覆われている。表沙汰になると外交問題や自国を巻き込んだ戦争に発展する恐れがあるからだ。すべてが「藪の中」だ。

キエフに潜伏する400人の傭兵暗殺部隊

アメリカのバイデン政権はロシア軍の侵攻前、「ロシア軍は殺害または収容所送りにするウクライナ人のリストを作成しているとの信頼できる情報がある」とミシェル・バチェレ国連人権高等弁務官に伝えた。ゼレンスキー氏は「私はロシアの一番のターゲットで、家族は二番目だ」と公言する。

ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は大軍でウクライナに攻め入ればゼレンスキー政権は瓦解し、キエフ市民に歓喜の声で迎えられると信じていた。しかし元コメディアンのゼレンスキー氏はオンラインで感動的な演説を繰り返して世界中を味方につけ、「悪役」プーチン氏を孤立させた。ゼレンスキー氏はプーチン氏にとって今や不倶戴天の敵である。

プーチン氏最大の目標はゼレンスキー氏を取り除き、親露派の傀儡政権をキエフに樹立することだ。英紙タイムズによると、ロシア民間軍事会社ワグナーグループの傭兵やチェチェン共和国の特殊部隊がウクライナに送り込まれたが、ロシア情報機関の連邦保安局(FSB)内の反戦グループがウクライナ側に通報し、暗殺計画はいずれも未遂に終わったとされる。

ワグナーグループの傭兵は2カ月近く、ゼレンスキー氏暗殺と政権転覆を企て、ウクライナに潜伏している。彼らはキエフだけで400人が潜伏しているとされ、24人の重要人物を追跡しているという。ウクライナ侵攻のスキをついて暗殺を実行、特務終了後は露特殊部隊スペツナズと合流し、キエフから脱出する手はずだった。

ゼレンスキー大統領の生死が戦争の行方を左右する

また、英紙タイムズによると、ロシア連邦を構成するチェチェン共和国のラムザン・カディロフ大統領の特殊部隊も、ゼレンスキー氏に近づく前に排除されたと報じられている。ロシア軍はウクライナ軍の後方を取るため主要都市にヘリで空挺部隊を展開させるが、ヘリが撃墜されるなど死傷者が多数出ている模様だ。ロシア連邦国家親衛隊もキエフ西郊に送り込まれ、市街戦に備えている。

ロシア軍にとって最大の目標はゼレンスキー氏を生け捕りにするか、殺害してしまうかだ。祖国防衛の先頭に立つ指導者を失えばウクライナ軍や義勇兵の士気は落ちる。アメリカから「キエフを離れて安全な場所に移動した方がいい」とアドバイスされたゼレンスキー氏は「必要なのは逃げるための乗り物ではなく弾薬だ」と一蹴したとされる。

ロシア軍の侵攻が始まったばかりの2月25、26日には大統領府などキエフ中心部からSNSに投稿していたゼレンスキー氏だが、その後は場所が特定されないよう注意を払っている。米政府はゼレンスキー氏に安全な衛星電話を提供し、連絡を取り合う。ゼレンスキー氏の生死が戦争の行方を左右すると言っても過言ではない。

体力、決断力、知性が求められるエリート部隊

ゼレンスキー氏から要請があれば、すぐ救出に動けるよう訓練を始めたのが、第2次世界大戦中、北アフリカ戦線を後方から撹乱するために創設された英SASと、国際テロ組織アルカイダ最高指導者ウサマ・ビンラディン容疑者を潜伏先のパキスタンで殺害した「ネイビーシールズ」だ。両者とも軍の精鋭を集めたエリート中のエリート部隊である。

特殊部隊の元祖とも言える英SASの選抜試験は極めて厳しい。主に陸軍と海兵隊からの応募者は極限の肉体的・心理的試験に合格しなければならない。合格するのはごく一握りだ。

英ウェールズのブレコン・ビーコンズ連山における5回の時間制限付き行軍、装備を身につけたままの水泳、ジャングルでのサバイバルコース、捕獲回避や尋問への抵抗に関する試験が含まれる。決断力、持久力、適応力、知性など求められる資質は多岐にわたる。SASに配属された隊員は現場で直面する困難に対応するため継続的に過酷な訓練を繰り返す。

第2次世界大戦中に結成された「一匹狼」軍団

SASの歴史を振り返っておこう。

第2次世界大戦中の1941年、英軍は北アフリア戦線で「砂漠の狐」と恐れられていたエルビン・ロンメル将軍率いるドイツアフリカ軍団に苦しめられていた。英陸軍士官だったデービッド・スターリング(1915~90年)はドイツ軍の空挺部隊を見て、敵の後方に高度な訓練を受けた少数の精鋭部隊を落下させれば、ドイツ軍の航空戦力を破壊できると思いついた。

スターリングは優等生タイプではなく、長身で怠惰だったことから「巨大なナマケモノ」と呼ばれていた。エベレストへの初登頂や芸術家になることを夢見る夢想家だった。

第2次世界大戦で戦闘機や爆撃機、戦車など工業力が勝敗を分ける傾向が一層強まる中、スターリングは鍛え抜いた強靭な肉体と不屈の魂を兼ね備えた少数部隊による後方撹乱こそが戦況を変えると信じて疑わなかった。

スターリングは試しに自ら輸送機からパラシュートで落下した際、傘のセルが破れ、着地の衝撃で両足を痛めた。療養中にドイツアフリカ軍団の後方の砂漠が無防備になっていることに気づき、後方からドイツ軍の航空戦力を破壊する作戦を立案した。カイロの中東総司令部首脳に直訴してSASの結成を許される。

後方撹乱を遂行するため自分の判断で動ける「一匹狼」の兵士が集められた。短期間で過酷な訓練が行われ、負傷者が続出した。初出撃となった同年11月、最大級の暴風雨に襲われ、55人のうち生還できたのは21人。作戦は大失敗に終わった。しかし迎えのトラックが合流地点まで無事往復できたことから、地上から相手の後方に回る作戦に切り替える。

スローガンは「挑戦する者だけが勝利する」

SASは米製小型四輪駆動車ジープで砂漠を駆け巡り、ドイツ軍の航空機を次々と爆破する。ドイツ軍は砂漠から敵が現れるとは想像していなかったのだ。大胆不敵に出没したスターリングは43年1月、敵に捕らえられるが、それまでに地上で250機以上の敵機、数百台の車両、大量の貯蔵物資を破壊した。

英軍の指揮官バーナード・モントゴメリー陸軍元帥はスターリングを「この野郎はかなり、かなり、かなりイカれている。しかし戦争はしばしば、そんなイカれた野郎を必要とするのだ」と荒っぽい言葉で称賛した。スターリングの独創的な発想と不屈の行動力は大戦の流れを変えたのだ。

SASのスローガンは「挑戦する者だけが勝利する」だ。大戦が終わるといったん解散されたが、冷戦が始まるとすぐに復活した。マラヤ(現マレーシア)危機、オマーンでの反乱、ボルネオ作戦に従軍したほか、北アイルランド紛争ではアイルランド共和軍(IRA)のテロリスト壊滅作戦を展開する。しかし秘密任務のためSASの存在が表に出ることはなかった。

SASの名を世界にとどろかせた「イラン大使館占拠事件」

SASの名を世界中にとどろかせたのは1980年にロンドンで起きた駐英イラン大使館占拠事件である。イランの囚人解放と自分たちの出国を求める6人のイラン人武装グループが26人を人質に取って大使館に立て籠もった。武装グループは人質5人を解放したものの、6日目に1人を殺害した。

このためSASが屋上から降下して窓から突入、武装集団6人のうち5人を殺害した。作戦で人質1人が犠牲になったが、残り全員が無事解放された。この様子は世界中にテレビ中継された。

82年のフォークランド紛争など、SASはイギリスが関与したほとんどの戦争や紛争に派遣されている。96~97年の在ペルー日本大使公邸占拠事件でも英SASの6人がペルー当局にアドバイスするため現地に飛んでいる。

SASは空挺部隊だけでなく舟艇部隊、偵察部隊、信号部隊の4チームからなる。一騎当千の精鋭が集められ、どんな状況でも隠密裡の監視、偵察、人質救出、潜入捜査、テロ・反乱対策の特殊任務を遂行できるよう想像を絶する厳しい訓練が課される。

常に5歳児並みの装備を担ぎ、排泄物すら残さない

SASの下級隊員は他部隊の上級隊員に匹敵するほど高い能力を有する。4週間、補給なしで行動できるよう3~5歳児と同じ重量の装備を担いで行動する。

敵に見つからないよう砂漠やジャングルなど状況に合わせて身体をカムフラージュし、排泄物も回収して現場に残さない。フォークランド紛争では砂糖とミルクを混ぜた粉末を水で溶かして最後の7日間、飢えをしのいだ。語学や射撃、サバイバル能力に長けている。

駐英イラン大使館占拠事件当時、SAS司令官だったピーター・ドゥ・ラ・ビリエール氏(87)は「ジャングルや砂漠、ロンドンでの対テロ作戦は体力的にもタフであることが求められる。全員が非常に厳しい試験に合格した強者だ。決然として自分の意思を持った人物でなければならない。何か魔法があると考えられるが、そんなことはない。非常に苦しい訓練のたまものだ」と語っている。

戦闘に長けた「人情味あふれる鬼軍曹」

一見すると、米アクション映画『ランボー』そのままの「戦闘マシーン」のイメージだ。最近では英メディアに登場する元SAS隊員も増えてきた。過酷な訓練と任務に耐えてきただけに、人情味にあふれる鬼軍曹のイメージを漂わせる元隊員もいる。

シエラレオネで人質救出作戦に加わったフィル・キャンピオン氏(53)は著書『Born Fearless』がベストセラーになり、退役軍人のための慈善活動に取り組んでいる。

ウクライナへ支援物資を送る作業を手伝ったキャンピオン氏はSNSで「前線の兵士に渡す食料であろうと、道端の老人に渡す毛布であろうと、どんな小さなものでも助けになる。あなた1人じゃない、イギリスの私たちもあなたのことを心配しているとメッセージを送ることができる」とより多くの人に寄付するよう呼びかけている。

しかしイギリスの若者がウクライナでの戦闘に参加することについては「戦場は地雷原のようなもので、さまざまな問題を引き起こす恐れがある。だからウクライナに行って戦うことは勧めない」と警告を発している。それでも現地に行くなら間違ってもフォロワーを増やそうとSNSで発信するようなバカな真似はしないよう釘を刺した。

ロシア軍に居場所を教えることになるからだ。キャンピオン氏は「恐怖の捕虜収容所に放り込まれたり、人質としてビデオカメラの前に立たされたりする恐れがある。なぜウクライナに行きたいのか、その主な理由を明確にすることだ。本当に重要な理由がない限りウクライナに行って戦わない方がいい」とアドバイスしている。

---------- 木村 正人(きむら・まさと) 在ロンドン国際ジャーナリスト 京都大学法学部卒。元産経新聞ロンドン支局長。元慶應大学法科大学院非常勤講師。大阪府警担当キャップ、東京の政治部・外信部デスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。 ----------


・NATOが戦域情報提供=ロシア軍の動き逐次把握―ウクライナ(時事通信 2022年3月28日)

※ロシアのウクライナ侵攻開始から1カ月が経過し、ロシアが描いた「短期圧勝」のシナリオはウクライナの予想外の抵抗で崩れ去った。ウクライナの善戦の背景には、対戦車ミサイルなど米欧からの先端兵器の供与に加え、北大西洋条約機構(NATO)が戦域情報の逐次共有を特徴とする「戦術指揮通信システム」をウクライナに提供していることがあるようだ。

英情報筋や国防関係者の話を総合すると、ウクライナ国境に近いポーランド上空ではNATOの早期警戒管制機が常時飛行。ロシア機の飛行情報だけなく、側方監視レーダーを使い、ウクライナ領内のロシア地上部隊の動きを詳細に把握している。これらの情報はロシアの前線部隊と後方司令部との間で交わされる通信傍受情報とともにウクライナ軍と共有されている。

情報筋は「ロシアのどの部隊がどちらの方向に移動中で、戦車が何両あって、補給部隊はどこに位置しているかなど、戦域での情報がリアルタイムでウクライナ軍に提供される」と説明。ウクライナ軍の司令部はそれを基に「ロシア軍の動きを分析して適切な標的を割り出し、作戦を組み立てる」ことが可能だという。

NATOはウクライナへの直接の軍事介入を避けつつ、実質的には戦闘の行方を左右する戦術指揮で深く関与していると言えそうだ。

これに対し、ロシア軍が全戦域の状況を把握した上で作戦の指揮を行っている形跡は乏しい。ウクライナ周辺で早期警戒管制機を飛ばしたり、空から地上部隊の動きを逐次監視したりしている様子はないという。

英国防省筋は「ロシアが刻々と変化する戦域情報をどう把握し、どうやって作戦を組み立てているのか不明だ」と首をひねる。情報筋は「ロシア地上部隊の兵士の多くは自分に課せられた任務の意味や、何のためにウクライナで戦っているのか分かっていないのではないか。各部隊はバラバラに目の前にいる敵と戦っているように思える」と述べた。 


・プーチン大統領は大誤算…米英最強「特殊部隊」がウクライナ侵攻前から現地潜入し暗躍(日刊ゲンダイDIGITAL 2022年3月29日)

※ウクライナに侵攻するロシア軍の苦戦が伝えられている。当初は数日間で首都キエフ陥落のシナリオを描いていたというが、プーチン大統領の思惑通りにいかなかった理由のひとつは、ウクライナの兵力を読み違えたことだ。

侵攻したロシア軍は20万人規模とされる。対するウクライナ側は陸軍14万5000人に空挺隊などを加えても15万人程度が限界で、地上戦の兵力で圧倒するロシアが断然優位とみられていた。

しかし、ウクライナは2014年のロシアによるクリミア侵攻を機に徴兵制を復活。訓練済みの予備役兵は100万人近くいる。ゼレンスキー大統領が18~60歳の男性の国外退避を禁じたこともあり、実際の“兵力”はロシア軍が投入した20万人を大きく上回るのだ。

軍服を着ず、民間人になりすまし

もうひとつの誤算が英米の特殊部隊の暗躍だ。ウクライナ国内には、米陸軍特殊部隊「デルタフォース」や、11年にアルカイダ指導者のウサマ・ビンラディンを射殺して注目を集めた米海軍特殊部隊「ネイビーシールズ」が潜入しているとみられる。

さらには、世界最強の呼び声も高い英陸軍特殊空挺部隊「SAS」も現地に送り込まれているという。一説には、SAS隊員1人で1個中隊(200人)に相当する戦力を持つといわれる。まさに一騎当千の精鋭部隊だ。

英紙ミラーなどによると、ロシア侵攻前に100人以上のSAS隊員がウクライナ入り。民間義勇兵に紛れて潜り込んでいる隊員や、民間軍事会社に雇われて戦闘に加わったSASの退役軍人もいるという。

「米英のチームはロシア侵攻に備えて昨年末から現地入りし、ウクライナ軍に武器の使い方や警護の訓練をしていたようです。今もウクライナ国内にとどまり、何らかの活動をしている可能性が高い。英米は公式には派兵していないため、ウクライナ国内にいる特殊部隊は軍服を着ておらず、民間人になりすましているはずです。秘密作戦の指揮を執っているのは米CIAで、英国の諜報機関MI6がサポートしている。通信傍受などにも協力しているでしょう」(軍事ジャーナリストの黒井文太郎氏)

英紙タイムズは26日、ロシア軍将官に7人目の死者が出たと報じた。将官の戦死が異常に多いのは、狙い撃ちにしているせいなのか。

米英の特殊部隊は、ドローンを使った暗殺の実績も豊富だ。

旧ソ連のスパイだったプーチン大統領が特殊部隊の恐ろしさを知らないはずがないが、その実力は想定以上だったのかもしれない。


・米、ウクライナに3億ドルの追加軍事支援を発表 計23億ドルに(毎日新聞 2022年4月2日)

※米国防総省は1日、ロシアが侵攻を続けるウクライナに対し最大3億ドル(約367億円)の軍事支援をすると発表した。バイデン政権の発足以降、ウクライナへの軍事支援はこれで計23億ドルにのぼり、ウクライナ侵攻開始後では16億ドル分の武器などが供与されることになる。

国防総省によると、今回の支援は▽レーザー誘導のロケットシステム▽攻撃型無人航空機「スイッチブレード」▽多目的装甲車▽衛星画像サービス▽医薬品――など。同省のカービー報道官は声明で「米国はウクライナを支援するために利用可能な全ての手段を活用し続ける」と強調した。


・米、戦車供与を支援か ウクライナ東部の防衛強化(共同通信 2022年4月2日)

※米紙ニューヨーク・タイムズは1日、バイデン米政権がロシア軍の攻撃にさらされたウクライナ東部ドンバス地域の防衛強化を目指し、同盟国からウクライナへの旧ソ連製戦車の供与を支援すると報じた。ウクライナ軍はソ連製戦車の使い方を把握しており、ゼレンスキー大統領が要請していた。

米国が仲介役となって戦車移送を支援するのは、ロシアのウクライナ侵攻後初めてとなる。米政府高官は、戦車配備によってドンバス地域のロシア側標的に対する長距離砲撃が可能になると説明。移送が近く始まるとの見通しを示したが、どの国から何台送られるのかは言及を避けた。


・ウクライナ支援が「参戦」にはならないワケ 背景に「戦争」「中立」という概念の変遷(乗り物ニュース 2022年4月3日)

稲葉義泰(軍事ライター)

※ロシアのウクライナ侵攻に際し、各国の支援が続々とウクライナへ届いています。交戦国の一方へ味方する行為に見えますが、参戦とはどう線引きされるのでしょうか。これには「戦争」「中立」という概念の変遷が関わっています。

続々集まるウクライナへの支援
 
2022年2月24日に突如、開始されたロシアによるウクライナへの軍事侵攻に対して、世界各国は強い関心を示し続けています。とくに、各国によるウクライナに対する各種支援については、日本でも連日報道されているところです。

たとえば、アメリカが提供した「ジャベリン」をはじめ、イギリスの「NLAW(次世代軽対戦車兵器)」やドイツの「パンツァーファウスト3」といった対戦車兵器は、ウクライナへ侵攻してきたロシア軍の戦車や装甲車に対して大きな損害を与えています。また、アメリカをはじめ複数国が提供している携帯型地対空ミサイルの「スティンガー」は、ロシア軍のヘリコプターにとって大きな脅威となっています。

さらに3月4日には、日本政府も国家安全保障会議(NSC)を開き、防弾チョッキやヘルメットなどをウクライナへ提供することを決定しました。その後、3月8日に愛知県の航空自衛隊小牧基地からKC-767空中給油・輸送機が支援物資を搭載してウクライナの隣国ポーランドへと飛び立ち、以降、日本からの支援物資もウクライナへ順次到着しています。

ところで、こうしたウクライナへの支援を実施することに関して、国際法的にはどう評価されるのでしょうか。関連し得るキーワードとなるのは「中立法」です。

中立法とは?
 
そもそも「中立」は、戦争を行うことがまだ違法とされていなかった19世紀以降に発展してきた概念です。戦争に参加している国同士を「交戦国」とする一方、それ以外の国々は自動的に「中立国」に分類され、自国に対して戦争の影響が及ぶことを免れ得る一方で、中立国にはさまざまな義務が課されました。そして、こうした交戦国と中立国との関係を規定したのが先述した中立法です。

中立国に課される義務としては、交戦国の軍隊が自国の領域を使用することを防ぐ「防止義務」、交戦国に対する一切の軍事的援助などを慎む「避止(ひし)義務」(これらを合わせて「公平義務」ともいいます)、そして交戦国が自国に対して合法な形で害を与えたとしてもそれを容認する「黙認義務」の3つが挙げられます。

ウクライナへの支援はどう評価される?
 
ウクライナへの支援という観点では、上記の義務のなかでも避止義務との関係が注目されるところですが、実のところ、とくに第2次世界大戦以降は、中立義務のなかでも避止義務や防止義務は必ずしも厳格に順守されてきたわけではありません。これは第1次世界大戦以降、進展した戦争違法化との関係で、戦争をしている国々に関して「違法に武力を行使している国」と「合法的に武力を行使している国」という区別が可能となったことが影響していると考えられています。

もともと、中立法が発展してきた19世紀当時は戦争に訴えることが原則的に禁止されていたわけではなく、そのため戦争に参加している国々の間に合法な側と違法な側という区別はありませんでした。だからこそ、交戦国双方を公平に扱うことを基盤とする中立法が発展したのです。

ところが、2度の世界大戦を経験し、現在の国際法では戦争を含めた一切の武力行使が原則禁止され、例外的に自衛権の行使などが合法な武力行使として認められています。そのため、武力行使に関して違法な側と合法な側という区別が可能となり、これまでのように交戦国双方を公平に扱うことは不合理とされるようになったとともに、合法に武力を行使していると考えられる国を支援する動きが見られるようになりました。

そこで、現在では自国が中立国になるかどうかはその国の任意であり、自国が武力紛争に巻き込まれることを避けるために中立の立場を選択することも可能な一方で、交戦国の片方に軍事的な支援を行いつつも、武力紛争に直接参加するわけではない「非交戦国」なる立場があり得るという主張もなされています。

非交戦国という概念は、古くは第2次世界大戦参戦前のアメリカがイギリスに対して武器などを支援していた事例を契機に盛んに議論されるようになりましたが、現在でも学説上の議論が続いています。

中立法に関する日本の立場
 
一方で、日本政府はこうした中立法に関して、現在の国際法の下ではもはや伝統的な中立という概念は維持され得ないと整理しています。たとえば、ベトナム戦争に際してアメリカ軍が日本の基地を使用していたことに関連して、日本政府はアメリカの行動を合法な自衛権の行使と整理した上で、そのような合法な措置をとっている国に対して基地の提供を通じた支援を実施することは問題ないという整理を行っています。

また、今回のウクライナへの支援に関しても、日本政府は国内上の制約である「防衛装備移転三原則」などの観点での整理は行っていますが、国際法上の説明はとくになされていません。つまり、日本政府としては、今回のウクライナへの支援については国際法上、問題にはならないと整理していると考えられます。

このように、今回のウクライナのように「合法な武力の行使を行っている国に対して支援を行うことは国際法上、問題とはならない」という整理については、ある程度、国際的な理解が深まりつつあるといえるかもしれません。しかし、どちらが合法に武力を行使しているのかという問題は、通常は必ずしもはっきりと判断できるものではありません。

今回のウクライナへの各国の支援は、ロシアの軍事侵攻に対して国際社会全体がほぼ一致してその違法性を明確に認識したからこそ、可能になったという側面もあるのかもしれません。


・ウクライナに長射程砲提供へ=装甲車両、訓練支援強化―多国間会合(時事通信 2022年4月4日)

※英政府は3月31日、ロシア軍の侵攻下にあるウクライナへの軍事支援を話し合うオンラインの多国間会合を主催し、支援拡大で合意した。防空・沿岸防御のための兵器、長射程砲の提供が検討されている。

ウォレス英国防相は会合後にテレビ番組で、ロシア軍がウクライナの都市部に対し、遠方からの砲撃を強化していると指摘。「これに対抗するにはより射程の長い砲がふさわしい」と述べた。

これまでに米欧からウクライナに供与されたのは、携帯型の対戦車ミサイルなど射程の短い兵器が多い。会合ではこのほか、装甲車両の提供や訓練などでも支援を強化する方針が決まった。英PTI通信によると、会合には米国や日本、韓国など30カ国以上が参加した。 


・ポーランド国境地点に旧ソ連製とみられる戦車 T-72M1か(FNNプライムオンライン 2022年4月4日)

※アメリカ政府がウクライナに旧ソ連製の戦車を提供する方針と伝えられる中、FNNのカメラはポーランドの国境地点で複数の旧ソ連製とみられる戦車が移動する様子を撮影した。

FNN取材団は4月3日、ウクライナと国境を接するポーランドのメディカで複数の戦車が国道を移動する様子を確認した。

戦車はポーランド軍の大型トラックで運ばれていた。その形からポーランド軍が所有するT-72M1という旧ソ連製の戦車とみられる。ワシントンポストなどは、アメリカがウクライナ軍を支援するため、近日中に旧ソ連製の戦車をNATO各国を通じて提供すると報じていて、FNNが撮影したこれらの戦車も国境を越えウクライナ軍に提供される可能性がある。

T-72M1は旧ソ連製のT-72シリーズの中の輸出用に性能を落としたもので、ポーランド軍は300台を所有している。ウクライナ軍が使い慣れている戦車と操作方法がほぼ同じため、ウクライナ軍にとって即戦力となると見られる。


・ポーランド、米から戦車250両を購入 「潜在的な侵略者を抑止」(朝日新聞DIGITAL 2022年4月6日)
 
※ポーランド国防省は5日、米国のM1A2エイブラムス戦車250両などを購入する合意文書に署名したと発表した。

ブワシュチャク国防相は隣国ウクライナへのロシア軍の侵攻を念頭に、「この戦車の任務は潜在的な侵略者を抑止することだ。我々全員が東部国境の向こうで何が起きているかを承知している」と述べた。


・東欧のチェコ、ウクライナに旧ソ連製の戦車を提供 戦車支援は初めて(朝日新聞DIGITAL 2022年4月6日)

※東欧チェコがウクライナに対し、旧ソ連製の戦車を提供したと地元テレビ局などが5日に報じた。ロシアによる侵攻開始以来、国外からの戦車の提供は初めてとみられる。ウクライナのゼレンスキー大統領は、欧米諸国に対して戦車や戦闘機など高性能兵器の提供を繰り返し求めていた。

チェコのテレビ局によると、T72型戦車や歩兵戦闘車をウクライナに提供したという。戦車が鉄道で輸送される動画も公開した。

米紙ウォールストリート・ジャーナルによると、チェコは十数台の戦車をウクライナに提供した。旧ソ連製の戦車はすでにウクライナ軍が操縦に習熟しており、すぐに実戦で使用できる利点がある。また、ウクライナでの戦闘で破損した軍備品の修理を請け負うこともチェコ当局は検討しているという。


・チェコ、ウクライナに戦車提供 歩兵戦闘車も(共同通信 2022年4月6日)

※ロイター通信によると、北大西洋条約機構(NATO)加盟国チェコはウクライナに対し、旧ソ連が開発したT72戦車と歩兵戦闘車を提供した。チェコ国防筋が6日までに明らかにした。戦車などの提供はNATO諸国が合意していた。

米紙ニューヨーク・タイムズは1日、バイデン米政権が同盟国からウクライナへの旧ソ連製戦車の供与を支援すると報じた。ウクライナ軍はソ連製戦車の使い方を把握しており、ゼレンスキー大統領が要請していた。

チェコ国防省報道官は2月24日のロシアの侵攻以降、ウクライナに約10億チェコ・コルナ(約55億円)相当の軍事援助を行ったと述べた。


・米、無人攻撃機100機をウクライナに供与へ…戦車に機体ごと突っ込んで破壊(読売新聞 2022年4月7日)

※米国防総省のジョン・カービー報道官は6日の記者会見で、米国製の自爆型無人攻撃機(ドローン)「スイッチブレード」100機をウクライナに供与すると明らかにした。戦地にすぐ投入できるよう、ウクライナ兵の訓練も米国内で行ったという。

スイッチブレードは数十キロ・メートルの飛行が可能とされ、戦車など軍用車に機体ごと突っ込んで破壊する能力を持つ。

これまで米国は原則、ウクライナ軍で使用実績のある兵器に限定して供与してきた。カービー氏によると、ウクライナ兵はロシアによる侵攻前から米国内で教育訓練を受けていた。近く帰国して任務に就くという。


・スロバキア、ウクライナに地対空ミサイル「S300」提供 米国仲介(毎日新聞 2022年4月9日)
 
※北大西洋条約機構(NATO)加盟国のスロバキアは8日、ロシアによる侵攻が続くウクライナに旧ソ連の高性能地対空ミサイル「S300」を提供したと発表した。射程が非常に長く、航空機や巡航ミサイルを撃墜する能力を持つ。ウクライナ軍も保有しており、操作に習熟しているため、ウクライナが供与を要請し、米国が中心となってNATO内で調整を進めていた。

バイデン米大統領はこれを受けて声明を出し、スロバキアに謝意を表明。「ロシアが侵攻の次の段階に向けて態勢を整えている。ウクライナが必要な高度な兵器を提供するための努力を惜しまない」と強調した。米国はスロバキアに地対空ミサイル「パトリオット」を一時的に配置する。

NATO加盟国では、スロバキアとギリシャ、ブルガリアだけがS300を保有している。米国がこれまでウクライナに提供してきた携行型地対空ミサイル「スティンガー」と違い、車両に搭載して移動する。

ウクライナは防空態勢を強化するため、上空への飛行禁止区域設定や旧ソ連製戦闘機の提供を米国やNATOに求めてきた。しかし、ロシアとの軍事衝突に発展する可能性があるため、米国などは難色を示している。そのため、ウクライナは次善の措置としてS300の供与を要請していた。

米国のオースティン国防長官が3月中旬にスロバキアを訪問するなどして調整を進めていた。ロイター通信によると、スロバキアにはドイツとオランダからもS300の代替兵器としてパトリオット3基がすでに引き渡されている。


・ウクライナ訪問の英首相、新たな軍事支援表明 装甲車やミサイル(毎日新聞 2022年4月10日)
 
※ウクライナの首都キーウ(キエフ)を電撃訪問した英国のジョンソン首相は9日、ゼレンスキー大統領との会談で、装甲車120台や対艦ミサイルの提供を柱とする新たな軍事支援を行う考えを伝達した。

英BBCによると、英国はウクライナ政府に新たに50億ドル(約6200億円)の財政支援を行うほか、ウクライナ製品を英国に輸出する際の関税を軽減する措置も講じる。

ジョンソン氏はキーウ周辺からロシア軍を撤退させたウクライナ軍の戦いぶりを称賛し、ウクライナの立場を「断固として支持する」と述べた。

露軍のウクライナ侵攻後、主要7カ国(G7)の首脳がウクライナを訪れたのはジョンソン氏が初めて。


・ロシア軍、作戦司令官を任命 東部掌握狙い立て直し(共同通信 2022年4月10日)

※ロシアのプーチン大統領が、ウクライナ軍事作戦を統括する司令官として南部軍管区のドゥボルニコフ司令官を任命したと複数の米欧主要メディアが9日報じた。米欧の当局者らが確認したとしている。作戦統括の司令官任命は侵攻後初めて。ウクライナ東部の掌握を目指し、部隊間の連携を強化して態勢を立て直す狙いとみられる。

ドゥボルニコフ氏は2015~16年、内戦中のシリアでアサド政権軍を支援する軍事作戦を指揮し、人口密集地周辺への爆撃で多くの民間人死傷者を出したことで知られる。ドゥボルニコフ氏の指揮下でウクライナの民間人犠牲が拡大する恐れがある。


・米欧、大型兵器も供与へ=ウクライナ支援拡大(時事通信 2022年4月11日)

※ロシアのウクライナ侵攻が長期化の様相を呈する中、米欧各国はウクライナの要請を受け、大型兵器も含めた軍装備品の供与拡大の動きを見せている。北大西洋条約機構(NATO)は7日の外相理事会で、追加支援を確認。欧州連合(EU)も5億ユーロ(約670億円)の追加拠出の検討に入った。

NATOのストルテンベルグ事務総長は、7日の会合後の記者会見で「さらなる装備品提供の用意があるというのが、きょうの明確なメッセージだ」と表明。ウクライナ東部での戦闘激化が見込まれることを踏まえ、「加盟国は緊急性を認識している」と強調した。

AFP通信によると、トラス英外相は会見で「より大型で新しい装備品を提供する国への支持があった」と指摘した。

米欧がこれまで供与してきたのは、携帯式の対戦車ミサイルや地対空ミサイルなど小型兵器が中心。ロシアを刺激することなどへの警戒から、大型兵器の供与には慎重姿勢が根強かった。

これに対しウクライナは、米欧に戦車や戦闘機、防空システムなど「制限のない支援」(ゼレンスキー大統領)を繰り返し要求してきた。7日のNATO会合にはクレバ外相が出席。会合後、「すぐ助けてくれるか、助けが遅すぎて多くの人が死ぬかのどちらかだ」と述べ、支援を急ぐよう訴えた。

ブリンケン米国務長官は会見で、新たな兵器供与のため「何が最も必要か、日々検討している」と語った。既にチェコが旧ソ連製戦車などを発送したと報じられているほか、ドイツも戦車供与を政府内で検討しているとされる。スロバキアのヘゲル首相は8日、旧ソ連で開発された高性能地対空ミサイルシステム「S300」をウクライナに提供したと、ツイッターで公表した。

一方、ミシェルEU大統領は7日、加盟国が供与する軍装備品に充てるEU資金を5億ユーロ増額する案を明らかにした。加盟国間で合意すれば、EUの拠出額は計15億ユーロ(約2000億円)に膨らむ。 


・ウクライナ侵略、ロシアはなぜ兵站に失敗したのか(JB press 2022年4月12日)

樋口 譲次

※素人は戦術を語り、プロは兵站を学ぶ
 
ウクライナに侵攻したロシア軍は、これまでウクライナの強力な抵抗に遭い、深刻な打撃を受けて侵攻計画が予定通りに進展していない。

その原因の一つに挙げられているのが、ロシア軍の兵站(後方支援)の不備・失敗である。

報道によると、ロシア軍に対しては「水・食料や衣料が届かず、兵士の士気が低下」「燃料が不足し、戦車部隊の前進が遅滞」「弾薬が不足し、作戦遂行に重大な影響」などの指摘がなされている。

兵站は、兵器類の整備修理、食料(含む水)・燃料・弾薬などの補給、そのための陸海空路を経由した輸送、戦闘傷病者の医療処置(衛生)などの任務を果たすことによって、戦力を維持増進し作戦を支援する機能である。

兵站は、目覚ましい第一線の作戦・戦闘に比べれば、目立たない裏方の地味な活動であるが、その成否が作戦の結果を左右するものであり、極めて重大な役割を担っている。

そこで、なぜロシアの兵站には不備があり、失敗と指摘されるのか、それを巡る諸要因を検証してみることとする。

それが、日本をはじめ米国や台湾など中国の軍事的野望の脅威に晒されている国々にとって、中国との武力紛争に対する教訓や有効な対策を示唆することになるからである。


ロシアの兵站の不備・失敗の原因

1 兵站組織の構成

■外線作戦

ロシア軍は、北、東(中央)、南の3方向から外線作戦的にウクライナに侵攻した。

外線作戦の利点は、複数の作戦正面の相互の関係性を活用しながら、一つの正面で得られた戦果を他の正面に反映させることで作戦を主導することにある。

しかし、北正面のキーウ(キエフ)から東(中央)正面のルハンスクまでの直距離は約690キロ、ルハンスクから南正面のセベストポリまでは約627キロ、セベストポリからキーウまでは約690キロあり、それぞれが東京から青森(約578キロ)以上に離れている。

つまり、ロシア軍の作戦は、3正面の関係性を活用して成果を他に反映させるという外線作戦の利点を発揮することができず、各正面は、それぞれ独立した作戦を遂行している。

そのため、ウクライナ侵攻における兵站も3正面ごとに独立した組織を作って運用せざるを得ず、侵攻軍全体の兵站支援能力は3正面に分散され、相互支援も不可能であることから、兵站支援に多大な負担を強いられている。

■戦闘(および戦闘支援)部隊と兵站部隊の戦力構成

英国国際戦略研究所(IISS)の地上戦担当の上級研究員であるベン・バリー准将は、ウォールストリート・ジャーナル紙に「ロシア軍が前回、このような大規模な作戦を実施したのは1968年のチェコスロバキア制圧で、そこに強力な軍は存在しなかった」と述べた。

その上で次のように指摘している。

「今回のウクライナ侵攻では、推定17万人余りのロシア兵が約130の大隊戦術群(BTG)に編成されて配備された」

「米国や同盟国がイラクに侵攻した2003年、同程度の米兵が派遣されたが、大隊戦術群の数は50足らずだった」

「米国は燃料や弾薬、水、食料の輸送や補給に兵力の大部分を割いているため、こうした差が生じる」

この指摘は、軍隊の戦力構成において、ロシア軍の戦闘(および戦闘支援)部隊と兵站部隊の比率は前者が大きく、逆に米軍のそれは後者が大きいということを示している。

「ぜいたくな補給システム」に支えられている米軍に比べれば、ロシア軍は戦闘(および戦闘支援)能力の強化に比重を置いている分、兵站支援能力を犠牲にしていることから、そのしわ寄せが作戦遂行の足かせとなっていると見ることができる。

■大隊戦術群(BTG)を基本とした作戦

前述の通り、ロシア軍は大隊戦術群(BTG)を基本単位として作戦を遂行している。

BTGは、チェチェン紛争やロシア・グルジア戦争、東部ウクライナでの戦役でロシアが選んだ手段である。

師団や旅団と比較して、対テロ・ゲリラ戦への対応の軽快機敏性や紛争を通して部隊ローテーションを処理する方法などの理由で採用された特殊編制である。

ロシア軍は、兵站(補給整備)を民間の軍事請負業者(民間軍事会社、PMC)に委託する取り組みを進めているが、BTGではそのうちのいくつかが削除されたため、補給整備上の弱点が組織に内在していると指摘されている。

■キエフ近郊ホストメル空港に対する空挺作戦の失敗

ロシア軍の空挺部隊は、開戦間もなく首都キーウ近郊のホストメル空港に戦闘ヘリコプターで攻撃を仕掛けたものの、ウクライナ軍に押し返された。

そのためロシア軍は、兵員や装備、物資の補給に必要な空路を確保し損ねた。

代わりにロシア軍は、補給物資のほとんどを主に陸路で運ぶ羽目になり、そのため軍用車両の渋滞が発生し、ウクライナ軍からは急襲されるなど、身動きが取れない様相を呈した。

なお、ロシア軍は、主に南部では鉄道や海上優勢を確保している海路を使った補給ができていることから、兵站輸送の問題による作戦の制約はあまり指摘されていない。

■長大な兵站線と中間補給点の不在

2014年以来、交戦状態にある東部ウクライナは別として、北部のベラルーシ国境からキーウまでは主要道路に沿った直線距離は約180キロ、南部のクリミア半島北端からマリウポリまでは約393キロある。

このように、第一線と兵站施設との間が大きく離隔し兵站支援距離が長大な場合は、その中間に補給点(物資集積所)を設けるのが通常である。

しかし、ウクライナ領土内にロシア軍が補給点を設置した兆しはほとんど確認されておらず、輸送車両は長距離の往復を余儀なくされている。

そのため、輸送部隊に大きな負担が掛かり、同時に輸送車両自体の燃料補給も必要なことから、輸送・補給効率の悪化を招いている。


2 兵站組織・部隊の運用

■短期決戦を想定した作戦準備

プーチン大統領の独裁体制がもたらす情報欠陥は、ウクライナ軍に戦意はなく、空挺部隊がキーウに電光石火の攻撃を仕掛ければ、何ら抵抗を受けることなく素早くウォロディミル・ゼレンスキー政権を崩壊させられるとのシナリオを想定していたと報道されている。

このような極めて甘く、杜撰な見積もりを根拠とし、短期決戦を想定した当初の作戦準備には、周到な兵站計画が存在しなくても何ら不思議ではない。

つまり、ロシア軍は、長期戦に対する備えがない状態で侵攻を開始した可能性が高く、そのため開戦から3日目で燃料切れに見舞われる部隊も現れた。

■侵攻軍司令官の不在

作戦を最大限に支援する兵站組織を作り運用するのも指揮官・司令官の大事な仕事である。

しかしながら、伝統的に厳格なトップダウンの指揮系統を持つロシア軍にあって、17万~19万人規模と見られる大軍を統括指揮する軍司令官が指名されていない。

ウクライナ侵攻は、ベラルーシ領土から展開して南下する北方ルート、分離独立派が支配するドンバス地方を経由する東方(中央)ルート、そしてクリミア半島を起点として北上する南方ルートの3方向から攻撃が開始された。

ウクライナ侵攻軍司令官は、作戦の全般目標、主作戦方向(主努力を指向する方向)、3方向に対する戦力配分と相互連携、陸海空軍の統合運用、兵站などの面で的確な作戦指揮を行わなければならない。

特に兵站においては、兵站組織の構成、兵站組織・部隊の運用、そして兵站業務の運営について明確な方針を示すことが必要である。

しかし、本作戦を一元的に指揮するウクライナ侵攻軍司令官が指名されていないため、それらの指揮指導がなされなかったことが、当初の目的通りに作戦が進展しなかった大きな原因であろう。

なお、ロシアのプーチン大統領は、開戦から40日以上が経過した4月10日までに、ようやくウクライナの全戦域を統括する司令官に、連邦軍の南部軍管区司令官を務めるアレクサンドル・ドゥボルニコフ大将(60)を任命した。


■獲得できない航空優勢

ロシア軍は、開戦から約1か月経過した段階においても航空優勢を獲得できていない。

ロシア空軍とウクライナの空軍および防空システムが航空優勢を巡って戦っているが、ウクライナ軍の防空システムが有効に機能していることから、ロシア軍は航空優勢を握れていない。

ウクライナ軍は、レーダー誘導ミサイルや熱探知ミサイル、対空砲など様々な防空兵器を保有している。

さらに、米国やNATO(北大西洋条約機構)からは対空ミサイル「スティンガー」などが供与され、ウクライナの防衛力が強化されているからである。

そのため、ロシアの大規模な侵攻軍に燃料や弾薬の補給を維持するのも難しい状況となっている。

■戦車・装甲装軌車両中心の作戦

ロシア軍は、戦車や装甲装軌車両を多用する作戦を行っている。

特に戦車は、一般的に大量の燃料を消費するが、ロシア製戦車は総じて西側の戦車よりも重量は軽いが、燃費が悪く、戦闘可能な状況に維持しておくことは燃料補給上の要求が格段に上がる。

「T—72B」戦車は、待機状態で1時間当たり5.8ガロン(約22リットル)のガソリンを消費し、走行中は1ガロン当たりの航続距離が1マイル(約1.6キロ)かそれを大きく下回る水準と見られている。

「T—80U」戦車は、強力なガスタービンエンジンを搭載しているが、非常に燃費が悪いという致命的な弱点がある。

 そのため、戦車や装甲装軌車両を多用する作戦には大量の燃料が必要であり、補給が間に合わず、多くの戦車が「ガス欠」に陥って残置されていることが確認されている。

■無誘導兵器(大砲、ロケット)への依存

ロシア軍は当初、大量のミサイル攻撃を行った。

しかし、短期決戦の目算が狂ったことで、大砲やロケットなどの無誘導兵器導入という旧来の手法に切り替えた。

その結果、都市部において、国際法(ジュネーブ諸条約および追加議定書)の「軍事目標主義」に沿った精密な誘導攻撃ができず、非戦闘員である多くの市民に犠牲者を出し民間施設・病院などを破壊する要因ともなっている。

ちなみに、国際法(ジュネーブ諸条約および追加議定書)は、軍事行動は軍事目標のみを対象とするという「軍事目標主義」の基本原則を確認し、文民に対する攻撃の禁止、無差別攻撃の禁止、民用物の攻撃の禁止などに関し詳細に規定している。

ましてや、病者、難船者、医療組織、医療用輸送手段などの保護は厳重に守られなければならないことを謳っている。

無誘導兵器は、精密誘導兵器(ミサイル)に比較するとコスト的には安いが、同じ効果を得るのに精密誘導兵器1発で済むところが、無誘導兵器では60発必要との試算もあり、兵站には多大な負担がかかる。

そのため、作戦の持続の観点から、兵站の困難を極めることは明らかである。


3 兵站業務の運営―兵站計画の未整備

前述の通り、ロシアは早期の勝利を予想し、十分な兵站計画の作成を怠っていた可能性があり、作戦が長期化するにしたがって、兵站支援が遅滞麻痺する状況に陥っていると見られている。

ロシアの失敗を他山の石とすべき日本
 
湾岸戦争は、『山・動く』(W.G.パゴニス著)が著わした通り、55万余の将兵と700万トンの物資をアラブの砂漠に動かした史上最大の「ロジスティクス(兵站)・システムの戦い」であった。

「素人は戦術を語るが、プロは兵站を学ぶ」という古い諺があるように、兵站の裏付けのない大規模な軍事作戦は失敗に帰する。

ウクライナへの軍事侵攻を敢行したロシア軍の兵站(後方支援)上の不備あるいは失敗は、前述の通り、単純に一つの理由によって説明できるものではない。

兵站組織の構成や兵站組織・部隊の運用、そして兵站業務の運営などの面で多くの要因が重なった結果であり、その解決は決して容易ではないはずだ。

ロシアおよびロシア軍は、今般の軍事侵攻を通じて、兵站(後方支援)の重要性と難しさについて、改めてその意味を深く噛みしめている所であろう。

中国との対立が本格化している米国でも、例えば、「ロシア軍の補給問題、太平洋の米軍にも-米軍が兵站を改善しなければ、台湾防衛は失敗する可能性が高い」(ウォールストリート・ジャーナル、2022年4月7日)のような注意を喚起する論調が出始めている。

その趣旨は、ロシアのウクライナでの失敗は兵站面の問題に起因し、米軍の能力もロシア軍と同様に、大国(中国)との大規模な戦いに向けた態勢が整っているとは言えないとの懸念を指摘しているものである。

「たまに撃つ弾が無いのが玉に傷」

これは、第一生命が主催するサラリーマン川柳において、かつて自衛隊部門の最優秀賞を獲得した作品である。

自衛隊の慢性的な予算不足が招く弾薬備蓄の不足、すなわち兵站の軽視・不備を揶揄する川柳であり、古くて新しい、そして政治が深刻に認識しなければならない我が国防衛に内在する根本的な問題である。

今般のロシアのウクライナ侵攻における兵站の不備・失敗は、決して他人事ではない。

中国の軍事的脅威に曝されている当事国の日本や台湾、そして同盟国の米国や友好国にとっても、改めて重大な戒めとして受け止めなければならない。


・【MiG-29戦闘機】ウクライナへの供与をスロバキアが検討(ハフポスト日本版2022年4月12日)

※東欧スロバキアのエドゥアルド・ヘゲル首相は4月11日、同国が所有する旧ソ連製のMiG-29戦闘機のウクライナへの提供について検討すると述べた。ロイター通信などが報じた。

スロバキアは8日、旧ソ連が開発した高性能地対空ミサイル「S300」を提供したと発表。その代償として、アメリカは同国に地対空ミサイル「パトリオット」を一時的に配備していた。

キーウ近郊の町「ブチャ」などで民間人の大量虐殺が明らかになる中で、NATO諸国からはウクライナへの軍事援助が本格化している。

■12機を運用するスロバキア。旧ソ連製の戦闘機に「依存する状態は避けたい」

ウクライナ空軍にとってもMiG-29戦闘機は、2021年で43機を運用するなど操縦にも慣れた主要戦力だったが、ロシア軍の侵攻後は大きなダメージを受けているとみられる。

ゼレンスキー大統領はロシア軍に反攻するためにNATO各国にMiG-29の提供を呼びかけていた。ポーランドが提供する案もあったが、ロシアの反発を恐れて宙に浮いた形になっていた。

スロバキアはウクライナに国境を接しており、NATO加盟国でもある。かつては社会主義国だったこともあり、MiG-29を12機運用している。同国のヘゲル首相は、MiG-29と自国製のズザナ自走榴弾砲を供与するようにウクライナから要請されており「議論が続いている」と話したとPOLITICOは報じている。

ロシアとの関係なしでは旧ソ連製の装備は維持できないため、MiG-29に「依存する状態は避けたい」とした。自国の領空を守る上で、西側諸国から一定の保証を受ければ、MiG-29をウクライナに提供することを「話し合っている」という。提供できる機体数は明らかにしなかった。

■アメリカからF-16戦闘機を購入契約を結ぶも納入が遅れていた

スロバキアは老朽化しているMiG-29の代わりとして、F-16戦闘機(14機)を約16億ドル(2000億円)でアメリカから購入する契約を2018年に結んだ。しかし、コロナ禍の影響で納入が1年遅れの2024年からになる見込みとなっている。


・米、ウクライナに航空機提供か 旧ソ連製のヘリコプター 米紙報道(朝日新聞DIGITAL 2022年4月13日)

※米紙ワシントン・ポストは12日、バイデン政権がウクライナに、旧ソ連製のヘリコプター「Mi17」の提供を検討していると報じた。実現すれば、米国による兵器提供の範囲が広がることになる。

同紙は政府関係者の話として、国防総省が、ロシア軍の車両や装甲車などを攻撃できるよう装備し、「Mi17」を提供することを検討していると伝えた。ウクライナへの新たな支援パッケージは、7億5千万ドル(約940億円)に上る可能性があるという。

ウクライナのゼレンスキー大統領は米国などに、より高性能の兵器を提供するよう求めていた。