・ロシアの戦車に書かれた「Z」の文字、戦争支持のシンボルとなった経緯は(CNN 2022年3月8日)

※2月下旬、ロシア軍がウクライナへの全面侵攻を開始する数日前、ソーシャルメディア上には「Z」の文字で飾った戦車、通信車両、ロケットランチャーなどが国境に向けて進む画像や動画が出回った。

キリル文字ではなくアルファベットの「Z」を用いたこのマークが何を示すのか。デジタル情報の分析家の間では様々な臆測が飛び交った。

軍事の専門家はこれを、ロシア語で「勝利のために」を意味する「Za pobedy」または「西」を意味する「Zapad」の頭文字だと解釈した。このほか「ゾロ分隊」を意味するものと推測したり、ウクライナのゼレンスキー大統領の頭文字ではないかと考える人もいた。同大統領はビデオメッセージで、自身がロシア軍の「第1の標的」だと語っていた。

ロシアが8年前にウクライナ東部で戦争をあおり立てて以降、同国の軍事行動を監視している英調査報道機関ベリングキャットは、「Z」の文字が何を意味するのかは不明であり、過去に使用されたのを確認したこともないと明らかにした。同機関の調査員、アリック・トーラー氏が先月20日にツイッターへの投稿で述べた。

ロシアの国防政策の専門家、ロブ・リー氏は、ロシア軍がウクライナ国境に兵力を集結させ始めたころから「Z」マーク入りの車両を追跡してきた。同氏によれば、このマークはウクライナでの戦闘に派遣された部隊を表すものである可能性がある。先月19日にはツイッターで「他とは異なる特別部隊もしくは小部隊を識別するためのものではないか」と指摘した。同氏はロンドン大学キングス・カレッジで戦争研究を専攻し、博士課程の取得を目指している。

しかしロシア政府がウクライナに対する激しい攻撃を命じてから数日後、謎の軍事記号だった「Z」はロシア国内で今回の戦争への支持を表明するシンボルになった。専門家からは新たな国家主義的運動の展開を示すものとの分析も出ている。

ロシア人はマイカーに「Z」の文字を塗り、「Z」のロゴ入りの黒いフード付きパーカを着用。「Z」をかたどった手製のブローチを襟の折り返しにつけている。こうした現象は、ロシアのプーチン大統領とその取り組みが一定の国民的支持を獲得していることをうかがわせる。ロシア政府はウクライナの一部地域を制圧することで、影響力の及ぶ範囲を広げようとしている。

独立した研究者で以前は米ワシントンのシンクタンク、ウィルソン・センターの研究員でもあったカミル・ガレエフ氏は「当局がプロパガンダの運動を立ち上げてウクライナ侵攻に対する国民的な支持を得ようとし、現在多くを獲得している」と分析。「わずか数日前に作り出されたこのシンボルが、新たなロシアのイデオロギー及びナショナル・アイデンティティー(国家的同一性)の象徴となった」と付け加えた。

ロシア南西部の都市カザンにあるホスピスではこのほど、がん闘病中の子どもたちなど約60人が建物の外で「Z」の文字の形に並んだ画像を撮影。ロシアの軍事行動への支持を表明した。

またロシア連邦議会下院議員のマリア・ブティナ氏は、自身のブレザーに白い文字で「Z」と書き入れる動画をソーシャルメディア上のプラットフォームに投稿した。プーチン氏を支持する政党、統一ロシアに所属するブティナ氏は、2016年米大統領選の前後に未登録の外国の代理人として米国への政治介入などを図った疑いで有罪判決を受けていた。米国への政治介入などを図った疑いで有罪判決を受けていた。

また現地ウクライナの状況を伝えるロシア国営ニュースネットワーク「ロシア24」の特派員は、「Z」の文字の入った防弾チョッキを身に着けている。

ソーシャルメディア上にはロシアの若者らが「Z」の文字をあしらった黒いTシャツなどを着てロシア国旗を振り、国家とプーチン氏を支持する歌を歌う動画も拡散している。


・【解説】 なぜ「Z」がロシアで戦争支持のシンボルになっているのか(BBC NEWS 2022年3月8日)

ポール・カーリー、ロバート・グリーノール

※ロシアの男子体操イワン・クリアク選手は、5日にカタールで開かれたワールドカップ(W杯)で、アルファベットの「Z」を胸に付けてウクライナ選手と並んで表彰台に立ったとして、国際体操連盟(FIG)の懲戒手続きに直面している。このシンボルは何を意味しているのか?

ロシアでは現在、ウラジミール・プーチン大統領によるウクライナ侵攻を支持するシンボルとして、アルファベットの「Z」が急速に拡散している。政治家たちが愛用し、車やバンの側面、広告板、さらにはバス停にもいたずら書きされている。セルビアの首都ベオグラードで行われた親ロシア派のデモでも、使われていたた。さらに、そうした写真が、ソーシャルメディア上で広く共有されている。

「Z」のシンボルは街のあちこちで見られるようになった

「Z」の使用は、SNS上でも議論となっていると、英ユニヴァーシティー・コレッジ・ロンドン(UCL)スラブ・東欧研究学科で国際政治を教えるアグラヤ・スネツォヴァ氏は、こう指摘する。

「これは色々な意味で、ロシアが現在、あるいはかつて、どの程度グローバル社会の一部だったのか、表している」

ロシア語で使用されるキリル文字では、「Z(ゼッド)」は異なる書き方(数字の3のような形)をする。しかし、ロシア人の大半は、欧米のアルファベットが使うラテン文字の「Z」を認識している。王立防衛安全保障研究所(RUSI)のリサーチ・フェロー、エミリー・フェリス氏は、「Z」は分かりやすく力強いシンボルだと説明した。

「プロパガンダでは、一番シンプルなものが最も早く受け入れられがちだ」

「この文字はなかなか威圧的で、きっぱりしている。美的観点からは、非常に強力なシンボルだ」

ウラジーミル・プーチン大統領の侵略を支持する人々の間で「Z」が広まるのには、2週間もかからなかった。

ロシア中部の都市カザンでは、ホスピス施設の子どもたちやスタッフ約60人が雪の中、建物の前に巨大な「Z」を作っているところを写真に撮られた。

「Z」が実際に何を意味するのかについては、いくつかの説が唱えられている。最初にソーシャルメディアで注目されたのは、ウクライナに向かうロシア戦車の側面に「Z」が描かれていたからだ。

当初、この「Z」は実は数字の「2」で、2022年2月22日を表していると考えられていた。この日は、ロシアがウクライナ東部の分離派地域ドネツクおよびルハンスクと、「友好、協力、相互支援」に関する協定を批准した日でもある。

しかし現在では、このシンボルは単に、ロシア軍が自軍を識別するための標章だと思われている。

ロシア国営放送「チャンネル1」のニュース番組は先週、「Z」はロシア軍の装備によくあるマークだという説を放送した。正教会の親プーチン派ウェブサイト「ツァーグラード」は、このシンプルなマークによって「味方からの誤射を防ぐ」ことができ、「他のものと混同されなくなる」と報じた。

元ロシア特殊部隊のセルゲイ・クヴィキン氏はロシア誌サイト「ライフ」に、様々なシンボルが様々な部隊の識別用に使われていると話した。

「四角に囲まれた『Z』や、丸に囲まれた『Z』、『Z』と星マーク、あるいは『Z』単体といった記号が使われている」

クヴィキン氏はこうした記号が、他部隊と連絡を取っていないかもしれない部隊が、正しい位置にいるか確認するのに役立つと説明した。

一方、米空軍のタイソン・ウェッツェル中佐は「タスク・アンド・パーパス」のウェブサイトで、ロシアの戦闘機はこれらの白いマークを視認できないほど速く飛んでいると指摘した。

米シンクタンク「大西洋協議会」の空軍上級研究員を務める中佐はそれでも、「Z」のシンボルが「同士討ち防止のための衝突回避策」であることは認めている。

ロシア軍の戦車などに描かれた「Z」のシンボル

ロシアにおける「Z」の広がりは、ソーシャルメディアでの自然発生的なものだけではなく、「政権によって推進されているものでもある」と、UCLのスネツォヴァ氏は警告する。

例えば、ロシアの政治家マリア・ブティナ氏は、スーツのジャケットに「Z」の記章を書く方法を説明したビデオを投稿した。「そうすれば、声高に主張しなくても、職場で皆に見せられる」と、スネツォヴァ氏は説明する。

一方でスネツォヴァ氏は、このシンボルをファシスト(全体主義)のものと見なすべきではないと言う。

「この『Z』をかぎ十字に変換するミームがたくさんあるが、それは政権に対抗したい人たちがやっていることだ」

「Z」以外の記号も出現している。

例えばロシア国防省はインスタグラムに、同じくキリル文字にはないアルファベットの「V」を、「Z」の画像と並べて投稿している。

この画像に付けられた説明には「Za PatsanoV」とあり、これは「若者たちのために」という意味だ。別の説明には「Sila V pravde」とあり、英語に訳すと「真実の強さ」となる。

一説には、この2つのローマ字は、東を意味する「vostok」と西を意味する「zapad」を表しているのではないかと言われている。ソーシャルメディア上では、ウクライナ軍は「Z」がロシアの「東部軍」、「V」が「海軍歩兵」を指すと考えているという憶測も出ている。

ロシア国防省のインスタグラムには、「Z」や「V」をレイアウトした画像が数多く投稿されている

(英語記事 Why has 'Z' become a Russian pro-war symbol?)


・ウクライナ侵攻のロシア軍、謎のマークZの意味は? プーチン政権支持のシンボルにも(The Asahi Shimbun GLOBE+ 2022年3月8日)

※ウクライナに侵攻しているロシア軍の車両には、「Z」などの文字が書かれている。一体何を意味するのか。

2月24日から始まったロシア軍の軍事作戦では、ウクライナの東にあるロシア領と、北のベラルーシ領、ロシアが実効支配しているクリミア半島がある南方からそれぞれロシア軍が進軍。戦車や装甲車などの車両には白いスプレーでいくつかの記号が書かれていることがわかっている。

ウクライナ内務省の準軍事組織「国家親衛隊」は2月27日、Twitterで記号とその意味を投稿している。それによると、Zは「ロシアの東の部隊」、四角囲みのZは「クリミアから来た部隊」、Oは「ベラルーシからの部隊」、Vは「海兵隊」、Xは「チェチェンの部隊」、Aは「特殊部隊」という。

pic.twitter.com/pp8KnaaO3j

— НГУ (@ng_ukraine) February 27, 2022
また、ウクライナ内務省も同日、メッセージアプリ「テレグラム」で、Vのマークがついている車両はテロ行為をするためキエフに向かっている部隊だとして、見つけ次第通報するようにと国民に呼びかけている。

これに対し、ロシア国防省は3月3日、Instagramで大きなZの文字とともに、「勝利のために」という説明文をつけた。

ただ、同じアカウントではZとともに「忘れない」という文言が添えられた投稿もあり、真相は不明だ。

西側の専門家の間でも、これらの記号は「友軍同士の誤射を防ぐためではないか」などの憶測を呼んでいる。

ロシア政府が記号の意味を明らかにしない中、ロシア国民の中ではロシアの軍事作戦を支持するシンボルとしてZマークをとらえる動きが出ている。

カタールのドーハで3月5日にあった体操種目別ワールドカップでは、ロシア人選手が胸に白いテープでZマークをつけて出場。この選手は平行棒で3位になったが、表彰台でも外さなかった。国際体操連盟は、懲戒処分を検討するとしている。

pic.twitter.com/k0YqTV4gHO

— НТВ (@ntvru) March 6, 2022
人文字も現れている。ロシア紙「コメルサント」などによると、大都市カザンにある白血病の子ども向けホスピスで3月5日、患者やその親たち約60人が敷地でZを形作った。「ウクライナでのロシアの軍事作戦を支持するため」という。

これに対し、ウクライナではZが反ロシアのシンボルとなりつつある。ネットメディア「オボズレバテリ」によると、ウクライナ南東部のメリトポリ市で3月6日、反ロシアの集会が開かれ、プーチン大統領のかかしが焼かれるとともに、Zが入った侮蔑的な言葉を書いた横断幕を掲げたという。


・ロシアの謎の文字”Z”とは?「非常に縁起の良い言葉」「ウクライナ侵攻が始まった後に広まった文字」と国際政治学者が解説(中日スポーツ 2022年3月25日)

※フジテレビ系朝の情報番組「めざまし8」は25日、ウクライナに侵攻するロシア軍の戦車に描かれるなどし、ロシア側でよく見られるようになった「Z」の文字について特集した。

番組では、18日に行われた「クリミア併合8周年」のイベント会場で出演者の服装などに「Z」が描かれていたことや、ロシア独立系メディアが発信した、「Z」の文字が描かれた服を着て踊る子供たちの映像などを紹介した。

ロシアを中心とする国際政治学者で筑波大学の中村逸郎教授はVTRで「昔からあるソ連軍のマークではない」と解説。2月24日にウクライナ侵攻が始まった後に広まった文字だという。

同日、スタジオ出演もした中村教授は「Zっていうのは非常に縁起の良い言葉」と説明。Zを使った「ZA」というのは、健康や幸せを祝うときに使う最初の言葉だと解説した。

ロシア語のキリル文字33字の中には「Z」はないが、ロシア軍の存在を見せるため外国にも分かるように、外国圏で認知の高い”Z”を使用しているのではと中村教授は見解を示した。ロシアの謎の文字”Z”とは?


・「Z」文字がロシアで急拡大 子どもに強制? まるでナチスとの声も…意味と狙いを分析(FNNプライムオンライン 2022年3月25日)

※「大統領のために、国のために」と叫ぶ子ども

国旗を振りながら「ロシア」と叫ぶ子供たち。これはロシアの独立系メディア「メデューザ」が報じた、ロシア国内の様子です。

教師:
子供たちは国への愛ゆえに最後まで戦います。国境で、100の弾丸を用いて。プーチン大統領に従って、私たちの軍隊とともに。

子供たちは教師の掛け声に合わせている様子がうかがえます。さらに、別の子供も。

プーチン大統領の写真をバックに、「大統領のために」「国のために」と叫ぶ様子が映っていました。

そして、子供たちは大人の言った言葉をただ繰り返しているのです。これらの映像をよく見ると、ある共通点があります。それは「Z」という文字が映っていること。

2月24日から始まったウクライナ侵攻で、ロシア軍の軍用車など様々な場所にも「Z」が記されています。そして、3月18日に行われたクリミア併合8周年を祝うイベント会場でも、至るところに「Z」の文字が。

この「Z」は「ロシア軍のウクライナ侵攻を支持する象徴」とも言われていますが、今や子供たちにまで広がっているのです。

「Z」の人文字にワッペン …児童たちにも教育か

これは、小学校のSNSに投稿された写真。ロシア国旗を手に「Z」を形作っているのは、小学1年生の児童たちです。

別の小学校では、子供たちが一糸乱れぬ列で「Z」の人文字を作り上げています。

また教室では、「Z」のワッペンがひとりひとりに配られています。

さらに男の子たちは「Z」のシャツを着て、一列で行進。

そして、女の子たちは「進めロシア」という名の愛国歌を合唱。身に着けているロシアの国旗カラーの衣装にも「Z」の文字が書かれています。

ウクライナのレズニコフ国防相は、SNSで「ロシアの占領者はナチスマークをつけている」と、「Z」をナチスのマークになぞらえて強く非難しています。

ロシアによるウクライナ侵攻が始まって1カ月。急拡大する「Z」マークは一体なにを意味し、その狙いはどこにあるのでしょうか。

Z文字は「縁起のいい言葉」の象徴 世界に向けたアピールも

戦闘が激化するウクライナ国内やロシア軍の戦車などに書かれた「Z」の文字。これはどんな意味を持つか、筑波大学の中村逸郎教授に話を聞きました。

筑波大学 中村逸郎教授:
「Z」というのは元々、ロシアでは非常に縁起のいい言葉です。例えば、「ZA」というのですが、健康や幸せを祝うときに使う言葉の最初の「Z」を使っているんです。ですから今、モスクワ市内なども色々な所にZのマークが付いていて、アパートの入り口のドアにZが付いているなど、市民生活の中でも「Z」というのが急に現れてきています。

Zは昔からロシアにあったものなのでしょうか?

筑波大学 中村逸郎教授:
昔はないです。2月24日に侵攻が始まって、その2~3日後から「Z」が出ていた。戦車に描かれたのが事の始まりなのですが、そこから急速に広がってきています。

さらに驚くのが、ロシア語は「キリル文字」を使用しますが、キリル文字の中に「Z」はないということです。では、この「Z」を使用した言葉は一体なにを意味するのでしょうか。

掲げられた横断幕にある「ロシアのために」という言葉、「ZA」はアルファベットで「Po㏄ИЮ」がキリル文字。つまり、混合して使っていることになります。

中村逸郎教授はその理由について、ロシア軍の存在を見せるため、外国にもわかるように「Z」を使しているのではないかといいます。

戦場で仲間を識別する「Z」 目立って逆効果?

さらに、軍事ジャーナリストの井上和彦さんは別の理由も指摘。

「Z」は元々はロシア軍が見方を識別し、同士打ちを防ぐためのマークだったのではないかといいます。実際にロシア軍の戦車には「Z」がいくつも描かれています。

ただ、この「Z」マークは戦場で非常に目立つため、逆効果なのではないかと言われています。

こちらはウクライナの戦車から見た映像です。すぐにロシア側の「Z」マークを確認することができます。

つまりウクライナ側からすると、ロシア軍ということがすぐに認識できてしまい、逆効果になっているのではないかというのです。

井上さんは、ロシア軍の損失が多くなっている背景には、「Z」が描かれた目立つマークを使っている点もあるのではないかと指摘。ロシアは「歴史的大敗」と言えるほどの損失で、ウクライナ軍を完全に侮っていたのではないかと話します。

(「めざまし8」3月25日放送)



・Z (軍隊符号)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』



※Z(ラテン文字)は、2022年ロシアのウクライナ侵攻に参加したロシア連邦軍の軍用車両に記されたいくつかの符号の一つであり、自軍と敵軍を区別することを目的に記されていると推測されている。

タカ派のシンボルとして、「Z」はロシア連邦政府によってプロパガンダツールとして、またロシアの民間人によって侵略への支援の印として使用されてきた。一方、チェコ政府は「Z」符号を卍に相当するものとして分類しており、カザフスタンとキルギスは「Z」符号を車両に公に掲示することを禁止している。


符号
ウクライナ軍によると、2022年ロシアのウクライナ侵攻の際に、ロシア連邦軍は次のような意味で符号を使用した。



Z: 東部軍管区からのロシア連邦軍
🅉 (四角内): クリミア半島からのロシア連邦軍
O: ベラルーシからの軍
V: ロシア海軍歩兵
X: チェチェン共和国軍 (カディロフツィ)
A: 緊急対応特殊課、アルファ部隊、特殊作戦軍を含む特殊部隊

意味
「Z」そのものが具体的に何を意味しているのかについては不明瞭である。意味は上記のウクライナ軍の説明の通りであったとしても、「なぜ東部軍管区からの部隊にZの文字を用いるのか」「なぜキリル文字に存在しないZをわざわざ使うのか」という疑問は残っている。

ロシア国防省は、写真・動画共有SNSのInstagramにおける同省の公式アカウントにおいて、様々な単語の一部として「Z」を配置する画像を投稿したという。例えば「за победу」(za pobedu)の頭文字「з」(ラテン文字のzに相当するキリル文字)とするもので、「за」は「~のために」、「победу」は「勝利」の意であるため、「за победу」は「勝利のために」というスローガンである。他にも「за мир」(za mir 「平和のために」)とした画像や、「за правду」(za pravdu 「真実のために」)とした画像、さらには英単語「demilitarization」(非軍事化)「denazification」(非ナチ化)の一部とした画像も投稿したという。

いずれにしてもその意味の曖昧さにもかかわらず、”Z”という文字単独で侵略行為そのもの、侵略支持そして愛国心を表すタカ派のシンボルとして使用されている。また宣伝などで”З”で表記される部分をあえて”Z”に書き換えて表記、すなわち例えば上述の「За победу」が「Zа победу」とする例も見られる。

反応
ウイルソン・センターのカミル・ガリエフは、3月7日、「ほんの数日前に発明された符号は、新しいロシアのイデオロギーと国民的アイデンティティの象徴になった」と述べた。


・ロシア軍シンボル「Z」を禁止 独2州(AFPBB 2022年3月27日)

※ドイツのニーダーザクセン(Lower Saxony)、バイエルン(Bavaria)の両州は26日、ウクライナに侵攻するロシア軍のシンボルマーク「Z」を公の場で表示することを非合法化したと発表した。

ロシアのウラジーミル・プーチン(Vladimir Putin)大統領への支持を示すためZの文字をデモで掲げたり車や建物にペイントした者は、最高3年の禁錮刑や罰金の対象となる。

Zは当初、ロシアの軍用車両に表示されていた。敵味方を識別し、同士打ちを避ける狙いだったとみられる。

その後、ロシアの首都モスクワを走る自動車や洋服などでもZ表示が登場。ソーシャルメディアのプロフィル画像にも使用されるようになった。

ニーダーザクセン州の内務省によると、同州でもそうした使用例が見られた。

バイエルン州のゲオルク・アイゼンライヒ(Georg Eisenreich)法相は「ロシア軍のZを使うシンパは犯罪行為を是認することになる。それは訴追に値するのだということをわきまえておく必要がある」と述べた。