・「5年以内に死ぬ!」反ワクチン団体が接種会場で“テロ行為”、警察出動も止まぬ怒号(週刊女性PRIME 2022年3月16日)



(上)東京ドームで反ワクチン団体が抗議している様子

※今月15日、新型コロナワクチン大規模接種会場となっている東京ドームで、ワクチン接種を反対する団体が妨害行為をし、接種が一時中断となる騒ぎがあった。

ノーマスク・反ワクチン団体の抗議で接種が遅延
 
ノーマスクで反ワクチンを訴える十数人の団体が、「ワクチン打ったら5年以内に死ぬぞ」「子どもには打たせるな!」などと叫びながら接種会場入り口に押し寄せ、お昼頃には警察と押し問答になった。

ネット上にはワクチン接種に訪れた人々から、

《東京ドーム集団接種会場、反ワクチっぽい集団が入口で警官と揉めてる……これ、何時になったら入れるんだろう……》

《東京ドームにワクチン打ちに来たら、反対派が会場乗っ取って封鎖されてる……警察が強制排除したけどまだ揉めてる》

といった心配の声があがっていた。

反ワクチン団体の妨害により、ワクチン接種は午後1時半過ぎまで中断を余儀なくされ、長い時間待たされた人が続出することになった。

現場に居た50代の女性は「マスクをしないで叫んでいる人が警察と揉めていて怖かった」と話す。

また接種会場に訪れた40代の女性に話を聞くと、

「今日は暑かったので、長く外で待たされていた高齢者の方が具合を悪そうにしていました。そういった高齢者を見て何も思わないのでしょうか? ワクチンの副反応が不安な気持ちだってあるのに、彼らの行動は本当に理解できません」と怒りをあらわにしていた。

今回の騒動がネット上で拡散されると、

《反ワクが戦うべきは接種しないとサービスを受けれない体制に対してだろ》

《ワクチン接種してない輩が大声で飛沫飛ばして暴れてるのほんとヤバい》

との声が見受けられた。

今回の事態について、東京都議会議員のおじま絋平氏は自身のTwitterで、

《本日、都の大規模接種会場・東京ドームにおいて反ワクチン団体が入り口を封鎖し、一時的に入場が出来なくなる事態となりました。警視庁が対応し、ケガ人・逮捕者はなく鎮圧されたようですが、実力行使をもって業務を妨害する行為はテロであり、完全に一線を超えています。取り締まりの強化を求めます》

とツイートしている。

ワクチンを打つ、打たないは個人の自由で選択する権利があるが、他人が打つことを妨害する権利までは誰にも無いのではないだろうか。




本日、都の大規模接種会場・東京ドームにおいて反ワクチン団体が入り口を封鎖し、一時的に入場が出来なくなる事態となりました。警視庁が対応し、ケガ人・逮捕者はなく鎮圧されたようですが、実力行使をもって業務を妨害する行為はテロであり、完全に一線を超えています。取り締まりの強化を求めます。

— おじま紘平(東京都議会議員・練馬区) (@ojimakohei) March 15, 2022


会場に押しかけたのは「神真都Q」メンバー20数人、12時頃から1時間ほど接種がストップしたため、終了時間を延長して対応しました。最近は他自治体でも同様の騒ぎを起こすなどエスカレートしており、すでに公安もマークしているようですが、都としても被害届を出すなど、毅然とした対応を求めています。

— おじま紘平(東京都議会議員・練馬区) (@ojimakohei) March 15, 2022


ワクチン接種のため、東京ドームに。
到着早々、謎の集団が騒いでる…。 pic.twitter.com/uPPekaQIgu

— 菊地秀行(デザイナー) (@yeager1947) March 15, 2022


出川哲朗ばりのコントを披露する神真都Qさん pic.twitter.com/k5gUSTIpzh

— MASATO HAMANO (@1031hamano) March 15, 2022


東京ドームのワクチン接種会場が反ワクチン集団に占拠されてて最初は笑ったけど、足止め食らったせいで大引けまでに帰れなさそうだわ。ノーマスク、金髪、白ハット、オールバックといかにも反社っぽい風貌だったな。色んな怒りがふつふつ込み上げてきた pic.twitter.com/0yZRvcZUHg

— 浄株 (@Jaw_kabu) March 15, 2022


反ワクチン団体が東京ドームの接種会場から追い出される様子が撮影されてました。
pic.twitter.com/k1tkUcEIrx

— PCR検査は感染症の診断に利用できます (@q44bh4aD6wzu8Pv) March 15, 2022


この団体、3/20にまたもや全国デモを開催予定なので、ご注意下さい。
今朝、トップの甲兄(村井大介)からメンバーを煽るツイートが出されてます。 pic.twitter.com/OSNJjTINXO

— 🇺🇦🐊Bakoba225🍄🇺🇦 (@Bakoba225) March 16, 2022



Wikipedea:神真都Q

神真都Q(やまとキュー)は、疑似科学を信じる日本の陰謀論信奉団体。

組織

2021年末に結成された。「アメリカ合衆国の前大統領であるドナルド・トランプから承認された17億人いるQのグループの一つ」であると自認しており、Qアノンの一派であると見なされている。一方、Jアノンと呼ばれている集団とも異なり、神真都Qはよりオカルトやスピリチュアルの影響を強く受けているという指摘もある。

活動

2022年1月に、渋谷、原宿、代々木で1000人規模を動員してデモを行い、新型コロナウイルスの誤情報やワクチン忌避の言説を訴えた。彼らはノーマスクで月2回全国同時にデモを行っており、反ワクチン団体の中では最も規模が大きいとされている。

イデオロギー

「人々は光と闇の銀河戦争から逃げ延びた宇宙人によって構成される政府機関に支配されており、解放されなければならない」という信念を掲げており、人口の37%が目覚めれば宇宙人の支配から解放されるという「大和グリッド帰還計画」を主張している。大和民族を「善なる宇宙人」と「龍神」の末裔であると位置付けており、ナショナリストのグループとしての一面がある。





・「東京ドームに押しかけて接種妨害」反ワクチン団体に参加しているのはどんな人々なのか(PRESIDENT ONLINE 2022年3月31日)

K ヒロ

※ノーマスクで接種会場に押しかけて開場を妨害するなど、主張や行動を先鋭化させる反ワクチン団体。関係者やその家族を取材してきた著述家のKヒロ氏は、「彼らはワクチンを批判する情報に感化されて反ワクチン派になったのではない。まず知的エリートへの劣等感や医療への不信感がある」という――。


なぜ他人の接種にまで干渉するのか

新型コロナウイルスワクチンの接種率は約80%に達し、いまやサードショットの接種が粛々と進められている。しかしそんな21世紀の今でも、ジェンナーが種痘を考案した18世紀後半同様にワクチンを恐れる人はあとを絶たない。

2022年3月15日、ノーマスクで反ワクチンを訴える陰謀論団体が新型コロナウイルスワクチンの接種会場となった東京ドームに押しかけ、開場を2時間近く遅らせた騒動があった。騒動の模様はテレビ朝日などの記事でも報じられた。

ワクチンの効果をいくら説明しても聞く耳を持たないばかりか、他の人々への接種をも威圧的に妨害するというのは、多くの人にとって理解しがたい行動だろう。いったいどんな人々が、どんな理由で反ワクチンの立場を取るようになり、なぜ他人の接種にまで干渉するのだろうか。

筆者がこれまでに経験した反ワクチン派への取材では、注射で体内に異物を入れることに、経口薬よりも一層強い抵抗感を抱いているケースが多かった。また、いくらやさしく説明されても、(ワクチンに限らず)科学的な話題を理解できない人が多い。「専門家の説明はわからないことが多くて頭に入らない。聞きたくなかった」といった言葉を、反ワクチン集団の内情を教えてくれた人々はよく口にしていた。


日本人の3分の1以上は科学的な話が苦手

そもそも、科学的な話に苦手意識を持つ人が人口に占める割合は決して少なくない。内閣府の「科学技術と社会に関する世論調査」(平成16年2月調査)によれば、「科学技術に関する知識はわかりやすく説明されれば大抵の人は理解できる」という問いに対し、「あまりそう思わない」と答えた人は19.3%、「そう思わない」と答えた人は16.0%を占めた。

「機会があれば、科学者や技術者の話を聞いてみたいと思うか」という問いへの回答では、「あまり聞いてみたいとは思わない」が22.8%、「聞いてみたいとは思わない」が24.4%だった。つまり、日本人の実に3分の1以上は「科学的な話は理解しにくい」と考えており、半数近くは「科学者や技術者の話はできれば聞きたくない」と思っているわけだ。


「『間違っている』と言われるのは嫌がらせに感じる」

もちろんこうした人々のすべてが、反ワクチン派になるわけではない。

過去に取材したケースの中から、実際の声をいくつか紹介したい。「尾身さん(尾身茂・新型コロナウイルス感染症対策分科会会長)のことが気に入らない人はみんな、『偉そうに指図しやがって』と思っている」(元陰謀論者の40代男性)。「そうなったらいいなと思っていることを、専門家に『間違っている』と言われるのは嫌がらせをされているように感じる。こんな雰囲気が仲間うちにあった」(元陰謀論者の20代女性)。「アトピーの治療で医者が信じられなくなった。どうして嫌みを言われていじめられなくてはいけなかったのか」(ワクチンが信じられない男子大学生)。

科学的な説明を理解できない、あるいは理解する気がない。専門家が難しい話をしていると「偉そうだ」と劣等感を募らせ、自分の願望どおりの話をしないことに嫌悪感を抱く。医師への不信感を拭い去れない――。こうしたタイプの人々が、ワクチンを勧める専門家や医師の話を信用できないと、かたくなになっているケースが多かった。彼らはワクチンを批判する情報に感化されて反ワクチン派になったのではない。まず知的エリートへの劣等感や医療への不信感があり、そうした感情を正当化したり肯定したりしてくれるものとしてワクチン害悪論や陰謀論に引き寄せられた面が大きいのではないか。

反ワクチン派が他人のワクチン接種に干渉するのは、それが一層の自己肯定感を得られる行為だからだ。会員制交流サイト(SNS)やデモで「ワクチンを打つな」と声をあげたことがある人々は、主張しているときとても気分がよかったと語っていた。


承認欲求やプライドを刺激される

家族が反ワクチン派になってしまったという30代女性は言う。「(問題の家族にとっては)『反ワクチンの先生たちは自分たちをわかってくれている』という信頼感がすごい。わかってもらえたり認めてもらえたりした経験がきっかけで、深入りしていったみたいです」

高齢者が陰謀論に染まって反ワクチンデモに参加する場合も、承認欲求やプライドを刺激されているケースが多い。若い人たちが参加を歓迎してくれるだけでなく、役割を与えられた気がする。運動に貢献すればするほど、自分本来の能力に見合う尊敬を得られる気がする。次々と新しい情報が耳に入り、未知のできごとが発生し、みんなで協力して乗り切る充実感がある――。そんなポジティブな精神状態になれるのだ。


過激陰謀論団体に高齢の父親がハマった

東京ドームで接種阻止をもくろんだ陰謀論団体は、「神真都Q(ヤマトキュー)」という名を名乗っている。構成員は40代から50代がボリュームゾーンで、次にそれ以上の高齢者が多い。デモや実力行使の様子を見ると、地方ではむしろ高齢者を中心にした組織のように思われる。

父親が主催者のYoutubeをきっかけに神真都Qの構成員になった女性は、筆者の取材にこう答えた。「もう誰も父を止められません。うれしそうにデモに行っていた頃とも別人になってしまった。正義の味方ごっこだったのが、ほんとうに正義の味方になったと信じ込んでしまっているんです。やめてほしいと家族が言えたのは(2022年)1月ごろまでで、飲みかけの缶ビールをぶつけられてからもう何も言えなくなりました。私のことを悪の手先だと思っているんだと思います。おまえが二度と来られないように玄関の鍵を替えると言われました」

ワクチン害悪論や陰謀論には、大抵「敵」が設定されている。金もうけをする製薬会社や医師、世界を支配しようとする権力者や民族などさまざまだが、神真都Qの場合は「悪い宇宙人」が敵だ。こうした敵と闘う仲間同士が助け合い、尊重し合うことで、それぞれの自尊心が満たされる。社会から期待されるものがなくなり人付き合いが減った高齢者にとって、世のため人のために貢献できる集団の心地よさは格別だ。


現代社会に居場所を見つけられない人々

高齢者だけでなく現役世代の構成員たちも、現代社会に居場所を見つけられない人が多いようだ。「本も雑誌も読まない人っていますよね。世界地図で知ってるのは日本とアメリカと中国くらい。浜崎あゆみくらい(の時代)で時間が止まってる人、やたら堅物で冗談ですらない世間話も通じない人もいたし。みんな何かがずれてる」と話してくれたのは、神真都Qの構成員と接触した40代の元反ワクチン派男性だ。

「この世界は自分の目に見えたままに存在している」と信じ、これがすべての人が共有している世界と疑わない人々が世の中にはいる。世界観が狭く、多面的で複雑な情報を処理できない。自分の感覚がすべてで、自分と違う価値観や知識を持つ人を受け入れられない。神真都Qはこうした人々に、いま目に見えている世界の意味と解釈を初めて与えたのだ。

コロナ禍が終わっても反ワクチン派や陰謀論者は消えてなくならず、ありふれた隣人からまた新たなメンバーが生まれていくだろう。自分の年老いた家族が陰謀論にハマり、説得など聞く耳を持たずに迷惑を振りまきはじめるかもしれない。自分自身すら、社会に居場所を失ったときにそうならないとは言い切れない。


反ワクチン団体指導者の2つのパターン

では、こうしたグループで指導的な立場にあるのは、どのような人々なのだろう。筆者の観察したところ、2つの系統があるように思われる。

ひとつめは末端の構成員と同じ成り立ちを持つ者で、ここまで説明してきたようなさまざまなタイプの人々が、時を経てリーダーに昇格したパターンだ。自分を正当化してくれたり肯定してくれたりする説を普及させる伝道師(エバンジェリスト)といえる。

2つめは商売や名誉のためにワクチン害悪論や陰謀論を利用する者で、当人たちは説をまったく信じていないか、部分的にしか信じていない。敵を設定することで、味方を増やして何らかの実利を得ようとする詐欺師や山師(インポスター)だ。

インポスタータイプの指導者もまた2つの系統に分かれる。商売と割り切って構成員や顧客との距離を保ち続けるリアリストと、距離を保つことができなくなり、自らが作り出した熱狂に巻き込まれていく者だ。後者は味方からの期待を裏切れず、言動にどんどん過激さが増して、収拾がつかなくなる。接種妨害騒動を起こすような過激な反ワクチン団体の幹部や、おかしな説を唱え続けてファンを増やしメディアでもてはやされた医師たちには、筆者から見て後者の傾向が感じられる。


「自ら作り出した熱狂」をコントロールできるのか

自らが作り出した熱狂に巻き込まれていくパターンを見て思い出すのは、1995年に地下鉄サリン事件を引き起こした新興宗教団体、オウム真理教のケースだ。筆者は、ある女性がオウム真理教に帰依して出家するまでの経緯を間近に見て、教団崩壊の5年後に話を聞く機会を得たことがある。オウム真理教の教祖や幹部は信者たちを洗脳と恐怖で操縦していたが、「信者をロボットのような言いなりの存在とは考えていなかった」という。

教義や洗脳で信者に植え付けたものをやすやすと裏切れないと自覚していた幹部たちは、たとえおかしな論理だったとしても、それなりの整合性を取ろうとしていた。麻原彰晃が悪質な犯罪行為をヒートアップさせていった原因は、こうしたつじつま合わせの動機にある。

今、自ら作り出した熱狂に巻き込まれている陰謀論団体の指導者たちは、果たしてどこかでソフトランディングできるのだろうか。


K ヒロ(けい・ひろ) 著述家、写真家 1964年北海道北見市生まれ。大学在学中から写真家として活動。広告代理店勤務の後、コピーライティングおよび著作活動に従事。東日本大震災後10年を契機に、日本と日本人を見つめなおすプロジェクトに改めて着手。noteにてハラオカヒサ氏と共同で、コロナ禍を記録する「コロナ禍カレンダー」ほか、反ワクチンや陰謀論、さまざまな社会運動などについての論考を展開している。



・Qアノン日本版メンバーか、4人逮捕 ワクチン接種の会場に侵入容疑(朝日新聞DIGITAL 2022年4月7日)
 
※新型コロナウイルスのワクチン接種を行っていた医療機関に無断で立ち入ったとして、警視庁は7日、反ワクチン団体「神真都(やまと)Q会」のメンバーとみられる4人を建造物侵入の疑いで現行犯逮捕した。捜査関係者への取材で分かった。この団体は米国などで広がる陰謀論集団「Qアノン」が日本に派生した組織といい、同庁が情報収集を進めていた。

捜査関係者によると、4人は7日午前、ワクチン接種を行う東京都渋谷区内のクリニックに無断で立ち入った疑いがある。ワクチンに反対する活動をしていたとみられるという。

神真都Q会のホームページ(HP)によると、同団体は「コロナウイルス自体が存在しない」「ワクチンの中身は身体に悪影響を及ぼす病の種、感染源が入っている」などと主張。ワクチン接種は「人口削減計画のプランのひとつ」と訴えている。今年1月には東京、神奈川、札幌、福岡など全国各地で同時に反ワクチンデモを行ったという。

公安関係者によると、神真都Q会は昨年1月の米連邦議会議事堂への襲撃事件を扇動したとされる「Qアノン」の日本組織だと自称しているとされる。Qアノン同様にドナルド・トランプ前米大統領を支持し、HPでは「日本では決して報道されない事実として、数多くの子どもたちの救済を行った」とたたえているという。



・【独自】反ワクチン団体「神真都Q」を家宅捜索 警視庁公安部 接種会場侵入事件(FNNプライムオンライン 2022年4月9日)

※新型コロナウイルスのワクチンの接種会場に男女4人が不法侵入した事件で、警視庁公安部は反ワクチン団体の組織的な関与を調べるため事務所を家宅捜索しました。

公安部が捜索したのは、東京・港区にあるワクチン接種に反対する団体「神真都(やまと)Q」の事務所です。

この事件は、おととい、都内の小児向けワクチン接種会場に男女4人が不法に侵入し現行犯逮捕されたもので、4人がこの団体のメンバーだと確認し、組織的な関与を調べるものと見られます。

この団体は先月、東京ドームの大規模接種会場で抗議活動を行い、一時、接種が中断されていました。


・【全文】反ワクチン団体「神真都Q」リーダー逮捕、父で俳優・岡崎二朗が謝罪「厳罰に」「更生願う」(デイリースポーツ 2022年4月20日)
 
※新型コロナウイルス感染症のワクチン接種会場に押し入り、建造物侵入容疑で逮捕された倉岡宏行容疑者(43)の父で俳優の岡崎二朗(78)が20日、所属事務所を通じ、謝罪した。警視庁公安部に20日に逮捕された倉岡容疑者はワクチン接種に反対する団体「神真都(やまと)Q」のリーダーを自称している。

岡崎は所属事務所を通じ、報道各社に直筆署名入りの書面で謝罪文を送付。「この度は、私の息子が皆様に大変なご迷惑をお掛けし大変申し訳ございませんでした」と記した。

倉岡容疑者は今月7日午前、子ども向けの接種会場となっていた渋谷区内のクリニックに、同団体メンバーと侵入し、「ワクチン接種は犯罪行為」などと主張していたという。

倉岡容疑者は2007年9月、映画企画制作会社役員でプロデューサーの男性(当時52)を刃物で刺し、殺人未遂容疑で逮捕された過去を持つ。かつては「岡崎礼」の芸名でVシネマなどに出演していた。

父である岡崎は精悍な風貌で脇役として活躍。“鶴田浩二の最後の弟子”といわれる。

【以下、謝罪全文】

この度は、私の息子が皆様に大変なご迷惑をお掛けし大変申し訳ございませんでした。

本人には、法律によって厳罰に処され罪を償い、今回ご迷惑をおかけした皆様にも償いをし、1日も早く更生し社会のお役に立てるような人間になってほしいと願っております。

被害者の方々には心よりお詫び申し上げます。またご迷惑をお掛けしました関係者の皆様にも重ねてお詫び申し上げます。

岡崎二朗

令和4年4月20日


・当初は人気ユーチューバーを囲むサークルだった…反ワクチン集団「神真都Q」が過激化した根本原因(PRESIDENT Online 2022年4月21日)

K ヒロ

※4月7日、反ワクチン集団「神真都(ヤマト)Q」のメンバー4人が医療機関に無断で侵入したとして逮捕された。また20日には、リーダー格とされる元俳優の男も逮捕された。一体どんな集団なのか。関係者に接触してきた著述家のKヒロ氏は、神真都Qには他の陰謀論集団とは明らかに異なる特徴がいくつかあると言う――。


警視庁公安部が事務所を家宅捜査

4月7日、東京都渋谷区のクリニックに無断で立ち入り、新型コロナワクチン接種反対の抗議活動をしたとして、陰謀論集団の男女4人が逮捕された。報道を見た多くの人が、「神真都Q」という集団名、そして「ヤマトキュー」というその読みを初めて知ったではないだろうか。9日には集団の事務所を警視庁公安部が家宅捜索したという続報もあり、当局からテロ集団と同等の存在とみなされているのかと驚いたかもしれない。

さらに20日には、「岡本一兵衛」(イチベイ)を名乗るリーダー格の人物が、建造物侵入の疑いで警視庁公安部に逮捕された。

筆者は以前から、元「神真都Q」関係者と接触したり、現役メンバーの家族からの相談を受けたりしてきた(「『東京ドームに押しかけて接種妨害』反ワクチン団体に参加しているのはどんな人々なのか」)。この突如として現れた不可思議な集団「神真都Q」とは何か。どのような人々が参加しているのか、他の陰謀論集団と何が共通していて、何が決定的に違うのか。いま筆者が把握していることを、当記事で説明しようと思う。


前身は人気ユーチューバーを囲むサークル活動

神真都Qの前身は、ある人気ユーチューバーを囲む一種のサークル活動だった。ただのサークル活動と違ったのは、その人気者が「イチベイ」を名乗る2枚目の元俳優で(俳優時代は「岡崎礼」と名乗っていた)、話術に長(た)け、番組の話題が反ワクチン論を含む陰謀論だった点だ。

「イチベイを囲む会」的な集団だったこの頃の動画が、YouTubeに数多く残っている。幅広い年齢層の女性が参加し、屋外で交流を楽しんでいる様子は、アイドルイベント以外の何物でもない。

このライトな陰謀論サークルに、陰謀論インフルエンサーの「甲兄」こと村井大介などが合流し、アメリカの陰謀論集団「Qアノン」の主張を独自解釈したメッセージをYouTubeや各種イベントで発信するようになった。


全国的な規模で共鳴者が存在

独自解釈の内容を具体的にいえば、大和民族をたたえる民族主義的な傾向、Qアノンにはないオカルト的な説や描写の追加であり、最終的には、世界を影で支配する悪い宇宙人の種族と、善なる宇宙人の遺伝子を引き継ぐ大和民族や龍神との戦いという物語にまで、Qアノンの主張を換骨奪胎してしまった。彼らの陰謀論のなかで、新型コロナワクチンの接種は悪であり阻止しなければならないものとされた。

この独自の陰謀論が完成すると、2021年12月26日に「神真都覚醒」が宣言され、イチベイをリーダーとする神真都Qが設立された。YouTubeやTwitterを使って活動をしていたこともあり、すでに共鳴者は全国的な規模で存在していた。とりわけ、イチベイの強いタレント性がファンにはたまらなかったようだ。

神真都Qは設立から2週間足らずの1月9日に、東京で大規模な反ワクチンデモを実施している。こうした活動を支え、大所帯をまとめるのに活用されているのが、全国の地域グループごとに開設されているLINEのオープンチャットだ。接種妨害行動のような重要案件は極秘裏に計画され連絡が行われているが、幹部からの通達の拡散や構成員同士の会話は、24時間いつでもLINE上で行われているのである。

こうしたネットツールの使いこなしは神真都Qの特異性のように語られがちだか、むしろネットツールを使わないと活動が成り立たないほどの組織化にこそ、彼らの本質がある。


陰謀論グループには珍しい中央集権的な組織化

一般的には、陰謀論の提唱者は匿名で、統括する組織も特になく、賛同者同士の交流は何かのイベントの際に行われる程度だった。ネット掲示板を発祥の地とし、賛同者が会員制交流サイト(SNS)で活発に交流しているQアノンはその意味で新しいが、やはり明確な組織化はなされておらず、提唱者「Q」は今も匿名である。

だが神真都Qは、教祖らしく振る舞うイチベイを頂点にした、1万3000人の構成員を持つとされる中央集権的な組織である。しかも全国くまなく地方組織がつくられているため、連絡網としてネットツールが不可欠なのだ。

構成員の個人情報を事細かに管理している点でも、神真都Qは中央集権的である。参加するには本名だけでなく、住所やメールアドレス、電話番号まで提出しなければならない。2022年3月に会員制度が始まると、入会金900円、年会費3600円の納付とともに、顔写真と会員カード用の生年月日を含む個人情報を再度提出するよう求められた。ここまで個人情報に執着する陰謀論カルトは、今までなかったのではないだろうか。

自治空間をつくる「エデンの村興し」計画

個人情報だけでなく、金銭への執着も強い。神真都Qの活動のなかで特に注目すべきは、設立直後に提唱された「エデンの村興し」と、計画実現のための集金活動だ。「エデンの村興し」とは、全国各地に取得した土地に構成員が移住して自治空間をつくる計画で、イチベイは自らのYouTubeチャンネルで、すでに土地の提供を受けて「エデン造り」が始まった場所があることを語り、さらなる計画進行のため資金提供を呼びかけている。

個人情報に執着し会費を徴収するばかりか、土地取得のための資金集めまで行っている点から、筆者は神真都Qを営利目的の「集金型カルト」と見ていた。だが、この確信を揺るがせたのが、当初は地方都市から始まった、新型コロナワクチン接種会場への実力による妨害活動だった。その攻撃的な姿勢を維持したまま、ついに幹部自らが東京ドームの接種会場に乗り込む騒ぎを起こし、ついには冒頭のクリニックへの妨害活動で逮捕者を出して、警視庁公安部の家宅捜索を受けるまでに至った。自らの退路を断つかのような過激化は、集金型カルトにはそぐわない。


随所に感じる「ちぐはぐさ」

神真都Qのデモやイベントに公安部が張り付いていて様子が尋常ではなかったと、情報提供者から筆者に報告があったのは3月上旬だった。その1カ月以上前、反ワクチン派のコスプレイヤー男性が神真都Qのデモに便乗して騒動になったときも、現場には制服警官に加えて公安部の捜査官の姿があった。ターゲットの顔を記憶し、後ろ姿や多少変装した姿からでも人物を特定できるようにする「面割り」と呼ばれるマーク作業が、着々と進められていたのである。

大規模なデモを行うだけでも公安部は目を光らせる。実力行使の過激化だけでなく、1995年に地下鉄サリン事件を起こしたオウム真理教の「サティアン」を思い出させる「エデンの村興し」を計画する神真都Qが、国家による監視や鎮圧を想定していなかったとすればお粗末すぎる。

中央集権的にきちんと組織化され、「一般社団法人神真都Qの会」として法人登録までしている神真都Qだが、実際の活動は思いつきに近く、肝心の陰謀論も既存の他の陰謀論やオカルト理論で聞いたことがあるような、突飛な話の寄せ集めでしかない。そうしたちぐはぐさが、神真都Qという集団を特徴づけている。ちぐはぐさに不満を抱いた層は神真都Qの結成直後に脱会しており、残った構成員は幹部と組織を称賛こそすれ、不満を抱いてはいないようだ。


構成員のボリュームゾーンは40~50代

ただしその構成員も、神真都Qの使命を本気で実現しようとする者と、組織をただ利用しようとする者に二分される。組織を利用しようとする者は自分のビジネスや講座などへの勧誘を目的としているケースが多いが、異性との出会いを求めてデモや集会に参加している例も男女を問わずある。

神真都Qの使命を本気で実現しようとする人々は、自己肯定できる居場所を求めて構成員になっているケースが多い。神真都Qの構成員のボリュームゾーンは40代から50代、次に多いのが60代以上の退職者世代だ。いずれも自分が社会から正当に評価されていないという不満を抱き、自分に見合った役割を求めてデモや実力行使に参加している。

神真都Qの構成員たちと接したことがある40代男性は、「高齢者ほど組織から期待されていることに喜びを感じ、中年以下の世代も活動を通して自分自身の存在意義を確かめているようだ」と筆者に語っていた。

陰謀論の「キーワード」だけを拾って読む

それにしても、自らの納得できない気持ちを整理できないからと、「悪い宇宙人」が登場する荒唐無稽な陰謀論を信じてしまえるものなのだろうか――。その疑問を解く鍵は、神真都Qが陰謀論を「エンターテインメント化」している実態のなかにあるかもしれない。

代表のイチベイは、着流しに和傘、白い帽子にスーツなど、いつも趣向を凝らしたスタイリングでデモの現場に登場する。すると構成員や彼らの子供から「イチベイさんがきたよ」「イチベイさんのところへ行きたい」と歓声が上がる。まさに、「会いに行けるアイドル」ならぬ「会いに行ける陰謀論カルト代表」だ。アイドルのファンが、そのアイドルに設定された世界観と一体化することに幸せを感じるように、神真都Qの構成員たちはイチベイが設定した世界観に没入することで幸福感を得、一方で現実への認知をゆがませていく。

イチベイが設定する世界観、つまり神真都Qの世界観は、陰謀論としての体裁を整えてはいるが、構成員にとっては壮大な物語というより、キーワードが散らばった空間に等しい。YouTubeやイベントでイチベイが語る陰謀論には、大和民族、サタニスト(悪魔主義者)、ピック(処刑のための拉致)、豆腐船(ピックした人物を拷問のうえ処刑して死体を処理する船。米海軍の宿泊鑑をそういう船だと見立てている)といった、特徴的なキーワードが登場する。

これらのキーワードを覚え、復唱するだけで、何かを知り何かを語った気になっている構成員が多い。文章のなかの読めない漢字や知らない単語を飛ばして読んで、にもかかわらず全体を理解した気になっているようなものだ。


アイドルグループとファンの生態系に近い

筆者が相談を受けた構成員の親族の方々からは、「サタニストやトランプさんといった、特定のキーワードを含む言葉を浴びせかけてくる」「陰謀論がどうこう以前に、話の筋道が通っていない」「話せば話すほどキーワードの羅列になる」といった話を聞いている。構成員たちによるLINEのオープンチャットやTwitterを観察しても、ほぼキーワードだけの会話に終始している。

つくられた世界観に没入しすぎて現実感覚を失いやすかったり、論理的・多面的な思考が苦手で社会との関係に問題を抱えていたりする人々にとって、キーワードを拾えば世界の真実がわかるような感覚を与えてくれたのが神真都Qだった。この問題について、筆者は構成員の親族から貴重な証言を得ており、また稿を改めて紹介したいと思う。

神真都Qとはどのような集団なのかを考えるとき、一般的な陰謀論や過去のカルト集団の性格を基に考えてもうまくいかない。「エデンの村興し」がサティアンづくりに似ているとしても、オウム真理教のただの焼き直しでもない。

むしろ、俳優経験のあるイチベイを主役に据えた、観客参加型のエンターテインメント企画として神真都Qをとらえたほうがしっくりくる。陰謀論はイチベイのキャラ設定と、彼が立つステージの世界観。デモやワクチン接種の妨害といった集団での実力行使は、ファンが参加できる演出の一部。個人情報の収集や金銭欲は、アイドルグループの世界でよくある「運営の問題」ととらえればよい。ことあるごとに構成員の反応を気にしながら、「演出」を微調整する様子が垣間見えるところも、実に「芸能」的な感じがする。


この先どこまで行く気なのか

今どきの芸能界で使われる手法を、ここまで取り入れた陰謀論集団は、神真都Qが初めてではないだろうか。神真都Qの真の幹部がイチベイなのか、それとも元俳優の彼をステージに担ぎ上げた人物が別にいるのかどうかはまだわからないが、今のところこの新機軸は功を奏しているように見える。

だが、エンターテインメントとして構成員が楽しんでいるだけならともかく、神真都Qはちぐはぐな陰謀論を頼りに、「参加型」の実力行使で世界を変えようとする集団だ。彼らが活動をエスカレートさせた先に何があるのか、私たちはまだ知らない。



・反ワクチン団体「神真都Q」に潜入ジャーナリストが突撃!その正体とは(DIAMOND online 2022年6月13日)

横田増生:ジャーナリスト

ユニクロやアマゾン、ヤマト運輸に潜入したジャーナリストが、コロナ陰謀論を唱える反ワクチン団体「神真都(やまと)Q」に突撃取材を敢行!一般人には理解不能な主張をする彼らの正体とは?

※「ワクチン接種反対」を掲げ押し入り 建造物侵入の現行犯で4人が逮捕

私が「神真都(やまと)Q」を認識したのは2022年4月上旬のこと。そのメンバーが、東京都渋谷区で小児用のワクチン接種が行われていたクリニックに、「ワクチン接種反対」を掲げ押し入り、建造物侵入の現行犯で4人が逮捕されたという新聞記事を読んだときだ。神真都Qの「Q」とは、アメリカ発の陰謀論集団である「Qアノン」を意味している。

神真都Qとは、「新型コロナウイルスは存在せず、ワクチンには毒性があり、日本の人口を削減するために悪用されている」との陰謀論を主張する反ワクチン団体だ。

その基本となる考えとは、「大和民族は本来、いい宇宙人と龍神の遺伝子を受け継いでいるのだが、悪い遺伝子を持ったディープ・ステイト(闇の勢力)やイルミナティ(悪の秘密結社)による情報統制によってその能力が封印されている。光の戦士である神真都Qのメンバーが、その眠ったDNAを覚醒することで、大和民族の真の力を目覚めさせる」――というもの。

何を言っているのか見当もつかない人がほとんどかと思う。当然だろう。

オカルト界隈ではスピリチュアル系の陰謀論とみなされているが、そうした分類以上に大切なのは、彼らが外部の人間には戯言(たわごと)にしか聞こえない言葉を信じている集団である、という点だ。その神真都Qが、「“コロナのウソ”を暴く守護神」として奉るのがアメリカのドナルド・トランプ前大統領だった。3月に東京都内で行われたデモ行進では、「We are Q(われわれは、Qアノンのメンバーである)」をしきりに連呼していた。

現行犯逮捕の模様について、全国紙の社会部の記者はこう話す。

「当日は、ワクチン接種会場となった病院に約10人のメンバーが押しかけ、『治験が終わっていないワクチンを子どもに接種するのは犯罪だ』、『ワクチンの成分を開示せよ』、『院長と話をさせろ』などと騒ぎたて、ワクチン反対のビラを院内でまきました。それが午前9時過ぎのこと。その後、警察が駆け付けたのが10時頃。それでも神真都Qのメンバーは病院から出ていかず、押し問答になり、11時前後に4人が現行犯で逮捕されました。その後、神真都Qの本部や首謀者の自宅に家宅捜査が入り、関係書類やパソコン、スマホなどが押収されています」

私は千葉県にある現行犯逮捕された60代の男の家を訪ねてみた。

首謀者は二世俳優 殺人未遂罪で有罪判決を受けたことも

東京メトロ東西線の駅から歩いて10分ほどの2階建て建売住宅で、玄関には2台の自転車とカヌーボートが置いてあり、駐車場には日産自動車のミニバンが止めてあった。チャイムを押すも、返答はなし。その直後、自宅の電話番号に電話を入れると、女性の声が恐る恐るという感じで「はい?」とだけ返事があったので、取材で訪ねてきた旨を告げると、深いため息とともに、電話が切られた。

現行犯逮捕の2週間後、首謀者である「イチベイ」も逮捕・起訴された。その後、さらに3人の逮捕者を出し逮捕者は合計で8人となった。

イチベイとは岡本一兵衛を名乗る人物で、本名は倉岡宏行(43歳)。10年以上前はVシネマに出演していた二世俳優で、父親は俳優の岡崎二朗。イチベイは役者時代、映画製作会社の役員を刃物で刺し、殺人未遂罪で有罪判決を受けたこともある。

現行犯逮捕劇の直後、まだ捕まっていなかったイチベイが、現場から逃走している場面をYouTubeに投稿していた。

「緊急ライブ配信 神真都Q 代表 岡本一兵衛」と題する映像で、坊主頭のイチベイが安っぽい青のスーツを着た上に赤のネクタイを締め、襟には「Q」のバッチを付け、襲撃したクリニックから足早に立ち去りながら、周囲を警戒して話している様子がうかがえる。

「現状を説明すると、クリニックに行って、治験も通っていないチクワン(ワクチン)を打っていることと、チクワンの中身を説明してくれということでお話をさせていただきました。警察が来たので、一回ボクは外に出て、対応に回りました。そこで警察が病院の中に踏み込み、4人を警察署に連れていきました。警察は完全に違法なお縄(逮捕)を行いました。ボクらは、逮捕された仲間を返してくださいと言って、今は警察の対応を待っているところです。弁護士にも依頼して、警察に抗議をしてもらいました」

緊急ライブ配信は“敵前逃亡”? 神真都Qから離れるメンバーが続出

この動画の一番の問題点は、クリニックに押し込んだ首謀者であるイチベイが、仲間が逮捕された現場から一目散に逃げているようにしか見えないこと。首謀者の敵前逃亡だ。神真都Qに詳しい人物は、「この映像が公開されると、神真都Qから離れていくメンバーが続出した」と話す。

神真都Qが警察への抗議を依頼した弁護士とは、木原功仁哉(くにや)である。木原はこう話す。

「メンバーの逮捕の実態は報道とは違っており、建物から出ていってくれとは言われていないのに、建造物侵入に問われている。ワクチン接種阻止活動自体は“祖国防衛権”の行使なので正当防衛と考えられる。さらには神真都Qが、反ワクチン運動のスケープゴートにされていると感じている」

木原自身は神真都Qのメンバーではないが、国を相手取って新型コロナのワクチンの特例承認の取り消しなどを訴えている人物だ。また、マスクをせずに飛行機に乗ろうとして搭乗拒否された広島県呉市市議の弁護も引き受けている。反ワクチンと反マスク関連の訴訟を一手に引き受けている弁護士だ。

神真都Qの連帯を呼びかける投稿が、ネット上で出回り始めたのが21年末。それが今年に入り東京や静岡、大阪、福岡などでも反ワクチンを掲げてデモを行うようになり、世間の注目を集めるようになった。

神真都Qは逮捕される以前から、東京ドームや早稲田近辺のワクチン接種会場などでも同様の騒ぎを起こし、接種が一時中断に追い込まれる事態となっており、その頃から警視庁公安部がマークしていた。静岡県焼津市では、複数の神真都Qのメンバーが接種会場に乗り込み、主催者が会場に入らないでくれと要望するも、「お前たちは殺人罪で逮捕されるからな」「われわれは世界で子どもを救う17億人の団体だ」などと大声で叫びながら、傍若無人に会場を歩き回る姿が映像に収められている。


・「警察は爬虫類型宇宙人」反ワクチン団体・神真都Q、支離滅裂な主張の数々(DIAMOND online 2022年6月14日)

横田増生:ジャーナリスト

コロナ陰謀論と反ワクチンを唱える団体、「神真都(やまと)Q」は警察を“爬虫類型宇宙人”とみなすなど奇想天外。彼らのもう一つの特徴は、自らの正当性をアメリカ発祥の陰謀論集団「Qアノン」に求め、トランプ前大統領を信奉していることだ。ユニクロやアマゾン、ヤマト運輸に潜入したジャーナリストが、突撃取材を敢行!彼らの正体とは?(敬称略)

※「オウムの二の舞いを避けたい」思いから

公安総務課が早めに動いた

コロナ陰謀論と反ワクチンを唱える団体、「神真都Q」メンバーの逮捕は、カルトや新興宗教団体を扱う警視庁公安部公安総務課が指揮を執った。1990年代にオウム真理教の事件を捜査・逮捕したのも、この公安総務課だった。

全国紙の記者がこう解説する。

「公安部の捜査対象は、以前では暴力団に加え、極左や極右の集団が中心でしたが、昨今はカルト集団や外国人による国際テロ集団などに重点が移行してきました。公安部ではオウムの二の舞いを避けたいという思いから、部内でも精鋭が集まる公安総務課が早めに動いたのでしょう。神真都Qを、国家公安を害する陰謀論集団だと認識し、そうした陰謀論に染まる人たちはいつテロ行為に走るのか分からないので、事前に芽を摘みたいという考えがあるのでは」

神真都Qにとどまるメンバーの一人はこう話す。

Qアノンの「正式な日本支部」?

トランプ前大統領への賛辞も

「コロナのワクチンを接種した直後に1600人以上が亡くなっている。厚労省はワクチンと死亡に因果関係はないと主張しているが、それはウソだ。コロナウイルスが存在するかも証明されていないのに、そのワクチンを打って人が死ぬなんて本末転倒もいいところ。自分で情報を判断できる大人はまだいいとしても、子どもには絶対にワクチンを打つべきじゃない」

「病院での仲間の逮捕は不当逮捕で、断固として反対する。相手が公安部だろうが、警察自体がディープ・ステイト(闇の勢力)の一員なのだから怖くない」

神真都Qでは、警察のことを“爬虫類型宇宙人”(悪い宇宙人を指す)であり、「ゴムマスクで人間に化けているので、松脂で退治できる」と教えている。実際、都内のファミレスでマスクを着けずにミーティングをしていた神真都Qのメンバーが、店側から警察を呼ばれたとき、メンバーが警官に向かって市販の松脂を差し出したこともある(もちろん、駆け付けた警察が松脂に退治されることはなかった)。

神真都Qはただの反ワクチン集団というだけにとどまらず、自らの正当性をアメリカ発祥の陰謀論集団である「Qアノン」とのつながりに求めている。それを知って私は驚き、興味を抱いた。

というのも私は2020年のアメリカ大統領選挙を1年にわたり潜入取材し、その過程で数えきれないほどのウソや陰謀論に出合った。Qアノンの信者にも話を聞いたことがある。しかし、そうした経験を踏まえても、神真都Qはあまりにも奇天烈に映った。

神真都Qのホームページを見ると、Qアノンの「正式な日本支部」であり、そのQアノンが信奉するドナルド・トランプ前大統領への賛辞も書き込まれていた。さらにネット上を調べると、彼らは、「私たちはトランプ大統領から承認された世界で17億人いるQです!」と主張している。メンバーのSNSには、「トランプが神真都Qを『大和魂を持った恐れを知らない戦士だ』と褒め称えている」というトランプが書いたとされる英文メッセージのスクリーンショットが掲載されている。

Qアノンとはネット上の勝手連的な集まり

トランプが神真都Qを承認することはあり得ない

アメリカにおけるQアノンとは、民主党政権などの政府高官に悪魔崇拝者や小児性愛者がおり、人身売買を行っている闇の勢力があると認識し、それらに立ち向かって戦うのがドナルド・トランプであると信じる陰謀論集団を指す。「Q」という謎の人物が発信するメッセージに、匿名(アノニマス)の信者たちが答えを探して書き込むことで“真実”に近づくという仕組みになっている。

これを踏まえて、神真都Qの主張に関する事実関係を簡単に確認しておこう。

トランプはこれまでQアノンを承認したことはない。Qアノンとはネット上の勝手連的な集まりにすぎない。トランプのツイッターの投稿を検索しても、Qアノンに言及したことがないのが分かる。そのトランプが神真都Qを承認することはあり得ない。さらに、Qアノンには本部さえ存在しないのに、神真都Qがその日本支部であることはあり得ない。

Qアノンの信奉者は、多く見積もってもアメリカ国内で数千万人程度といわれており、神真都Qが挙げる「世界で17億人いる」という数字は、事実とは大きくかけ離れている。ローマカトリック教会の信者数が13億人であることを考えると、その数字がいかにばかげているのかが分かる。

さらに、反ワクチンの首魁として仰ぐトランプ自身は、新型コロナのワクチンを3回接種しており、そのことを公に認めたとき、自分の支持者からでさえブーイングを浴びている。

ワクチンを積極的に接種しているトランプを、反ワクチンの象徴とすることに違和感はないのだろうか。

神真都Qに詳しい人物はこう解説する。

「彼らはトランプがワクチンを接種していても一向に平気なのです。なぜなら、彼らの中ではトランプは2人存在していて、いいトランプと、悪いトランプがいる。ワクチンを打っているのは悪いトランプで、偽物であり、本物のトランプはワクチンを打っていない、と主張するのです」

「以前のバイデンとは

全く別人が入れ替わっている」

神真都Qのメンバーは、トランプについてこう話す。

「私はアメリカ大統領選挙を追っていくうちに、大規模な不正選挙が行われていることを確信しました。選挙当日は、トランプさんが各州の開票でリードしていたのに、翌朝起きてみるとバイデンが逆転しました。一晩の間に、“バイデン・ジャンプ”と呼ばれる不正が行われました」

「ミシガン州では集計機システムによる票の書き換えがあり、ペンシルバニア州では投票所の内部が見えないように細工され、郵便投票を悪用して亡くなった人が投票した例もありました」

「それに、今のバイデンは、以前のバイデンとは全く別人が入れ替わっているんですよ。目の色や利き手も違っていますし、署名も以前とは全然違います。同一人物でそんなことがあり得ますか」

これらはすべてウソである。20年の選挙で不正があったという主張になんら根拠がないことは、トランプ側が起こした裁判が敗訴となったことで証明済みだし、集計機による票の改ざんも郵便投票による死者の不正投票も行われていない。バイデンが別人によって入れ替わったという話も、まともに取り合える話ではない。



・反ワクチン「神真都Q会」代表理事 生活保護詐欺初公判で無罪主張(毎日新聞 2023年3月17日)

※新型コロナウイルスの反ワクチン団体「一般社団法人神真都(やまと)Q会」への寄付金で収入を得ながら生活保護を不正受給したとして、詐欺罪に問われた同会代表理事の村井大介被告(53)=静岡県掛川市=の初公判が17日、大阪地裁(御山真理子裁判長)で開かれた。村井被告は起訴内容の認否を留保したが、弁護側は無罪を主張した。

起訴内容は2022年4~7月、団体への寄付金の一部を収入としていたのに申告せず、大阪市此花区役所から生活保護費計約51万円をだまし取ったとしている。

大阪府警などによると、神真都Q会は「コロナウイルスは存在しない」などと主張し、各地でワクチン接種の中止を求めるデモを展開。ホームぺージで寄付を募り、村井被告名義の銀行口座に22年2月から約5カ月間で1044回、計約7200万円が入金されていた。

村井被告は大阪市此花区で生活保護を受給していたが、4月に転出届を出さずに堺市内に転居。この頃に口座から約403万円を引き出していたことが確認され、収入と判断された。引き出し金の一部は新居の電化製品などの購入に充てていたとされる。