・84億円投じた吉村知事肝いりの大規模医療・療養センターはガラガラ「寒すぎて、失敗」と療養者(AERA dot. 2022年3月10日)

(上)「インテックス大阪」にある大阪コロナ大規模医療・療養センター
※「野戦病院はとにかく寒かった、こういうものだったんだと思い知った。療養する場所じゃないですね」
こう話すのは、大阪府内在住の30歳代の男性Aさんだ。
「野戦病院」と語るのは、大阪府が吉村洋文知事の肝いりで84億円をかけて国際展示場「インテックス大阪」を改装し、開設した新型コロナウイルス感染者向けの大阪コロナ大規模医療・療養センター(以下センター)のこと。
無症状・軽症患者用800床、中等症患者用200床、合計1000床で病床ひっ迫といわれる大阪府にとって「救いの神」となるはずだった。
そして無症状・軽症患者用は1月31日、2月15日に中等症患者用が開設された。2月4日にはじめて1人の入所があったが、翌日には宿泊療養でホテルに移動。その後、2週間は0という日が続き、3週間経過してようやく18人。3月7日までにセンターを利用した患者数、累計はたった133人だ。
冒頭に語ってくれたAさんは、軽症で2月下旬に入所した。センターの1日は、朝7時くらいになると起床のアナウンス。その後、スマートフォンにダウンロードされた、厚生労働省の新型コロナウイルス感染者等情報把握・管理システム「HER-SYS(ハーシス)」に体温などを入力するように求められる。
それが終わると、自分で朝食を取りに行く。その後、看護師から連絡が入り、体調などを聞かれて、昼食。午後は洗濯など自由時間で、6時頃に夕食という。部屋は広い展示場をオフィスなどで使われるパーテーションで区切り、ベッドと小さなテーブルがある。
「食事はスタッフに聞いたら『AERAdot.の記事の反響が大きく、今はメニューがよくなった』と言ってました。私が入所していた時は、1食900円に満たない中身の弁当ばかりでした。部屋はよくある病院の個室で最低限のものはあります。しかし、天井が吹き抜け、床は薄いカーペットがあるだけで、いくら着こんでも足元から冷えてきた。共同のシャワーがありますが、寒いので昼に入っていたが、それでも寒かった。トイレもインテックス大阪でも共同で利用しているもの。咳や話し声も響き、プライバシーもあまり確保されていない。自由時間にフリースペースで親しくなった人と話していると寒さが話題になった。その人は分厚い靴下など重装備をしていた。府が配布しているセンターのしおりに分厚い靴下を用意するように載っていたんですよ」(Aさん)
AERAdot.が入手したしおりには入所時に必要な衣類として、<温度調整可能なもの推奨。セーター、タイツ、厚手の靴下等も忘れず館内は寒いので着替えも持参><救急車で来る場合は外出用の服と下足も><カイロ 防寒用>と記されていた。
府が「寒い」と認めている「野戦病院」でコロナ患者を療養させていることになる。
「入所時にセンターの中は撮影するなという書類にサインさせられる。野戦病院がいかにひどいか、SNSとかに出されるのが嫌なのでしょうね。一度、写真を撮ろうしたら、ダメですとスタッフから止められたこともある。患者さんが少ないので、ガラガラ。スタッフも暇そうです」(Aさん)
岸田文雄首相は感染拡大に対応するため、東京都と大阪府に臨時医療施設として計1000床ほど増やすと2月に表明した。大阪府には350床を追加、そのうち200床はセンターの病床があてられている。要するに、1000床のうち200床は、国の支援があって運用できているということだ。
「吉村知事がセンターの開設を打ち出し、候補がいくつかあがった。吉村知事が『野戦病院』とこだわり、強烈にアピールできる場所として、病院ではなく、インパクトがあるという理由でインテックス大阪となりました。センターは200床が国の支援となっているが、それすら埋まりません。国際展示場なので床はコンクリート、天井は高い。案の定、療養者が『寒い』を連発し、場所も大阪市内の中心部からは遠いので敬遠されています。正直、失敗ですよ」(大阪府幹部)
それに対し、吉村知事は記者会見で「入院の必要性が高い方もいれば、そうじゃない方もいらっしゃる。センター等で受け入れて支援するということをやっていく」と大規模医療・療養センターの活用を訴えた。
2月中旬からセンターへの入所対象の年齢を40歳未満から60歳未満に引き上げた。だが、府が新規感染者のために開設した、電話で宿泊療養などを調整する「自宅待機SOS」関係者はこう訴える。
「SOSで問い合わせを受けている限り、センターを希望される人はまずいませんね。大阪府は60歳未満までセンターに入れるとしているが、SOSには、今も対象は『原則40歳未満でセンターでの療養を希望する軽症・無症状の者』と通知が来ています」。
大阪府に見解を聞いた。
「センターの候補地ですが、1000人規模ということ、吉村知事の意向もありインテックス大阪に白羽の矢が立った。確かにしおりにはセンターで寒さをしのぐ記述があります。館内は22度に保っており、床にも絨毯が敷かれており問題がないと思う。療養者の寒いという声があるなら対応したい。利用の割合が低いのは、宿泊療養のホテルも利用率が20%台とかなり空きがあるからだと思われます」
大阪府は3月21日までまん延防止等重点措置が延長されたが、新規感染者はいま、減少傾向となっている。
また、センターは身の回りのことは自分でできる自立型の施設。オミクロン株は若年層の重症化する割合が低いこともあり、入所者が増える可能性はこの先、あまりないとみられる。センターに投じられた税金84億円はどうなるのだろうか。
・吉村知事は大誤算…肝いり臨時医療施設はごっつい不人気 稼働800床で利用者たった3人(日刊ゲンダイDIGITAL 2022年2月16日)
ベッドに横たわるパフォーマンスも披露したが…(大阪の吉村洋文府知事)
※重症病床使用率が緊急事態宣言の要請基準(40%)に近づき、医療が逼迫する大阪府。その一方で、吉村知事肝いりの臨時医療施設「大阪コロナ大規模医療・療養センター」は想定外の不人気ぶりだ。
「国民の身を切る改革」で焼け太り ひたすらカネに汚い維新の手口
■事業総予算は84億円!
国内最大全1000床のうち、先月末から40歳未満で軽症患者用の800床が稼働中だが、これまでの累計利用者はたった3人。事業の総予算は約84億円、1カ月あたりの運用コストは最大2億4000万円もかかるのに、これでは無用の長物となりかねない。
昨年の「第4、5波」で入院できずに自宅療養者が死亡した事例が相次いだのを受け、吉村知事が「大阪で野戦病院をつくる」と表明したのは同年8月末のこと。10月に大阪市住之江区の国際展示場「インテックス大阪」に臨時医療施設が整備されると、吉村知事は早速、現地を視察し、ベッドの寝心地を確認。「快適に過ごせる。自宅で不安に過ごすより安心感がある」と例のドヤ顔でアピールしたが、寂しい現状ではだだっ広い空間でポツンと過ごす入所者はさぞかし不安を募らせているのではないか。
交通の便は良くない立地だが、入所希望者には府が搬送専用のタクシーを手配する。パーティションで区切られた個室のほか、幼い子供と一緒に過ごせる家族向けの部屋も用意。全室にテレビと冷蔵庫を完備し、共用部には洗濯機や畳敷きのくつろぎスペースもある。食事は3食分の弁当が提供され、シャワーやトイレは共用だ。
なぜ誰も寄り付かない?

(上)立派な施設なのにたったの3床…(大阪コロナ大規模医療・療養センター)
医療従事者も決して不足していない。現在は計27人の看護師が交代制で日勤10人、夜勤4人が常駐。常勤医師は1人で、24時間のオンライン診療にも応じる。手厚いサポートが期待できそうだが、なぜ誰も寄り付かないのか。府の見解はこうだ。
「まだ府内の宿泊療養施設に空きがあり、若い軽症患者はホテル療養を希望する傾向にある。また、オミクロン株は感染力が非常に強く、家庭内で1人が感染すると、療養施設に移る前に他の家族がほぼ全員、感染してしまう。このケースだと大体、皆さんが自宅療養を選ぶ。デルタ株による感染拡大状況との違いから、想定より利用者は少ないのが現状です」(危機管理室災害対策課)
残る中等症患者用の200床は15日にも稼働、年齢不問で高齢者も受け入れる。肝いり施設の不発に吉村知事は「何らかの受け皿として活用する」と、まだイキっているが、ごっつい不人気は解消されるのか。
・吉村知事が公務復帰 濃厚接触者の隔離廃止を国に要望へ(産経新聞 2022年4月25日)
※新型コロナウイルス感染者の濃厚接触者として18日から自宅待機していた大阪府の吉村洋文知事は25日、1週間ぶりに府庁に登庁して公務に復帰した。無症状の濃厚接触者を一定期間、隔離する現行措置について「人によっては収入を失い、学生は学習機会を失う。デメリットの方が大きい」と主張し、隔離措置の廃止を国に要望する考えを示した。
無症状の濃厚接触者は原則、感染者との最終接触の翌日から7日間の自宅待機が求められる。期間中に2日連続で陰性を確認できれば、早くて5日目から待機が解除される。
吉村氏は感染拡大を防ぐための隔離措置について、待機中の簡易検査による定期的な陰性証明のほか、社会活動を仕事や通学など必要最小限の範囲にとどめることで「代替できる」とした。
吉村氏は18日に同居家族の感染が判明し、自宅待機となった。22、23両日の抗原検査でいずれも陰性だったため25日に登庁。23日に自身のツイッターで「濃厚接触者の社会からの隔離制度は廃止」すべきだと発信していた。
・60億円かけ設置のコロナ臨時施設、利用303人のみで閉鎖…「軌道修正できなかった」(読売新聞 2022年5月29日)

(上)5月末で閉鎖される大阪コロナ大規模医療・療養センター
※大阪府が新型コロナウイルス対策で開設した国内最大の臨時医療施設「大阪コロナ大規模医療・療養センター」(大阪市住之江区)が、5月末で閉鎖される。約60億円をかけて1000床を運用したが、利用者は1日最大70人、累計でも約300人にとどまった。変異株「オミクロン株」は重症化しにくく、利用を想定していた若い世代の多くが自宅にとどまるという誤算があった。

吉村洋文知事がセンターの開設を表明したのは、感染が拡大していた昨年8月下旬。当時は30~50歳代が自宅療養中に死亡する事例が全国で相次いでおり、若い世代に医療の目が届く受け皿を提供する狙いだった。
大阪・南港の大型展示場「インテックス大阪」に、無症状・軽症用800床と中等症用200床を整備。人の移動が活発になる年度替わりの感染拡大に備え、会場は5月末まで押さえた。
今年に入り、オミクロン株の流行で感染者が急増。1月24日には病床使用率が50%を超えたため、同31日から運用を始めた。
対象は原則40歳未満の自宅療養者に限定。保健所が入所を決めるのではなく、希望者が府のコールセンターに申し込む仕組みだった。
しかし、蓋を開けてみれば、利用者はゼロか1桁が続いた。2月15日からは、無症状・軽症用の対象を60歳未満に引き上げたが、1日のピークは3月10日の70人で、受け入れ最終日の4月30日までの3か月の累計でも303人となった。

なぜ利用が低調だったのか。府幹部は「新たな株の特性を予想できず、ニーズに応じた軌道修正もできなかった」と振り返る。
府の分析では、デルタ株が猛威を振るった「第5波」(昨年6月21日~12月16日)の重症化率は1%だったが、オミクロン株が流行した「第6波」(昨年12月17日~)では0・12%に激減。このため、感染しても自宅にとどまった人がほとんどだったとみられる。
府内の自宅療養者は3万人余りだったセンター開設時から増え続け、ピークの2月16日には7万5805人となった。宿泊療養用ホテルの利用も低調だった。
センターでは、消灯時間が決まっているなど生活上の制約を受けることも、敬遠された一因とみられる。
第6波では高齢者施設でクラスター(感染集団)が多発するなど、むしろ高齢者対策が課題になった。府はセンターで高齢者を受け入れることを模索したが、介護スタッフの確保や施設の段差を解消するための改修費がネックになり、断念したという。
府が施設の運営を委託した事業者が確保した医師は1日最大4人、看護師は1日最大35人。施設の賃料30億円や人件費など経費は計57億円に上る。
関西大の高鳥毛敏雄教授(公衆衛生学)の話「変異株の性質を予想するのは難しく、結果的に施設の使用率が低かったことはやむを得ない面がある。ただ、公金を投入する以上、施設はできるだけ活用されるべきだ。対象者や場所を慎重に選定し、開設後も感染状況を常に確認しながら、想定外の事態が起きれば柔軟に軌道修正する姿勢が求められる」
■第7波では高齢者専用目指す
府が次の第7波に備えて開設を目指すのが、介護が必要な高齢者専用の臨時医療施設だ。
大阪市住之江区の新築の福祉施設1棟を借り上げて約40床を用意し、寝たきりなど「要介護3」以上で、中等症1程度までの在宅の高齢者を受け入れる。医師や看護師のほか、介護福祉士や理学療法士を配置し、治療と同時に介護やリハビリを受けられるようにする。7月から来年3月まで開設し、費用は20億円と見込む。
第6波では、入院患者の67%を70歳以上が占め、第5波の14%から急増。高齢者が病床の逼迫(ひっぱく)で入院できなかったケースも多く、府は高齢者の受け皿が必要だとみる。
介護人材の確保が課題となるが、施設の運営を担う医療法人は、系列の社会福祉法人が高齢者施設も運営しており、スタッフをそろえるノウハウがあるという。吉村知事は「自宅で寝たきりで入院もできず、行き場のない高齢者を守りたい」と語る。
◆臨時医療施設=医療機関が不足した場合、知事が改正新型インフルエンザ対策特別措置法に基づいて開設する。費用は全額、国から支給される。厚生労働省によると、病床数でみた場合のピークは2月23日で、18都道府県が53施設計3265床を開設していた。

(上)「インテックス大阪」にある大阪コロナ大規模医療・療養センター
※「野戦病院はとにかく寒かった、こういうものだったんだと思い知った。療養する場所じゃないですね」
こう話すのは、大阪府内在住の30歳代の男性Aさんだ。
「野戦病院」と語るのは、大阪府が吉村洋文知事の肝いりで84億円をかけて国際展示場「インテックス大阪」を改装し、開設した新型コロナウイルス感染者向けの大阪コロナ大規模医療・療養センター(以下センター)のこと。
無症状・軽症患者用800床、中等症患者用200床、合計1000床で病床ひっ迫といわれる大阪府にとって「救いの神」となるはずだった。
そして無症状・軽症患者用は1月31日、2月15日に中等症患者用が開設された。2月4日にはじめて1人の入所があったが、翌日には宿泊療養でホテルに移動。その後、2週間は0という日が続き、3週間経過してようやく18人。3月7日までにセンターを利用した患者数、累計はたった133人だ。
冒頭に語ってくれたAさんは、軽症で2月下旬に入所した。センターの1日は、朝7時くらいになると起床のアナウンス。その後、スマートフォンにダウンロードされた、厚生労働省の新型コロナウイルス感染者等情報把握・管理システム「HER-SYS(ハーシス)」に体温などを入力するように求められる。
それが終わると、自分で朝食を取りに行く。その後、看護師から連絡が入り、体調などを聞かれて、昼食。午後は洗濯など自由時間で、6時頃に夕食という。部屋は広い展示場をオフィスなどで使われるパーテーションで区切り、ベッドと小さなテーブルがある。
「食事はスタッフに聞いたら『AERAdot.の記事の反響が大きく、今はメニューがよくなった』と言ってました。私が入所していた時は、1食900円に満たない中身の弁当ばかりでした。部屋はよくある病院の個室で最低限のものはあります。しかし、天井が吹き抜け、床は薄いカーペットがあるだけで、いくら着こんでも足元から冷えてきた。共同のシャワーがありますが、寒いので昼に入っていたが、それでも寒かった。トイレもインテックス大阪でも共同で利用しているもの。咳や話し声も響き、プライバシーもあまり確保されていない。自由時間にフリースペースで親しくなった人と話していると寒さが話題になった。その人は分厚い靴下など重装備をしていた。府が配布しているセンターのしおりに分厚い靴下を用意するように載っていたんですよ」(Aさん)
AERAdot.が入手したしおりには入所時に必要な衣類として、<温度調整可能なもの推奨。セーター、タイツ、厚手の靴下等も忘れず館内は寒いので着替えも持参><救急車で来る場合は外出用の服と下足も><カイロ 防寒用>と記されていた。
府が「寒い」と認めている「野戦病院」でコロナ患者を療養させていることになる。
「入所時にセンターの中は撮影するなという書類にサインさせられる。野戦病院がいかにひどいか、SNSとかに出されるのが嫌なのでしょうね。一度、写真を撮ろうしたら、ダメですとスタッフから止められたこともある。患者さんが少ないので、ガラガラ。スタッフも暇そうです」(Aさん)
岸田文雄首相は感染拡大に対応するため、東京都と大阪府に臨時医療施設として計1000床ほど増やすと2月に表明した。大阪府には350床を追加、そのうち200床はセンターの病床があてられている。要するに、1000床のうち200床は、国の支援があって運用できているということだ。
「吉村知事がセンターの開設を打ち出し、候補がいくつかあがった。吉村知事が『野戦病院』とこだわり、強烈にアピールできる場所として、病院ではなく、インパクトがあるという理由でインテックス大阪となりました。センターは200床が国の支援となっているが、それすら埋まりません。国際展示場なので床はコンクリート、天井は高い。案の定、療養者が『寒い』を連発し、場所も大阪市内の中心部からは遠いので敬遠されています。正直、失敗ですよ」(大阪府幹部)
それに対し、吉村知事は記者会見で「入院の必要性が高い方もいれば、そうじゃない方もいらっしゃる。センター等で受け入れて支援するということをやっていく」と大規模医療・療養センターの活用を訴えた。
2月中旬からセンターへの入所対象の年齢を40歳未満から60歳未満に引き上げた。だが、府が新規感染者のために開設した、電話で宿泊療養などを調整する「自宅待機SOS」関係者はこう訴える。
「SOSで問い合わせを受けている限り、センターを希望される人はまずいませんね。大阪府は60歳未満までセンターに入れるとしているが、SOSには、今も対象は『原則40歳未満でセンターでの療養を希望する軽症・無症状の者』と通知が来ています」。
大阪府に見解を聞いた。
「センターの候補地ですが、1000人規模ということ、吉村知事の意向もありインテックス大阪に白羽の矢が立った。確かにしおりにはセンターで寒さをしのぐ記述があります。館内は22度に保っており、床にも絨毯が敷かれており問題がないと思う。療養者の寒いという声があるなら対応したい。利用の割合が低いのは、宿泊療養のホテルも利用率が20%台とかなり空きがあるからだと思われます」
大阪府は3月21日までまん延防止等重点措置が延長されたが、新規感染者はいま、減少傾向となっている。
また、センターは身の回りのことは自分でできる自立型の施設。オミクロン株は若年層の重症化する割合が低いこともあり、入所者が増える可能性はこの先、あまりないとみられる。センターに投じられた税金84億円はどうなるのだろうか。
・吉村知事は大誤算…肝いり臨時医療施設はごっつい不人気 稼働800床で利用者たった3人(日刊ゲンダイDIGITAL 2022年2月16日)
ベッドに横たわるパフォーマンスも披露したが…(大阪の吉村洋文府知事)
※重症病床使用率が緊急事態宣言の要請基準(40%)に近づき、医療が逼迫する大阪府。その一方で、吉村知事肝いりの臨時医療施設「大阪コロナ大規模医療・療養センター」は想定外の不人気ぶりだ。
「国民の身を切る改革」で焼け太り ひたすらカネに汚い維新の手口
■事業総予算は84億円!
国内最大全1000床のうち、先月末から40歳未満で軽症患者用の800床が稼働中だが、これまでの累計利用者はたった3人。事業の総予算は約84億円、1カ月あたりの運用コストは最大2億4000万円もかかるのに、これでは無用の長物となりかねない。
昨年の「第4、5波」で入院できずに自宅療養者が死亡した事例が相次いだのを受け、吉村知事が「大阪で野戦病院をつくる」と表明したのは同年8月末のこと。10月に大阪市住之江区の国際展示場「インテックス大阪」に臨時医療施設が整備されると、吉村知事は早速、現地を視察し、ベッドの寝心地を確認。「快適に過ごせる。自宅で不安に過ごすより安心感がある」と例のドヤ顔でアピールしたが、寂しい現状ではだだっ広い空間でポツンと過ごす入所者はさぞかし不安を募らせているのではないか。
交通の便は良くない立地だが、入所希望者には府が搬送専用のタクシーを手配する。パーティションで区切られた個室のほか、幼い子供と一緒に過ごせる家族向けの部屋も用意。全室にテレビと冷蔵庫を完備し、共用部には洗濯機や畳敷きのくつろぎスペースもある。食事は3食分の弁当が提供され、シャワーやトイレは共用だ。
なぜ誰も寄り付かない?

(上)立派な施設なのにたったの3床…(大阪コロナ大規模医療・療養センター)
医療従事者も決して不足していない。現在は計27人の看護師が交代制で日勤10人、夜勤4人が常駐。常勤医師は1人で、24時間のオンライン診療にも応じる。手厚いサポートが期待できそうだが、なぜ誰も寄り付かないのか。府の見解はこうだ。
「まだ府内の宿泊療養施設に空きがあり、若い軽症患者はホテル療養を希望する傾向にある。また、オミクロン株は感染力が非常に強く、家庭内で1人が感染すると、療養施設に移る前に他の家族がほぼ全員、感染してしまう。このケースだと大体、皆さんが自宅療養を選ぶ。デルタ株による感染拡大状況との違いから、想定より利用者は少ないのが現状です」(危機管理室災害対策課)
残る中等症患者用の200床は15日にも稼働、年齢不問で高齢者も受け入れる。肝いり施設の不発に吉村知事は「何らかの受け皿として活用する」と、まだイキっているが、ごっつい不人気は解消されるのか。
・吉村知事が公務復帰 濃厚接触者の隔離廃止を国に要望へ(産経新聞 2022年4月25日)
※新型コロナウイルス感染者の濃厚接触者として18日から自宅待機していた大阪府の吉村洋文知事は25日、1週間ぶりに府庁に登庁して公務に復帰した。無症状の濃厚接触者を一定期間、隔離する現行措置について「人によっては収入を失い、学生は学習機会を失う。デメリットの方が大きい」と主張し、隔離措置の廃止を国に要望する考えを示した。
無症状の濃厚接触者は原則、感染者との最終接触の翌日から7日間の自宅待機が求められる。期間中に2日連続で陰性を確認できれば、早くて5日目から待機が解除される。
吉村氏は感染拡大を防ぐための隔離措置について、待機中の簡易検査による定期的な陰性証明のほか、社会活動を仕事や通学など必要最小限の範囲にとどめることで「代替できる」とした。
吉村氏は18日に同居家族の感染が判明し、自宅待機となった。22、23両日の抗原検査でいずれも陰性だったため25日に登庁。23日に自身のツイッターで「濃厚接触者の社会からの隔離制度は廃止」すべきだと発信していた。
・60億円かけ設置のコロナ臨時施設、利用303人のみで閉鎖…「軌道修正できなかった」(読売新聞 2022年5月29日)

(上)5月末で閉鎖される大阪コロナ大規模医療・療養センター
※大阪府が新型コロナウイルス対策で開設した国内最大の臨時医療施設「大阪コロナ大規模医療・療養センター」(大阪市住之江区)が、5月末で閉鎖される。約60億円をかけて1000床を運用したが、利用者は1日最大70人、累計でも約300人にとどまった。変異株「オミクロン株」は重症化しにくく、利用を想定していた若い世代の多くが自宅にとどまるという誤算があった。

吉村洋文知事がセンターの開設を表明したのは、感染が拡大していた昨年8月下旬。当時は30~50歳代が自宅療養中に死亡する事例が全国で相次いでおり、若い世代に医療の目が届く受け皿を提供する狙いだった。
大阪・南港の大型展示場「インテックス大阪」に、無症状・軽症用800床と中等症用200床を整備。人の移動が活発になる年度替わりの感染拡大に備え、会場は5月末まで押さえた。
今年に入り、オミクロン株の流行で感染者が急増。1月24日には病床使用率が50%を超えたため、同31日から運用を始めた。
対象は原則40歳未満の自宅療養者に限定。保健所が入所を決めるのではなく、希望者が府のコールセンターに申し込む仕組みだった。
しかし、蓋を開けてみれば、利用者はゼロか1桁が続いた。2月15日からは、無症状・軽症用の対象を60歳未満に引き上げたが、1日のピークは3月10日の70人で、受け入れ最終日の4月30日までの3か月の累計でも303人となった。

なぜ利用が低調だったのか。府幹部は「新たな株の特性を予想できず、ニーズに応じた軌道修正もできなかった」と振り返る。
府の分析では、デルタ株が猛威を振るった「第5波」(昨年6月21日~12月16日)の重症化率は1%だったが、オミクロン株が流行した「第6波」(昨年12月17日~)では0・12%に激減。このため、感染しても自宅にとどまった人がほとんどだったとみられる。
府内の自宅療養者は3万人余りだったセンター開設時から増え続け、ピークの2月16日には7万5805人となった。宿泊療養用ホテルの利用も低調だった。
センターでは、消灯時間が決まっているなど生活上の制約を受けることも、敬遠された一因とみられる。
第6波では高齢者施設でクラスター(感染集団)が多発するなど、むしろ高齢者対策が課題になった。府はセンターで高齢者を受け入れることを模索したが、介護スタッフの確保や施設の段差を解消するための改修費がネックになり、断念したという。
府が施設の運営を委託した事業者が確保した医師は1日最大4人、看護師は1日最大35人。施設の賃料30億円や人件費など経費は計57億円に上る。
関西大の高鳥毛敏雄教授(公衆衛生学)の話「変異株の性質を予想するのは難しく、結果的に施設の使用率が低かったことはやむを得ない面がある。ただ、公金を投入する以上、施設はできるだけ活用されるべきだ。対象者や場所を慎重に選定し、開設後も感染状況を常に確認しながら、想定外の事態が起きれば柔軟に軌道修正する姿勢が求められる」
■第7波では高齢者専用目指す
府が次の第7波に備えて開設を目指すのが、介護が必要な高齢者専用の臨時医療施設だ。
大阪市住之江区の新築の福祉施設1棟を借り上げて約40床を用意し、寝たきりなど「要介護3」以上で、中等症1程度までの在宅の高齢者を受け入れる。医師や看護師のほか、介護福祉士や理学療法士を配置し、治療と同時に介護やリハビリを受けられるようにする。7月から来年3月まで開設し、費用は20億円と見込む。
第6波では、入院患者の67%を70歳以上が占め、第5波の14%から急増。高齢者が病床の逼迫(ひっぱく)で入院できなかったケースも多く、府は高齢者の受け皿が必要だとみる。
介護人材の確保が課題となるが、施設の運営を担う医療法人は、系列の社会福祉法人が高齢者施設も運営しており、スタッフをそろえるノウハウがあるという。吉村知事は「自宅で寝たきりで入院もできず、行き場のない高齢者を守りたい」と語る。
◆臨時医療施設=医療機関が不足した場合、知事が改正新型インフルエンザ対策特別措置法に基づいて開設する。費用は全額、国から支給される。厚生労働省によると、病床数でみた場合のピークは2月23日で、18都道府県が53施設計3265床を開設していた。