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・「宇宙開発は愚か」 ガンダム生みの親、富野由悠季さん(毎日新聞 2022年3月8日)

※人気アニメ「機動戦士ガンダム」シリーズの生みの親、アニメーション監督の富野由悠季氏(80)が、毎日新聞などのインタビューに応じた。2021年に傘寿を迎えた巨匠の言葉に、今こそ耳を傾けたい。


ガンダムは、人類が宇宙進出する時代を描いている。宇宙に建設した植民地(スペースコロニー)が地球連邦に独立戦争を挑み、兵器としてのロボットを操るパイロットたちが巻き込まれていく物語だ。
 
大事にしているのは、30年以上前に手に入れたリトグラフ。印象派の画家、ゴッホの油彩画「夜のカフェテラス」を立体的に再現する技術で描かれたものだ。

「細密画ではないが、見続けている。毛穴まで再現するようなスーパーリアリズムがいいわけがない。そんな絵が高額で売れるのは金が余っている連中の税金対策でしょ。成り上がった連中がお金をあぶくのように使って宇宙進出やロケットの打ち上げをして、どれだけ環境汚染をしているのかわかっていない」

宇宙では絶対生活できない
 
日本でも米国でもIT長者が宇宙を目指す現状に憤り、「地球で150億の人類が暮らせるとは思わない。ガンダムの(登場人物)ギレン・ザビは『人口を減らせ』と言っている。このままでは地球が100年持つかどうかわからない。温暖化という言葉だけでは通用しない。どうしたらいいか考える時代に来ていると思う。人が生きているだけで酸素を使い、二酸化炭素を出すのだから、物理的に小さくなれば住めるだろうが」と続けた。恐竜が小型化して鳥類になったように人も、という提案だ。

環境論にたどりついたのは、アニメで宇宙進出を描き、考えてきたからこそだろう。「宇宙で生活するには全部を人工物でつくらなければならない。人の暮らしにいちばん大事なのは食糧、水、空気。宇宙では絶対に生活できないと結論は出ている」

米国のアポロ11号計画で、人類史上初めてニール・アームストロング船長が月面着陸したのは1969年。53年も前のことだ。生活できるか否かという点では、何も進んでいない。「それなのに科学者や政治家や研究者が宇宙開発を言うのは愚かだ。50年代の『宇宙進出で未来が開ける』という頭しかないらしいが、それは空想。月までの38万キロの距離がどれだけとんでもないものか。『地球が温暖化したら、火星あたりに移民を』と話す人がいるけれど、火星は月よりももっと遠いの。そういうことを想像しないで宇宙開発と言っている」と疑問を呈する。

地球をいかに永続させられるかが一番大事
 
むしろ注目すべきは地球だという。「地球には空気と水と土地があって、植物が生えてくれている。この環境をいかに穏やかにコントロールし、永続させるのか、それを管理することが実は一番大事です。毎日安全に食べられることでどれだけ人が安心し、病気にもならずに済んでいるのかということをそろそろ本気で考えた方がいい。戦争なんてしているヒマはない。一体、何なのか。オリンピックだって世界は平和みたいなことを言って、メディアだってもっとたたかなくちゃいけない」と矛先はマスコミにも向き、ボルテージはどんどん上がった。


とみの・よしゆき
 
アニメーション監督、作家。1941年、神奈川県小田原市生まれ。日本大学芸術学部卒業後、手塚治虫の「虫プロダクション」で「鉄腕アトム」の制作に携わる。代表作は「機動戦士ガンダム」などガンダムシリーズ。アニメツーリズム協会長も務める。2021年に文化功労者に選ばれた。