・埼玉・立てこもり 医師ら7人呼び出し犯行(日テレNEWS 2022年1月28日)

※埼玉県ふじみ野市の住宅で、住民の男が医師の男性を人質に立てこもり、人質となった男性が撃たれて死亡した事件で、男が理由をつけて呼び出したため、医師ら7人が住宅を訪問していたことがわかりました。

この事件は、現場の住宅に住む渡辺宏容疑者(66)が散弾銃を持って立てこもり、医師の鈴木純一さん(44)が人質にとられ、撃たれたものです。

渡辺容疑者は27日午後9時頃、自宅を訪れた鈴木さんに対し、散弾銃を発射して殺害しようとした疑いが持たれています。

その後の警察への取材で渡辺容疑者は当日、理由をつけて鈴木さんと鈴木さんのクリニックの関係者6人を呼び出し、犯行に及んでいたことがわかりました。

鈴木さんは胸を1発撃たれていて、心肺停止の状態で救急搬送されましたが、その後、死亡が確認されました。

鈴木さんは、渡辺容疑者の母親の訪問看護を担当する医師だったということです。鈴木さんを知る人は「患者と真摯に向き合う医師だった」と話しました。

東入間医師会・関谷治久会長「自分の時間を犠牲にしても患者さんと向き合って。(患者さんの)要望があれば彼は行くでしょう。そういう姿勢で臨まれていたんだと思います」

渡辺容疑者の母親は26日に亡くなり、鈴木さんが死亡確認をしていましたが、渡辺容疑者が鈴木さんらとの間に何らかのトラブルがあり、散弾銃で撃ったとみられています。

調べに対し黙秘しているということで、警察は捜査本部を設置し動機などについて調べる方針です。


・容疑者「母の介護対応に怒り」 不満募ったか、動機解明へ(共同通信 2022年1月28日)

※埼玉県ふじみ野市の立てこもり事件で、県警に殺人未遂の疑いで逮捕された無職渡辺宏容疑者(66)が警察とのやりとりの中で「(亡くなった)母の介護の対応に怒っていた」と話したことが28日、捜査関係者への取材で分かった。

犠牲になった医師は容疑者の母親(92)が利用していた在宅クリニックに在籍。容疑者は対応への不満から呼び出したとも説明していた。逮捕容疑について黙秘しており、県警は28日、東入間署に捜査本部を設置した。

逮捕容疑は27日午後9時ごろ、容疑者宅で、人質にした医師鈴木純一さん(44)=東京都港区=に散弾銃を発射し、全治不詳の傷害を負わせた疑い。


・《猟銃立てこもり》「老々介護の末、母親(92)の治療方針で不信感」地元で評判の医師を殺害した男(66)が発していた“事件の予兆”とは(文春オンライン 2022年1月29日)

※「車が衝突したようなドン!という物凄い音がしたんです。すぐにパトカーが家の近くの路地に入り込んできて、『小学校に避難してください』とスピーカーで指示を流していました。2階から外を見渡すと、盾を持った警察官がたくさん走り回っていて、『タダ事じゃない』とすぐにわかりました」(近隣住人)

1月27日21時頃、埼玉県ふじみ野市の閑静な住宅街の民家から突然銃声が響き渡った。

猟銃を発砲 閑静な住宅街を恐怖が覆った

この家を訪れていた男性が「銃で撃たれた」と119番通報し、警察官が現場に急行したが、この家に住む無職・渡辺宏容疑者(66)が、訪れていた医師の鈴木純一さん(44)を人質に立てこもった。近隣住民はすぐさま近所の小学校と中学校に避難。集まった報道陣には防弾チョッキをつける姿もあり、現場は一気にものものしい様相となった。

埼玉県警は翌朝8時、施錠された玄関のドアを破り、閃光弾を投擲して突入。渡辺容疑者を確保し、殺人未遂容疑で緊急逮捕した。

人質となった鈴木さんは意識不明の重体で病院へ搬送され、その後死亡を確認。理学療法士の男性は胸のあたりを撃たれ重傷、医療相談員の30代男性が催涙スプレーをかけられ軽傷を負うという大惨事となった。

社会部記者が語る。

「渡辺容疑者は92歳の母親と2人暮らしで、いわゆる“老老介護”をしていました。事件前日の26日に母親が死亡し、翌日に鈴木さんら7人が弔問に自宅を訪れ、トラブルになったようです」

「警察官が突入した時には、渡辺容疑者は1階和室のベッドと窓の間に身を隠していました。ベッドの上には犯行に使用した散弾銃が置かれ、自宅には前日に亡くなった母親の遺体と鈴木さんが放置されていた。自宅で発見された散弾銃は計2丁で、登録済みのものです。

渡辺容疑者は立てこもっている間、警察と自宅の固定電話で数回連絡をとっていましたが、『被害者を救出したい』とか『被害者が全く動かない』などと話しており、精神的に不安定な様子だったようです。埼玉県警は渡辺容疑者を殺人罪で送致する見込みです」(同前)

担当医と患者の家族間で起きた、突然の悲劇――。

だが、実は事件の予兆は1年前からあったようだ。地元の医師会の相談窓口に渡辺容疑者はたびたび、介護の悩みを電話していたという。担当者が当時を振り返る。

加害者は孤独に“老々介護”「ご飯もお風呂も全部自分で」

「渡辺容疑者から去年の1月以降、約15回相談の電話がありました。『食事を食べない』『排せつをしない』というのが主な内容だったと思います。鈴木先生は92歳の母親の体調を慮り、無理な投薬などは勧めていない様子でしたが、渡辺容疑者は『最後まで診て欲しい』と何らかの手を打つことを望んでいたようです。治療方針を巡って双方で意見に食い違いが生じたことが、鈴木先生に不信感を抱くきっかけになったのかもしれません。

渡辺容疑者から最後に電話があったのは1月24日でした。私が話を整理して、『もう1回先生と話をしてみたら』と伝えると、『そうですか、聞いてみます』と素直に答えていましたよ。激高したりする様子もなく、淡々と話していました。ただ、以前から『ご飯もお風呂も全部自分でやっている』と言っていましたし、介護サービスなども利用していないと聞いていたので、介護の悩みを1人で抱え込んでいるのではないかという心配はしていました」

しかしながら鈴木さんの医師としての仕事ぶりを聞くと、そんな渡辺容疑者に親身に対応していただろう姿が浮かんでくる。

「鈴木先生はきちっと患者さんに治療の説明をしますし、在宅診療の医師では一番最初に名前があがるぐらい地元での信頼が厚い先生でした。在宅となれば、24時間、患者の対応をしなければなりません。忙しいなかでも車でおにぎりを食べながら、地元のために現場を駆け回る姿が目に焼き付いています」(同前)

鈴木さんは、2003年に東京慈恵会医科大学を卒業し、呼吸器内科を専門としていた。コロナ禍の最近では「他の患者にうつすわけにはいかないから」と一般診療を終えた後、夜遅くにコロナの発症患者の治療に駆け回る日々を送っていたようだ。多くの担当患者を抱え、奔走していた。

信頼が厚かった被害医師「ちょっとぽっちゃり。明るい先生」
 
実際に、鈴木さんに父の最期を看取ってもらったという50代女性は鈴木さんの人柄をこう振り返る。

「ちょっとぽっちゃりしていてね。上から目線じゃない、本当に明るい先生でしたよ。父は亡くなるまで2年間、先生のお世話になったのですが、『お父さん元気ー?』と大きな声を出しながら白衣で自宅にやってくるんです。父以外にも『夫が無呼吸症候群のようなんです』というと『無料で診るよ』と即答するような、気前の良い先生でした。私が介護に疲れて『仕事を辞めようかな』と愚痴をこぼした時も、『辞めない方がいい』と親身に相談にのってもらいましたね」

患者が急変したときも、そして最期のときも、鈴木さんは患者や家族に寄り添った。

「父がショートステイ先で熱を出した時も、私がパニックになるなか、すぐに駆け付け、入院先の病院や救急車の手配をしてくれました。その夜、『今回は厳しいかもしれない』としっかり向き合って話してくれたのを覚えています。父が亡くなった時も仕事を終えてから病室に来てくれて、『よく頑張ったね』とハグをしてくれました。

私も父が亡くなった後は、先生に持病を診てもらっていました。最後に会ったのは昨年末で、2月にも診てもらう予定でした。甘いものが好きなので、今後行く時はお菓子を持っていこうと思っていたのですが、突然叶わぬ夢となってしまいました」(同前)

24時間対応で患者と向き合い、地元に愛された医師の突然の死。渡辺容疑者との間に、何があったのか。真相の解明が待たれる。


・「自殺しようと思い、先生を殺そうと」容疑者が供述 埼玉立てこもり(毎日新聞 2022年1月29日)

※埼玉県ふじみ野市の民家で発生した立てこもり事件で、殺人未遂容疑で逮捕された無職、渡辺宏容疑者(66)が「母が死んでしまい、この先いいことはないと思った。自殺しようと思った時に、先生やクリニックの人を殺そうと考えていた」と供述していることが29日、捜査関係者への取材で分かった。また、埼玉県警が民家に突入し、立てこもっていた渡辺容疑者の身柄を確保した際の様子も取材で判明した。

県警によると、夜も明けた28日午前8時前、防弾装備をした県警の捜査員らが玄関ドアの鍵を壊し、閃光(せんこう)弾を発射したうえで突入した。散弾銃を手にした渡辺容疑者が自宅に立てこもってからおよそ11時間後だった。

渡辺容疑者が連絡に応じなくなり、人質にされていた医師、鈴木純一さん(44)の安否も確認できなかったために、突入を判断した。渡辺容疑者は、捜査員が部屋に入ってきた際に抵抗するようなそぶりはみせなかったという。

1階の6畳間に置かれたベッドには26日に死亡した渡辺容疑者の母親(92)の遺体が安置され、その脇には銃弾が込められた散弾銃1丁が置かれていた。渡辺容疑者は隠れるような様子でベッドと窓の間にいて、暴れるようなことも特になかったという。

鈴木さんは、同じ部屋であおむけに倒れており、のちに死亡が確認された。散弾銃で胸の辺りを撃たれたとみられる。

立てこもりの発生後、県警は固定電話を通じて渡辺容疑者に鈴木さんの解放を呼びかけた。渡辺容疑者は「(人質は)大丈夫。救出してもらいたい」などと話していたが、連絡に応じなくなった。

県警の佐藤勝彦捜査1課長は28日の記者会見で、鈴木さんの死亡について「今回は、できるかぎりの対応をしたと考えている。結果的に亡くなったのは残念です。我々としては事件の全容解明に全力を尽くします」と述べた。

在宅医療に携わる鈴木さんは、渡辺容疑者の母親を数年前から担当しており、27日は自宅に呼び出されていた。渡辺容疑者が母親の治療や死亡を巡って不満を募らせ、事件が起きた可能性がある。

県警は29日、容疑を殺人に切り替えて、渡辺容疑者をさいたま地検へ送検した。当初は県警の調べに対して黙秘していたという。