以下「In Deep」様より転載
https://indeep.jp/brakeless-rna-vaccine/
・戦時下に、日本人の専門家のワクチン遺伝子配列の分析を読んで知る「スパイクタンパク質の産生を止める術がない」こと。そして「未知のタンパク」の存在
2021年10月17日
※タンパク質の産生を止めるためのスイッチがない配列
ドイツのマックスプランク等で研究をされた経歴を持ち、現在ミラノの分子腫瘍研究所に所属されていらっしゃる日本人科学者の荒川央(あらかわ ひろし)さんという方のnote記事「ブレーキの無いRNAワクチン」
https://note.com/hiroshi_arakawa/n/n3111d6b3b0e0
を最近読みまして、これはワクチンの遺伝子配列を詳しくご説明されているもので、ご紹介させていただこうと思います。これはもう本当にさまざまな方にお読みいただきたいものだと思います。
ここからです。抜粋部分と注釈部分からなり、少し読みづらくなるかもしれないですが、ご了承下さい。
荒川央「ブレーキの無いRNAワクチン」より
ファイザー、モデルナのコロナワクチンはRNAタイプです。ワクチンに使われるスパイクタンパクは本来人体への毒性の高いものですが、実際に遺伝子やアミノ酸配列の上で毒性を下げる工夫が取られていないのか、そしてその毒性を制御するためのセーフティガードの仕組みは組み込まれていないのかを遺伝子配列から確認してみました。
どちらのワクチンもmRNAの構造をしています。スパイクタンパクの遺伝子が主役であり、遺伝子の安定化や翻訳効率上昇のための工夫は見られます。
ファイザーのコロナワクチンの場合には、始点にキャップ構造があり、非翻訳領域 (ヒトαグロビン由来)、スパイクタンパク遺伝子、非翻訳領域 (AES、mtRNR1に由来)、ポリA配列と続きます。また、ウリジンが1-メチル-3'-シュードウリジンで置換されています。
キャップ構造とはmRNAをタンパクに翻訳を開始させるのに必須の化学構造です。スパイクンパク前後の非翻訳領域、ポリA配列はRNAの安定化に貢献します。
何よりもウリジンの1-メチル-3'-シュードウリジンへの置換はmRNAを分解から保護します。このためmRNAワクチンはすぐには分解されず、実際にどれ程の期間細胞内に留まるのか分かりません。(note.com)
[注] コドンというのは、
> コドンとは、核酸の塩基配列が、タンパク質を構成するアミノ酸配列へと生体内で翻訳されるときの、各アミノ酸に対応する3つの塩基配列のこと。
というもので、コドンを構成する「塩基」というのは、核酸( DNA だとか RNA )を構成する成分であり、mRNA でしたら、以下のような英文字で示されます。
・アデニン A
・ウラシル U
・グアニン G
・シトシン C
この A とか U とか G とか C が「 3つずつセットになったもの」がコドンです。
CUU GAC AAA GUU GCU ……というような感じで並びます。これが、その mRNA の性質を決定づけるものです。
先ほどの荒川さんの、
> ウリジンが1-メチル-3'-シュードウリジンで置換されています。
という意味は、この「 U 」が、1-メチル-3'-シュードウリジンというものに置き換えられているということで、表記では、「 U 」ではなく、記号で「 Ψ 」と示されます。
ですので、普通なら「 CUU GAC AAA GUU GCU ……」というような文字列で示されるものが、ファイザー社ワクチンでは、以下のように示されます。
なぜ、こんなものと置き換えるのかといいますと、「天然のコロナよりたくさんのスパイクタンパク質を作るため」です。以下は、日本 RNA 学会の文書からです。
> RNA修飾とタンパク産生について細かく解析すると、ウリジンをシュードウリジンに変更すればタンパク質を多く産生することができ、更に、1メチルシュードウリジンに変更すれば、元のRNAの数十倍ものタンパク質を作り出すことができる。 (rnaj.org)
これを最初に発見したのは、mRNA コロナワクチンの開発に寄与したビオンテック社の上級副社長のカリコー・カタリン博士で、2008年に以下の論文で発表しています。わりと歴史のある技術のようです。
Incorporation of pseudouridine into mRNA yields superior nonimmunogenic vector with increased translational capacity and biological stability
シュードウリジンをmRNAに組み込むと、翻訳能力と生物学的安定性が向上した優れた非免疫原性ベクターが得られる
つまり、ワクチン mRNA は、天然のコロナ(ウイルス)より、何十倍も多くのスパイクタンパク質を産生することができるということです。マサチューセッツ工科大学のステファニー・セネフ博士は、
「 100倍から 1000倍多くスパイクタンパク質が作られる」
ということも述べています。
また、荒川さんは、
> 1-メチル-3'-シュードウリジンへの置換はmRNAを分解から保護します。
と書かれていますが、これが意味するのは、ワクチンの mRNA は、天然のコロナと比較して、
「壊れにくく、とても強い」
ということです。
通常の mRNA は、長くても数時間などで分解されて消えてしまいますが、ワクチンのほうは「それがあまりない」と。長く体内に残ることになります。
記事を続けます。
荒川央「ブレーキの無いRNAワクチン」より
ワクチンの遺伝子配列から読み取れるものを見て行きましょう。配列は以下のサイトからのものです。
「ファイザー」コロナワクチン
「モデルナ」コロナワクチン
まずは、タンパクの開始コドンから最初の120ヌクレオチドを例に両者の配列を比較してみましょう。
DNA解析ソフトウェアを使いましたので、ここではシュードウリジンは「T」と表記されています。

対象となる配列と同一の配列は「•」ドットで表しています。
遺伝子配列を比較すると、ファイザー、モデルナのRNAワクチンは武漢型コロナウィルスのスパイクタンパクとは遺伝子の配列はかなり異なっています。これはコドン最適化のためであり、翻訳効率を上昇させ、より多くのスパイクタンパク生産につながります。
次にタンパクのアミノ酸配列を比べてみましょう。20種類のアミノ酸のそれぞれを一文字のアルファベットで表記しています。RNAの配列は遺伝暗号表 (コドン表) に従ってアミノ酸配列に翻訳されます。遺伝暗号 (コドン) については以前の記事内でも触れました。(note.com)
(※ 配列表は省略させていただきます)
[注]ここにあります、
> ファイザー、モデルナのRNAワクチンは武漢型コロナウィルスのスパイクタンパクとは遺伝子の配列はかなり異なっています。
というのは、海外の解析サイトによれば、
> もともとの武漢型新型コロナの mRNA の配列数 4284のうちの 3777が、ワクチン mRNAのほうでは変更されている
ことが示されています(もはや別物といっていいほどの変更ではあります)。
以下は、上が武漢型の新型コロナの mRNA の配列で、下がコロナワクチン mRNA の配列の一部ですが、このような変更が大規模に行われています。

この理由も、先ほどと同じように「スパイクタンパク質の産生能力と強度を上げるため」です。
さまざまな点において、ワクチン mRNA は、もともとの武漢型よりも、スパイクタンパク質の産生能力と強度が上げられる工夫が施されています。
記事を続けます。
荒川央「ブレーキの無いRNAワクチン」より
これを見ると、遺伝子配列とは対照的にタンパクの配列上はほとんど差異が見られません。2つのプロリン置換 (K986PおよびV987P) が見られるだけですが、これはスパイクタンパクを変形前の構造に固定させ、中和抗体を産生しやすくするためのものです。
しかし他のアミノ酸配列はコロナウィルスのスパイクタンパクと同一です。そしてアミノ酸配列からはスパイクタンパクの毒性を取り除くための工夫の跡は見られません。
これは驚くべき事なのですが、確かに「毒性の高いタンパクの遺伝子から毒性を取り除かず、ほぼそのままの状態のものを体内に投入している」という事です。この点においてはファイザーもモデルナも同様です。(note.com)
[注]ワクチンの配列は、以下のことを示しているということを書かれています。
「スパイクタンパク質をより多く作り出し、また強度を上げているが、スパイクタンパク質の毒性は下げていない」
ということのようです。
スパイクタンパク質自体の毒性は、さまざまに検証されていますが、最初にこのことを見いだしたのは、日本人の科学者の方で、米ジョージタウン大学の鈴木有一郎教授が、2020年10月に出した以下の論文などによります。
SARS-CoV-2 spike protein-mediated cell signaling in lung vascular cells
肺血管細胞におけるSARS-CoV-2スパイクタンパク質を介した細胞シグナル伝達
また、米ソーク研究所の論文もあります。
このように毒性の高いことが知られているスパイクタンパク質の「毒性を下げる」ということは行われていないことが、配列からわかるようです。
続けます。
このあたりから、記事のタイトルである「ブレーキの無いRNAワクチン」の意味がわかってきます。
荒川央「ブレーキの無いRNAワクチン」より
ウリジンがシュードウリジンへと化学修飾を受けている以外は、遺伝子ワクチンのデザイン自体はシンプルなものです。
そして更なる問題は「セーフティガードに当たる構造が見当たらない」という事です。タンパクの生産は自動で開始しますが、その生産を止めるためのスイッチが見当たりません。また、ゲノムに挿入された場合にゲノムから切り出すための工夫も見当たりません。
確率がどれくらいなのかはっきりとは分かりませんが、RNAが逆転写されてゲノムに挿入される事はあり得ます。しかしながら、ゲノムから切り出すための組換えシグナルに当たるものが見当たらないのです。
細胞生物学の手法には「ゲノムに挿入した遺伝子を切り出す技術」があり、その時に使われる遺伝子組換え配列もよく知られています。例えばloxP配列などです。
タンパクの生産を止めるのは簡単ではありませんが、タンパクを分解するためのシグナルは知られています。誘導可能なデグロンなどです。
ただ、それらは基礎研究の技術なので、そのまま人体に即応用可能といった簡単なものでもありません。ではそのような技術をどうやって遺伝子ワクチンに応用するか?それは外野が指摘するような事ではなく、それこそがワクチン開発者の仕事になるでしょう。
基礎研究を臨床に応用するには時間もかかりますし、たくさんのトライ&エラーが必要となります。けれどもそんな事は人命の前では言い訳にもならないでしょう。現段階では制御する方法も無いのに、毒素を大量生産する装置を健康な人の体内に導入すべきではないのです。
mRNAワクチンがどれだけの期間分解されずに体内に留まるか。それははっきりとは分かっていませんし、個人差があると考えられます。
長期間 mRNA ワクチンが働き大量のスパイクタンパクを生産し続ける可能性が指摘されています。では後から体内でその生産をストップさせるにはどうしたら良いか。その方法はおそらく現時点では存在しません。(note.com)
[注]ここにありますように、
・スパイクタンパクの生産を止めるためのスイッチがない。
ということのようで、従って、
> 後から体内でその生産をストップさせるにはどうしたら良いか。その方法はおそらく現時点では存在しません。
というものとなってしまっているようです。
そして、それらのスパイクタンパク質は、先に述べられていましたように、様々な方法により強化され、産生数が多くなるように変更されており、その上、「スパイクタンパク質の毒性はそのままにしている」ということになります。
あと、
> RNAが逆転写されてゲノムに挿入される事はあり得ます。
という「逆転写」については、
コロナが逆転写してゲノムに組み込まれる可能性を示した論文は以下となります。米国科学アカデミー紀要に掲載された査読済み論文です。
Reverse-transcribed SARS-CoV-2 RNA can integrate into the genome of cultured human cells and can be expressed in patient-derived tissues
逆転写された SARS-CoV-2 RNA は、培養ヒト細胞のゲノムに組み込まれ、患者由来の組織で発現することができる
記事を続けます。
荒川央「ブレーキの無いRNAワクチン」より
スパイクタンパクは毒性の高いタンパクであり、例えば血管内皮細胞を障害することで血栓の原因となる事が知られています。
毒性の高い遺伝子をワクチンに使う場合には、まずは毒性を取り除く事が必要になります。そうでなければたくさんの健康な人間に接種するワクチンなどに用いてはならないのです。
それでもあくまでワクチンに用いるというのなら、まずはその毒性と予測される副反応について十分なインフォームドコンセントが必須になります。その上で、毒性に対処するための解毒剤の開発、毒性タンパクの生産を止めるスイッチ、ゲノムに挿入された場合の切り出し方法。全てをセットでデザインする必要があります。
そうした安全管理を放棄し、緊急使用を大義名分に見切り発車で大規模治験に踏み切っているわけです。
ブレーキの無い自動車のようなものです。良いエンジンを開発した。それを載せる良い車体も開発した。けれどもブレーキの開発は間に合わなかった。その危険性は決して無視できるレベルとは思えません。(note.com)
[注]ここはスパイクタンパク質の毒性について再度述べられています。
そして、次もまた驚いた部分でした。
荒川央「ブレーキの無いRNAワクチン」より
もう一つ懸念事項があります。ゲノムに組み込まれた場合に予期しないタンパクが作られたりしないか、という事です。
RNAからはタンパクへの翻訳は一方向に起こります。しかしRNAワクチンが逆転写されてゲノムに取り込まれた場合、相補鎖 (二本鎖DNAの反対側) から逆方向に転写され、そこからもタンパクへの翻訳が起こる可能性があります。
そこで私は、まずは武漢型コロナウィルスのスパイクタンパクの遺伝子の相補鎖をDNA解析ソフトウェアを使ってタンパクに翻訳してみました。
(※ 武漢型の配列表が示されていますが、割愛させていただきます)
mRNA中の塩基3個の組み合わせがコドン (遺伝暗号) であり、それぞれがアミノ酸1個に対応します。翻訳は開始コドン (M; メチオニン) に始まり、終止コドンで停止します。丸で囲んでいるのが終止コドンに対応する翻訳停止シグナルです。
RNAを構成するヌクレオチドは4種類なので、コドンの組み合わせは4 x 4 x 4 = 64通りです。このうち、アミノ酸をコードしない終止コドンは3つです。RNAの並びがランダムな場合、終止コドンは3/64、つまり約20アミノ酸に一回の割合で出てきます。
逆向きに翻訳するとオリジナルのスパイクタンパクでは頻繁に翻訳停止シグナルが出てきます。機能的なタンパクを作れそうには見えません。
次にモデルナのRNAワクチンの相補鎖をタンパクに翻訳しました。
(※ モデルナの配列表が示されていますが、割愛させていただきます)
武漢型コロナウィルスのスパイクタンパクに比べてモデルナのRNAワクチンでは終始コドンがやや少ない。それでも終止コドンは多数あり、やはり大きなタンパクを作れそうには見えません。
最後にファイザーのRNAワクチンの相補鎖をタンパクに翻訳しました。
(※ ファイザーの配列表が示されていますが、割愛させていただきます)
ファイザーのRNAワクチンでは終始コドンが少なく、82番目のアミノ酸以降は終末端付近まで皆無です。
開始コドンのメチオニンから終末端付近の翻訳停止シグナルまで1295アミノ酸のオープンリーディングフレーム (読み枠;タンパクに翻訳可能な遺伝子配列) が取れます。
終始コドンは通常1/20の割合でできますので、偶然ではこのように長いタンパクの読み枠は取れません。これは本当に偶然の産物なのでしょうか。
ではこのタンパクは何なのでしょうか?遺伝子データベースとのデータ照合では既知のタンパクと有意な相同性は見られませんでした。今の所機能は不明です。無害かもしれませんし有害かもしれません。
完全長のRNAワクチンがゲノムに取り込まれる人の割合が実際にどれくらいになるのか。それは現時点では分かりません。その中にはこの未知のタンパクを生産している人も出てくるかもしれません。これも壮大な人体実験になります。(note.com)
[注] 荒川さんの記事はここまでです。
ここにあります「開始コドン」とか「終止コドン」というのは、開始コドンでタンパク質の合成が始まり、終止コドンでタンパク質の合成が終わることを示すものです。
仮に、終止コドンがなければ「タンパク質の合成が終わることがない」ということになります。
これは、ワクチンとは関係のない研究ですが、「永久タンパク質合成」というのは、日本の理化学研究所が、2013年にその実験に成功しています。
> 理化学研究所は、大腸菌が通常持っているタンパク質合成過程において、タンパク質合成終了の目印となる終止コドンを除いた環状のメッセンジャーRNA(mRNA)を鋳型に用いてエンドレスにタンパク質合成反応を起こすことに成功しました。(理化学研究所 2013/05/22)
今回、荒川さんの書かれたもので、初めて、少なくともファイザーのものは、「偶然とは言えないほど終止コドンが少ない」ことを知りました。
> これは本当に偶然の産物なのでしょうか。
と書かれています。
また、
> オリジナルのスパイクタンパクでは頻繁に翻訳停止シグナルが出てきます。機能的なタンパクを作れそうには見えません。
の部分からは、「元の武漢型のコロナはタンパク生産がよくできない、つまり毒性が低いものだった」ことを連想します。
そして、驚きましたのが、
>ではこのタンパクは何なのでしょうか? 遺伝子データベースとのデータ照合では既知のタンパクと有意な相同性は見られませんでした。今の所機能は不明です。
という部分です。
どうも、「よくわからないタンパク」が作られている可能性がある。
遺伝子データベースにないということは、「現時点までで地球上に存在していない(あるいは判明していない)タンパク」が作られている可能性があると。
記事では、
> その中にはこの未知のタンパクを生産している人も出てくるかもしれません。
とあり、人によってでしょうが、「知られていない得体のわからないタンパク質を体内で作り続けている可能性がある」ということになるのでしょうか。
・コロナワクチン生産過程で「ヤマサ」が“隠し味” mRNA合成に重要な核酸を製造 木村盛世氏「日本は開発体制を見直すべきだ」(zakzak 2021年10月18日)
※メッセンジャーRNA(mRNA)ワクチンは米国など海外メーカー製だが、生産過程で日本の消費者におなじみの企業なども重要な役割を果たしている。
日本国内で接種されているワクチンの大半は米ファイザーやモデルナ製のmRNAワクチンだが、mRNAを合成するための重要な原料となる核酸「シュードウリジン」の製造を担うのが、「ヤマサしょうゆ」や「昆布つゆ」で知られるヤマサ醤油(千葉県銚子市)だ。
うま味成分とされるシイタケの「グアニル酸」やかつお節の「イノシン酸」などさまざまな核酸化合物を研究する中で調味料以外の工業化にも着手。1980年代には海外向けに試薬の販売を手掛けたが、その一つがシュードウリジンだった。
mRNAを構成する物質に「ウリジン」があるが、そのまま体内に入ると、自然免疫がmRNAを壊して抗体を生成するため、必要なタンパク質が作られにくくなる。そこで、ウリジンをシュードウリジンに置き換えることで自然免疫を回避できるという。この原理を発見したのが、ノーベル賞候補にも名前が挙がった米ペンシルベニア大のカタリン・カリコ客員教授(66)らだった。
ヤマサ醤油の医薬・化成品事業部担当者は「今回のワクチンに使える数量と品質のシュードウリジンを作るのは世界でも数社しかない。原料供給に関わることができたことは大変うれしく思う」と語る。
ほかにも化学メーカー大手のAGC(東京都千代田区)やカネカ(同港区)もコロナワクチンで重要な役割を果たす「プラスミドDNA」の製造受託を担う。
また、研究面でもmRNAの実用化に関わる原理で古市泰宏・新潟薬科大客員教授の貢献が伝えられた。
元厚労省医系技官の木村盛世氏(感染症疫学)は「部分的な技術をみても分かるように、日系企業は感染症医療やワクチン開発で決して世界に後れをとっているわけではない。米国ではワクチン関連企業でも数十億円の補助金を出すと聞く。大規模な開発プロジェクトを実施できない日本の体制を見直すべきだろう」と語った。
https://indeep.jp/brakeless-rna-vaccine/
・戦時下に、日本人の専門家のワクチン遺伝子配列の分析を読んで知る「スパイクタンパク質の産生を止める術がない」こと。そして「未知のタンパク」の存在
2021年10月17日
※タンパク質の産生を止めるためのスイッチがない配列
ドイツのマックスプランク等で研究をされた経歴を持ち、現在ミラノの分子腫瘍研究所に所属されていらっしゃる日本人科学者の荒川央(あらかわ ひろし)さんという方のnote記事「ブレーキの無いRNAワクチン」
https://note.com/hiroshi_arakawa/n/n3111d6b3b0e0
を最近読みまして、これはワクチンの遺伝子配列を詳しくご説明されているもので、ご紹介させていただこうと思います。これはもう本当にさまざまな方にお読みいただきたいものだと思います。
ここからです。抜粋部分と注釈部分からなり、少し読みづらくなるかもしれないですが、ご了承下さい。
荒川央「ブレーキの無いRNAワクチン」より
ファイザー、モデルナのコロナワクチンはRNAタイプです。ワクチンに使われるスパイクタンパクは本来人体への毒性の高いものですが、実際に遺伝子やアミノ酸配列の上で毒性を下げる工夫が取られていないのか、そしてその毒性を制御するためのセーフティガードの仕組みは組み込まれていないのかを遺伝子配列から確認してみました。
どちらのワクチンもmRNAの構造をしています。スパイクタンパクの遺伝子が主役であり、遺伝子の安定化や翻訳効率上昇のための工夫は見られます。
ファイザーのコロナワクチンの場合には、始点にキャップ構造があり、非翻訳領域 (ヒトαグロビン由来)、スパイクタンパク遺伝子、非翻訳領域 (AES、mtRNR1に由来)、ポリA配列と続きます。また、ウリジンが1-メチル-3'-シュードウリジンで置換されています。
キャップ構造とはmRNAをタンパクに翻訳を開始させるのに必須の化学構造です。スパイクンパク前後の非翻訳領域、ポリA配列はRNAの安定化に貢献します。
何よりもウリジンの1-メチル-3'-シュードウリジンへの置換はmRNAを分解から保護します。このためmRNAワクチンはすぐには分解されず、実際にどれ程の期間細胞内に留まるのか分かりません。(note.com)
[注] コドンというのは、
> コドンとは、核酸の塩基配列が、タンパク質を構成するアミノ酸配列へと生体内で翻訳されるときの、各アミノ酸に対応する3つの塩基配列のこと。
というもので、コドンを構成する「塩基」というのは、核酸( DNA だとか RNA )を構成する成分であり、mRNA でしたら、以下のような英文字で示されます。
・アデニン A
・ウラシル U
・グアニン G
・シトシン C
この A とか U とか G とか C が「 3つずつセットになったもの」がコドンです。
CUU GAC AAA GUU GCU ……というような感じで並びます。これが、その mRNA の性質を決定づけるものです。
先ほどの荒川さんの、
> ウリジンが1-メチル-3'-シュードウリジンで置換されています。
という意味は、この「 U 」が、1-メチル-3'-シュードウリジンというものに置き換えられているということで、表記では、「 U 」ではなく、記号で「 Ψ 」と示されます。
ですので、普通なら「 CUU GAC AAA GUU GCU ……」というような文字列で示されるものが、ファイザー社ワクチンでは、以下のように示されます。

なぜ、こんなものと置き換えるのかといいますと、「天然のコロナよりたくさんのスパイクタンパク質を作るため」です。以下は、日本 RNA 学会の文書からです。
> RNA修飾とタンパク産生について細かく解析すると、ウリジンをシュードウリジンに変更すればタンパク質を多く産生することができ、更に、1メチルシュードウリジンに変更すれば、元のRNAの数十倍ものタンパク質を作り出すことができる。 (rnaj.org)
これを最初に発見したのは、mRNA コロナワクチンの開発に寄与したビオンテック社の上級副社長のカリコー・カタリン博士で、2008年に以下の論文で発表しています。わりと歴史のある技術のようです。
Incorporation of pseudouridine into mRNA yields superior nonimmunogenic vector with increased translational capacity and biological stability
シュードウリジンをmRNAに組み込むと、翻訳能力と生物学的安定性が向上した優れた非免疫原性ベクターが得られる
つまり、ワクチン mRNA は、天然のコロナ(ウイルス)より、何十倍も多くのスパイクタンパク質を産生することができるということです。マサチューセッツ工科大学のステファニー・セネフ博士は、
「 100倍から 1000倍多くスパイクタンパク質が作られる」
ということも述べています。
また、荒川さんは、
> 1-メチル-3'-シュードウリジンへの置換はmRNAを分解から保護します。
と書かれていますが、これが意味するのは、ワクチンの mRNA は、天然のコロナと比較して、
「壊れにくく、とても強い」
ということです。
通常の mRNA は、長くても数時間などで分解されて消えてしまいますが、ワクチンのほうは「それがあまりない」と。長く体内に残ることになります。
記事を続けます。
荒川央「ブレーキの無いRNAワクチン」より
ワクチンの遺伝子配列から読み取れるものを見て行きましょう。配列は以下のサイトからのものです。
「ファイザー」コロナワクチン
「モデルナ」コロナワクチン
まずは、タンパクの開始コドンから最初の120ヌクレオチドを例に両者の配列を比較してみましょう。
DNA解析ソフトウェアを使いましたので、ここではシュードウリジンは「T」と表記されています。

対象となる配列と同一の配列は「•」ドットで表しています。
遺伝子配列を比較すると、ファイザー、モデルナのRNAワクチンは武漢型コロナウィルスのスパイクタンパクとは遺伝子の配列はかなり異なっています。これはコドン最適化のためであり、翻訳効率を上昇させ、より多くのスパイクタンパク生産につながります。
次にタンパクのアミノ酸配列を比べてみましょう。20種類のアミノ酸のそれぞれを一文字のアルファベットで表記しています。RNAの配列は遺伝暗号表 (コドン表) に従ってアミノ酸配列に翻訳されます。遺伝暗号 (コドン) については以前の記事内でも触れました。(note.com)
(※ 配列表は省略させていただきます)
[注]ここにあります、
> ファイザー、モデルナのRNAワクチンは武漢型コロナウィルスのスパイクタンパクとは遺伝子の配列はかなり異なっています。
というのは、海外の解析サイトによれば、
> もともとの武漢型新型コロナの mRNA の配列数 4284のうちの 3777が、ワクチン mRNAのほうでは変更されている
ことが示されています(もはや別物といっていいほどの変更ではあります)。
以下は、上が武漢型の新型コロナの mRNA の配列で、下がコロナワクチン mRNA の配列の一部ですが、このような変更が大規模に行われています。

この理由も、先ほどと同じように「スパイクタンパク質の産生能力と強度を上げるため」です。
さまざまな点において、ワクチン mRNA は、もともとの武漢型よりも、スパイクタンパク質の産生能力と強度が上げられる工夫が施されています。
記事を続けます。
荒川央「ブレーキの無いRNAワクチン」より
これを見ると、遺伝子配列とは対照的にタンパクの配列上はほとんど差異が見られません。2つのプロリン置換 (K986PおよびV987P) が見られるだけですが、これはスパイクタンパクを変形前の構造に固定させ、中和抗体を産生しやすくするためのものです。
しかし他のアミノ酸配列はコロナウィルスのスパイクタンパクと同一です。そしてアミノ酸配列からはスパイクタンパクの毒性を取り除くための工夫の跡は見られません。
これは驚くべき事なのですが、確かに「毒性の高いタンパクの遺伝子から毒性を取り除かず、ほぼそのままの状態のものを体内に投入している」という事です。この点においてはファイザーもモデルナも同様です。(note.com)
[注]ワクチンの配列は、以下のことを示しているということを書かれています。
「スパイクタンパク質をより多く作り出し、また強度を上げているが、スパイクタンパク質の毒性は下げていない」
ということのようです。
スパイクタンパク質自体の毒性は、さまざまに検証されていますが、最初にこのことを見いだしたのは、日本人の科学者の方で、米ジョージタウン大学の鈴木有一郎教授が、2020年10月に出した以下の論文などによります。
SARS-CoV-2 spike protein-mediated cell signaling in lung vascular cells
肺血管細胞におけるSARS-CoV-2スパイクタンパク質を介した細胞シグナル伝達
また、米ソーク研究所の論文もあります。
このように毒性の高いことが知られているスパイクタンパク質の「毒性を下げる」ということは行われていないことが、配列からわかるようです。
続けます。
このあたりから、記事のタイトルである「ブレーキの無いRNAワクチン」の意味がわかってきます。
荒川央「ブレーキの無いRNAワクチン」より
ウリジンがシュードウリジンへと化学修飾を受けている以外は、遺伝子ワクチンのデザイン自体はシンプルなものです。
そして更なる問題は「セーフティガードに当たる構造が見当たらない」という事です。タンパクの生産は自動で開始しますが、その生産を止めるためのスイッチが見当たりません。また、ゲノムに挿入された場合にゲノムから切り出すための工夫も見当たりません。
確率がどれくらいなのかはっきりとは分かりませんが、RNAが逆転写されてゲノムに挿入される事はあり得ます。しかしながら、ゲノムから切り出すための組換えシグナルに当たるものが見当たらないのです。
細胞生物学の手法には「ゲノムに挿入した遺伝子を切り出す技術」があり、その時に使われる遺伝子組換え配列もよく知られています。例えばloxP配列などです。
タンパクの生産を止めるのは簡単ではありませんが、タンパクを分解するためのシグナルは知られています。誘導可能なデグロンなどです。
ただ、それらは基礎研究の技術なので、そのまま人体に即応用可能といった簡単なものでもありません。ではそのような技術をどうやって遺伝子ワクチンに応用するか?それは外野が指摘するような事ではなく、それこそがワクチン開発者の仕事になるでしょう。
基礎研究を臨床に応用するには時間もかかりますし、たくさんのトライ&エラーが必要となります。けれどもそんな事は人命の前では言い訳にもならないでしょう。現段階では制御する方法も無いのに、毒素を大量生産する装置を健康な人の体内に導入すべきではないのです。
mRNAワクチンがどれだけの期間分解されずに体内に留まるか。それははっきりとは分かっていませんし、個人差があると考えられます。
長期間 mRNA ワクチンが働き大量のスパイクタンパクを生産し続ける可能性が指摘されています。では後から体内でその生産をストップさせるにはどうしたら良いか。その方法はおそらく現時点では存在しません。(note.com)
[注]ここにありますように、
・スパイクタンパクの生産を止めるためのスイッチがない。
ということのようで、従って、
> 後から体内でその生産をストップさせるにはどうしたら良いか。その方法はおそらく現時点では存在しません。
というものとなってしまっているようです。
そして、それらのスパイクタンパク質は、先に述べられていましたように、様々な方法により強化され、産生数が多くなるように変更されており、その上、「スパイクタンパク質の毒性はそのままにしている」ということになります。
あと、
> RNAが逆転写されてゲノムに挿入される事はあり得ます。
という「逆転写」については、
コロナが逆転写してゲノムに組み込まれる可能性を示した論文は以下となります。米国科学アカデミー紀要に掲載された査読済み論文です。
Reverse-transcribed SARS-CoV-2 RNA can integrate into the genome of cultured human cells and can be expressed in patient-derived tissues
逆転写された SARS-CoV-2 RNA は、培養ヒト細胞のゲノムに組み込まれ、患者由来の組織で発現することができる
記事を続けます。
荒川央「ブレーキの無いRNAワクチン」より
スパイクタンパクは毒性の高いタンパクであり、例えば血管内皮細胞を障害することで血栓の原因となる事が知られています。
毒性の高い遺伝子をワクチンに使う場合には、まずは毒性を取り除く事が必要になります。そうでなければたくさんの健康な人間に接種するワクチンなどに用いてはならないのです。
それでもあくまでワクチンに用いるというのなら、まずはその毒性と予測される副反応について十分なインフォームドコンセントが必須になります。その上で、毒性に対処するための解毒剤の開発、毒性タンパクの生産を止めるスイッチ、ゲノムに挿入された場合の切り出し方法。全てをセットでデザインする必要があります。
そうした安全管理を放棄し、緊急使用を大義名分に見切り発車で大規模治験に踏み切っているわけです。
ブレーキの無い自動車のようなものです。良いエンジンを開発した。それを載せる良い車体も開発した。けれどもブレーキの開発は間に合わなかった。その危険性は決して無視できるレベルとは思えません。(note.com)
[注]ここはスパイクタンパク質の毒性について再度述べられています。
そして、次もまた驚いた部分でした。
荒川央「ブレーキの無いRNAワクチン」より
もう一つ懸念事項があります。ゲノムに組み込まれた場合に予期しないタンパクが作られたりしないか、という事です。
RNAからはタンパクへの翻訳は一方向に起こります。しかしRNAワクチンが逆転写されてゲノムに取り込まれた場合、相補鎖 (二本鎖DNAの反対側) から逆方向に転写され、そこからもタンパクへの翻訳が起こる可能性があります。
そこで私は、まずは武漢型コロナウィルスのスパイクタンパクの遺伝子の相補鎖をDNA解析ソフトウェアを使ってタンパクに翻訳してみました。
(※ 武漢型の配列表が示されていますが、割愛させていただきます)
mRNA中の塩基3個の組み合わせがコドン (遺伝暗号) であり、それぞれがアミノ酸1個に対応します。翻訳は開始コドン (M; メチオニン) に始まり、終止コドンで停止します。丸で囲んでいるのが終止コドンに対応する翻訳停止シグナルです。
RNAを構成するヌクレオチドは4種類なので、コドンの組み合わせは4 x 4 x 4 = 64通りです。このうち、アミノ酸をコードしない終止コドンは3つです。RNAの並びがランダムな場合、終止コドンは3/64、つまり約20アミノ酸に一回の割合で出てきます。
逆向きに翻訳するとオリジナルのスパイクタンパクでは頻繁に翻訳停止シグナルが出てきます。機能的なタンパクを作れそうには見えません。
次にモデルナのRNAワクチンの相補鎖をタンパクに翻訳しました。
(※ モデルナの配列表が示されていますが、割愛させていただきます)
武漢型コロナウィルスのスパイクタンパクに比べてモデルナのRNAワクチンでは終始コドンがやや少ない。それでも終止コドンは多数あり、やはり大きなタンパクを作れそうには見えません。
最後にファイザーのRNAワクチンの相補鎖をタンパクに翻訳しました。
(※ ファイザーの配列表が示されていますが、割愛させていただきます)
ファイザーのRNAワクチンでは終始コドンが少なく、82番目のアミノ酸以降は終末端付近まで皆無です。
開始コドンのメチオニンから終末端付近の翻訳停止シグナルまで1295アミノ酸のオープンリーディングフレーム (読み枠;タンパクに翻訳可能な遺伝子配列) が取れます。
終始コドンは通常1/20の割合でできますので、偶然ではこのように長いタンパクの読み枠は取れません。これは本当に偶然の産物なのでしょうか。
ではこのタンパクは何なのでしょうか?遺伝子データベースとのデータ照合では既知のタンパクと有意な相同性は見られませんでした。今の所機能は不明です。無害かもしれませんし有害かもしれません。
完全長のRNAワクチンがゲノムに取り込まれる人の割合が実際にどれくらいになるのか。それは現時点では分かりません。その中にはこの未知のタンパクを生産している人も出てくるかもしれません。これも壮大な人体実験になります。(note.com)
[注] 荒川さんの記事はここまでです。
ここにあります「開始コドン」とか「終止コドン」というのは、開始コドンでタンパク質の合成が始まり、終止コドンでタンパク質の合成が終わることを示すものです。
仮に、終止コドンがなければ「タンパク質の合成が終わることがない」ということになります。
これは、ワクチンとは関係のない研究ですが、「永久タンパク質合成」というのは、日本の理化学研究所が、2013年にその実験に成功しています。
> 理化学研究所は、大腸菌が通常持っているタンパク質合成過程において、タンパク質合成終了の目印となる終止コドンを除いた環状のメッセンジャーRNA(mRNA)を鋳型に用いてエンドレスにタンパク質合成反応を起こすことに成功しました。(理化学研究所 2013/05/22)
今回、荒川さんの書かれたもので、初めて、少なくともファイザーのものは、「偶然とは言えないほど終止コドンが少ない」ことを知りました。
> これは本当に偶然の産物なのでしょうか。
と書かれています。
また、
> オリジナルのスパイクタンパクでは頻繁に翻訳停止シグナルが出てきます。機能的なタンパクを作れそうには見えません。
の部分からは、「元の武漢型のコロナはタンパク生産がよくできない、つまり毒性が低いものだった」ことを連想します。
そして、驚きましたのが、
>ではこのタンパクは何なのでしょうか? 遺伝子データベースとのデータ照合では既知のタンパクと有意な相同性は見られませんでした。今の所機能は不明です。
という部分です。
どうも、「よくわからないタンパク」が作られている可能性がある。
遺伝子データベースにないということは、「現時点までで地球上に存在していない(あるいは判明していない)タンパク」が作られている可能性があると。
記事では、
> その中にはこの未知のタンパクを生産している人も出てくるかもしれません。
とあり、人によってでしょうが、「知られていない得体のわからないタンパク質を体内で作り続けている可能性がある」ということになるのでしょうか。
・コロナワクチン生産過程で「ヤマサ」が“隠し味” mRNA合成に重要な核酸を製造 木村盛世氏「日本は開発体制を見直すべきだ」(zakzak 2021年10月18日)
※メッセンジャーRNA(mRNA)ワクチンは米国など海外メーカー製だが、生産過程で日本の消費者におなじみの企業なども重要な役割を果たしている。
日本国内で接種されているワクチンの大半は米ファイザーやモデルナ製のmRNAワクチンだが、mRNAを合成するための重要な原料となる核酸「シュードウリジン」の製造を担うのが、「ヤマサしょうゆ」や「昆布つゆ」で知られるヤマサ醤油(千葉県銚子市)だ。
うま味成分とされるシイタケの「グアニル酸」やかつお節の「イノシン酸」などさまざまな核酸化合物を研究する中で調味料以外の工業化にも着手。1980年代には海外向けに試薬の販売を手掛けたが、その一つがシュードウリジンだった。
mRNAを構成する物質に「ウリジン」があるが、そのまま体内に入ると、自然免疫がmRNAを壊して抗体を生成するため、必要なタンパク質が作られにくくなる。そこで、ウリジンをシュードウリジンに置き換えることで自然免疫を回避できるという。この原理を発見したのが、ノーベル賞候補にも名前が挙がった米ペンシルベニア大のカタリン・カリコ客員教授(66)らだった。
ヤマサ醤油の医薬・化成品事業部担当者は「今回のワクチンに使える数量と品質のシュードウリジンを作るのは世界でも数社しかない。原料供給に関わることができたことは大変うれしく思う」と語る。
ほかにも化学メーカー大手のAGC(東京都千代田区)やカネカ(同港区)もコロナワクチンで重要な役割を果たす「プラスミドDNA」の製造受託を担う。
また、研究面でもmRNAの実用化に関わる原理で古市泰宏・新潟薬科大客員教授の貢献が伝えられた。
元厚労省医系技官の木村盛世氏(感染症疫学)は「部分的な技術をみても分かるように、日系企業は感染症医療やワクチン開発で決して世界に後れをとっているわけではない。米国ではワクチン関連企業でも数十億円の補助金を出すと聞く。大規模な開発プロジェクトを実施できない日本の体制を見直すべきだろう」と語った。