・衝撃の次世代埋葬法「遺体をフリーズドライして粉砕」「薬剤に溶かす」(Gigazine 2011年01月04日)

※お葬式の際に故人をどう弔うかということについて、環境保護や土地の確保の意味から見て画期的な次世代の埋葬方法が現実のものになろうとしています。

従来のやり方のうち、火葬は遺体を焼却する際に二酸化炭素が排出されてしまい、欧米で行われる土葬は墓地の確保が年々難しくなっているとのこと。この両方を解決する方法が2つ挙げられていて、一つは液体窒素を使って遺体を冷却して粉砕する方法、もう一つは高温の溶液の中に遺体を漬けて溶かしてしまうというもので、まるでSF映画のような手法となっています。

お葬式の際に遺体を火葬すると、当然ながら二酸化炭素が排出されます。また、土葬する場合も埋葬するスペースの問題があります。こんな状況を打破するべく、環境に優しい新世代の埋葬方法が実用化されようとしています。

環境に優しい埋葬方法は、マイナス196度まで遺体を冷やすために液体窒素を使い、その後遺体を粉々に粉砕するというものです。それから磁石を使って、歯の詰め物や義肢といった金属部分を取り除くと、あとには無菌状態の粉が残ります。

フリーズドライ埋葬もなかなか衝撃的ですが、もうひとつの方法はさらに不安感をあおるものとなっています。それは、絹のバッグの中に入れられた遺体を、160度まで加熱したアルカリ性溶液の中に沈めるというものです。血肉や内臓、骨はすべて溶かされ、緑がかった茶色の液体と粉の混合物になります。

これまでに創作されてきたSF映画の不気味なエンディングにも似た「環境に優しい埋葬」ですが、遺体を処理する持続可能な方法として注目されています。イギリスでは遺体を埋葬する土地の不足も問題になっていますが、その一方で遺体を火葬した場合も、平均573ポンド(約259.9kg)の二酸化炭素が排出されます。現状では、英国で許されているのは火葬と土葬のみですが、多くの議会は次世代の埋葬方法に対する関心を示しています。

先ほど述べた環境に優しい埋葬方法「Promession」は、1999年にスウェーデンの生物学者によって発明されました。そして遺体の処理を行うための設備「Promatoria」が、2011年後半に英国、スウェーデン、そして韓国にオープンする予定です。

この新たな埋葬方法は、アメリカの6つの州ですでに承認されてもいます。また、スコットランドのResomation株式会社は新たな葬儀の方法を導入するかどうか、英国の政府当局と会談しています。

確かに火葬の必要がないので二酸化炭素排出は抑えられ、広い墓地の確保も不要となる合理的な方法かもしれませんが、これまでのお葬式のスタイルを覆す手法は大きな議論を呼びそうです。


・「人間の遺体を堆肥にして葬る」という堆肥葬を認める法律がアメリカで初めて承認される(Gigazine 2019年05月23日)



※2019年5月21日、法案5001号がアメリカ・ワシントン州知事の署名を受けて成立しました。この法案は埋葬や火葬の他に「遺体を『有機還元』と『加水分解』というプロセスでも処理することを認める」というもので、2020年5月1日からアメリカのワシントン州では「堆肥葬」が合法化されることとなります。

アメリカでポピュラーな葬送方式は、埋葬か火葬です。埋葬はエンバーミング処理を施した遺体を棺に入れて墓に納めるもので、火葬は遺体を焼いた後に残る骨だけを墓に納めるもの。キリスト教文化圏では基本的に埋葬が採用されることが多いのですが、埋葬はコストがかかる上に、遺体のエンバーミング処理による土壌汚染が問題化していることもあり、近年は火葬が増えているそうです。実際、アメリカの火葬協会によると、2018年ではアメリカ全体で53.1%と、過半数のアメリカ人が伝統的な火葬を選択しているとのこと。

しかし、火葬は斎場などの施設が必要で、密集する都市空間においては火葬場の確保が切実な問題となっています。そこで近年、「遺体を堆肥にして自然に返す」「棺の代わりにきのこの胞子を縫い込んだスーツを着せて分解する」「生分解性の凍結乾燥」など、新しい葬送方式が考案されています。例えば、2019年3月に脳卒中でこの世を去った俳優のルーク・ペリーは「きのこスーツ」で埋葬されたと、ペリーの娘がInstagramで明かしました。

シアトルで「Urban Death Project」という非営利団体を立ち上げたKatrina Spade氏は、アメリカで最初の「人体用コンポスター」の設置を考えている人物です。Spade氏の考案する「堆肥葬」とは、再利用可能な六角形型のコンポスターの中で遺体を堆肥化するというもの。堆肥となって完全に土と一体になったら、遺族は土の一部を家に持ち帰って、敷地内の庭に埋めることができます。しかし、人の遺体を扱う以上、こうした新しいアイデアをサービスとして提供するためには法的な問題をクリアしなければなりません。

Spade氏はワシントン州とノースカロライナ州の科学者と共同で「人体が土壌でどのように分解されるか」の研究を行い、「人間が分解して得られた堆肥は州や国の安全基準を満たしている」という結論を得ました。そして、Spade氏は科学者・弁護士などの専門家からなる諮問委員会を組織し、2016年頃から政治家に「堆肥葬の合法化」を訴えかけていたそうです。

2018年12月、ついに遺体の堆肥化とアルカリ加水分解を認める法案が提出され、1月から審議が開始されました。その後、ワシントン州議会の下院で賛成80票・反対16票、上院では賛成36票・反対11票で可決通過となり、2019年5月21日にワシントン州知事による署名を受けて、正式に法律として成立。施行されるのは2020年5月1日からとのことです。

ワシントン州在住の元看護師であるWes McMahan氏はThe Seattle Timesの取材に対して、「私は人体の堆肥化に強く賛成します。自分の体を使い終わったら、ホルムアルデヒドなどの防腐剤で毒したいですか?私は、長い間体の中で働いてきたバクテリアたちになすがままにさせる機会を与えたいと思っていますし、可能な限り自然に従って物事が進むべきだと信じています」と答えました。


・世界初の「人間の死体を堆肥化する施設」が2021年にオープン予定(Gigazine 2019年12月11日)

※世界初の「堆肥葬」の実現を目指すワシントン州の非営利団体Recomposeと、アメリカの建築設計事務所Olson Kundig Architectsが、2021年に全く新しい堆肥葬用の施設をオープンさせると発表しました。

日本ではほぼ全ての死者が火葬されるほか、アメリカでは火葬に加えて伝統的な土葬も行われています。しかし、土葬には広大な土地や多額の費用を要するという問題があるほか、火葬にも大量の燃料を消費したり、遺体に含まれる汚染物質で環境や人体に影響を与えたりするという問題が指摘されています。

そこで、土葬や火葬の問題を解決しつつ、安価かつ環境に優しい葬送方法としてRecomposeが提案しているのが「堆肥葬」です。Recomposeの働きかけにより、ワシントン州は2019年5月に「遺体を『有機還元』と『加水分解』というプロセスで処理することを認める」法案を可決。2020年5月の施行をもって、ワシントン州で堆肥葬が合法化されました。

堆肥葬では、遺体は棺おけではなく再利用可能なモジュール式の容器に収容されます。



容器の中は木材チップで満たされており、遺体はおよそ30日間かけて微生物により分解され、堆肥に変わります。歯や骨なども含めて個人の肉体は全て土になりますが、ペースメーカーや金属製のインプラントなど、無機物や微生物が分解できない有機物は処理過程で取り除かれます。また、有害な微生物などの病原体も分解されるので、病死した人も堆肥葬にすることが可能ですが、エボラ出血熱のように非常に感染性の高い病気で亡くなった人や、原因物質が微生物で分解できると立証されていないクロイツフェルト・ヤコブ病などのプリオン病で死亡した人は対象から除外されるとのことです。

Recomposeによると、1人を堆肥葬にすることで得られる堆肥はおよそ1立方ヤード(0.76立方メートル)です。「遺体を肥料にする」という発想自体は、かねてから樹木葬という形で行われてきましたが、埋葬した遺体のそばに木を植える樹木葬とは異なり、堆肥葬では遺体は肥料になるので、遺族が持ち帰ったり、緑化団体に寄付したりすることができます。

費用は1人あたり5500ドル(約60万円)と見積もられており、ワシントンでの標準的な樹木葬にかかる費用の6000ドル(約65万円)、火葬の1000~7000ドル(約11万円~76万円)、埋葬の8000ドル(約87万円)に比べて低コストに抑えられています。また、全過程に必要なエネルギーは火葬の8分の1で、土葬と違って遺体による土壌や地下水の汚染もないので、従来の葬送方法に比べて環境への負荷も最小限度になります。

最初の堆肥葬施設であるRecompose Seattleは、シアトル近郊のSODO(South of Downtown)地区に建設され、2021年春にオープンする予定です。施設ではワシントン州以外からの遺体の受け入れも行うとしており、搬入さえ可能であればアメリカ国外からの遺体も収容できるとのことです。