以下「In Deep」様より転載
https://indeep.jp/self-spread-vaccine-is-coming/
(前略)
※昨年、「自己拡散型ワクチン」という言葉を聞いたことがあります。
夏頃だったか、まだコロナワクチンの実用化など夢にも思っていなかった頃でしたので、あまり気にしていませんでしたが、多くの科学メディアで報じられていました。
それも少しご紹介させていただきます。
自己拡散型ワクチン
読みましたのは、以下の米ニューサイエンティストの記事においてでした。
日付けを見ますと、2020年8月の記事です。
We now have the technology to develop vaccines that spread themselves
私たちは今、自分自身で拡散することができるワクチンを開発するテクノロジーを持っている
この記事の内容は、たとえば、恐ろしい感染症のひとつとして狂犬病がありますが、狂犬病は「犬に予防接種をする」ことで、世界の主要国では、著しく狂犬病を減少させることができた、という話から始まります。
これは事実ですが、次に話は「コウモリ」に移ります。この記事の出た昨年の 8月頃は、新型コロナウイルスが「コウモリからヒトに伝染した」と思われていた頃でしたが、他にも、エボラウイルス、マールブルグ熱、SARSウイルス、ラッサウイルスなど、コウモリが媒介しているとされる病気はたくさんあります。
ならば、「たとえば、コウモリの間で流行しているコロナウイルスのような、動物の間の病原体をワクチンで撲滅することができれば、狂犬病のように、人の感染症も減少するだろう」ということにふれ、しかし、犬に予防接種を打つことは簡単でも、「ジャングルの中のコウモリたちに、ひとつひとつワクチンを打つことは不可能」であるわけですが、
「自身で伝染していくタイプのワクチンが開発できれば、数匹のコウモリにそれを打って森に放出するだけでコウモリの病気の流行を防ぐことができる」
という話です。
コウモリに接種されたワクチンは、接触や他の感染媒体により「自ら拡散することで多くのコウモリにワクチン効果を伝染させることができる」と。
そして、タイトルにもあります通り、「今の科学はその技術を持っている」という記事でした。
当時、そのことを文書でリリースしていたのが、米ジョンス・ホプキンスだったのですが、その 71 ページにのぼる PDF 書類の中に、その「自己拡散型ワクチン」についての記述があります。
そのページにあるイラストで、この自己拡散型ワクチンの雰囲気がわかります。
以下のイラストです。
ひとりにワクチンを打てば、あとは次から次へとワクチンが「接触や飛沫から勝手に伝染」していくことが示されています。

ジョンス・ホプキンスによる自己拡散型ワクチンの説明ページ
今回はこのページをご紹介して締めさせていただきたいと思います。
ジョンス・ホプキンスのこの文書は、以下にあります。
https://www.centerforhealthsecurity.org/our-work/pubs_archive/pubs-pdfs/2018/181009-gcbr-tech-report.pdf
Technologies To Adress Global Catastrophic Biological Risks
世界的な壊滅的生物学的リスクに対処するテクノロジー
ジョンス・ホプキンス『世界的な壊滅的生物学的リスクに対処するテクノロジー』 47ページ
自己拡散型ワクチン
これはどのような技術なのだろうか。
自己拡散型ワクチン(伝染性ワクチンまたは自己増殖ワクチンとしても知られる)とは、伝染病と同じように集団内を移動するように遺伝子操作されているが、病気を引き起こすのではなく、病気への防御をもたらす。
このビジョンは、対象集団の少数の人にワクチンを接種することだけで、ワクチン株が病原性ウイルスのように集団内を循環することにある。
これらのワクチンは、個人すべてに接種する必要なしに、ヒトまたは動物の集団におけるワクチンの適用範囲を劇的に増加させる可能性がある。
このテクノロジーは現在、主に動物集団を対象としている。
ほとんどの感染症は人獣共通感染症であるため、動物集団の病気を制御することで、人間へのリスクも軽減される。
自己拡散型ワクチンには、組換えベクターワクチンと生ウイルスワクチンの 2つの主要なタイプがある。組換えベクターワクチンは、免疫を誘導する病原性ウイルスの要素(病気を引き起こす部分を取り除く)を伝染性ウイルスベクターと組み合わせる。
サイトメガロウイルスは、種特異性が高く、中程度に感染するため、組換えワクチンの候補ベクターの 1つだ。
生ウイルスワクチンは弱毒化されている。ワクチンウイルスは野生型よりもはるかに病原性が低く、稀にワクチンがヒトからヒトへ伝染することが知られている経口ポリオワクチンや生弱毒化インフルエンザワクチンと同様といえる。
ウイルスの遺伝子工学には技術的なハードルがあるが、CRISPR / Cas9 (遺伝子の編集技術)などの合成生物学ツールは、今後これらのハードルを克服する上で研究者を支援する可能性がある。
自己拡散型ワクチンは、野生のウサギを粘液腫症から保護し、げっ歯類の集団でシンノンブルウイルスを制御するためにすでに使用されている。
追加の作業は、類人猿とコウモリのエボラウイルス、ラットのラッサウイルス、アナグマのウシ結核を標的にしている。
自己拡散ワクチンの最も実用的で有用な用途は、野生動物集団における病気の蔓延を制御することだ。
ワクチンは、ヒト以外の霊長類、コウモリ、またはげっ歯類を含む標的集団の中のホットスポットにあるいくつかの選択された動物に投与される。その後、ワクチンは標的集団内に広がり、各動物にワクチン接種する必要がなくなる。
動物集団での病気の制御が成功すると、感染した動物の数が制限され、それによって病気がヒトに波及する機会が減り、ヒトにその病気が発生する前に発生を防ぐことができる。
このような戦略は、ヒトの病気の発生機会の総数を減らすことにはなるだろうが、ヒトでの感染が確立された場合、ヒトの間での病気の発生を中断することはできない。そのため、重大な公衆衛生上の脅威が発生した場合、自己拡散ワクチンを(ヒトに)使用することで、人口に広く接種することができる可能性がある。
動物でのアプローチと同様に、より多くの感受性の高い集団に保護を与えるために必要なワクチン接種者は少数であるため、大量のワクチン接種操作の必要性がなくなる。
ここまでです。
https://indeep.jp/self-spread-vaccine-is-coming/
(前略)
※昨年、「自己拡散型ワクチン」という言葉を聞いたことがあります。
夏頃だったか、まだコロナワクチンの実用化など夢にも思っていなかった頃でしたので、あまり気にしていませんでしたが、多くの科学メディアで報じられていました。
それも少しご紹介させていただきます。
自己拡散型ワクチン
読みましたのは、以下の米ニューサイエンティストの記事においてでした。
日付けを見ますと、2020年8月の記事です。
We now have the technology to develop vaccines that spread themselves
私たちは今、自分自身で拡散することができるワクチンを開発するテクノロジーを持っている
この記事の内容は、たとえば、恐ろしい感染症のひとつとして狂犬病がありますが、狂犬病は「犬に予防接種をする」ことで、世界の主要国では、著しく狂犬病を減少させることができた、という話から始まります。
これは事実ですが、次に話は「コウモリ」に移ります。この記事の出た昨年の 8月頃は、新型コロナウイルスが「コウモリからヒトに伝染した」と思われていた頃でしたが、他にも、エボラウイルス、マールブルグ熱、SARSウイルス、ラッサウイルスなど、コウモリが媒介しているとされる病気はたくさんあります。
ならば、「たとえば、コウモリの間で流行しているコロナウイルスのような、動物の間の病原体をワクチンで撲滅することができれば、狂犬病のように、人の感染症も減少するだろう」ということにふれ、しかし、犬に予防接種を打つことは簡単でも、「ジャングルの中のコウモリたちに、ひとつひとつワクチンを打つことは不可能」であるわけですが、
「自身で伝染していくタイプのワクチンが開発できれば、数匹のコウモリにそれを打って森に放出するだけでコウモリの病気の流行を防ぐことができる」
という話です。
コウモリに接種されたワクチンは、接触や他の感染媒体により「自ら拡散することで多くのコウモリにワクチン効果を伝染させることができる」と。
そして、タイトルにもあります通り、「今の科学はその技術を持っている」という記事でした。
当時、そのことを文書でリリースしていたのが、米ジョンス・ホプキンスだったのですが、その 71 ページにのぼる PDF 書類の中に、その「自己拡散型ワクチン」についての記述があります。
そのページにあるイラストで、この自己拡散型ワクチンの雰囲気がわかります。
以下のイラストです。
ひとりにワクチンを打てば、あとは次から次へとワクチンが「接触や飛沫から勝手に伝染」していくことが示されています。

ジョンス・ホプキンスによる自己拡散型ワクチンの説明ページ
今回はこのページをご紹介して締めさせていただきたいと思います。
ジョンス・ホプキンスのこの文書は、以下にあります。
https://www.centerforhealthsecurity.org/our-work/pubs_archive/pubs-pdfs/2018/181009-gcbr-tech-report.pdf
Technologies To Adress Global Catastrophic Biological Risks
世界的な壊滅的生物学的リスクに対処するテクノロジー
ジョンス・ホプキンス『世界的な壊滅的生物学的リスクに対処するテクノロジー』 47ページ
自己拡散型ワクチン
これはどのような技術なのだろうか。
自己拡散型ワクチン(伝染性ワクチンまたは自己増殖ワクチンとしても知られる)とは、伝染病と同じように集団内を移動するように遺伝子操作されているが、病気を引き起こすのではなく、病気への防御をもたらす。
このビジョンは、対象集団の少数の人にワクチンを接種することだけで、ワクチン株が病原性ウイルスのように集団内を循環することにある。
これらのワクチンは、個人すべてに接種する必要なしに、ヒトまたは動物の集団におけるワクチンの適用範囲を劇的に増加させる可能性がある。
このテクノロジーは現在、主に動物集団を対象としている。
ほとんどの感染症は人獣共通感染症であるため、動物集団の病気を制御することで、人間へのリスクも軽減される。
自己拡散型ワクチンには、組換えベクターワクチンと生ウイルスワクチンの 2つの主要なタイプがある。組換えベクターワクチンは、免疫を誘導する病原性ウイルスの要素(病気を引き起こす部分を取り除く)を伝染性ウイルスベクターと組み合わせる。
サイトメガロウイルスは、種特異性が高く、中程度に感染するため、組換えワクチンの候補ベクターの 1つだ。
生ウイルスワクチンは弱毒化されている。ワクチンウイルスは野生型よりもはるかに病原性が低く、稀にワクチンがヒトからヒトへ伝染することが知られている経口ポリオワクチンや生弱毒化インフルエンザワクチンと同様といえる。
ウイルスの遺伝子工学には技術的なハードルがあるが、CRISPR / Cas9 (遺伝子の編集技術)などの合成生物学ツールは、今後これらのハードルを克服する上で研究者を支援する可能性がある。
自己拡散型ワクチンは、野生のウサギを粘液腫症から保護し、げっ歯類の集団でシンノンブルウイルスを制御するためにすでに使用されている。
追加の作業は、類人猿とコウモリのエボラウイルス、ラットのラッサウイルス、アナグマのウシ結核を標的にしている。
自己拡散ワクチンの最も実用的で有用な用途は、野生動物集団における病気の蔓延を制御することだ。
ワクチンは、ヒト以外の霊長類、コウモリ、またはげっ歯類を含む標的集団の中のホットスポットにあるいくつかの選択された動物に投与される。その後、ワクチンは標的集団内に広がり、各動物にワクチン接種する必要がなくなる。
動物集団での病気の制御が成功すると、感染した動物の数が制限され、それによって病気がヒトに波及する機会が減り、ヒトにその病気が発生する前に発生を防ぐことができる。
このような戦略は、ヒトの病気の発生機会の総数を減らすことにはなるだろうが、ヒトでの感染が確立された場合、ヒトの間での病気の発生を中断することはできない。そのため、重大な公衆衛生上の脅威が発生した場合、自己拡散ワクチンを(ヒトに)使用することで、人口に広く接種することができる可能性がある。
動物でのアプローチと同様に、より多くの感受性の高い集団に保護を与えるために必要なワクチン接種者は少数であるため、大量のワクチン接種操作の必要性がなくなる。
ここまでです。