・ニセ科学「ホメオパシー」の実践が危険な理由 毒物の「ヒ素」でさえ薬にしてしまう謎理論(東洋経済ONLINE 2019年7月15日)

名取 宏 : 内科医

※民間療法「ホメオパシー」。ヨーロッパ発祥の民間療法の実践が危険な理由とは? 同療法に詳しい内科医の名取宏(なとり ひろむ)氏が解説する。

みなさんは「ホメオパシー」という言葉を聞いたことがありますか? ヨーロッパ発祥の民間療法の一種なのですが、日本では主に妊婦さんや出産後のお母さん方のあいだでホメオパシーが使われています。助産師から勧められたり 、母親同士のネットワークで広まったりしているようです。

みなさんも子育て中に「自然療法のホメオパシーを始めたんだけど、子どもの免疫力が上がって副作用もなくて、薬にも頼らなくてすむし本当にいいよ。やってみない?」と声をかけられることがあるかもしれません。ホメオパシーの利用者は、子どもに対しては化学物質を避け、できるだけ安全で安心なものを使いたいと考えている人に多いようです。

「ヒ素」が薬になる独自理論

ホメオパシーには、毒物を薄めると毒を打ち消す薬になり、しかも薄めれば薄めるほど効果が強くなるという独特の考え方があります。ヒ素が毒物であることは、みなさんご存じですね。そのヒ素を水やアルコールといった液体に溶かし、10倍や100倍に薄めて振り混ぜることを何十回も繰り返し、最終的にその液体を砂糖玉に染み込ませたものが、ヒ素の毒に効くという理屈です。

この砂糖玉を「レメディ」と言います。レメディは錠剤に似ていて、いかにも薬という形をしていますが、薬効成分は含まれていません。物質としてのヒ素は何度も繰り返し薄められているため、ヒ素のレメディには残っていません。

元の成分は含まれていないため、安全だというわけです。元の成分が残っていないのになぜ効果を発揮するのかというと、ヒ素の情報が水に記憶されているのだそうです。水の記憶は「バイタルフォース」や「波動」といった一見科学的に思える用語で説明されることもあります。

「ホメオパス」と呼ばれるホメオパシーの「専門家」がいるにはいますが、民間のホメオパシーの団体が独自に認定した資格にすぎず、国家資格ではありません。「水の記憶」や「波動」にも科学的根拠はありません。

ホメオパシーの理論で言えば、ヒ素のレメディはヒ素中毒に効くはずですが、実際にはヒ素中毒に対してではなく、不安や焦燥感に使われています。ヒ素中毒が、不安や焦燥感といった精神症状を引き起こすからでしょう。よく言えば柔軟で、悪く言えばいい加減です。

ヒ素だけでなく、ほかにもじつに多種類のレメディがあります。アロエ、ベラドンナ、毒グモ、ヒゼンダニ、犬の乳、亜鉛、硫黄、水銀など。変わったものでは、ベルリンの壁のレメディや般若心経のレメディがあります。

民間療法というより「加持祈祷」のたぐい

般若心経のレメディがいったい何に効くというのでしょうか。ホメオパシーの理論によると、般若心経のレメディは般若心経によって生じる症状に効くことになりますが、あるホメオパス(ホメオパシー治療を行う者)のブログによれば、成仏していない霊の憑依(ひょうい)や生霊に使うのだそうです。

もはや民間療法というより加持祈禱の類ですね。生霊に効かすつもりなら、生霊を何度も繰り返し薄めたレメディを使わなければならないはずですが、さすがに材料の生霊が手に入らなかったのでしょう。

また、レメディは結構お高いです。例えば、小ビンに入った般若心経のレメディはネットショッピングのサイトで税込2052円で売られていました。ホメオパシーでは症状に合わせてレメディを選んで使うので、多種類のレメディを準備しなければなりません。

よく使う種類のレメディがセットになったものは1万円以上の値段がついています。ホメオパスに相談すると、これまたお金がかかります。保険はききませんので全額自費です。

値段が高くても、効けばまだいいでしょう。でも、これらのレメディに効果はありません。薬に効果があるかどうかは、その薬と似たニセの薬と比べてみることで証明できますが、臨床試験でレメディに似せたニセの薬と比較したところ、差がないことがはっきりわかっています。

レメディには薬効成分は残っていませんから当然です。

でも、効果だけあって副作用はないようなよいものであれば、病院でも使われているはずではないでしょうか。日本でホメオパシーを利用している医師は、きわめて少数です。

レメディに特別な効果がなくても、効いたように誤解することはあります。例えば、不安に効くとされるヒ素のレメディを飲んで、不安がやわらぐこともあるでしょう。レメディに特別な効果がなくても、単になんだか薬っぽいものを飲んだことが安心感をもたらすのです。あるいはレメディを使ったあとに風邪が治ったとして、単に自然治癒しただけなのにレメディが効いたと誤認することもあります。

つまり、ホメオパシーは、いわばおまじないのようなもの。転んで膝を擦りむいた子どもに、「いたいのいたいの、とんでけー」と言ってあげると泣き止むのと同じです。薬効成分が含まれていないレメディには副作用はありません。おまじないとしてはよくできています。ホメオパシーがヨーロッパにおいて伝統的な民間療法として残ってきたのも、こうした理由があるのでしょう。おまじないですから、ベルリンの壁でも般若心経でもなんでもありなのです。

おまじないとしてだけ使用されていれば、ホメオパシーの問題点は高価であることくらいでした。しかし、残念なことに、おまじない以上の効果が信じられているせいで、子どもに実害が生じています。

インターネットでは、さまざまなホメオパシーの体験談が語られています。例えば、中耳炎の子どもに対して母親がホメオパシーによる治療を続け、2週間以上も高熱が続いたケースでは、祖父母から「孫を殺す気か」と言われて総合病院を受診し入院となりました。

ホメオパシーは単なるおまじないだとわかっていれば、数日も熱が続けば病院を受診するでしょうに。この事例は、子どもに必要かつ適切な医療を受けさせていないので、児童虐待の一種である医療ネグレクトとみなされます。

ホメオパシーは「ワクチンは毒だ」という主張と結びついていることもあります。ホメオパシー団体の言い分によると、「ワクチンの成分を薄めたレメディによって病気が治った。よって、ワクチンは病気の原因に違いない」ということのようです。

しかし、先に述べたとおり、レメディによって本当に病気が治ることは証明されていません。レメディを使ったことによる安心感や、レメディが効くに違いないという思い込みから、病気が治ったと誤認しただけだと私は思います。

ホメオパシーの有害な考えが引き起こした死亡事例もあります。赤ちゃんは出血を予防するビタミンKが不足しがちなため、本来は生後すぐにビタミンKのシロップが与えられます。

しかし、ホメオパシー団体の指導者は、「ビタミン剤の実物の投与があまりよくないと思うので、私はレメディーにして使っています」「ホメオパシーにもビタミンKのレメディーはありますから、それを使っていただきたい」などと言っていました。

2009年、ビタミンK欠乏症による出血で生後2カ月の赤ちゃんが亡くなるという事件がありました。その赤ちゃんは、ホメオパシー団体に所属している助産師によって、本物のビタミンKではなく、ビタミンKのレメディを与えられていたのです。ビタミンKのレメディはただの砂糖玉ですから、ビタミンKの代わりにはなりません。

医療関係者でさえ信じていた

ホメオパシーの指導者たちも、助産師もホメオパシーがおまじないであることをわかっていなかったのです。この事件は民事訴訟になり、助産師側が和解金を払うことで和解が成立しました。でも、いくらお金をもらっても、赤ちゃんの命は戻りません。

この事件を受け、日本学術会議は「ホメオパシーに頼ることによって、確実で有効な治療を受ける機会を逸する可能性があることが大きな問題」「医療関係者がホメオパシーを治療に使用することは認められません」という会長談話を発表しました。

しかし、残念ながら、医療従事者であるはずの助産師の中には、ホメオパシーを使用している人もいます。

日本助産師会は「助産師がホメオパシーを医療に代わるものとして使用したり、勧めたりすることのないよう、継続的な指導や研修を実施し、会員への周知徹底」を図っています。もしみなさんが、助産師からホメオパシーを勧められたとしたら、その助産師は日本助産師会の指導に反しているものと思ってください。

ホメオパシーを使用していた助産師は、自然な出産にこだわりがあったようです。ホメオパシーが受け入れられる背景に「自然は安全で、薬や注射は不自然で危険」という思い込みがあると思います。

自然が本当に安全なのか、よく考えてみましょう。医学が発展するまでは、たくさんの子どもたちが死んでいました。死亡統計がとられるようになった明治時代には、1年間における乳児死亡率は1000人あたり約150人でした。

ホメオパシーが危険なシンプルな理由

現在の日本の乳児死亡率は1年間において1000人あたり約2人。

つまり、1歳になるまでに1000人の赤ちゃんのうち2人くらいが亡くなるということです。これは歴史的に見ても、現代において他国と比較しても大変少ない数です。

明治時代の日本では、現代の日本と比べて、約75倍もの赤ちゃんが亡くなっていました。江戸時代には、子どもの半数が成人するまでに死んだといいます。その死因の多くが天然痘(てんねんとう)や麻疹といった感染症でした。

本来の「自然」は、多産多死です。現在の日本の社会では子どもが亡くなることが珍しくなったためか、自然が本来安全ではなかったことが忘れられています。

「自然は安全」という誤解に基づいて適切な医療を遠ざけるからこそ、ホメオパシーは危険なのです。


・予防接種とホメオパシー ~ハーネマンの時代~

https://ameblo.jp/homeopathie-france/entry-12320152443.html

https://ameblo.jp/homeopathie-france/entry-12320455713.html

※ホメオパシーから見た予防接種についてお話しますね。

昔から、感染症と戦うために、人々はワクチンを作っていたようです。

予防接種の父ともいわれているエドワード・ジェンナー(1749-1823)は牛痘を使って天然痘の予防接種を初めて行った人です。

ホメオパシーの父、サムエル・ハーネマン (1755-1843)と同世代の人です。

ジェンナーやハーネマンのころはまだ微生物の概念が生まれただけで、まだ微生物の存在は解明されていなかったので、その中で予防接種を試したということに、私は敬意を表します。

ハーネマンは最初はジェンナーの予防接種に賛成でした。

なぜなら、似たものを似たもので治療するという、ホメオパシーの基本理論の一つである同種療法だったからです。

しかし、天然痘の予防接種のひどい副反応でハーネマンのところにやってくる患者を診ているうちに、ハーネマンはこの予防接種に疑問を持ち、批判するようになりました。

その直接の弟子である、クレメンス・フォン・ベニングハウゼン や コンスタンチン・ヘリングも天然痘の予防接種を危険なワクチンであると批判しています。

実際、ジェンナーのワクチンは、成功と言われるものからは程遠かったようです。ジェンナーの家族は、この予防接種後に重大な副反応に悩まされました。

それでもジェンナーは、天然痘の予防接種を広め続けました。

もちろん、重大な副反応とともに。

最終的には天然痘は、公衆衛生と医療体制(天然痘罹患者の隔離、監視など)の改善により、(医療業界は予防接種のおかげだというでしょうが)撲滅されました。

ところで、ジェンナーの開発した天然痘ワクチンとホメオパシーの治療法、どれも同種療法なのですが、何が違うのでしょうか?

同じ点

 ・同種療法である

大きく違う点

1. 治療に対しての根本的な考え方

 ・ジェンナー➡病気そのものに対して、似た物で予防

 ・ハーネマン➡基本的に予防はなし。(例外あり)

なぜなら、健康時のダイナミックと病気時のダイナミックは違うから。

病気になって治療が必要な時のみ、同じ波動のホメオパシーのレメディを服用します。

本来、病気はレーベンスクラフト(Lebenskraft 、直訳すれば「生命力」)「バイタルフォース」がダイナミックな病気をおこさせる作用因子によって調子が悪くなったもので、ダイナミックな変化です。

それは体内の物質的、非物質的な変化、または精神的な肉体的な変化と言えます。

そして、その影響は、表面にあらわれてこなくても、体中に影響を及ぼしているのです。

その為には、ダイナミックなもので(ホメオパシーのレメディ)で、病気自体ではなく、レーベンスクラフト「バイタルフォース」に働きかけなければいけないのです。

波動療法的に言えば、本来健康時に違う波動を投げかけられれば、波動が乱れるだけなのです。

実際にハーネマンはこの予防接種の副反応で苦しむ人たちを目の当たりにしてきました。そして、ホメオパシーのレメディでその人たちを治療しました。

ハーネマンは、このように、予防接種を批判するようになっていったのです。


・ホメオパシーの科学的根拠とされノーベル賞候補が主張した「水の記憶」とは何か?(GIGAZINE 2018年1月3日)

※本来であれば体に毒である物質を限りなく希釈したものを錠剤として飲むことで病気を治療するという「ホメオパシー」は、医学的な根拠がないにも関わらず広まりを見せているとしてアメリカを中心に近年問題視されています。しかし、ホメオパシー肯定派には「科学的根拠」が存在します。ホメオパシーの科学的根拠とされる「水の記憶」には、ある著名な研究者が大きく関わっていました。

「毒をもって毒を制す」の考え方で、その病気や症状を起こしうる物や薬を水で極度に希釈したものを投与することで病気の治療を行うという「ホメオパシー」はアメリカでは多くの人が利用しており、薬局では「ホメオパシー」とラベルが表示されている薬が販売され、ホメオパシー医師も存在します。このようなホメオパシーの薬は「喉の痛みにハーブティー」というレベルの内容ではなく、「ガンが治療できる」といったものも存在するため、かねてから問題視されていました。

アメリカ食品医薬品局(FDA)のホメオパシーについての規制が緩やかだったために、上記のような薬がはびこることになってしまっていたのですが、2017年12月18日(月)、FDAは危険あるいは不正な広告を行っているホメオパシー製品を厳しく取り締まっていく旨を発表しました。

ホメオパシーが有効とされる科学的根拠は、たとえ検知できないくらいに物質を希釈しても水素結合が変化するという「水の記憶」とされています。これは1979年に血小板活性化因子(PAF)の構造とヒスタミンとの関係についての著名な論文を発表した免疫学者のジャック・バンヴェニスト氏が、1988年になって「極度に抗体を希釈した後でも水溶液は抗原抗体反応を引き起こす能力を保持し続ける」、つまり「水は以前その水に溶けていたものを覚えている」といった内容の論文を発表したことから生まれた言葉。論文はNatureに掲載されたため大きな論争を巻き起こし、最終的には科学的反証のすえに否定されることになりました。そしてバンヴェニスト教授の論文は1991年に第一回のイグノーベル賞を受賞するに至っています。

イグノーベル賞は「人々を笑わせ、そして考えさせてくれる研究」に対して与えられるものですが、バンヴェニスト教授はジョークとして研究を発表したわけではありません。バンヴェニスト教授はパリ大学医学部を主席で卒業して研究者となり、生涯で2度ノーベル賞候補にノミネートされた人物であり、「水の記憶」についても大まじめでした。

現代の科学者の多くはバンヴェニスト教授の論文に否定的です。オレゴン州立大学の化学者であるメイ・ニーマン教授も水の記憶について「理にかなわない」とばっさり切り捨てています。「水の分子たちは互いに関わり合いながら絶えず回転しています。水素結合したり、結合を壊したりしながらです。言い換えると、水溶液の中には長期的な記憶を行えるような、半永久的な構造が存在しないのです」とニーマン教授はコメントしました。

また、極度に希釈された水溶液の中に物体が残っていたとしても、体に取り込まれた瞬間に消滅する、と研究者らは説明。人間の口の中は細菌・体液・ランチの残りもので溢れており、水に触れた瞬間にそれらが広がるので、水溶液に含まれるわずかなイオンの構造は圧倒されてしまうとのこと。また、胃の中には強い胃酸があり水素結合に大きなインパクトをもたらすことからも、仮に水の記憶が存在したとしても、体の仕組み上、一掃されてしまうと考えられるわけです。

イギリスホメオパシー協会(BHA)はホメオパシーの科学的根として水の記憶の他に「クランピング(群生)」を挙げています。これは、人間の目には見えないレベルで残っている物質の塊が体内でガスを発生させ服用者の体内でポジティブな効果を生み出すというもの。

水溶液の中で物質の分子は互いにくっつきやすく、ガス抜きをしなかった液体は確かに気圧が変化すると発泡します。しかし、群生や発泡といった現象はどんな水溶液においても起こりうることであり、ホメオパシーのレメディだけが持つ効果ではないとニーマン教授。

そして、化学者らがホメオパシー的な考え方において最も大きな欠陥であると考えるのは「極限まで精製された水」を用いるという前提にあることです。

わずかな物質が効果を生み出すためには、その物質が水溶液の中で支配的である必要があるため、極限までに精製された水が必要になります。そして極度に希釈された物質が支配的になる程度にまで水を精製することは、ほぼ不可能。水の中の不純物を取り除けば取り除くほど、水は周囲の環境からイオンを引き寄せ、水の容器でさえも水を汚染するとのこと。

ただし、「少量であれば薬になるが、多く摂取すれば毒になる」というホメオパシーの考え方自体は現代医療に照らし合わせても間違いではありません。人を殺しうるボツリヌス菌を少量投与することで偏頭痛を治したり美容整形をおこなったりという行為は2017年時点でも行われています。ホメオパシーはこのような考え方を極端に捉えたものであり、科学的な根拠はないというのが研究者らの見方となっています。


・「ホメオパシー」への対応について
 
http://jams.med.or.jp/news/013.html

※日本学術会議金澤一郎会長は2010年8月24日付けで下記のような談話を発表しました。日本医師会および日本医学会はその内容に全面的に賛成します。

2010年8月25日

日本医師会会長 原中 勝征
日本医学会会長 髙久 史麿


「ホメオパシー」についての会長談話
 
ホメオパシーはドイツ人医師ハーネマン(1755 - 1843年)が始めたもので、レメディー(治療薬)と呼ばれる「ある種の水」を含ませた砂糖玉があらゆる病気を治療できると称するものです。近代的な医薬品や安全な外科手術が開発される以前の、民間医療や伝統医療しかなかった時代に欧米各国において「副作用がない治療法」として広がったのですが、米国では1910年のフレクスナー報告に基づいて黎明期にあった西欧医学を基本に据え、科学的な事実を重視する医療改革を行う中で医学教育からホメオパシーを排除し、現在の質の高い医療が実現しました。
 
こうした過去の歴史を知ってか知らずか、最近の日本ではこれまでほとんど表に出ることがなかったホメオパシーが医療関係者の間で急速に広がり、ホメオパシー施療者養成学校までができています。このことに対しては強い戸惑いを感じざるを得ません。
 
その理由は「科学の無視」です。レメディーとは、植物、動物組織、鉱物などを水で100倍希釈して振盪(しんとう)する作業を10数回から30回程度繰り返して作った水を、砂糖玉に浸み込ませたものです。希釈操作を30回繰り返した場合、もともと存在した物質の濃度は10の60乗倍希釈されることになります。こんな極端な希釈を行えば、水の中に元の物質が含まれないことは誰もが理解できることです。「ただの水」ですから「副作用がない」ことはもちろんですが、治療効果もあるはずがありません。
 
物質が存在しないのに治療効果があると称することの矛盾に対しては、「水が、かつて物質が存在したという記憶を持っているため」と説明しています。当然ながらこの主張には科学的な根拠がなく、荒唐無稽としか言いようがありません。
 
過去には「ホメオパシーに治療効果がある」と主張する論文が出されたことがあります。しかし、その後の検証によりこれらの論文は誤りで、その効果はプラセボ(偽薬)と同じ、すなわち心理的な効果であり、治療としての有効性がないことが科学的に証明されています。英国下院科学技術委員会も同様に徹底した検証の結果ホメオパシーの治療効果を否定しています。
 
「幼児や動物にも効くのだからプラセボではない」という主張もありますが、効果を判定するのは人間であり、「効くはずだ」という先入観が判断を誤らせてプラセボ効果を生み出します。
 
「プラセボであっても効くのだから治療になる」とも主張されていますが、ホメオパシーに頼ることによって、確実で有効な治療を受ける機会を逸する可能性があることが大きな問題であり、時には命にかかわる事態も起こりかねません。こうした理由で、例えプラセボとしても、医療関係者がホメオパシーを治療に使用することは認められません。
 
ホメオパシーは現在もヨーロッパを始め多くの国に広がっています。これらの国ではホメオパシーが非科学的であることを知りつつ、多くの人が信じているために、直ちにこれを医療現場から排除し、あるいは医療保険の適用を解除することが困難な状況にあります。

またホメオパシーを一旦排除した米国でも、自然回帰志向の中で再びこれを信じる人が増えているようです。
 
日本ではホメオパシーを信じる人はそれほど多くないのですが、今のうちに医療・歯科医療・獣医療現場からこれを排除する努力が行われなければ「自然に近い安全で有効な治療」という誤解が広がり、欧米と同様の深刻な事態に陥ることが懸念されます。そしてすべての関係者はホメオパシーのような非科学を排除して正しい科学を広める役割を果たさなくてはなりません。
 
最後にもう一度申しますが、ホメオパシーの治療効果は科学的に明確に否定されています。それを「効果がある」と称して治療に使用することは厳に慎むべき行為です。このことを多くの方にぜひご理解いただきたいと思います。

平成22年8月24日
日本学術会議会長
金澤 一郎


※ブログ主コメント:私が何を言いたいのかというと、「ワクチンと予防接種はホメオパシーの基礎理論でもある「同種療法」が起源」だということ。これは否定できない歴史的事実である。

ホメオパシーは迷信だが、しかし、そのホメオパシーを叩いている近代科学医療が推奨する「科学的」ワクチン接種も、実は「同種療法」そのものだということである。

例:天然痘を予防するために、弱い牛痘を体に植え付けよう。
例:コロナウイルスを予防するために、コロナウイルスの設計図を接種しよう。