・女性解放が賃金低下をもたらした
 
http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2008/02/16/2632230

※1970年代の記憶として、当時の労働運動における賃上げ闘争の理由は、

>こんな給料でヨメさん子供を食わせられるか?!ヨメさんが働かなくてもやっていける給料を出せ!!>

というものでした。つまり共働きは給料が安いために仕方なくやるものであって、豊かな生活とは主人が働き、妻は専業主婦として一家を切り盛りする、というものでした。

 これは労働者だけでなく、資本家(=雇用者側)も同じ認識でした。だからこそ、賃上げ闘争がかなり成功してきた、というのが当時のことだったと思います。

 ところがこの同時期に知り合いが勤めていた某生活協同組合(理事長が革新系の議員さんで、各理事・管理職もゴリゴリの党員が多かった)でその内実を聞いた時、驚きでした。革新系でいわゆる「搾取」というものはないのだから、そこで働く労働者はそれなりに豊かであろうと思い込んでいたのですが、かなりの低給料でした。

 そしてその生協の専務理事自身が、

>うちの職員には、20万円の給料しか出せないのなら20万円分の生活をしてもらう、15万円の給料しか出せないなら15万円分の生活をしてもらう。共働きは当たり前だ。>

という話を公の席で堂々と発言したのを聞きました。

 利益を目的とする企業(資本主義そのもの)では、社員が共働きしなくても生活できるような給料を出そうと、会社も労働組合も頑張っていたのですが、  他方利益を求めない革新系の事業所(資本主義を否定して社会主義をめざす)では、低給料・共働きは当たり前のところでした。

 このような30年前の状況を知るものにとって、女性解放運動(あるいは男女共同参画とも言うらしい)は、賃下げの理由にはなっても、賃上げには繋がらないのではないかと思えます。女性解放とは自立を意味するのですから、女性も働く(=共働き)が当然の考え方になるからです。

 もし私が会社側の人間であれば、賃上げ要求する労働組合に対しては、それで生活できないならヨメさん働かせなさい、自分の給料では苦しくても共働きすれば生活できますよ、と同情することなく突き放すことでしょう。

 女性解放(=自立)は労働者の賃金低下をもたらした、と私には思えてなりません。


・女性解放と賃金低下

Prof. Nemuro

https://note.com/prof_nemuro/n/nccd8e7f3717c

※これは単に需給と価格の関係だけではなく、賃金決定における暗黙のルールが変更されることでもある。ロナルド・ドーアも「女性運動とジェンダー革命」にこのような効果があることを指摘している。


『「一家の稼ぎ手モデル」が組織内での賃金決定における要因として持っていた規範的な力を失わせ、一般効果として市場個人主義の推進力として働きます。

「一家の稼ぎ手モデル」を労使が共有していた時代には、使用者側にも「労働者の家族が生活できる給料は支払わなければならない」という意識があった。しかし、フェミニズムや個人主義の浸透のためにこのような意識が破壊され、人件費最小化のムーブメントに歯止めがかからなくなってしまった。』


フェミニストが「企業が給料を払いすぎるから女が家庭に縛り付けられる→女性解放・男女平等のためには賃下げが必要」と運動していたことは見逃せない。


「上野千鶴子氏が語る「2020年女性管理職30%」の処方箋」より

『世帯を養える賃金を男1人に払う家族給に支えられた 「男性稼ぎ主モデル」こそ、女性差別の根源なのですよ。

正規雇用者の給料を下げて、夫に600万円払っているのなら、夫に300万円、妻に300万円払うようにすれば、納税者も増えます。』


「バックラッシュ! なぜジェンダーフリーは叩かれたのか?」より

『「男女共同参画社会は、新自由主義的なベクトルとフェミニズムとの妥協の産物だ」というのは、100パーセント正しいと思います。』


革新(→リベラル/改革派/ネオリベラル)が労働者の敵になったことは他の先進国も同じで、アメリカでは民主党、イギリスでは労働党が支持基盤を労働者からマイノリティ(→アイデンティティ・ポリティクス)にシフトしている。