・移民受け入れの仕掛け人と「開国派」の安倍ブレーン人脈とは(NEWSポストセブン 2018年11月12日)
※移民に開国するか、鎖国を続けるのか──臨時国会は外国人労働者50万人の受け入れ拡大をめざす入管法改正案が最大の焦点になっている。
「移民と同じじゃないか」
安倍政権が入管法改正案を閣議決定すると自民党内や保守層から強い懸念の声があがった。この法案は「移民政策はとらない」「単純労働者は受け入れない」という国策を大転換して“労働ビザ”(特定技能ビザ)を新設、現在は原則「技能実習」目的でしか認められていない単純労働者を本格的に受け入れるものだ。
実は、この国策大転換には“仕掛け人”がいる。
「将来の日本人を作るために、今こそ移民受け入れを行なうべきだ」
そう提唱してきた作家・評論家の堺屋太一氏だ。堺屋氏は「成長戦略」担当の内閣官房参与として安倍首相のブレーンを務め、2016年4月に一般社団法人「外国人雇用協議会」を設立して会長に就任すると、政府の諮問会議などで外国人労働者の受け入れ拡大を提案してきた。
同協議会は「質の高い外国人を日本のビジネス社会で最大限に活用できる環境を整える」ことを目的に掲げ、政策提言のほか日本での就労を希望する外国人を対象に上司との会話力や接客能力を評価する「外国人就労適性試験」を実施している。
理事や顧問には、かつて「移民1000万人受け入れ構想」を掲げた中川秀直・元自民党幹事長、政府の産業競争力会議で受け入れ拡大を主張してきた竹中平蔵氏ら安倍ブレーンの学者や“開国派”の経済人がズラリと並んでいる。
堺屋氏は安倍晋三首相出席で開かれた昨年1月20日の国家戦略特区諮問会議で持論をこう力説した。
「日本は歴史的に多くの外国人を取り入れて、その子孫は日本人として日本人社会に溶け込んで参りました。17世紀の前半や19世紀の末に日本に流入した多数の外国人が、日本の伝統文化や新しい文化・習慣の定着のために貢献したことをぜひ思い出していただきたい」
安倍首相は会議の最後にこう総括している。
「東南アジア諸国を訪れ、クールな日本が大好きで、日本語を熱心に勉強している若者たちに出会った。彼らが日本で職に就き、母国から来た観光客に日本の魅力を直接伝えることは、両国にとって経済を超えた大きな価値を生み出す。彼らの期待に応えていかなければならないと強く感じた」
安倍政権はこの後、関係省庁横断の「外国人材の受け入れに関するタスクフォース」を設置して入管法の抜本改正に舵を切る。堺屋氏を中心とする“開国派”のブレーン人脈が首相の背中を押したのは間違いない。
安倍政治は「ブレーン政治」といわれる。現在、首相官邸には、堺屋氏のような民間人出身の「内閣官房参与」が14人(1人は官僚OB、2人は元議員)任命され、総理執務室がある官邸5階や内閣府の本庁舎に部屋を与えられている。
参与は国会議員要覧や各省庁の幹部名簿にも記載されず、一般にはほとんど知られていないが、実は、彼らがこの国を動かし、移民政策をはじめ大きな政策転換を主導するケースが目立つ。
・日本が真実知られずなし崩し的に「移民国家」に変わる現状(SAPIO 2018年11月6日)
※都心のコンビニでは、外国人店員から流暢な日本語で接客されるのが日常の光景。工事現場でヘルメットをかぶった外国人労働者を見かけることも多い。
日本社会が変わりゆくなか、政府が示した入管難民法の改正案に野党が猛反発している。「事実上の移民政策」「2国会、3国会にまたがって議論すべき重要な問題」「拙速だ」──。
改正案では、これまで高度な専門人材に限られていた外国人の就労目的の在留資格を大幅に緩和し、単純労働に従事する外国人にも門戸を開放する。熟練の外国人労働者には家族の帯同も認め、さらに在留期間の更新の上限を設けていないため、「永住」が可能になる。
安倍首相はこれまで「移民政策を取ることは断じてない」と繰り返してきたが、事実上の方針の大転換である。背景には介護や農業、建設などの分野で人手不足が深刻になり、経済界から切実な要請があったことがある。
だが、早くから移民を受け入れてきた欧州では、移民の社会保障コストが大きな負担となり、彼らによって職を奪われた人々が反発して移民排斥運動が起き、極右勢力が台頭している。国民も、雇用の安定や社会保障の問題の解決策を見いだせずにいる。
このように「移民」は副作用が大きく、国のあり方を変えてしまうため、熟議を重ねなくてはならない問題のはずだ。しかし、日本では真実が知らされぬまま議論も尽くされず、なし崩し的に「移民国家」に変わろうとしている。
・安倍政策を支配する「内閣官房参与」という妖怪の実態( NEWSポストセブン 2018年11月14日)
※妖怪が首相官邸を徘徊している。「内閣官房参与」という妖怪が──「共産党宣言」を彷彿させるほどの不気味さだ。官邸主導が特徴の安倍政権において、民間人の彼らはアドバイザーであり、仕掛け人でもあり、時に重要政策の主導権を握っている──その事実を我々国民はどれほど知っているのか。
現在、首相官邸には、安倍晋三首相のブレーンで、かつて「成長戦略」担当の内閣官房参与を務めた作家・評論家の堺屋太一氏のような民間人出身の「内閣官房参与」が14人(1人は官僚OB、2人は元議員)任命され、総理執務室がある官邸5階や内閣府の本庁舎に部屋を与えられている。
内閣官房参与のポストは「大統領型首相」を目指した中曽根内閣時代の総理大臣決定(1987年の「内閣官房に参与を置く規則」)で創設された。身分は非常勤の一般職公務員で報酬は1日3万4200円の日当制。〈参与は首相の諮問に答え、意見を述べる〉と役割が定められている。首相のアドバイザリースタッフにすぎない。
存在が注目されたのは菅直人内閣時代。東日本大震災で福島第一原発事故が発生すると、当時の菅首相は知人の原子力や放射線の専門家を次々に参与に任命し、官邸には15人の参与がひしめいた。その結果、指揮命令系統の大混乱を招いた。
当時、野党だった自民党は「参与が多すぎる」と指摘し、「個人的な友人・知人を顧問・参与に任命するなど公私の区別がついていない」と糾弾していた。
しかし、安倍政権の内閣官房参与の人数も最高15人(今年6月に1人退任)と菅内閣に並び、第2次安倍政権以降の総数は26人にのぼる。
現在の顔ぶれを見ると、役割も出身も様々だ。アベノミクスの金融政策を推進した浜田宏一・米国エール大学名誉教授や国土強靭化の旗振り役として知られる藤井聡・京都大学教授は学者ブレーンの代表格。
一般には馴染みが薄いが、日経ビジネス記者出身の谷口智彦参与は安倍首相が海外で演説する際のスピーチライターで、東京五輪招致を決めた「原発事故の汚染水による影響は完全にブロックされている」という“名演説”も谷口氏の筆とされる。非常勤ながら官邸に毎日出勤し、自民党総裁選をひかえた今年7月には『安倍晋三の真実』を上梓して〈今、安倍総理は世界外交の中心にいる〉と書いた。
一民間人からいきなり官邸に招かれたのが、加藤勝信・厚労相の義理の姉にあたる加藤康子氏だ。安倍首相の父・晋太郎氏の腹心だった故・加藤六月農水相の長女で、産業遺産プロデューサーの肩書きで「松下村塾」など九州・山口の近代化産業遺産の世界遺産登録をめざす運動を行なっていたときに、内閣官房参与に抜擢された。
本人は安倍氏とは「幼馴染み」と語っている(*注)。現在では加藤家の地元・岡山で「康子さんを通せば陳情が官邸に届く」(地元議員)といわれるほど政権中枢に太いパイプを築いている。
【*注/『週刊新潮』(2015年5月21日号)で「私は(加藤)勝信さんよりも、安倍さんの方が話し易い。幼馴染みですから」と語っている】
昨年の総選挙で落選した西川公也・元農水相、前回参院選で落選した荒井広幸・元参院議員も内閣官房参与に起用されている。落選議員の“失業対策”とみられても仕方がない。
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※移民に開国するか、鎖国を続けるのか──臨時国会は外国人労働者50万人の受け入れ拡大をめざす入管法改正案が最大の焦点になっている。
「移民と同じじゃないか」
安倍政権が入管法改正案を閣議決定すると自民党内や保守層から強い懸念の声があがった。この法案は「移民政策はとらない」「単純労働者は受け入れない」という国策を大転換して“労働ビザ”(特定技能ビザ)を新設、現在は原則「技能実習」目的でしか認められていない単純労働者を本格的に受け入れるものだ。
実は、この国策大転換には“仕掛け人”がいる。
「将来の日本人を作るために、今こそ移民受け入れを行なうべきだ」
そう提唱してきた作家・評論家の堺屋太一氏だ。堺屋氏は「成長戦略」担当の内閣官房参与として安倍首相のブレーンを務め、2016年4月に一般社団法人「外国人雇用協議会」を設立して会長に就任すると、政府の諮問会議などで外国人労働者の受け入れ拡大を提案してきた。
同協議会は「質の高い外国人を日本のビジネス社会で最大限に活用できる環境を整える」ことを目的に掲げ、政策提言のほか日本での就労を希望する外国人を対象に上司との会話力や接客能力を評価する「外国人就労適性試験」を実施している。
理事や顧問には、かつて「移民1000万人受け入れ構想」を掲げた中川秀直・元自民党幹事長、政府の産業競争力会議で受け入れ拡大を主張してきた竹中平蔵氏ら安倍ブレーンの学者や“開国派”の経済人がズラリと並んでいる。
堺屋氏は安倍晋三首相出席で開かれた昨年1月20日の国家戦略特区諮問会議で持論をこう力説した。
「日本は歴史的に多くの外国人を取り入れて、その子孫は日本人として日本人社会に溶け込んで参りました。17世紀の前半や19世紀の末に日本に流入した多数の外国人が、日本の伝統文化や新しい文化・習慣の定着のために貢献したことをぜひ思い出していただきたい」
安倍首相は会議の最後にこう総括している。
「東南アジア諸国を訪れ、クールな日本が大好きで、日本語を熱心に勉強している若者たちに出会った。彼らが日本で職に就き、母国から来た観光客に日本の魅力を直接伝えることは、両国にとって経済を超えた大きな価値を生み出す。彼らの期待に応えていかなければならないと強く感じた」
安倍政権はこの後、関係省庁横断の「外国人材の受け入れに関するタスクフォース」を設置して入管法の抜本改正に舵を切る。堺屋氏を中心とする“開国派”のブレーン人脈が首相の背中を押したのは間違いない。
安倍政治は「ブレーン政治」といわれる。現在、首相官邸には、堺屋氏のような民間人出身の「内閣官房参与」が14人(1人は官僚OB、2人は元議員)任命され、総理執務室がある官邸5階や内閣府の本庁舎に部屋を与えられている。
参与は国会議員要覧や各省庁の幹部名簿にも記載されず、一般にはほとんど知られていないが、実は、彼らがこの国を動かし、移民政策をはじめ大きな政策転換を主導するケースが目立つ。
・日本が真実知られずなし崩し的に「移民国家」に変わる現状(SAPIO 2018年11月6日)
※都心のコンビニでは、外国人店員から流暢な日本語で接客されるのが日常の光景。工事現場でヘルメットをかぶった外国人労働者を見かけることも多い。
日本社会が変わりゆくなか、政府が示した入管難民法の改正案に野党が猛反発している。「事実上の移民政策」「2国会、3国会にまたがって議論すべき重要な問題」「拙速だ」──。
改正案では、これまで高度な専門人材に限られていた外国人の就労目的の在留資格を大幅に緩和し、単純労働に従事する外国人にも門戸を開放する。熟練の外国人労働者には家族の帯同も認め、さらに在留期間の更新の上限を設けていないため、「永住」が可能になる。
安倍首相はこれまで「移民政策を取ることは断じてない」と繰り返してきたが、事実上の方針の大転換である。背景には介護や農業、建設などの分野で人手不足が深刻になり、経済界から切実な要請があったことがある。
だが、早くから移民を受け入れてきた欧州では、移民の社会保障コストが大きな負担となり、彼らによって職を奪われた人々が反発して移民排斥運動が起き、極右勢力が台頭している。国民も、雇用の安定や社会保障の問題の解決策を見いだせずにいる。
このように「移民」は副作用が大きく、国のあり方を変えてしまうため、熟議を重ねなくてはならない問題のはずだ。しかし、日本では真実が知らされぬまま議論も尽くされず、なし崩し的に「移民国家」に変わろうとしている。
・安倍政策を支配する「内閣官房参与」という妖怪の実態( NEWSポストセブン 2018年11月14日)
※妖怪が首相官邸を徘徊している。「内閣官房参与」という妖怪が──「共産党宣言」を彷彿させるほどの不気味さだ。官邸主導が特徴の安倍政権において、民間人の彼らはアドバイザーであり、仕掛け人でもあり、時に重要政策の主導権を握っている──その事実を我々国民はどれほど知っているのか。
現在、首相官邸には、安倍晋三首相のブレーンで、かつて「成長戦略」担当の内閣官房参与を務めた作家・評論家の堺屋太一氏のような民間人出身の「内閣官房参与」が14人(1人は官僚OB、2人は元議員)任命され、総理執務室がある官邸5階や内閣府の本庁舎に部屋を与えられている。
内閣官房参与のポストは「大統領型首相」を目指した中曽根内閣時代の総理大臣決定(1987年の「内閣官房に参与を置く規則」)で創設された。身分は非常勤の一般職公務員で報酬は1日3万4200円の日当制。〈参与は首相の諮問に答え、意見を述べる〉と役割が定められている。首相のアドバイザリースタッフにすぎない。
存在が注目されたのは菅直人内閣時代。東日本大震災で福島第一原発事故が発生すると、当時の菅首相は知人の原子力や放射線の専門家を次々に参与に任命し、官邸には15人の参与がひしめいた。その結果、指揮命令系統の大混乱を招いた。
当時、野党だった自民党は「参与が多すぎる」と指摘し、「個人的な友人・知人を顧問・参与に任命するなど公私の区別がついていない」と糾弾していた。
しかし、安倍政権の内閣官房参与の人数も最高15人(今年6月に1人退任)と菅内閣に並び、第2次安倍政権以降の総数は26人にのぼる。
現在の顔ぶれを見ると、役割も出身も様々だ。アベノミクスの金融政策を推進した浜田宏一・米国エール大学名誉教授や国土強靭化の旗振り役として知られる藤井聡・京都大学教授は学者ブレーンの代表格。
一般には馴染みが薄いが、日経ビジネス記者出身の谷口智彦参与は安倍首相が海外で演説する際のスピーチライターで、東京五輪招致を決めた「原発事故の汚染水による影響は完全にブロックされている」という“名演説”も谷口氏の筆とされる。非常勤ながら官邸に毎日出勤し、自民党総裁選をひかえた今年7月には『安倍晋三の真実』を上梓して〈今、安倍総理は世界外交の中心にいる〉と書いた。
一民間人からいきなり官邸に招かれたのが、加藤勝信・厚労相の義理の姉にあたる加藤康子氏だ。安倍首相の父・晋太郎氏の腹心だった故・加藤六月農水相の長女で、産業遺産プロデューサーの肩書きで「松下村塾」など九州・山口の近代化産業遺産の世界遺産登録をめざす運動を行なっていたときに、内閣官房参与に抜擢された。
本人は安倍氏とは「幼馴染み」と語っている(*注)。現在では加藤家の地元・岡山で「康子さんを通せば陳情が官邸に届く」(地元議員)といわれるほど政権中枢に太いパイプを築いている。
【*注/『週刊新潮』(2015年5月21日号)で「私は(加藤)勝信さんよりも、安倍さんの方が話し易い。幼馴染みですから」と語っている】
昨年の総選挙で落選した西川公也・元農水相、前回参院選で落選した荒井広幸・元参院議員も内閣官房参与に起用されている。落選議員の“失業対策”とみられても仕方がない。
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岸田文雄首相看板政策で3会議新設 竹中平蔵氏らを起用 https://t.co/CtDi55wYVn
— Share News Japan (@sharenewsjapan1) November 10, 2021