・カルト被害に備えるために 統一協会の「今」~その知られざる実態(KiriShin 2018年4月1日)  

鈴木エイト(『やや日刊カルト新聞』主筆) 

※ホームページなどに、「当教会はエホバの証人、モルモン教、統一協会とは一切関係ありません」との注意書きを掲げるプロテスタント教会は少なくない。しかし、わたしたちはその実態をどれほど知っているだろうか。今回、若い学生らの移動が見込まれる新年度を迎えるにあたり、15年間にわたって統一協会を最前線で取材してきたジャーナリストが教団の「今」に迫る。霊感商法、合同結婚式、偽装勧誘、高額献金や訴訟、分派トラブル、政治家との癒着、そして2世をめぐる現状、統一協会・家庭連合をめぐる諸問題は、現在どうなっているのか。

三つの転機

ここ10年ほどの統一協会に関する事象を見ていくと、転機となった出来事が三つある。霊感商法会社の摘発による教団施設への家宅捜索、教祖・文鮮明の死去、そして教団名の改称だ。

2000年代後半、全国各地で統一協会系の出版社が特商法違反容疑で摘発された。2009年2月に警視庁公安部が東京・渋谷の印鑑販売会社「新世」を摘発、同社を管轄していた教団の南東京教区事務所や渋谷教会に家宅捜索が入った。組織の保身を優先する教団は「経済活動は信者の個人的活動」と弁明しながらも、徳野英治会長が引責辞任した。以降、あからさまな霊感商法は鳴りを潜め、家系図などを用いた集金手法に変化している。ただし、信者への高額献金ノルマは現在も課されている。

街頭で横行していた正体隠し勧誘にも変化があった。「新世」の摘発以降、青年部伝道では「手相の勉強」勧誘から「意識調査アンケート」に統一された。しかし、伝道目的を偽ってセミナーに誘う手口は現在も変わっていない。婦人部伝道では、いまだに鑑定士と偽って信者が声をかける手口も散見される。いずれも現在は、後述する教団名変更に伴い、勧誘時に教団名を明かす「証し伝道」が主流となっている。

元信者やその家族からの訴訟も継続して提起されている。養子縁組を悪用して財産を収奪されたケースのほか、億単位の被害にあった事例もある。

2012年9月に教祖・文鮮明が死去したことにより跡目争いが激化、教団は分裂した。00年代中後期まで後継者と目された三男・文顕進が完全に放擲(ほうてき)され、その後、宗教部門と経済部門(統一教財団)のそれぞれの後継者とされた七男・文亨進と四男・文國進も教祖の妻・韓鶴子から追放された。北南米を中心に活動する顕進は、教団の資産管理をしていたUCI(Unification Church International)を手中に収めた。亨進は米国でサンクチュアリ教会を立ち上げ、銃砲会社を経営する國進が支援している。日本の教団組織を掌握する韓鶴子派と合わせ、教団は現在この3派に分裂している。

2014年7月、韓鶴子は、自分は生まれながらにメシアだという「独生女宣言」を行い、自身を神格化した。「文鮮明教祖には原罪があった」とするこの言説に反発したサンクチュアリ教会の日本人信者は、渋谷の松濤本部前で不定期に韓鶴子と徳野会長を糾弾するデモを行っている。これを阻止しようとする本部職員らとの間では小競り合いも起こり、暴力事件にも発展している。

昨年3月、教団は経費削減のため大規模なリストラを行った。本部でも、老年職員には退職勧告、若手職員には関連機関への出向や一般企業への就職を勧めた。2007年以降の教団の財務状況を見ると霊感商法の売上を含む信者からの献金などによって毎年約500億円の収入があるが、そのうち職員給料などの経費や借入金返済、裁判での和解金、関連機関への支出などを引いた残りの約300億円が毎年〝感謝献金〟として教祖一族へ送金されていた。支出欄には世界日報やワシントン・タイムスなどの国内外の関連機関への補てん金の他、国内では政治家への対策費用も計上されていた。

今年初頭、徳野会長(13年に再就任)は韓鶴子に年間300億円の献金目標が達成できたと報告している。日本から収奪した資金の一部は、教団の聖地である韓国・清平の整備計画に使われている。

政治家との癒着構造

教団と政治家との癒着についても触れておこう。2013年3月、都内で開催された教団の政治団体・国際勝共連合の新会長就任パーティには自民党を中心に多くの国会議員が出席した。

同年夏の参院選では首相官邸と教団との裏取引が発覚。流出した内部文書によると、国会での追及から教団を護る見返りに全国比例区で安倍晋三首相が推す候補者を当選させるべく、首相直々に教団へ選挙協力の依頼を行ったとされる。この候補者が選挙運動期間中に福岡県内の教会施設で行なった講演については「菅官房長官の差配だった」と地元の選挙事務所事務局長が認めている。

そのほか、安倍総理の側近議員にも教団との昵懇(じっこん)関係が次々に発覚している。2015年8月、統一協会は教団名を「世界基督教統一神霊協会」から「世界平和統一家庭連合」に改称した。それまで文化庁が拒んできた申請が認可されたのは、下村博文文科大臣(当時)が文化庁に圧力をかけたからだと永田町で噂となった。

2016年6月には首相官邸に徳野会長が招待されており、翌月の参院選で清和会準会員の無名候補がやはり教団の組織票で当選している。16年11月に参議院議員会館で開かれた世界平和国会議員連合の創設式典には、現役閣僚5人を含む63人の国会議員が出席した。

同年5月に来日した教団の北米会長一行は、自民党本部で高村正彦副総裁らと会談した他、菅官房長官から首相官邸に招待されたと喧伝している。7月には自民党国会議員団8人が、教団のお膳立てでアメリカ外遊を行った。

1万人集会「孝情文化フェスティバル」が昨年5月以降、東京・千葉・愛知・大阪で開かれており、各地区選出の自民党国会議員が大挙して来賓出席している。8月の組閣では、これらの教団イベントに参加した議員が閣僚や副大臣などの要職に抜擢されている。

教団と現政権との癒着関係は根深く、それは教団の2世にも派生している。

従順な「2世信者」の葛藤

2016年初頭「国際勝共連合大学生遊説隊UNITE」(現「勝共UNITE」)が演説活動を始めた。全国に支部を作り、街頭で共産党批判や安倍政権への支持を声高に叫ぶUNITEは「大学生が自主的に結成した組織」としていたが、実際は統一協会の従順な2世信者によって構成されていた。5月末に東京・渋谷で大規模なデモ行進を行った際には、自民党IT戦略特命委員長がSNSで当該デモのニュースを好意的に発信した。連動する政治家の動きからは、UNITEへの政権の関与が疑われた。

その後、教団の内部メールが流出しUNITEが教団や勝共連合と一体であることが判明した。UNITEが各地で開くセミナーや大会、改憲イベントにも自民党国会議員が多数参加している。

1992年に桜田淳子らが参加して騒動となった3万双合同結婚式や95年に開催された36万双合同結婚式でカップリングされた信者の家庭で生まれた「祝福2世」が、現在10代後半から20代となっており「2世問題」が顕在化している。

「2世圏活性化と祝福推進強化」を掲げる同教団。昨年9月に開催した合同結婚式では、日本から参加した信者カップル1400組のうちの約3分の1が2世信者だった。

街頭での偽装勧誘にも2世勧誘員が動員されており、リーダーである伝道機動隊隊長以下、メンバーのほとんどが2世というグループもある。

2世に関しては、精神を病み自殺といったケースに至る事例も報告されている。2世が清平の教団施設や渋谷の教団本部のすぐ近くのビルから飛び降り自殺したとの情報もあった。

2013年に、千葉県で女子高生が数カ月間行方不明になった後に近所の神社で発見された騒動があったが、この女子高生も同教団の2世だった。

Twitterには、生まれ育った環境に葛藤を抱き悩み苦しむ2世の心の叫びがあふれている。

「普通に自分の好きな人と結婚して子ども産んで宗教と関係なく過ごしたい」「信仰のない宗教2世の苦悩をもっと世間に知ってほしい」「親が子供にも強制させるのが分からない。宗教を信じるかどうかは、本人の自由でしょ?」「祝福式の間中、違和感が体中かけめぐってて、でも母が喜んでるからこれでよかったんだと言い聞かせてた」「世の中の人間みんな死ねって思う」「親に心からおめでとうって言ってもらえるには祝福受けるしかないんだなって改めて思って絶望した」「自分の存在がこの世の恥だと思ってきて苦しかった」「初めから自分たちの思い描く道を歩ませるつもりで産んだんだよね? 逆に言うと道を外した瞬間、お前の存在価値は無くなったも同然って事だよね?」「『お父さんとお母さんが教会に出合わなければお前は存在してないわけだから、お前教会の事を悪く言ってるけど、それってつまり自分の存在を否定してる事になるの分かってんのか?』お父さんに言われたこの言葉が一番キツかった」「本人が信仰するのは勝手だが他人にそれを強要するな」「傷ついた幼い私の心は、大人になった私が受け止めてあげるしかない」

現在は教団や親と距離を置いているという2世は語る。

「祝福という枠組みに苦悩する2世が多い。特に神の血統に転換されたとされる祝福2世は将来同じ2世と祝福を受け、血統を受け継いでいく必要があるため、性と恋愛について厳しく親から制限を受け、異性への自然な感情を押さえつけられ育つ。教会を離れても、恋愛や結婚の問題に悩む2世は少なくない。幼い頃からのトラウマに加え2世以外の一般人との交際や結婚は親を最も悲しませ落胆させるから」

筆者は昨年、都内で開かれた同教団2世が集まるイベントに参加した。そこでは、SNS上でのやり取りから、初めて実際に顔を合わせた2世同士の交流が見られた。そこでの出会いから、現在は不定期ながらミニオフ会も開かれている。

「異端か正統か」ではない

教団名の改称で「基督教」の表記が無くなったことについて教団は「教会を中心とした宗教時代から、家庭を中心とした超宗教時代に入った」としている。しかし、信者の教化過程では依然として聖書を曲解した教典『原理講論』が使われている。キリスト教界にとって「世間が同教団をキリスト教の一派と見なしている」という〝誤解〟は看過できないものだ。

ただし「キリスト教界内での異端問題」と「カルト問題」の混同は、事の本質を見誤ることになりかねない。統一協会は教祖・文鮮明をメシアと崇める教団である。当然、キリスト教界としては「偽メシアだ! 異端だ!」となる。イエス・キリスト以外を救済者として崇める教団は異端と見なされるからだ。だからといって「異端=カルト」ではない。「異端問題」と「カルト問題」は別個のものだ。

韓国系の正統派キリスト教会の関係者は、統一協会や新天地などを「異端カルト」と呼称することが多い。摂理や新天地のように韓国系の新興宗教団体には統一協会の影響を受けたものがいくつもある。確かに、これら異端と言われる教団にカルトと指摘される団体が数多みられるのは事実だが「異端だから問題」なのではない。内部での深刻な人権侵害など「カルト被害」があるか否かということが重要な視点であり、そこを精査して問題を捉えないと、既成キリスト教団による統一協会批判は「キリスト教界の内輪もめ」との認識を一般社会から持たれてしまう懸念がある。

桜田淳子の芸能界本格復帰の動きもあり、再び世間の注目を浴びる同教団。その動向を注意深く見ていく必要がある。(文中敬称略)


・統一教会が組織再編、全摂理機関と共に新包括組織『天の父母様聖会』の傘下に。政治家対策に影響も<政界宗教汚染~安倍政権と問題教団の歪な共存関係・第28回>(HARBOR BUSINESS Online 2020年6月27日)

鈴木エイト

※取りやめになった「教団名称変更」

統一教会が迷走している。4月上旬に「歴史的な一日」として信者へ通知済みだった『世界平和統一家庭連合』から『天の父母様教団』への教団名称変更を何の説明もなく取りやめ、すべての“摂理機関*” を包括する組織『天の父母様聖会』の新設を宣布した。
〈*“摂理機関”:統一教会の教えを広めるための「統一運動」を推進する団体・組織〉

宣布において教団最高権力者・韓鶴子総裁は、側近の尹鍈鎬(ユン・ヨンホ)事務総長を世界宣教本部のトップに任命。“国家復帰”への全権を与えた。

一方、韓鶴子が持つ日本への“怨讐”、つまり反日的な思想も鮮明となっており、各摂理機関の“組み入れ”が日本で政治家対策を行う信者に影響を及ぼす可能性も指摘されている。

なかったことにされた『天の父母様教団』

教団は当初、4月5 日に教団公式チャンネルから全国の信者へ配信した『真のお母様の特別メッセージ』(現在は非公開)の中で徳野英治日本会長が「歴史的な一日となりました」と前置きし、世界本部の正式な公文として韓鶴子総裁の御言(み言/みことば)を代読、教団名の変更を通知していた。

「これ以上統一教会でもなく家庭連合でもない “天の父母様教団”、英語では“Heavenly Parents Church”と名称を変更しようと思います」(韓鶴子による4月1日の御言宣布)

しかし、この教団名変更は封印され、5月8日、韓国の教団メディアPeaceTVが全世界194か国にインターネット中継した『「天の父母様聖会の出発」天地人真の父母様天宙聖婚60周年記念特別集会』(HJ天宙天寶修錬苑大聖殿)において韓鶴子は、すべての教団系NGO(=摂理機関)を新たに組織する『天の父母様聖会(Heavenly Parent Holy Community)』に集約させる御言を宣布した。

『天の父母様聖会』に全摂理機関が集結

最高権力者の御言が僅か1か月余りで撤回される事態となった統一教会。『天の父母様教団』から『天の父母様聖会』への宣布変更によって組織の再編成は如何なるものとなるのか。

まずチェックしたのは、天の父母様聖会宣布を伝える教団系メディアの報道だ。

●世界平和統一家庭連合公式チャンネル『U-ONE NEWS』 2020年5月15日号

キャスター:「今後の摂理における重要な指針を示して下さったお母様に感謝して御言を観ていきましょう。真のお母様は、これからすべての人類が一つになり得る傘として『天の父母様聖会』という名称を発表されました」

韓鶴子「私は政界 宗教界 財界 思想界を問わず すべての人が一つとなり一つの旗のもとに集うことのできる「天の父母様聖会」を発表します 英語で言うと『Heavenly Parent Holy Community』です」
「天の父母様の大きな傘のもとにこれまで私たちが活動してきたNGO 天宙平和連合 家庭連合 女性連合など全てが入り天の父母様を120%証ししなければなりません」

●PeaceTV『HJグローバルニュース』 (2020年 5月 16日)

キャスター:「真のお母様は天の父母様のもとで人類が一つに集まることのできる組織を準備しなければならないと語られながら 世界平和統一家庭連合を始めとする全ての組織と団体の前に『天の父母様聖会』の名を祝福してくださいました」

韓鶴子:「私は政界、宗教界、財界、思想界、言うまでもなくすべての人たちが一つの旗のもとに集まることのできる『天の父母様聖会』として発表します 英語で言えば‘Heavenly Parent Holy Community’です」
「天の父母様の大きな傘の下 今まで私たちがして来たすべてのNGO、天宙平和連合、世界平和統一家庭連合、世界平和女性連合などすべてが入って120%を証さなければなりません」

全フロント組織を傘下機関として公表か?

両キャスター及び韓鶴子の発言からは、教団名『世界平和統一家庭連合』を『天の父母様聖会』と変更するのではなく、『天の父母様聖会』に○○連合などと称した摂理機関すべてを組み入れ、さらにそれを「証し」つまり公言すると解釈できる。

この“推測”を裏付けるように同月17日の日曜礼拝に際しての信者への限定配信映像『「天の父母様聖会と神統一世界安着」のための出征礼拝映像』の冒頭、徳野会長は「全国の天の父母様聖会・世界平和統一家庭連合の会員、食口ならびに祝福家庭の皆さま」と挨拶している。

徳野会長は同映像での御言ポイント解説で「Holy Communityの中に世界平和統一家庭連合、天宙平和連合、あるいは女性連合等々私たちの統一グループのあらゆる団体や機関が全部入って」と発言。

また同日、教団八王子家庭教会で行われた礼拝において鄭東洙多摩東京教区長はこう発言している。

「お母様は(中略)天の父母様聖会の傘の下ですべての摂理機関が根を下さなければならないと語られました」

これまでの裁判等で「宗教法人とは別組織」と主張してきた国際勝共連合や世界平和連合などの摂理機関すべてが『天の父母様聖会』の傘下となりその関係性を自ら“証す”となると、これらの組織が統一教会・家庭連合と同一であると遡って裏付けられることになる。

今後、宗教部門が『天の父母様聖会・世界平和統一家庭連合(天の父母様聖会・家庭連合)』となれば、教団関連政治組織である国際勝共連合も『天の父母様聖会・国際勝共連合』になると思われる。その場合、他の代表的な摂理機関の名称は以下のようになることが想定される。

天の父母様聖会・天宙平和連合UPF/天の父母様聖会・世界平和青年学生連合/天の父母様聖会・世界平和連合/天の父母様聖会・世界平和女性連合/天の父母様聖会・平和大使協議会/天の父母様聖会・国際指導者会議ILC/天の父母様聖会・国際ハイウェイ財団 /天の父母様聖会・日韓トンネル研究会/天の父母様聖会・世界日報/天の父母様聖会・ワシントンタイムス/天の父母様聖会・真の家庭運動推進協議会APTF/天の父母様聖会・原理研究会CARP/天の父母様聖会・世界平和教授アカデミーPWPA/天の父母様聖会・科学の統一に関する国際会議ICUS/天の父母様聖会・ハッピーワールド/天の父母様聖会・グローバルビューティ/天の父母様聖会・一和/天の父母様聖会・男女美/天の父母様聖会・一心病院/天の父母様聖会・杉並ミッションセンターSMC

地区協会には通知するも、教団「統一した見解は未決定」回答

5月17日夜、教団広報へ『天の父母様聖会』に関する質問書をFAX送信した。質問事項の要点は以下。

・宗教法人名を『世界平和統一家庭連合』から『天の父母様聖会』に変更し文化庁宗務課に名称変更の認可を申請するのか? (『世界平和統一家庭連合/家庭連合』→『天の父母様聖会』)
・宗教法人名は変わらず、通称・通名としての『天の父母様聖会』となるのか(『世界平和統一家庭連合/家庭連合』→『世界平和統一家庭連合/天の父母様聖会』)
・各摂理機関を傘下に置き統括する組織として『天の父母様聖会』を新設するのか
・『世界平和統一家庭連合』が『天の父母様聖会』になるのか、それとも『世界平和統一家庭連合』は『天の父母様聖会』傘下NGOの一機関となるのか(『天の父母様聖会 世界平和統一家庭連合』、『天の父母様聖会 国際勝共連合』)
・韓総裁が各摂理機関に120%証しすることを指示したということは、今後全ての摂理機関が教団内組織であると公表するということか
・『天の父母様教団』がボツになり『天の父母様聖会』となった理由

翌日、教団総務局広報部から回答があった。

「当法人名に関する今後の動向に於きましては、現在のところ、統一した見解が決定しておりません。付きましては、お応えできる段階になりましたら、公式ホームページ等でお知らせさせて頂きたく存じます」

5月8日の宣布から1週間余りでは統一した見解が決まらなかったということなのか。
 
但し、前述の17日の礼拝で鄭教区長は「家庭連合も天の父母様聖会家庭連合という名前にこれから出発するようになりました」と述べており、やはり『天の父母様聖会』の後に各摂理機関名を付加することが通達されているようだ。

文鮮明“カラー”を払拭か

各摂理機関の名称に「天の父母様聖会」を付けることにどのような意味があるのか。
 
全国霊感商法対策弁護士連絡会(全国弁連)の渡辺博弁護士(田村町総合法律事務所)は、韓鶴子の宣布をこう分析する。

「独生女宣言により自らの神格化を図る韓鶴子には『天の父母様聖会家庭連合』と団体名称の頭に『天の父母様聖会』を冠することで、文鮮明色を消してしまおうとの意図があるのではないか」

権力闘争も露呈、全権委任を受けたのは

今回の『天の父母様聖会』宣布で韓鶴子は「77億人類の3分1」を「侍(はべ)る」よう指令、宣教本部を強化するとして本部長に側近の尹鍈鎬(ユン・ヨンホ)を任命した。

「これからすべての指示を世界本部を通して行います 国家を相手にしてもそのようにします それで世界本部の本部長として尹鍈鎬を任命します」

“国家復帰”についても尹鍈鎬が前面に立つ体制となる。

内部情報によると、宣教本部の実質的な主導権は総裁秘書室が握っており、室長と副室長による権力闘争が起こっていたという。今回、首尾よく韓鶴子に取り入った尹鍈鎬事務総長兼秘書副室長が鄭元周(チョン・ウォンジュ)総裁秘書室長を追い落とした格好だ。

教団の実権を名実ともに握った尹鍈鎬新世界宣教本部長とは、どのような人物なのか。

1977年生まれの尹本部長は、教祖夫妻の4男・文國信が統一教財団理事長だった2009年~13年に教団幹部の不正蓄財などを調べる理事長直属のサイバー部隊の責任者で、その際に握った幹部の秘密を使い重要職に就いてきたと言われている。

政界工作の足を引っ張る日本への”怨讐”

では、この組織再編によって日本の政治家との関係に変化はあるのか。鄭教区長の講話には以下の発言がある。

「天の父母様聖会の宣布で、天の父母様聖会の名前の下で、家庭連合、UPF、女性連合、青年連合、議員連合などなど全てがこの天の父母様聖会の傘の下に入るようになりました」

教団は2017年11月に参議院議員会館特別会議室で世界平和国会議員連合の日本創設大会を開催している。この大会に出席した閣僚を含む63人の国会議員及び秘書を代理出席させた残り約40人余りの国会議員も『天の父母様聖会・世界平和国会議員連合』のメンバーとしてカウントされることになる。

各摂理機関が天の父母様聖会に包括されることにより、これまで親密だった保守系の政治家が統一教会や系列の政治団体との“付き合い”を敬遠する可能性もある。これは教団が持つ“反日思想”の可視化が進んだことも大きい。文鮮明教祖は存命時から日本を「怨讐の国」としていた。教祖夫妻がこれまで一貫して日本を「怨讐の国」としてきたことは、教団の発行物などからも明らかだ。

近年も韓鶴子は「人間的に考えれば赦すことのできない民族」と御言で言及、さらには広島への原爆投下を引き合いに悔い改めを迫るなど日本に対する”怨讐”を繰り返し日本の信者や幹部に説き、韓国への贖罪意識を駆り立てている。

昨年末と今年初頭に韓国での修練会に参加した千人以上の日本の大学生2世信者による元従軍慰安婦や元徴用工への”謝罪”イベントや西大門歴史館見学及び少女像前での会見が複数の韓国主要メディアで報じられた際も、韓鶴子は「この国の為政者たちに影響を及ぼした」と称賛している。

日本で政界工作を行う信者への影響を渡辺弁護士が解説する。

「韓鶴子の宣言によって日本の政治家及び著名人の対策をしていた信者は困っているのではないでしょうか。日韓の世界日報が『韓国では反日』『日本では嫌韓を含む右派の擁護』とダブルスタンダードで論陣を張っていたことは、これまでも統一教会内部で問題になっていました。勝共連合においても前会長の太田洪量は韓鶴子に倣って反日の韓国支持を頑固に貫き、他の勝共メンバーから『それでは日本の政治家に嫌われる』と反感を持たれていました」

韓国への贖罪意識を植え付けようとする韓鶴子の”圧力”の度が過ぎると、これまで蜜月状態だった自民党安倍政権との関係に変化が起こる可能性も否定できない。

現在、教団では韓鶴子の自叙伝を一家庭当たり43冊購入し伝道に活用するよう指示が出されているが、この自叙伝『人類の涙をぬぐう平和の母』の内容に関し、韓鶴子が持つ日本への“怨讐”に関連した記述について、ある疑惑が持たれている。

6月に入っても日本の教団本部ビル壁面に掲げれらた教団名は従前のものから変わっておらず、公式ホームページも「世界平和統一家庭連合」のまま、何の「お知らせ」もなされていない。文化庁へ教団名称の変更申請をしたとの情報も現在のところ入っていない。

韓鶴子の思い付きに振り回される日本の教団組織。幹部の嘆きの声が聴こえてきそうだ。(文中一部敬称略)


・自民党総裁選3候補、統一教会との”協助”関係でも菅官房長官が独走<政界宗教汚染〜安倍政権と問題教団の歪な共存関係・番外編>(HARBOR BUSINESS Online 2020年9月11日)

鈴木エイト

※9月14日に投開票される自民党総裁選。主要派閥の支持により議員票の7割強を固め独走状態となっている菅義偉官房長官、菅氏に大きく水を開けられている石破茂元幹事長と岸田文雄政調会長。本稿ではこの3候補及び周辺の議員について、筆者が追及してきた統一教会(世界平和統一家庭連合/天の父母様聖会家庭連合)との関係を中心にまとめてみたい。

首相肝入り候補を統一教会礼拝に派遣、教団世界副会長を官邸に招待した菅官房長官

過去の筆者記事の中で、何度も指摘してきたのが菅氏と統一教会との緊密さだ。

首相官邸と統一教会との関係が明確な証拠を以って可視化された2013年の参院選。官邸2トップ、安倍首相と菅官房長官が落選必至と見られていた全国比例区の候補者を統一教会との裏取引によって当選に導いた。その人物は現参議院議員で元産経新聞政治部長の北村経夫氏。祖父・岸信介元首相の恩人・天照皇大神宮教の北村サヨ教祖の孫とあって安倍首相肝入りの候補者だった。安倍首相は北村氏への組織票を「じきじきに」教団へ「依頼」、菅長官は参院選運動期間中、極秘裏に北村氏を福岡県内の統一教会の地区教会2か所の礼拝へ派遣、講演を行わせた。

さらに菅長官は17年5月、統一教会系列のワシントンタイムズ財団と米下院議員らからなる世界平和国会議員連合のVIPたちを引き連れ来日していた金起勲(キムギフン)北米大陸会長兼世界副会長一行を首相官邸に招待したとされる。

また、教団イベントで来賓挨拶を行った他、選挙運動員として教団信者を登用した疑惑が持たれている菅原一秀前経産省や山本朋広防衛副大臣といった子飼いの無派閥議員を統一教会に紹介したのも、長年自民党の選対を取り仕切ってきた菅氏の差配と見られている。

教団系メディアに鼎談記事、関連政治団体で講演の石破元幹事長

一方、石破茂元自民党幹事長にも統一教会との関係が発覚している。地方創生相だった2015年6月、統一教会の関連政治団体・世界戦略総合研究所が永田町の憲政記念館で開いた第85回定例会において『地方から創生する我が国の未来』と題した講演を行っている。

また、教団系メディア・世界日報の月刊誌Viewpointにも石破氏は2度登場。党幹事長に就任する約半年前、衆院予算委員会野党筆頭理事と自民党安全保障調査会長を務めていた時期、同誌の12年2月号に長野祐也元衆院議員や木下義昭世界日報主筆兼社長(当時)と行った新春座談会記事が掲載された。その3年後の15年2月号にも地方創生相として両氏との鼎談が掲載されている。

その他、佐藤正久外務副大臣の叔父がCEOを務めていた統一教会の関連海洋摂理会社・海洋平和が2018年6月に開いた株主総会へ、石破氏が祝電を贈っていたことも判った。

また石破氏は、偽書を基に富士王朝にあった天皇家ゆかりの神社の再建を謳う不二阿祖山太神宮が毎年関連NPO名義で開催する『FUJISAN地球フェスタWA』の名誉顧問を2015年以降、毎年務めている。
 
石破派(水月会)では第4次安倍第1次改造内閣で法務相を務めた山下貴司衆院議員も18年7月、岡山県のジップアリーナ岡山で統一教会が開催した大規模信者集会『復興祈念2018孝情文化ピースフェスティバルin OKAYAMA』に来賓出席している。

石破氏の推薦人に名を連ねた谷垣グループの中谷元元防衛相も、Viewpointの14年10月号に黒木正博世界日報論説主幹らと行った鼎談記事『集団的自衛権と日本の安全保障』が掲載されている。16年4月号にも防衛相としてインタビュー記事が掲載された。

本人は接点なしも派閥幹部は”濃厚接触”の岸田政調会長

統一教会との関係においては菅氏に迫る勢いの石破氏、この2人の総裁候補と違って、岸田政調会長にはこれまで統一教会との接点は見当たらない。

ズレたジェンダー観が周知のものになってしまった「家族円満アピール」も記憶に新しい。

しかしながら、トップが“クリーン”であっても岸田派(宏池会)の幹部や構成議員には教団との関係が取り沙汰された議員が複数いる。
 
在庫一掃内閣と揶揄された現在の第4次安倍第2次改造内閣で科学技術大臣となった宏池会副会長の竹本直一氏は2017年7月、教団がお膳立てしたアメリカ外遊議員団に参加、教団幹部らとともに撮影した記念写真をブログに掲載している。

竹本氏も数年来、前述の『FUJISAN地球フェスタWA』の顧問として名を連ねている。

同じく閣僚入りした北村誠吾地方創生相は18年3月、長崎での日韓トンネル実現シンポジウムに参加し、翌19年6月に長崎で開かれた日韓トンネル推進長崎県民会議総会に出席。同年8月にも教団フロント団体・平和大使協議会が長崎県庁内の会議室で開いた” 平和フォーラム”に参加している。

宏池会座長で総裁選の選対を取り仕切る林芳正元文科相は、Viewpointの12年4月号に『林芳正・農林水産相インタビュー記事『林芳正・自民党政調会長代理に聞く「一体改革」法案出して議論を』が掲載されている。

宏池会事務総長代理の平井卓也前科学技術大臣は16年6月、教団2世組織であることを隠して活動する勝共UNITEの渋谷でのデモ行進を報じたテレビ東京のニュース画像を引用しFacebookに「このようなデモはあまり報道されませんが、学生はシールズというイメージは間違いです」と投稿。教団2世組織を使った党ぐるみの策動の一旦を担った疑惑が持たれている。当時、自民党IT戦略特命委員長に就き、同党のネットメディア局長とネットサポーターズクラブ(J―NSC)代表を歴任してきた平井氏はその後16年8月に自民党情報調査局長、17年8月には自民党広報本部長、そして18年10月に初の閣僚入りを果たした。

さらに、平井氏には科学的根拠が疑わしいとして批判されることも少なくないEM菌に関して、有用微生物利活用推進議員連盟、所謂EM議連の幹事長という経歴もある。

総裁選に際し党員投票の実施を求め党所属の国会議員145人の署名を二階幹事長へ提出したのが岸田派若手のホープ、自民党青年局の小林史明局長だ。しかし、この小林議員も昨年6月、地元広島で平和大使協議会が主催した反LGBTセミナーへ祝電を贈っていたことが発覚した。このセミナーにおいて国際青少年問題研究所所長の肩書きで講演を行ったのは教団の政治組織である国際勝共連合本部の青津和代本部長だ。

祝電を贈った経緯や統一教会及びその関連団体との関係・選挙等の支援の有無などを小林議員の国会事務所に問い合わせた。小林議員の事務所はこの祝電について「電報の文面にありますとおり、地域の方々が参加している会合に対し、その参加しているみなさんのご多幸をお祈りしたまでです。支援のあるなしに関わらず、地域の活動に対し、要請があれば基本的に対応しています」と答えている。支援を受けているか否かについては言及がなかった。

教団との関係は新政権でも継続&深化か

今回の総裁選に関連する議員を辿るだけでもこれだけの繋がりが出てくることからも、教団があらゆるところに触手を伸ばしていることが判る。

菅官房長官が選出されることが規定路線の自民党総裁選、新総理総裁となる菅氏とこれまでの統一教会との関係性から、両者の結びつきがより緊密になっていくことは想像に難くない。政策で「自助・共助・公助」を掲げた菅氏、これまでに発覚した統一教会との「互助・協助」がどのように発展していくのか注目される。

<取材・文/鈴木エイト>
*(本稿は「にょろ」氏ツイッター @hyoloro*非公開 を参照した)

鈴木エイト
すずきえいと●やや日刊カルト新聞主筆。滋賀県生まれ。日本大学卒業 2009年創刊のニュースサイト「やや日刊カルト新聞」で副代表~主筆を歴任。2011年よりジャーナリスト活動を始め「週刊朝日」「AERA」「東洋経済」「ダイヤモンド」に寄稿。宗教と政治というテーマのほかに宗教2世問題や反ワクチン問題を取材しトークイベントの主催も行う。共著に『徹底検証 日本の右傾化』(筑摩選書)


・統一教会が全世界で組織改編&人事異動、日本の徳野英治会長は左遷、田中富広第一地区長が新会長に(やや日刊カルト新聞 2020年10月16日)
 
http://dailycult.blogspot.com/2020/10/blog-post_16.html#more

※14日、統一教会(天の父母様聖会/世界平和統一家庭連合)が全世界の摂理機関に組織改編と人事の発令を行った。韓国では、現在の教団最高権力者である韓鶴子総裁の寵愛を受け実権を握る尹煐鎬(ユン・ヨンホ) 世界宣教本部長に近しい人物が軒並み登用されており、文字通り尹煐鎬体制となっている。

日本のトップにも人事異動が行われ、長年に渡り会長職を務めた徳野英治会長が降格、第14代会長に田中富広第1地区長が抜擢された。教祖・文鮮明カラーを持つ日本の幹部を一掃し“独生女”韓鶴子信仰体制を敷くことで、日本の教団組織も尹本部長が完全掌握することになる。

◆世界本部からの公文で通知

10月11日、統一教/家庭連合の世界本部が新体制人事を発令、14日に同本部から「真の父母様の特別な指示」と題した公文によって「組織改編」「指導人事の真のお母様の指示」が全世界の傘下摂理機関に通知された。

本紙が入手した公文は、韓鶴子総裁の言葉として「2027年までに、少なくとも全人類の3分の1を復帰すること」などと記載がある他、これまで教団が別組織と主張してきた各摂理機関の指揮系統や人事が詳細に掲載されているなど、組織の概要を示すものだ。

◆権力闘争の勝者による人事

今年5月、韓鶴子総裁から世界宣教本部の本部長に任命され実権を握った尹煐鎬(ユン・ヨンホ)は、今回の組織再編と摂理機関の人事により自身にとって盤石の体制を整えた。世界本部との組織一元化を行う韓国本部では、尹本部長に近しい幹部が統一教維持財団理事長など軒並み重要ポストに就き、その他、既に重要ポストに就いていた尹本部長の腹心たちは留任している。尹本部長と主導権を争っていた鄭元周(チョン・ウォンジュ)総裁秘書室長に近しい幹部たちは役職を解かれており、鄭室長を孤立化させる狙いがあると見られている。

◆ついに徳野会長が左遷、その“功績”を辿ると…

本紙が注目したのは日本の人事だ。徳野英治会長が会長職を解かれ閑職に異動となっている。

徳野英治 日本家庭連合会長 →  HJ清平天寶苑(清平修練苑)日本分院長
田中富広 副会長兼第1地区長 → 日本家庭連合会長
趙誠一(チョ・ソンイル) 世界本部対外協力室長 → 企画調整室長
 
ここで、今回の人事で会長職を追われることとなった徳野会長の足跡を振り返ってみよう。
 
徳野氏が会長職を失うのはこれが2度目だ。1度目は2009年7月。渋谷の霊感商法販社『新世』が警視庁公安部の摘発を受け複数の教団信者が逮捕、南東京教事務所など複数の教団施設に家宅捜索が入ったことについて会見を開き「宗教法人は信者の個人的経済活動に関与していないが、世間を騒がせ多大な迷惑をかけた」と信者に責任を擦り付けた上で謝罪。「道義的責任を痛感」し第11代会長を辞任している。そして中国摂理の担当などを務めた後、12年12月、梶栗玄太郎第12代会長の死去に伴い第13代会長に再就任した。第2次安倍政権の発足とともに以降、足掛け約8年間、安倍政権と蜜月を過ごしたことになる。
 
徳野氏と云えば、2017年5月、東京有明コロシアムで開いた1万人大会『孝情文化フェスティバルin TOKYO』では、来賓の山本朋広前防衛副大臣から自民党を代表して「日頃より世界平和統一家庭連合の徳野会長、また世界平和連合の太田会長を始め本当に皆様には我々自民党に対して大変大きなお力をいただいていますことを改めて感謝を申し上げたいと思います」と支援へのお礼の言葉を掛けられたこと記憶に新しい。
 
それだけではない。翌18年7月にジップアリーナ岡山で開催した『復興祈念2018孝情文化ピースフェスティバルin OKAYAMA』においては、今を時めく加藤勝信内閣官房長官(当時は厚生労働大臣)の秘書を代理出席させ、加藤長官から

「2018孝情文化ピースフェスティバルin OKAYAMAが多数の皆さま方ご出席のもと開催されますことを心よりお喜び申し上げます。皆様方におかれましては世界平和を日々ご祈願されておられますことに深く敬意を表し感謝申し上げますとともに、本日の催しが今後の活動のご活性化に向けて有意義且つ実り多きものでありますようご祈念申し上げ、貴活動の益々のご隆盛と皆様方のご活躍、ご健勝をお祈り申し上げます。厚生労働大臣 衆議院議員 加藤勝信」

との祝電を得るなど教団にとって多大な功績を積んだ人物だ。

そんな徳野氏だが、何と言っても一番の栄誉は2016年6月、安倍晋三首相(当時)から首相官邸に招待されたことに尽きる。教団史に多大な実績を遺した徳野氏だが、近年は日本からの献金額が目標の300憶円に届かず、会長職を追われるのではと噂されていた。

度々、降格の噂があった徳野会長は今年2月、韓鶴子訪朝団に日本の国会議員と元首相をブッキングしたことで馘首を逃れたと言われていたが、今回ついに閑職に追いやられることとなった。(訪朝計画はコロナ禍で中止、名前が挙がった現役国会議員と元首相は関与を否定)
 
今回の徳野会長の降格人事について教団内の一部ではこう囁かれているという。

「日本の家庭連合/松濤本部は表向きには韓鶴子総裁を崇める行事を行っているが、心の中では故文鮮明教祖へ忠誠を尽くし、そのような教育や行事に変えていた。徳野会長の降格は『“独生女”の教理を受け入れていない』と尹煐鎬が激怒していたためだろう」

◆松濤本部掌握プロジェクト始動

尹本部長に近しいとされる梶栗正義国際勝共連合・世界平和連合会長は、UPF(天宙平和連合)Japan会長に留任した。
 
情報筋によると、日本の局長級人事もこれから断行される予定だ。また、第6地区(台湾)の方相逸(バン・サンイル)地区長(復興局長)が全国祝福家庭総連合会総会長、日本の総会長に就任した。尹本部長は日本の松濤本部を取り込むため、方総会長の下で松濤本部を掌握するプロジェクトを本格的に開始するという。

◆策士が実権掌握、反発は起こるか

韓鶴子総裁の威を借り、名実ともに教団の権力を手中に収めた尹煐鎬世界宣教本部長とはどのような人物なのか。1977年生まれの尹本部長は、教祖夫妻の4男・文國信が統一教財団理事長だった2009年~13年に教団幹部の不正蓄財などを調べる理事長直属のサイバー部隊の責任者と言われており、その際に握った幹部の秘密を使い重要職に就いてきたと言われている。
 
後継者と見做されてきた有力な教祖夫妻の実子を次々と放擲してきた韓鶴子総裁、韓鶴子総裁の実質的後継者は血統の繋がりのない成り上がりの人物になりそうだ。