社会保障番号

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(上)古い様式の社会保障カード(但し番号は現行の9桁)。"FOR SOCIAL SECURITY PURPOSES・NOT FOR IDENTIFICATION"(社会保障のためであって、身分証明のためではない)とある


※アメリカ合衆国における社会保障番号(しゃかいほしょうばんごう、英: Social Security number, SSN)、ソーシャルセキュリティー・ナンバーは、社会保障法(the Social Security Act)205条C2に定められる、市民・永住者・外国人就労者に対して発行される9桁の番号。アメリカ合衆国連邦政府の社会保障局(Social Security Administration)によって、個人からの申請に基づき発行される。

元々は徴税用の個人特定が目的であったが、近年は事実上の国民総背番号制となっている。

歴史

社会保障番号は、1936年11月、社会保障局によってニューディール政策の社会保障プログラムの一環として最初に発行され、3か月のうちに発行対象者は25万人に及んだ。

1986年以前は、14歳前後まで社会保障番号を持たない人々が多くいた。これは国民が収入別編成の税制に慣れており、14歳以前から安定した収入を得ている人はほとんど居なかったことが原因である。

1986年に租税法が改正され、5歳以上の個人で社会保障番号を持たない者は税控除の対象とならなくなり、

1990年には1歳にまで対象年齢が引き下げられ、

最終的には年齢を問わずに税控除の対象外となった。

こうして、親は子供が生まれてすぐに社会保障番号を適用することになった。今日、社会保障番号の適用は出生証明書の登録と同時に済ませることができる。

目的と活用

社会保障番号の元来の目的は、社会保障プログラムの中で個々人の収支を記録するためのものであったが、やがて多重登録などのエラーも稀にあったものの、アメリカ国内での身分証明として使用されることとなった。労働・疾病・学業・クレジットなどの記録に社会保障番号が用いられることもある。アメリカ軍は、1969年7月1日よりアメリカ陸軍とアメリカ空軍で、1972年1月1日よりアメリカ海軍とアメリカ海兵隊で、1974年10月1日よりアメリカ沿岸警備隊で、それぞれ将兵の認識番号として社会保障番号を用いている。

部分的運用

アメリカの社会保障は元々全員負担であったが、メディケア制度が1965年に可決すると、社会保障に反対する1951年以前から続く宗教団体はシステムから除外してもよいとされた。

このため、アメリカ国民のすべてが社会保障プログラムに加入せずともよくなり、また社会保障番号を持たなくともよくなった。しかしながら、子供を所得税制上の扶養家族とするためには、いずれにせよ社会保障番号が必要である。また内国歳入庁(国税庁に相当する)は、すべての企業に対し、従業員に社会保障番号(もしくは代替できるIDナンバー)の取得を求めている。

企業で働かず、より多くの負担をすることで社会保障なしに生活することもできる。アーミッシュは、例えば狩猟免許の取得に社会保障番号が必要であるといった規則が制定されてから、これを放棄することを通じて、社会保障制度に抵抗している。

1980年代まで、社会保障カードは「身分証明用途には使えない」と記してあった。だがアメリカ人の殆どが、社会保障番号を取得して、身分証明としての利便性が高まると、この記述は削除された。

社会保障番号を持たない人々も居るとはいえ、社会保障番号を持たずに、クレジットカード作成やローンや銀行口座の開設など、合法的な金融活動に参加するのは難しくなっている。またアメリカ合衆国内での就労においても、社会保障番号を持たない者は持っている者よりも、一般的にやや困難である。

アメリカ軍

アメリカ軍では、1974年から認識番号に代わって社会保障番号を認識票(ドッグタグ)に刻印している。

このため、アメリカ軍の兵士になるには、社会保障番号の取得(志願者は、最低でも永住権保持者たること)が必須要件となっている。

情報漏洩

多くの市民や、プライバシーを重視する人々は、社会保障番号の情報漏洩や個人情報の改竄を警戒している。実際、2015年5月下旬には本人になりすまして税金の還付金最大で1万3千人分、3900万ドルが詐取される事件が発覚した。その後の調査により、番号が流出したのは約2150万人で、その中の560万人については指紋データも流出していたことが判明した。

社会保障番号は、他にも多くの形式のIDと関連づけられており、また社会保障番号を聞くことが身分証明の方法として扱われやすいため、個人情報を盗み取ろうとする人々によく利用される。もともと、銀行口座の開設やクレジットカードの発行、銀行ローンの組み立てなどの場で、金融機関によって社会保障番号の提示を求められることは多い。これは、発行された人物以外番号を知らないようになっている、と想定されているためである。

社会保障番号を身分証明として用いる際の問題を悪化させているのは、社会保障カードに生体認証が全く組み込まれていないという点である。ある社会保障番号を、本当に発行され使用する資格のある当人が使っているかどうかは、他の情報手段(これすらも、他人の社会保障番号になりすまして手に入れたものという可能性がある)が無い限り、原理的に区別できない。

テネシー州のある女性は、高校卒業直前にクレジットカードを作ろうとして、ほとんどのカード会社から、信用情報履歴審査の上、作成を拒否された。納得出来ず、番号情報漏洩を調査する専門の会社に依頼して調べたところ、9歳の頃から自分名義で42社に加入され、150万米ドルの借入があることになっている事が判明した。「サマーキャンプや病院で度々社会保障番号を聞かれて答えていたから、誰かが自分に成りすまそうとすれば不可能じゃない」と、この女性は話している。

住所・名前・番号さえ分かれば、簡単に成りすます事が出来るため、9人の成人が1人の9歳の児童に成りすましていた例、不法移民に悪用されて、小学生の所有者が「レンガ職人」や「ウェイトレス」として被雇用者登録されていた例まで確認されている。

アメリカ合衆国議会は、社会保障番号の身分証明としての使用を制限し、商業用の使用(レンタルの申請など)を禁止する法案を検討している。

社会保障局は、社会保障番号を求められた場合、法的根拠を要求するべきであると勧告している。

構成

社会保障ナンバーは、"AAA-GG-SSSS"の9桁の数字形式となっており、3つの部分に分けられる。

エリアナンバー(The Area Number):最初の三桁は、地理的な範囲を示している。

1973年以前、社会保障カードは地方の社会保障事務局にて発行されており、発行された事務局の番号を表すものだった。対象者はどの事務局でもカードを使用することができた。ボルチモアの社会保障局が1973年に社会保障番号とカードを発行し始めてからは、エリアナンバーは社会保障カードの対象者が要求する送り先の郵便番号に基づくようになった。これは居住地と同一である必要はないのでナンバーが対象者の居住している州のものとは限らない。

元々、番号は北東部から西へと順に振られていった(アメリカ合衆国が北東部の13植民地に始まった事も原因している)ものであるため、東海岸の人々のエリアナンバーは小さく、西海岸の人々のものは大きくなっている。だが位置関係に基づいた地域指定が埋まってしまったため、いくつかの州では番号が飛んでいる。(例えばバージニア州では223から231のほか、691から699のエリアナンバーが使われている。)

中間の2桁の番号はグループナンバーである。地理その他のデータ上の意味合いはなく、並べる上での便宜上、使いやすいように桁を分けているにすぎない。この2桁の番号によって、それぞれの民族的背景を識別することができる、という説もある。これは都市伝説としてSnopes.com[15]や社会保障局のウェブサイトで紹介された。
グループナンバーは01から99まであるが、番号順に発行されはしない。管理上の理由により、グループナンバーは次のように発行される。

01から09までの奇数
10から98までの偶数
02から08までの偶数
11から99までの奇数
例えば98の次に11が発行される。

残りの4桁は発行順の一連番号である。グループ内の0001から9999まで続き番号で発行される。


・社会保障番号とは?(幻冬舎ゴールドオンライン編集部 2018年2月21日)

※社会保障番号とは

社会保障番号とは、アメリカの社会保障法に基づいて発行されている番号です。アメリカ国民、永住者、外国人労務者などに対して発行されますが、一般的には納税をしているものに与えられる番号と認識されています。

取得方法は、アメリカ合衆国連邦政府が設置した社会保障局へ申請するという方法です。社会保障番号が導入されたのは1936年11月から、社会保障局の手によりニューディール政策の社会保障プログラムの一つとして導入されました。

当初の目的はアメリカ市民の個人の収支を記録するためであり、1980年代までは免許証などと同様の機能である身分証明証としての扱いはされていませんでした。しかし今ではほとんどのアメリカ国民および居住者が所有しているため身分証明としての利便性が高く、今ではほとんどのアメリカ国民が身分証明書として使用しています。

先述した通り、外国人労務者などでも社会保障番号を持つことは可能で、取得条件はビザを発行された、留学していたなどです。留学生の場合は積極的に申請して学校でサポートしてもらわないと、取得は難しいといわれています。

日本のマイナンバーとの違い

日本では、社会保障番号と似た制度にマイナンバーがあります。正式名称は「国民総背番号制」と呼ばれ、すべての国民に個別の番号を与え、その番号を元に個人情報、社会保障などの管理、行政処理などを行うのが目的です。

役所への各申請の手続きのための書類の準備および提出が省ける、というのがマイナンバー取得のメリットです。マイナンバーが記載されたカードには、通知カードと個人番号カードの2種類があります。通知カードには個人情報の記載のみ、個人番号カードには個人情報と顔写真が添付されています。個人番号カードは、身分証明書、国民健康保険証としても利用できます。

社会保障番号とマイナンバーには、機能の違いはほとんどありませんが、違いといえば国民への浸透率です。アメリカではほとんどの国民が所有しており、身分を証明するために社会保障番号を提示する機会が多くあります。

そのため社会保障番号を取得していない方が、銀行からの融資、口座の開設、消費者金融の利用、不動産購入などをするのは難しいといわれているのが、アメリカの現状です。それに対し日本ではマイナンバーを取得していなくても、免許証、健康保険証、パスポート、住民票などを身分証明するものとして提出すれば、不動産購入、運営、銀行の融資などを受けられる資格があります。


・マイナンバー開始 先行する米国「社会保障番号」ってどんな制度?(ZUU online編集部 2015年10月22日)

※マイナンバーの通知カードがそろそろ届くが、具体的にどのように使うのか、情報管理に問題はないのかなど、疑問を持っている人は少なくないだろう。こうした個人に番号を割り振る仕組みは海外ではかなり広がっている。日本でも、米国の社会保障番号(SSN、Social Security Number)は有名だろう。

日本の戸籍に当たるものがない米国 子供の出生届と同時に申請

米国で初めてSSNが発行されたのは1936年。現在は米国で子供が産まれた時に、親が出生届と同時にSSNを申請する。出生と同時に申請する現行制度が確立したのは、1990年代になってからだ。

米国には日本の戸籍にあたるものがなく、このSSNを国民背番号として使用している。国民の所得を把握し税金の徴収を行ったり、年金や保険など公的な社会保障制度を管理したりと、生活に関わるあらゆる場面で使われているSSN。番号の一元管理によって、事務手続きは非常に効率的だ。

SSNないと米企業就職は難しい 留学も労働許可証なくSSN発行困難

米国で生活をしようとするとSSNはすぐに必要となる。アパートを借りたり、ガス・水道・電気の契約をしたり、自動車免許を取得したり。あらゆる場面でSSNを提示するように求められる。携帯電話の契約や、銀行口座の開設時にもSSNが必要。そもそもSSNがないと、米国籍企業に就職するのは難しい。

日本企業の米国支店に転勤になった場合などは、米国の社会保険局で発行手続きをする。ビザや労働許可証、パスポートなどを本人が持参し、申請用紙を提出すれば、通常は2 〜3週間でカードが郵送される。

一方、米国に留学することになった日本人などは、労働許可証がないため、SSNの発行は難しい。特に2000年代になってからはSSNの審査が厳しくなり、ビザの種類によってはSSNが取得できなくなった。しかし、パスポートなどの身分証明書、米国での住所を証明できるもの(公共料金の領収書等)を提示し、米国在住の目的やSSNを持たない理由を説明できれば、SSNがなくても一般的には生活上問題がない。

州によっては、最寄りの社会保険局で必要な手続きを行うと、SSNを持たない(持てない)ことを証明する不許可証明書(Denial Letter)を受け取ることができ、携帯電話の契約や保険の契約などの手続きを行える。

成りすましも頻発 今年4月にも病歴や指紋データ含む420万人の情報流出

国民の膨大な個人情報が含まれているSSN。その安全管理体制は、万全なのだろうか。

残念ながら、米国では毎年SSNの悪用や個人情報の漏洩事件が起きており、特に成りすましによる被害は後をたたない。例えば、他人のSSNを利用し、その人に成りすまし、クレジットカードを契約して多額に利用したり、信用口座を開設してお金を借りたりという事件は頻発している。連邦取引委員会によると、成りすまし犯罪による被害総額は年間平均500億ドルという情報もある。

サイバー攻撃などによる、個人情報漏えいはさらに深刻だ。

2015年4月、米連邦政府人事管理局は、連邦政府職員と元職員の約420万人分の個人情報が流出したことを発表した。その後の発表では、4月の漏えい事件に関連して、2150万人分のSSNが影響を受けたという。今回流出した情報はSSNの基本情報である名前、誕生日、住所に加え、560万人分の指紋データ、さらに、その人の精神疾患などの病歴や金銭取引履歴などのバックグラウンド情報も含まれている。

これらの個人情報が流出すると、成りすまし事件だけではなく、学校の入学試験や就職活動の時に不利益が生じるなど、様々な問題を引き起こす可能性がある。

日本のマイナンバー制度は大丈夫?

日本でも2015年5月にサイバー攻撃を受け、日本年金機構の約125万件の個人情報が流出する事件が起きている。これから導入されるマイナンバーは、国だけではなく、一般企業も給与の支払いなどで使用するため、情報漏えいが起きるリスクは高い。

個人番号制度の先駆者である米国でさえも、情報管理が万全ではあるとは言えない中で、日本のマイナンバー制度はどこまで対策ができているのだろうか。情報管理、行政や企業の管理運営体制にはしっかりと目を光らせておく必要があるだろう。