・【アンドリュー・カウフマン氏の言説が非科学的な理由について (1)】

https://www.facebook.com/ynemoto1/posts/3364942113534470

根本 泰行

2020年4月30日

※ロンドンリアルによるアンドリュー・カウフマン氏(Andrew Kaufman)のインタビュー動画の一部が、今朝、YouTubeビデオとしてアップされました。

・DR ANDREW KAUFMAN - UNMASKING THE LIES AROUND COVID-19:
 FACTS VS FICTION OF THE CORONAVIRUS PANDEMIC
 
https://www.youtube.com/watch?v=6C_26ZIUlrQ

この動画以外にも、いくつかの彼の動画を私は見てきていますが、主として以下の2つの点で、彼の言説は「非科学的」であり、私としては「間違っている」と言っても過言ではないと思っています。

(1)「PCR検査はインチキである」説
(2)「新型コロナウイルス=エクソソーム」説

(1)のPCR検査については、別記事として記す予定ですので、ここでは触れません。

以下、(2)の点に関して、若干の説明をするとともに、どうして、私が科学的に見て間違っていると考えているか、その理由をいくつか示したいと思います。



さて、「エクソソーム」という言葉ですが、聞き慣れない方も多いかと思います。

「エクソソーム」とは、生きた細胞(勿論、我々ヒトの体の中の細胞も含みます)が必要に応じて細胞外に放出する、膜に包まれた小胞のことです。

「エクソソーム」が存在すること自体は、既に昔から知られていて、いろいろな物質を細胞外に輸送もしくは排出するシステムとして、理解されていました。ところが、このエクソソームの中に、実は遺伝物質RNAが含まれていて、細胞間の通信などにも役立っている、ということが、21世紀に入ってから発見されてきており、エクソソームに関しては、今や新しい事柄が続々と明らかにされてきています。

「新型コロナウイルス=エクソソーム」説では、「新型コロナウイルスは、実は人間自身が、みずからの細胞からエクソソームとして放出したものである」と主張しています。言い換えれば、「新型コロナウイルスなどは、実際には存在しない」と言っているのです。

例えば、カウフマン氏は、以下のように発言しています。

『その過程で、彼ら(=エクソソーム)は実際にこれらの毒を水浸しにし、スポンジのように吸い上げるんです。そうすれば、身体から安全に除去できます。そして回復するのです。ですから、私の主張は、COVID-19(根本注:新型コロナウイルスのこと)は、実際には、我々のエクソソームである、ということです。外から身体を侵略してきたウイルスではありません。自身の身体から発しており、役に立つんです。これは、本当の病気の原因に対する反応なんです』

私にとっては、「目が点」になるほどの驚愕の言説です。



以下、私が今思いつく限りにおいて、いくつかの反論ならびにコメントを記します。

(1)新型コロナウイルスのRNAとヒト由来のRNAは、互いにまったく異なる配列を持っているはずです。
 
コロナウイルスについては、そのいくつもの変異種について、遺伝配列がデータベースに入力されており、ヒトに関しても、そのゲノム全体の遺伝配列が明らかにされています。
 
もしも両者の間に共通の配列があるのであれば、誰かが報告しているはずですし、それはセンセーショナルな大発見となったことでしょう。

ちなみに遺伝情報のデータベースはネット上で無料で公開されていますし、膨大なデータベースの中から、似た配列のものを探し出してくるソフトウエア・ツールもまた、ネット上で誰でも無料で使うことができます。すなわち、その気になれば (^^;)、

あなたも私も、新型コロナウイルスのRNAと同じ遺伝情報が、果たしてヒト・ゲノムに存在するのか否かについて、調べ尽くすことができます。

さらに付け加えれば、エクソソームに含まれているRNAの主要サイズは20から300文字と言われていますが、新型コロナウイルスのRNAの長さは約3万文字なので、話が違い過ぎると思います。

(2)もし新型コロナウイルスの実体がエクソソームであるのならば、新型コロナウイルスに対する抗体を、ヒトは作ることができないはずです。なぜなら、カウフマン氏の説が正しいのであれば、エクソソームのタンパク質はすべて、ヒトのタンパク質として作られているはずであり、免疫系は、病的にならない限り、自分自身のタンパク質には反応しないからです。
 
ところが、現在、ヒトにおいて、新型コロナウイルスの抗体検査が行われてきています。ということは、当然のことながら、ヒトは、新型コロナウイルスに対する抗体をしっかりと作ることができるわけです。
 
仮に新型コロナウイルスがエクソソームであったとして、それに対する抗体を私たちが作ることができるのならば、私たちは自己免疫疾患になってしまうことでしょう。

(3)電子顕微鏡で観察すると、新型コロナウイルスの場合には、表面に特有のスパイク構造が見られます(下図・右)。一つ一つの突起は、スパイクタンパク質というものが3つ集まって作られていることが知られています。この構造は、エクソソームにはまったく見られません(下図・左)。



それなのに、カウフマン氏は、同じ電子顕微鏡写真を見て、「新型コロナウイルスとエクソソームは同一である」と断言しています。
 
エクソソームの場合には関与するタンパク質について、既にある程度の分析が進んでいます。コロナウイルスの表面に存在するスパイクタンパク質が、エクソソームの表面にも存在している、ということが、もし発見されたとしたら、それもまた、かなりセンセーショナルなことになっているでしょう。

(4)新型コロナウイルスの人から人への感染については、皆様ご存じの通り、感染経路を追うことができます。
 
「新型コロナウイルス=エクソソーム説」の場合、外部から侵入してくる粒子などとはまったく関係なく、毒物が細胞内に溜まりすぎたというような内部的な原因によって、「感染」した人々に症状が出る、と考えています。
 
すなわち毒物が細胞内に溜まりすぎると、細胞は毒物を取り込んだエクソソームを細胞外に放出します。エクソソームにはRNAが含まれているので、この細胞外に放出されたエクソソームのことを、人々は新型コロナウイルスであると間違えて捉えてしまっているのだ、とこの「説」では説明しています。
 
しかしながら、このような考え方によって、一体どうしたら、「感染経路を追うことができる」という「事実」を説明することができるのでしょうか。私には理解できません。

(5)これは補足的なコメントですが、ルドルフ・シュタイナーは、1918年にスペイン風邪が流行した時に、同様の説-すなわち、細胞から飛び出した破片のようなものがスペイン風邪の原因となっているという説-を唱えています。
 
ルスカらが最初の電子顕微鏡を発明したのは1931年のことなので、シュタイナーの時代には、ウイルス粒子を誰も見ることができなかったはずです(ウイルスは小さすぎて、その姿を観察するためには電子顕微鏡が必要です)。
 
そういう時代における直感としては、シュタイナーの考え方は優れたものであった-すなわち、見えないはずのものを見ていた-と私は感じていますが、それでも、シュタイナーの説そのものは、現代的な見地からすると間違いである、と私は思っています。
 
ちなみに、ウイルスの「起源」としては、何十億年にも渡る生物の進化の過程におけるどこかの段階で、細胞から、いわゆる「エクソソーム」状のものが飛び出して形成されたのではないか、という説があり、それは私も同意します。
 
とは言っても、「現在、リアルタイムで私たちの身体の中で作られているエクソソームが、すなわちウイルスである」と主張するのは、さすがに受け入れがたい説であるように、私には感じられます。

(6)もう一点、これは後から加えたコメントですが、以下のテレビ番組の中に、ウイルス学者の河岡義裕氏が、サルの腎細胞に新型コロナウイルスを感染させた後の細胞の様子について、電子顕微鏡を使って調べているシーンがあります。

・情熱大陸 #1098「ウイルス学者・河岡義裕」
  https://tver.jp/episode/70642466
 2020年4月12日放映

私たち視聴者も、確かに表面にスパイクと呼ばれる特有の突起を持ったウイルス粒子(これはまさに新型コロナウイルスそのものです)が、たくさん細胞から放出されている様子を確認することができました。

これは明らかにエクソソームではありません。ウイルスを感染させていない、同じサルの腎細胞においては(すなわち対照実験においては)、スパイクと呼ばれるこのような特有の構造を持った小胞は観察されていないことを、当然のことですが、確かめていると思います。

世界的な学者である河岡義裕氏が、こんな初歩的なことを間違えるはずもありません。

河岡義裕氏に関しては、ネット上では、毀誉褒貶、さまざまな説が唱えられていることを、私はある程度フォローしていますが、私が上に記した内容については、何らかのトリックやフェイクということはあり得ないと思います。



【補足】

ロンドンリアルによってYouTubeにアップされたカウフマン氏へのインタビュー動画ですが、字幕大王がさっそく日本語化してくれています。

・London Real:アンドリュー・カウフマン:
 コロナウイルスのウソを暴く
 
https://www.jimakudaio.com/post-6798

この中に以下のくだりがあります。

『しかし、この(今回の)コロナウイルスが、どう(以前の)SARS Cov-1に関連しているかという彼らの言い分としては。。。事実として、彼らは(今回のものを)SARS Cov-2と呼ぶわけですが、配列の同一性です』

『そして、彼らが発見したのは、80%弱の一致を見たと。そして、こう言うわけです、これは関連しており、それをSARS Cov-2と呼んだわけです。しかし、人間とチンパンジーの遺伝子配列を比較してみると、これは96%なんです、一致率としては。ですから、我々は明らかにチンパンジーではありませんし、誰もいいませんね、我々の遺伝子物質はチンパンジー属の一部だなどと』

『しかし、それでも彼らは配列の一致性を、これは80%を切るんですが、96%に比較するとはるかに低いのに、これはコロナウイルスだというわけです、それが理由で』

これって、遺伝子について、余り詳しくない人にとっては、もしかしたら説得力のあるロジックかも知れませんが、私からすれば、「噴飯物」と言っても過言ではありません。

こんな馬鹿げた理屈付けは初めて見ました。

80%と96%という数値は直接的に、ナイーブに比較したところで、何か言えるものではありません。

こんな議論が通用するのであれば、例えば、私は以下のように説明します。

かなり荒っぽい議論ですが、カウフマン氏のロジックと同等以上の正当性はあるでしょう。

『ヒトもチンパンジーもそのゲノムの大きさは30億文字です。そのうち4%が異なるというわけですが、4%を実際に計算すると1億2,000万文字になります』

『その一方で、コロナウイルスのゲノムの大きさは3万文字です。SARS Cov-1とSARS Cov-2(これが新型コロナウイルスです)の間では20%異なっているということなので、その文字数は6,000文字になります』

『従って、ヒトとチンパンジーの間では、1億2,000万文字も遺伝情報が異なっていますが、SARS Cov-1とSARS Cov-2の間では、たったの6,000文字しか異なっていません。その差は2万倍です。従って、ヒトとチンパンジーの間の関係と比べると、SARS Cov-1とSARS Cov-2がずっと近縁なのは当たり前のことです』



アンドリュー・カウフマンさんについては、ビデオ映像からすると、好人物だとは思うのですが、科学的な見地からすると、残念ながら、ちょっと受け入れがたい人物のように私には感じられます。

この「新型コロナウイルス=エクソソーム」説に関しては、それを支持する確かな証拠はないと思いますし、この「説」を信じる人たちは、私がザッと挙げた(1)から(4)までの点について、「説」に基づいてちゃんと説明できないといけないのですが、彼らが説明できるようには私にはとても思えません。



ところが、アンドリュー・カウフマン氏の言説については、たとえばデイビッド・アイクは、4月6日のロンドンリアルによるインタビュー第2弾において、その冒頭で延々とカウフマン氏の説-「PCR検査はインチキである」説と「新型コロナウイルス=エクソソーム」説の両方とも-を説明していましたが、これは私にとっては、まったくいただけませんでした。

カウフマン氏の言説については、デイビッド・アイクのみならず、5Gに関して警鐘を鳴らしているトーマス・コーエン(Thomas Cowen)さんも信じてしまっているようです。とはいえ、トーマスさんは、元々シュタイナーの信奉者の方のようなので、その流れもあって、致し方ないことかなあ、とも私は思っています。


・【アンドリュー・カウフマン氏の言説が非科学的な理由について (2)】

https://www.facebook.com/ynemoto1/posts/3370162559679092

根本 泰行

2020年5月2日

※アンドリュー・カウフマンさんですが、またまた、「とんでもないことを言っているなあ」と思わされることがあったので、以下に要点を記します。

今回、私が見たのは、デイビッド・アイクの息子のジェレミー・アイクがMCをしている以下の動画です。

「字幕大王」が日本語字幕を付けてくれた動画を、以下のBitChuteのサイトで見ることができます。

・アンドリュー・カウフマン:存在証明の無い物のワクチンは作りようがない
 
https://www.bitchute.com/video/e5mmcZqMeFXV/
 
April 29th, 2020

また「字幕大王」が、字幕用の文章をそのままブログに載せてくれています。

・アンドリュー・カウフマン:コロナは真っ赤なウソ、存在証明の無い物のワクチンは作れない
 
https://www.jimakudaio.com/how-can-you-make-a-vaccine-for-something-never-proven-to-exist
 
2020年4月13日, 2020年4月29日

この「字幕大王」のブログのページから、いくつかのテキストを引用しつつ、カウフマン氏の言説に対して、コメントを加えていくことにします。

     *****

冒頭では、カウフマン氏が、いわゆる「コッホの4原則」に関して語っています。

『4つのルールがあるわけです。最初は、病気の人を連れてきて、そこから感染源を分離し、純粋化するわけです。身体の病気の部分からですね。単純な例を考えてみますと、連鎖球菌性咽頭炎は、連鎖球菌バクテリアによって起こると言われ、信じています。ですから、誰かがこの病気に罹っている場合、その人からこのバクテリアを取り出せるわけです。喉からですね。そしてこれを純粋化し、連鎖球菌であると識別するわけです』

ここまでは問題ないと思います。

『そしてまた、同じ試験を健康な人にも行わねばなりません。喉に異常の無い人ですね。そして、連鎖球菌が見つからないことです。ここは非常に重要なんですよ、なぜなら、同じバクテリアが病人からも、健康な人からも見つかるとなると、これは病気の原因とは言えません』

はあ?

カウフマン氏は「日和見(ひよりみ)感染」という概念をご存じないのだろうか?

常在性の細菌の中には、普段は何も悪さはしないけれども、その人の免疫力が弱くなってくると、途端に病原性を発揮するものがあり、場合によっては、その人には重篤な症状が引き起こされ、最悪の場合、死に至るということは、普通にあることではなかったですか?

従って、健康な人に見つかる細菌であっても、その人の免疫力が何らかの理由で低下した場合には、病気の原因となるのであり、そういう菌のことを「日和見菌」と呼ぶのではなかったですか?

『なぜ、こちらは健康なんでしょうと』

同じ菌を保有していても、その人の免疫力が普通に働いていれば、その人は健康です。

『そして、興味深いことに、連鎖球菌性咽頭炎において、このステップは証明されたことがないんです。なぜなら、連鎖球菌というのは、ごく普通に我々の身体にいるからですよ。そして、完全に健康な喉の多くの人が、連鎖球菌を持ってるんです』

連鎖球菌は常在菌であって、しかも日和見菌であると考えれば、別に不思議でも何でもないのではないでしょうか。

例えば、日和見菌の代表として、カンジダ酵母(カンジダ・アルビカンス)を挙げることができると思いますが、このカンジダ酵母が引き起こすカンジダ症と呼ばれる症状があります。

Wikipediaによれば、以下のとおりです。

『カンジダ症は、ビタミン欠乏症による免疫力の低下が主因で引き起こされる、悪玉菌増加による日和見感染である。カンジダ菌そのものは、元来はヒトの体表や消化管、それに女性の膣粘膜に普通に生息するもので、多くの場合は特に何の影響も与えない。また味噌やワインの発酵などにも関与している』

私が上で述べたことがそのまま書いてあります。

それに加えて、今、見つけたところなのですが、Wikipediaで「コッホの原則」を調べてみると、その下の方に、以下の記述があります。


『「コッホの原則の限界と有効性」

微生物学の進歩に伴って、コッホの原則では証明できない感染症の存在も明らかになった。

1.ヒトに病気を起こす病原微生物が必ずしも実験動物でも病気を起こすとは限らない
2.子宮頸癌におけるヒトパピローマウイルスのように、必ずしもすべての臨床例で病原体が検出されない場合がある
3.日和見感染のように、その微生物が存在しても必ずしも発病しない場合がある

このため現在はコッホの原則をすべて満たす病原体が見つかることの方が却って稀である。

しかしながら、SARSが初めて出現したとき、サルを使った感染実験によって、もう一つの病原体候補であったメタニューモウイルスではなく新種のコロナウイルスがSARSの病原体であることが証明されており、今日においてもコッホの原則が病原体同定に重要な意味を持つことには変わりがない。』


「コッホの原則では証明できない感染症」の例として、3番目に挙げられている「日和見感染」こそが、私が上で説明を加えた事柄そのものです。

そしてまた、最後のSARSに関する内容も、カウフマン氏の言説の非科学性を指摘する上では、とても重要なことです。実際に、SARSの病原体を同定する上で、コッホの原則が用いられているのです。

カウフマン氏は「ウイルスが実際に病気を引き起こしていることを証明するようなデータは何もない」と言っていますが、SARSに関するエピソードは、その主張に対する見事な反証となっています。

カウフマン氏の頭の中には、「日和見感染」や「免疫力」という概念が欠落しているように思うのですが、大丈夫でしょうか (^^;)

     *

次は、些細といえば些細なことなんですが、カウフマン氏が、口から出まかせを言っていることがよく分かる一例です。

『このケースで彼らのしたことは、配列を決定しました。それを基本的に他のコロナウイルス(COVID-19ではない、以前のもの)と比べたわけです。なぜなら、これはCOVID-19ですね。ですから、少なくともその前に18個あるんです。19は特別な重要性がありますが』

ブッブー(笑)。

大外れです。19というのは、2019年に発見されたから、そのように命名されたんです。19番目だからではありません。例えば、以下のサイトに記されています。

・新型コロナウイルスの症状は、かくして「COVID-19」と
 名づけられた
 
https://wired.jp/2020/02/13/coronavirus-has-a-name-the-deadly-disease-is-covid-19/

『(WHOによれば)「COVID-19」という名称は、「CoronaVirus Disease, 2019」(2019年にコロナウイルスにより発生した病気)を意味する』

カウフマン氏は、あたかも、あらゆることを理解した上で、淀みなく話しているように見えますが、実際に語っている内容は、相当程度にいい加減なものであるように、私には感じられます。

     *

次に新型コロナウイルスのPCR検査に関するコメントです。

『彼らが発見したことは、80%の偽陽性率です。言い換えれば、検査で陽性になった5人のうち4人は、実際には全く病気ではなかったんです。そもそも病気ではなかったんですから。これは大多数ですよね』

この「80%の偽陽性率」という表現ですが、これは一体出典はどこなのでしょうか。カウフマン氏本人なんでしょうか。

PCR検査においては、偽陽性率というのは極めて小さいです。

以前、私自身がPCR検査について、「感度」=70%、「特異度」=99%と仮定して、実際の厚生労働省のデータに当てはめて計算した時には、上でカウフマン氏が言っている「偽陽性率」、すなわち「偽陽性」/「検査陽性者」は10.9%でした。また念のため、「感度」のみを50%、30%に変更したところ、それぞれ10.4%、9.2%となりました。すなわち「偽陽性率」はむしろ若干減っていく、という結果になりました。

いずれにしても、決して80%という数値にはなりません。

一般にPCR検査は、当該ウイルスのRNAが存在しないのに-すなわち感染者ではないのに-検査の結果、「陽性」と出てしまう確率=「偽陽性」/「非感染者」=(100%-「特異度」)は極めて小さく、恐らく1%でも大きすぎるくらいです。

このことは、PCR検査の仕組みや設計方法を理解すると、納得することができます。

その一方で、感染者中の「偽陰性」の割合、すなわち「偽陰性」/「感染者」=(100%-「感度」)については、新型コロナウイルスのPCR検査においては、30%~70%という比較的大きな割合になりますが、これはPCR反応の問題ではなくて、被検者から適切な形で検体を採取することが難しいためです。

感染者から、ウイルスのRNAが入った検体を取ることに失敗すれば、それだけで「偽陰性」が確定します。

     *

このビデオの中では、他にもいろいろな話題について語っていますが、特に私自身が解説を加えたいような内容のものはなかったので、これで終わりにします。

ついでにこの流れの中で、カウフマン氏のもう一つのビデオにも触れたいと思います。

カウフマン氏が語った事柄の中で、今でも私の印象に強烈に残っているのは、PCR反応を説明するためにカウフマン氏が使った「たとえ話」です。

この「たとえ話」は、以下のビデオの中に登場します。

・アンドリュー・カウフマン:コロナウイルスは存在しない
 
https://www.bitchute.com/video/CPLyoWIQLsUK/
 
First published at 17:49 UTC on April 28th, 2020

これもまた「字幕大王」が日本語字幕を付けたものをBitChuteにアップしてくれているのですが、その字幕そのものが、以下の「字幕大王」のサイトにすべて掲載されています。

・アンドリュー・カウフマン:コロナウイルスは存在しない
 
https://www.jimakudaio.com/post-6680?fbclid=IwAR12R14DuKgaxZCV_qea8PCdBfutjfclPAo1yrcXzFOAMqqmZyu3y8nOld4

2020年4月17日、2020年4月29日

さて、このビデオの中で、カウフマン氏は以下のように語っています。

『(PCR検査に関する)例をあげましょう。識別したい人間を連れてくるとします。ジェームズ、君を使ってみよう』

このビデオは、実際には、カウフマンさんが、恐らくZOOMを使って、遠隔でアクセスしている数名の参加者に対して、講義をしているところを撮影したものです。参加者の一人に、ジェームズさんという名前の人がいたわけです。

『我々は、群衆の中からジェームズを識別したいんです。彼をヤンキー・スタジアムの野球試合に送りこみましょう。しかし、ジェームズの顔を探すわけじゃありません』

『その代わりに代理マーカーを使います。ちょうど彼らがこのテストに使っているようにですね。ですから、ジェームズの頭に帽子をかぶせましょう。典型的な青のヤンキー帽子は使いません。巨大な群衆ですからね。縞模様の特別なヤンキー帽子を使います。白と青の模様です。これを彼にかぶせ、スタジアムに入れ、群衆の中に入ります』

『そして、10人のチームを用意します。スタジアムに入れて、帽子を探すんです。この手続を行うと、驚くことに、起こることは、実際には、この帽子を6つ見つけるんです。10人のうちの6人が、この帽子をかぶってる者を見つけます』

『ですから、行って見てみます、この中の者がジェームズであるか。わかったことは、誰もジェームズではありませんでした。ジェームズは帽子をかぶるのが嫌いだからです。つまり、彼はスタジアムに到着すると、その帽子を子供にあげてしまったんです。欲しいと言った子供にです。それが見つかった6人のうちの1人です』

およよ。目印となる帽子を子供にあげてしまったのであれば、そりゃあ、確かに、ジェームズを見つけることはできないと思います (^^;)

『わかりますね。正確に探す対象ではないものを探す場合、つまり、何かしら関連するものの方を探す場合、正確に理解しなければならないんです、対象とそれの関係をです。言い換えれば、ジェームズに聞かねばなりません。「ジェームズ、いつもその帽子をかぶっていられるか?」と』

うーん、意味不明です(笑)
一体どこが、PCRの「たとえ話」なんでしょうか。
私には全然分かりませんでした。

『そしてまた、知るべきことは、他の人間はこの帽子を買ったのか、あるいは、この帽子が(世界で)唯一なのか、です。ですから、わかりますね、これは非常にミスリーディングで、多くの誤りになりがちだと。この種の方法を使うとです』

うーん・・・

     *

同じビデオから、もう一つだけ、PCR関連の話を紹介します。

『PCRの行うことは、遺伝子配列を選択し、これを巨大に増幅することである。これは、干し草の山から針を見つけるに等しいことを達成する。この針を干し草の量まで増幅するのだ』

まあ、そうとも言えるでしょう。

『電気的な増幅のされるアンテナのように、PCRは信号を巨大に増幅するのだが、雑音もまた大きく増幅される。この増幅は指数関数的であるため、計測における些細なエラー、些細な汚染が、巨大な大きさのエラーになりうる』

雑音? これは非特異的な増幅産物のことを指しているのかなあ。

でも、プライマーを正しくデザインすれば、そのようなことは起こらないし、たとえ起こったとしても、本来のものと比べると、(偶然そうなった場合を除いて)増幅産物の大きさが異なっているために、区別ができるはずです。さらに必要とあれば、増幅産物の遺伝情報配列を解析すれば、正しい増幅産物かどうかを明確に知ることができます。

『ですから、これは非常に正確なテストとは言えません。特に、たくさんのサイクルを行い、大きな増幅をする場合はです。些細なミスが偽陽性の結果になりえます。それが、今見ていることだと思います』

いえいえ、そんな仕組みで「偽陽性」がたくさん出るということはありません。

カウフマンさん、大丈夫ですか~~~(^^;;;)

     *****

私の感じでは、カウフマン氏の言説は、まったく専門的なことを知らないシロウトの方にとっては、専門家の有り難いお話のように感じられるのかも知れませんが、専門的な経験といっても、わずかなものである私のような者からしても、「え、なんでそんなこと言えるの?」と思うことが何度もあります。

どちらかと言うと、カウフマン氏は「顔色一つ変えずに、平然と<間違ったこと>を言う」というのが、私の正直な印象です。

それが意図的なものなのか、あるいは、本人は100%自分が正しいと信じていて、ただそれを素直に吐き出しているだけなのか、よく分かりませんが、善意に解釈すれば、後者なのでしょう (^^;)