・【情報開示】新型コロナ、第二回専門家会議の速記録、真っ黒で開示。

2020-05-29

http://oshidori-makoken.com/?p=4601

3行まとめ
・専門家会議は速記業者を第2回のみ入れていたそうである(事実であろうか?)
・2月25日に情報開示請求をしていた筆者に、第2回の速記業者の納品物が開示された。
・司会進行と資料説明以外は、真っ黒で、委員の発言は全く消されていた。



・コロナ専門家会議、議事録作らず 歴史的事態検証の妨げに(共同通信 2020年5月28日)

※新型コロナウイルス対策を検討してきた政府専門家会議の議事録を政府が作成していないことが28日、分かった。共同通信の情報公開請求に、事務局の内閣官房が回答した。議事の概要と資料は公表されているが、各出席者の詳細な発言は記されず、対策検証の妨げになる可能性がある。

政府は3月、新型コロナ問題を「歴史的緊急事態」に指定し、将来の教訓として公文書の管理を徹底することを決定。安倍晋三首相は「適切に、検証可能なように文書を作成、保存していると認識している。今後さらなる徹底を指示する」と強調した。消極的な政府の開示姿勢に、専門家会議の委員からも疑問の声が出ている。


・新型コロナ専門家会議廃止 「分科会」として改めて設置へ(NHK NEWS web 2020年6月24日)

※新型コロナウイルス対策を話し合う政府の専門家会議について、西村経済再生担当大臣は記者会見で、廃止したうえで、メンバーを拡充するなどして、政府内に「新型コロナウイルス感染症対策分科会」として改めて設置する考えを明らかにしました。

この中で、西村経済再生担当大臣は、政府の専門家会議について「専門家からは、『すべてを決めているかのような印象を与えている』という反省めいたことも言われており、専門家がこれまでを評価し、一定の区切りをつけるタイミングで会議をしっかり位置づけたい」と述べました。

そして、専門家会議を廃止したうえで、メンバーを拡充するなどして、政府内に「新型コロナウイルス感染症対策分科会」として、改めて設置する考えを明らかにしました。

分科会では、感染状況の分析や感染の再拡大に備えた対策、それに、ワクチンができた際の接種の在り方などを議論する見通しで、西村大臣は、メンバーについて、感染症の専門家に加え、自治体関係者や危機管理の専門家など幅広い分野から人選する考えを示しました。

また、内容の記録については「専門家会議では、発言者と発言内容を明らかにした議事概要を作成することになったので、それを踏襲したい」と述べました。

西村大臣は、政府の対策本部で設置を決めたうえで、来月上旬にも、初会合を開きたいとしています。


・「8割おじさん」の暴走を止められなかった専門家会議(JB Press 2020年6月26日)
6/26(金) 6:01配信

(池田 信夫:経済学者、アゴラ研究所代表取締役所長)

※新型コロナ対策の中心だった専門家会議が、廃止されることになった。これは尾身茂副座長も事前に知らされていなかったらしいので、実質的な取りつぶしである。政府の新型コロナ対策が迷走した責任を専門家に押しつけるのはフェアではないが、専門家会議に問題が多かったことも事実である。



(上)【グラフ】日本の新規感染者数と実効再生産数の推移。3月後半に実効再生産数が2を超えたのは「瞬間風速」で、4月以降は1を下回っている。

政府の諮問機関ではないのに、専門家会議は政府として決めたかのように記者会見して「8割削減」や「新しい生活様式」などの提言を発表した。おまけに西浦博氏(北海道大学教授)が「東京で8万人感染する」とか「全国で42万人死ぬ」という予測を発表して国民を恐怖に陥れたが、空振りに終わった。

■ 迷走した専門家会議

新型コロナ対策本部ができたのは1月30日。ほぼ同時に新型コロナが指定感染症に指定され、専門家会議が2月14日に発足した。初動体制は早かったが、その後は強硬派の厚生労働省と、慎重派の自民党の対立が続き、新型インフルエンザ等対策特別措置法(特措法)の改正は3月までずれこんだ。

この対立の背景には、いつも感染症に過大な対策を主張する厚労省に対する批判があった。2009年の新型インフルエンザがパンデミックに指定されたときも政府は対策本部を立ち上げたが、日本では死者200人未満で空振りに終わった。

そのあと厚労省は「新型インフルエンザ対策行動計画」を出し、最大の被害想定を「感染者3200万人、死者64万人」とした。これをもとに2012年にできたのが特措法だが、この被害想定には過大だという批判が強かった。

専門家会議が2月24日に記者会見したときも「あと1~2週間が瀬戸際」という玉虫色の表現で対策を先送りした。安倍首相はこの対立の中でゆれ動いているようにみえたが、2月26日に記者会見で一斉休校を発表した。これは専門家会議の知らなかった決定で、その後は官邸主導になり、専門家会議の出番はなくなったように見えた。

そこに登場したのが西浦氏である。彼は専門家会議のメンバーではなく厚労省のクラスター対策班のデータ収集担当だが、3月上旬にヨーロッパで感染爆発が起こったのをみて危機感を強め、3月19日の分析・提言で、人口の79.9%が新型コロナに感染するという「オーバーシュート」というシミュレーションを発表した。

日本の人口の80%は約1億人だから、致死率が0.5%とすると50万人が死亡する。このときのモデルが、その後も使われて「42万人死ぬ」というシミュレーションになったのだが、当時これを批判したメンバーは専門家会議にいなかった。西浦氏が1次情報を独占していたため、専門家会議には批判できなかったのだ。

■ 計算違いの原因は「基本再生産数2.5」

この「オーバーシュート」に東京都の小池知事が目をつけ、3月25日には西浦氏と一緒に記者会見して「感染爆発の重大局面」だと強調し、政府を突き上げた。それにあおられて安倍首相が4月7日に緊急事態宣言を出したとき「東京の感染者が1カ月後に8万人になる」と述べた根拠も、西浦氏のシミュレーションである。

このころから西浦氏は専門家会議を飛び越し、首相官邸に直接影響を与えるようになった。特に大きな反響を呼んだのは、彼が4月15日に厚労省クラスター対策班として行った記者会見である。ここでは「85万人が重症化して、その49%が死亡する」と発表した。

これが「42万人死亡説」として大きな反響を呼んだが、6月23日現在の新型コロナ死者は963人。400倍以上の違いは「計算違い」としてすまされる問題ではない。この計算が「8割削減」という専門家会議の提言の根拠になったからだ。西浦氏も「8割おじさん」と自称している。

これほど大きく計算が狂った原因は単純である。彼の想定した基本再生産数2.5という感染力の想定が大きすぎたのだ。この値の根拠は「ドイツの数字だ」とか「武漢の数字だ」とか西浦氏は説明しているが、それが日本でも同じになる科学的根拠は何もない。

これは彼の算出した実効再生産数のデータでもわかる。下の図のように3月後半に再生産数が2を超えたのは「瞬間風速」で、4月以降は1を下回っている。感染は指数関数で増えるので、1と2.5の差は感染者数では何百倍にもなるのだ。

■ 指定感染症の指定解除を

西浦氏のシミュレーションは実測データと無関係な思考実験だが、彼がこれを学会誌で発表したのなら何の問題もない。混乱の原因は専門家会議がそれをチェックできず、厚労省も役所で彼に記者会見させたことだ。

厚労省は「死者数を出すのはやめてくれ」といったようだが、西浦氏はそれを「被害を隠蔽するもの」と解釈して、日本経済新聞に42万人のシミュレーションを書かせ、それを受けて4月15日に厚労省で記者会見した。これは彼も認めたように、政府の意思決定システムを踏み超えた「クーデター」だった。

この暴走を「過剰対策は過少対策よりましだ」と擁護する人もいるが、それによって感染症の被害は止められたのだろうか。BBCの国際比較によると、2020年3月の日本の新型コロナ死者は51人だが、「その他の超過死亡数」は301人とはるかに多い。

超過死亡というのはすべての死者を合計した増加なので、コロナの死者より他の感染症の死者のほうが増えたことになる。その原因はまだ断定できないが、医療資源がコロナに偏ったことではないか。他の国では逆に、コロナの死者がその他の合計より多い。

新型コロナは指定感染症なので、患者はすべて(無症状でも)感染症指定医療機関に入院させなければならない。これは1月末に指定したときは合理性があった。コロナの感染力は強く、一般の病院では対応できないと考えたのだ。

しかしマスコミが危険をあおったため、普段の何倍もの患者が指定医療機関に押し寄せ、大病院の外来がパンクし、緊急手術以外の手術はできなくなった。

他方、開業医には患者が寄りつかず、ガラガラになった。必要な患者が診察を受けず、手遅れになったケースも多いと思われる。これが超過死亡の大きな原因だろう。

このように医療資源が新型コロナに偏った状態が続くと、社会全体で死者が増えるおそれが強い。新型コロナの感染力は普通の風邪よりは強いが、インフルエンザと同じようなものだ。人口当たりコロナ死亡率も日本は先進国では最低水準である。

もはや新型コロナを指定感染症として特別扱いするのは弊害のほうが大きい。指定を解除してインフルエンザと同じ5類の扱いにし、普通の病院でも処置できるようにしたほうがよい。医療資源を効率的に配分して、全体最適を実現する必要がある。

感染症のような特殊な分野では専門家の意見を尊重すべきだが、彼らは医学の専門家であって公共政策の専門家ではない。専門家は助言する立場から複数のオプションを示し、政府が最終判断すべきだ。今回の失敗を教訓として、第2波の対策では指揮系統を明確にする必要がある。


・「吉村知事」が「8割おじさんに騙された」 西浦モデルを阪大教授が全否定した「K値」とは(デイリー新潮 2020年6月25日)
6/25(木) 6:01配信

※人との接触8割減を迫り、42万人が死ぬと脅した「8割おじさん」こと北海道大の西浦教授。その数理モデルは間違っていたと、それをデータとともに突きつけられた大阪府の吉村知事は、天を仰いだという。事実、ツケは大きすぎるので――。

新型コロナが未知のウイルスであった以上、警戒しすぎも、ある程度は致し方なかったのだろうか。

たとえば、安倍総理は緊急事態宣言を発令した4月7日、「人と人との接触機会を最低7割、極力8割削減できれば、2週間後には感染者の増加をピークアウトさせ、減少に転じさせることができる」と発言。言うまでもなく、8割削減という目標は、厚生労働省クラスター対策班に所属する北海道大学の西浦博教授(理論疫学)による試算を根拠にしていた。

しかし、安倍総理の言葉には「緩み」があったようで、西浦教授はすぐに「この7割は政治側が勝手に言っていることで、私は一切言及したことがありません」とツイート。8割でなければダメだ、と強調したのである。

西浦教授はさらに畳みかけ、4月15日には、接触を減らすなどの対策をまったくとらなければ、国内で約85万人が重症化、うち約42万人が死亡する恐れがある、という試算を公表した。テレビも加勢し、翌16日のTBS系「ひるおび!」を例にとれば、八代英輝弁護士が「政治はそれ(科学的知見)に従うということが大前提で、科学的知見が8割であったら、それを政治で7割に調整するということは、本来許されない」と発言。専門家とメディアがスクラムを組み、政治的判断の先をいく自粛ムードを作っていった。

日本で欧米のように感染が広がらなかったのは、過剰な警戒の賜物なのか。

ところが、大阪府の吉村洋文知事は6月12日、「第2回大阪府新型コロナウイルス対策本部専門家会議」終了後の囲み会見で、次のように語った。これは3月半ばに初回が開かれ、今回、第2波に備え、国に先がけこれまでを検証すべく、再招集されたものだ。

「西浦モデルだけを信じて突き進むのは違うんじゃないか。大阪と兵庫の往来自粛をしたときも、西浦先生の数字で、兵庫と大阪は2週間後に感染者が3千人になる、とありましたが、事実としてそうはならなかったです。緊急事態宣言が出されたときも、8割の接触削減をしないと感染者が右肩上がりになるということでしたが、事実と適合してないわけですよね」

そして、こう繋いだ。

「40万人亡くなるというのも、4月15日に出ましたが、ああいうのを僕ら政治家が見せられると、すごく影響が強い。命を守らなきゃいけない立場になったときに、40万人死にますと言われると、全部抑えなければならない、となってきます。でも、40万人死んでいません。現実には900人。すべて西浦モデルが出発点になって、国の方針が示されてきました。それをやっても副作用がなければ全然いいけど、休業要請などもすべてにかけていくと、副作用、出血、犠牲があまりに大きすぎるので、国を挙げて批判的検証をしないと間違った方向に進むんじゃないか」

いわば「8割おじさんに騙された」と、白状した恰好だった。

実際、「騙された」ことによる「副作用」は、治癒できるレベルではない。第一生命経済研究所首席エコノミストの永濱利廣氏は、「8割削減にかぎってのダメージを測るのは難しい」としながら、そこが出発点になった緊急事態宣言に伴う経済への影響について、

「GDPベースで最大12兆円の損失が生じ、今後も含め、失業者が60万人程度出ます」

と見るのである。

天を仰いだ吉村知事
 
吉村知事が先のように語ったのも、会議の席でオブザーバー参加した2人の学者から、緊急事態宣言も、西浦教授の予測を信じて行った大阪と兵庫の間の往来自粛も、多方面への営業自粛要請にも、効果がなかったと断じられたからだ。

その学者の一人、京都大学ウイルス・再生医科学研究所の宮沢孝幸准教授は、

「吉村知事は天を仰いでいました。西浦モデルに“騙された”という思いがあるのではないでしょうか」

と、述懐。そして、

「私はウイルス学が専門で、常にウイルスが飛び交う場所で、感染リスクを考えながら研究しています。その点からいっても、新型コロナは基礎疾患がある人、高齢者などの“コロナ弱者”を除けば治る病気。強毒性のウイルスと同様の対処をするのはどうなのか、というのが私の意見です」

と言い、多くの対策に効果がなかった根拠を説く。

「空気感染はないと言っていいレベルで、咳、痰、唾が飛んでの飛沫感染、ウイルスが付着した手で口や鼻を触っての接触感染に気をつければ、感染リスクは非常に下がり、それにはこまめな手洗いとマスク着用で事足ります。感染は3月28日にはピークアウトしていましたが、収束へ向かったのは初期段階の対策の効果。緊急事態宣言の発令後、映画館やパチンコ店など、ほとんど話をしない場所への自粛も呼びかけられ、駅の利用状況も問題視されましたが、唾液が飛ばないところで自粛しても意味がありません。緊急事態宣言にも、メンタル的な効果はあったと思いますが、休業を強いる必要はなかった」

西浦教授の数理モデル自体はどうか。

「42万人死亡、という数字は、だれも新型コロナを気にせず、毎日ドンチャン騒ぎをする状況なら、確率論的にはありえますが、一般常識としてはありえません。その公表がリスクコミュニケーションとしてどうだったかといえば、私はよくなかったと思う。言い出せば世の中は怖いウイルスだらけで、何百万人死ぬという推計も、出そうと思えば出せます。しかし、出しても恐怖を呼び、社会的に混乱を招くだけです」

また、今回の感染は、

「中野教授のK値を見ても、自然減の傾向が強く、放っておいても下がる」

と語る。そこでもう一人の学者、大阪大学核物理研究センター長の中野貴志教授に登場を願おう。

まず「K値」についてだが、

「感染拡大率の減速を示す指標で、直近1週間の新規感染者数を、累積感染者数で割って算出するものです。先にK値で予想を立て、以降の感染者数を見ると、いまのところ予測とほとんど同じ推移です。指数関数的に感染者数が増えると言われていた時期に、それはありえないと思い、初めて計算しました。この病気は発症後2週間で治るので、指数関数的に増え続けるのは不可能。投げたボールが落ちてくるように、感染者の推移も、勢いよく上がっているように見えている段階でさえ減速している。その勢いの衰え方がずっと一緒なら、少なくなるのはいつかという予測も立ちます」

K値を通して、見えてきたことは多いという。

「人と人との接触が多いと感染拡大のペースが上がるなら、都市部では収束が遅れ、地方では早くなるはずですが、それが変わらない。すると、3月上旬までの感染者で、日本のその後の感染者数の推移は決まったと考えたほうが自然です」

もっとも中野教授は、

「3月中旬までに行った対策は手洗いもマスクも3密回避も、きっと意味があって続けるべきことが多い」

と強調し、クラスター対策によっても、

「ボールを引っ張る引力が倍ぐらい強くなる」

としつつも、こう話す。

「緊急事態宣言はK値の解析レベルではわからない程度の改善しかなく、大阪と兵庫の往来自粛も同様です。人出の多少でも変わらず、パチンコ店でもクラスターの発生はない。大声で人と話し、唾が飛び交う状況でないただの“密”は危なくない、と考えたほうが論理的です。さらに日本は欧米にくらべ、ロックダウン前の収束スピードが倍くらい速い。これには疫学的ななにかがあると思います。だから、海外から感染者が入ったら欧米のように感染爆発とか、ありえません」

「42万人」も指数関数的に増え続ける場合の数字で、発表時にはすでに「鎖国」していたのだから、

「ありえない」

と訴える。知事がショックを受けたのも無理はない。