・フランス、有害コンテンツ「1時間以内の削除」を企業に義務付け(BBC 2020年05月15日)

※フランス議会は14日、インターネット上の有害コンテンツを通報から1時間以内に削除するようソーシャルメディア企業などに求める法律を可決した。

削除の対象となるのは、フランス当局がテロや児童性的虐待と関連すると見なしたコンテンツ。期限を守れなかった企業には最大で世界売上高の4%の罰金が科されることになり、大企業にとっては数十億ユーロもの負担となる。

この法律をめぐっては、表現の自由を制限するものだという批判が出ている。

また、1時間という期限は企業の規模に関わらず適用されるが、これに対応できる資源を持っているのはグーグルやフェイスブックといった巨大企業だけだという指摘もある。

フランスのデジタル権利団体「La Quadrature du Net」は、警察が「テロリズム」だと見なしたコンテンツをわずか1時間で削除するよう要請することは非実用的だと説明。

同団体の広報担当者は、「24時間365日、通報後にコンテンツの削除を行う能力は大企業にしかない。そのため、警察からの連絡の前に検閲をせざるを得ない状況になるだろう」と懸念を表明した。

コンテンツの監視は大企業が提供する自動システムに頼ることになるため、企業に「ウェブ上に存在して良いものと悪いものを決める力」を与えてしまうという。

一方、こうしたシステムが特定の抗議団体などを標的にして使われる危険性も指摘されている。

「(フランスでは)2015年以降、警察がテロリストだと見なしたコンテンツについて削除要請ができる法律があるが(中略)政治コンテンツの検閲に使われたケースが複数報告されている」

「制御方法のないまま警察にそのような力を与えるのは(中略)当然ながら言論の自由の侵害に当たる」

憎悪あおるものは24時間以内に

フランスで今回制定された法律は、欧州連合(EU)レベルで協議されている法案の内容を反映している。

しかしこの法案は議論を呼んだため、現在は棚上げ状態になっている。

フランス政府はこうした欧州での懸念をよそに、独自に法案を策定して議会で可決した。

新たな法律では、テロや児童性的虐待とは無関係だが違法と見なされるコンテンツについても、通報から24時間以内の削除が義務付けられた。

これには憎悪や暴力、人種差別、性的嫌がらせといった内容が含まれる。期限内に削除できなかった場合の罰金は最大で125万ユーロ(1億4500万円)に上る。

法案は、エマニュエル・マクロン大統領率いる与党・共和国前進のレティーシャ・アヴィア議員が提出した。アヴィア議員は、この法律は被害者を保護するとともに、フランスの表現の自由に対する取り組みを再確認するものだと説明している。

これに対し、野党・共和党からは、オンラインでの憎悪との戦いで表現の自由を犠牲にしてはならないと反発があった。

フェイスブックは、フランスの規制当局・視聴覚最高評議会(CSA)などと協力して「法の施行」に当たっていくとコメントした。

YouTubeは、すでに違法コンテンツ対策を進めており、政府との新しいパートナーシップを歓迎すると述べている。

ツイッターのフランス支社の社会問題担当者はロイター通信に対し、引き続き政府と協力して違法コンテンツやヘイトスピーチの取り締まりを行っていくと述べた。