以下の意見はブログ主の主張とは異なります。ブログ主の主張はロックダウンは当然のこと、自粛も、社会的距離も、新生活様式という気持ち悪い強制も、一切必要ないという、従来通りの生活のままでよいという立場です。なぜならコロナ騒動は人為的に仕組まれたものであり、コロナを口実や手段にして、NWOを作ろうとしていることを知っているからです。


・海外のロックダウン、死者数爆発でなぜ“成功”か ロックダウン論を斬る (1)(JB PRESS 2020年5月4日)

岩田 太郎:在米ジャーナリスト
 
※大半の欧米諸国では、「強制力を伴うロックダウンが新型コロナウイルスの感染拡大の制御に多大な成果を挙げている」との説が広く受け入れられている。その論拠となるのは、「人と人との接触の最小限化イコール爆発的な感染拡大の防止」「都市封鎖や外出禁止令イコール感染者数の減少」あるいは「厳しい対策を実施した方が感染を食い止めることができる」という前提だ。

しかし、爆発的な感染拡大により都市封鎖令や外出禁止令が1カ月以上にわたって出されているにもかかわらず、ニューヨークやカリフォルニアなど米国の一部の州ではいまだに感染確認者や死亡者の数が驚異的なスピードで増加している。新規入院者数や死者数は減り始めてはいるものの、完全には峠を越していない。
 
さらに、ロックダウンが感染制御の最重要の要因であるなら、完全なロックダウンをしていない「ユルユル3密国家」であるわが国の相対的・絶対的な感染者数や死者の少なさの説明がつかない。日本では米国より早く感染が確認されているから、ロックダウン状態ではない超過密の首都圏の3密状態は、ニューヨーク級あるいはさらにひどい感染爆発に、より早くつながらなければならないはずだ。
 
事実、英キングスカレッジ・ロンドンの渋谷健司教授(公衆衛生学)は、「日本は今、アウトブレイク爆発期の真っ只中にいる」と説明する。だが、「来るぞ、来るぞ」と言われる割には、医療のひっ迫度が増しているものの、欧米のような指数関数的な感染者死亡の増加になっていない。まさか、日本独自のアマビエによる疫病封じが効いているわけでもあるまい。

日本という明らかな例外が存在するロックダウンの前提は、疫病政策の基礎として妥当なものなのだろうか。一部の州で経済活動が再始動する米国から分析をお届けする。

ロックダウン実施国は「成功」しているのか
 
ここでまず、コロナ対策の成功のものさしを考えてみよう。国民に多大な経済的・社会的犠牲を強要するロックダウンおよび準ロックダウン政策の成功は何で測られるのか。感染確認者の総数、死者総数、人口比の感染確認者の死亡率、医療崩壊の阻止、感染検査の総数、できる限りの国民生活・経済の維持、感染者の根絶などが考えられる。

しかし、各国のコロナ統計の基準はバラバラであり、検査の不確かさや一部の国における政治的な検査数の絞り込み、感染歴を調べる抗体検査の不正確さや進捗の遅れなどの要因があり、現段階ではどの国においても完全に正確な感染者数を把握することは難しい。また、死者・死因の集計方法、死亡率の計算方法、人口動態(平均年齢や居住地)、医療制度などの差による比較の困難さは排除できない。

国により政策や統計に相違がある以上、成功の尺度はできる限り共通点が多いものが望ましい。統計の限界を踏まえた上で、ここでは仮に成功を「人口比の感染者死亡率の低さ」および「医療崩壊の阻止」と定義したい。

人口比の感染者死亡率から見てみよう。米国の新型肺炎による死者は4月6日に1万人を突破してからおよそ3週間で6倍以上に増えた。5月2日現在で死者数が約6万5000人に達した米国は感染者、死者とも世界最多であり、統計サイトの独Statistaによれば100万人当たりの死亡者は約198.6人となる。流行の中心地であるニューヨークやカリフォルニアで1カ月以上、ロックダウンを実施してこの数字だ。

一方、ユルユル3密の日本のCOVID-19死は同日現在で455人であり、100万人当たりの死者は約3.6人だ。ここに含まれない在宅死や高齢者施設死、肺炎やインフルエンザなどその他の病因と誤って分類された死を入れても日本は3桁台の米国や他の欧米諸国のレベルよりはるかに低く、大きな差がある。わが国ではこれから感染が大爆発する可能性はあるが、社会的距離・ロックダウン理論が正しいのであれば、欧米より早く感染者が現れていまだに完全なロックダウンをしていない3密(密閉・密集・密接)の日本において、なぜ現時点でオーバーシュートになっていないのか説明がつかない。

感染症の専門家である神戸大学大学院医学研究科の岩田健太郎教授は、「厳しくロックダウンを実施すれば、少なくとも自国内の感染を抑え込むことはできるということは、すでに諸外国のデータが示している通り」「とにかく一般の人に対しては、『外に出てはいけない』と言い続けるべきで、そうすれば新型コロナの患者さんはドンと減る」と言明するが、日米データの比較はその主張の真逆を示している。
 
ましてや、感染者数(およそ110万、世界の感染総数の3分の1)・死者数(約6万4000人、ベトナム戦争における米兵の死者総数の5万8000人を優に超えるレベル)がダントツの米国のロックダウン政策が「成功」で、日本の「お手本」という言説は、検証を要する。

BCGもロックダウンも死亡率に無関係?
 
社会的距離・ロックダウン理論に日本という例外が存在する理由として、
(1)重篤化率を下げる可能性のある日本株のBCG接種をほぼ全ての国民が受けている
(2)ウイルスの巣窟となり得る靴を玄関で脱ぐ習慣がある
(3)日常的な手洗いの励行
(4)握手・ハグ・キスなど直接的な接触による親愛の情の表し方が少ない
(5)マスクをする習慣がある
(6)ほぼ毎日の入浴による清潔度の維持
(7)病床数が人口1000人当たり13.1とトップクラス
(8)国民皆保険制度の質が高い
(9)感染の診断に役立つコンピュータ断層撮影(CT)や核磁気共鳴画像法(MRI)の普及率が高い
(10)感染経路を調べてクラスター潰しを行った
などが仮説として挙げられている。

その他、遺伝情報の継承と発現を担うデオキシリボ核酸の塩基の並び順である遺伝暗号が感染者の無症状・軽症あるいは重篤化を決定付ける可能性を指摘する研究者もいる。しかし実際には遺伝子よりも、年齢や性別や持病の有無が主な制御要因ではないか。この仮説のみでは、なぜ世界共通で高齢者男性や持病のある人に重篤化・死亡が集中するのか説明しにくいからだ。

ロックダウンに話を戻すと、社会的距離政策は採用するものの、都市封鎖を拒絶するスウェーデンは日本の3密ユルユル環境と類似している。だが、100万人当たりの感染死亡者は241.8人と、ロックダウン政策を採用する米国より高い。スウェーデンは日本と政策が似ているのにもかかわらず、なぜ日本よりはるかに死者数が多いのだろうか? その説明をするには、「ロックダウン政策の有無は死亡者数の主要な制御要因ではない」と仮定するのが妥当なのではないか。

次に、BCG接種とロックダウンの相関関係について考える。45歳以上の国民がBCG集団接種を受けたスウェーデンのコロナ死亡者数である260.5人は、現在もBCG集団接種を続けるポルトガルの100万人当たりの感染死亡者である98.0人より有意に高い。ところが、スウェーデンの年齢層別の死亡者は、そのほとんどがBCG接種を受けたはずの高齢層のグループに集中し、BCG接種を受けていない40歳未満はほとんど死者がいない。ポルトガルも同じように高齢層に死者が集中している。BCGの条件が類似しているので(両国とも共通のデンマーク株のBCGを使用、45歳以上は共通して接種済み、死亡者の大多数が高齢層)、スウェーデンの死亡率の高さはロックダウンの欠如に求められ、ポルトガルの死亡率の低さはロックダウンの実施(3月18日に開始)に求められるように見える。

ここで、比較対象を拡げて検証してみよう。BCG集団接種を過去に実施したポルトガルの隣国スペインは、高齢層が接種済みでロックダウンを実行(3月14日に開始)しているにもかかわらず、100万人当たりの感染死亡者が525.3人と極めて多い。スペインもポルトガル同様、高齢者がCOVID-19死の過半数を占める。過去に現在の高齢者にBCG接種を実施し、現在ロックダウンを行う英国(3月23日に開始、100万人当たりの感染死亡者が413.8人)やフランス(3月16日に開始、同367.1人)やイタリア(3月10日に開始、同467.2人)など欧州の国のほとんどで、このパターンは共通している。ロックダウン後もおよそ1カ月以上にわたり感染者や死者が増え続けたのも同じである。

早い話が、BCG接種を受けていても、高齢者であればコロナ死をする確率が有意に高くなる一方、BCG接種を受けていなくても、若い人であれば死の確率は極めて低い(ただし、BCG接種を受けた若い人の死亡率は、BCG接種を受けていない若い人の死亡率より低いかもしれず、検証が必要)。

そして、欧州においては「BCG接種済みの高齢層」に現在の「ロックダウン」が組み合わさっても、結果はまちまちだ。死亡率が低いポルトガルやドイツ(東西ドイツとも現在の高齢層に集団BCG接種済み、現在ロックダウンを実施、100万人当たりの感染死亡者数は81.2人)、ロシア(同8.1人)、ポーランド(同17.1人)、フィンランド(同40.1人)、ノルウェー(同40.0人)、デンマーク(同79.3人)のような国もあれば、厳重なロックダウンを実施しても死亡率が高いイタリア、フランス、英国、オランダ(同284.0人)、ベルギー(同674.4人)、スイス(同206.0人)のような国もある。

また、人口1000人当たりの病床数が少ないイタリア、英国、米国、オランダなどの国で一般的にコロナによる死亡率が高い傾向があるものの、同じく病床数が少ないノルウェーやデンマーク、ポルトガルでは死亡率が低いなど、ここでも結果はまちまちだ。主に何がこのような国別の死亡率の違いをもたらすのかは、研究の進展を待たねばならない。ただ少なくとも、こうした相関関係と結果の複雑性から、「ロックダウン=感染者と死者の減少」という単純な図式が成立しないことは言えるのではないか。
 
事実、感染者の出現が早いのにロックダウンをして来なかったわが国で、感染増加のペースが欧米と比較して顕著に遅く、さらに人口当たりの死者が極端に少ないことは、ロックダウンが重篤化の主要な制御要因ではない可能性をより強く示唆する。
 
国立感染症研究所病原体ゲノム解析研究センターによれば、日本では中国株による第1波は抑え込まれ、現在の第2波(3月中旬以降の感染者増加)はロックダウン下の欧米で猛威を振るい、何万人もの死者を出している変異後の欧州株が中心となっている。変異により、中国株より感染力と破壊力が増した印象のある欧州株だが、日本ではその欧州株による感染者・死者が指数関数的に増えていない。ここでも、ロックダウンが果たす役割が副次的なものであることが示唆されているのかも知れない。

もしロックダウン以外の要因が人口当たりの死亡者数の低さに主な原因として作用しているのであれば、現行の欧米諸国のロックダウン政策は良くて的外れのダメージコントロール、実際には人々の暮らしや命を根底から破壊する大失敗ということになり、封鎖に伴う経済崩壊は、ロックダウンのコスト効果が極めて劣悪、そして無駄に巨大な損害のみもたらすもの、つまり害悪であることを意味する。

・日本の感染拡大の謎、現実とずれる専門家のモデル ロックダウン論を斬る (2)(JB PRESS 2020年5月5日)

岩田 太郎:在米ジャーナリスト

※医療崩壊阻止では日本は失敗

「3密ユルユル国家」であるわが国は、ロックダウンの欠如にもかかわらず、コロナウイルスによる100万人当たりの感染死亡者を約3.4人(4月30日現在)と、極めて低く抑えることに成功している。だが、コロナ制御の成功のもう一つの基準である医療崩壊阻止の面では、必ずしも成功しているとは言えない。神戸大学の岩田健太郎教授が指摘するように、日本はオーバーシュート抑制には成功したが、患者数を大きく減らすことには失敗しているのである。

患者数が高止まりしたままで長期戦にもつれ込む中、指定病院だけでなく、市中病院や地域の診療所を含む救急・一般外来など非COVID-19の医療がひっ迫し、心筋梗塞や脳卒中、交通事故での大きなケガ、がん治療など本来なら助けられる、あるいは伸ばせる命に影響し始めている兆候が見られる。また、院内コロナ感染が各地で起こり、医療が完全に機能できない地域が増えていることは深く懸念される。さらに、収益の柱である通常の診療や手術が行えなくなった病院の経営が破綻し、地域医療を圧迫することも重大な懸念だ。

そうした面で、感染を減らすために医療従事者が異口同音に「家に居てください、外出を控えてください、人と接触しないでください」と訴えかける現実は切実であり、国民一人ひとりや全ての企業・組織が重く受け止めるべきだろう。人口比の感染者死亡率で成功しても、医療が崩壊して国民全体が健康でいられなければ、その成功には意味がないからだ。

また、ウイルスは勝手に足が生えて歩き出し次の人に感染するわけではないから、社会的距離・ロックダウン理論が正しいか否かにかかわらず、第2波が襲う現時点ではできるだけ人との接触を自粛するのが正解というのは異論がない。

その上で、米疾病対策センター(CDC)が4月8日に、医療機関、食料品店や警察など市民生活に不可欠な組織の必須業務に従事する者に限って、社会活動の継続に支障が出ないように発出した規制緩和の基準は日本の参考になりそうだ。新型コロナウイルスの感染確認者と接触した人であっても2週間にわたる自宅待機を免除し、勤務を認めて必須業務要員の確保を狙う指針である。

具体的には家族がコロナに感染したり、感染者と1.8メートル以内で接触した者であっても、無症状であれば勤務が認められる。ただし、職場に入る前に体温を測り、雇用者の監督下で症状の有無を定期的に確認し、感染者との接触後14日間はマスク着用することが条件で、本人に症状が出れば勤務続行はその時点で認められない。雇用者側は職場の消毒の頻度を上げることも求められる。

一方、医療救急などの社会インフラが感染リスクによって兵站が伸び切っている以上、これ以上負担を増やさないために、屋外が3密ではなくても遭難負傷のリスクがある登山などを控えるのは当然だ。さらに、クラスター感染が起こることが確認された飲み会、ハウスパーティーやライブハウスはもっての外だし、高齢者施設や病院の感染対策を徹底させなければ人命が救えない。

ただ、それを主にロックダウンによって達成するのか、越境者の移動制限や感染者・隔離で行うのかは議論の余地があるのではないだろうか。

ロックダウンか、移動制限・検疫か

コロナ制御で最も重要な要因は必ずしも社会的距離や都市封鎖ではなく、感染者の流入制限と検疫、そして高齢者や持病のある人の保護的な隔離ではないのだろうか。
 
米国においては、仮説に過ぎない社会的距離・ロックダウン理論がメディアや政治において事実として語られている。カリフォルニア州が5月2日現在で感染確認者数を約5万500人、死者数を約2100人と、ニューヨーク州の感染者約30万8000人や死者約1万8600人と比較して低く抑えられているのは、「カリフォルニアがより早く社会的距離政策を採用したからだ」との解説サイトVoxの記事が好例である。

また、米マイクロソフトの元最高経営責任者(CEO)で、伝染病予防への大きな貢献でも知られるビリオネアのビル・ゲイツ氏は、「今、(ロックダウンを解除して)経済を再開させる州は、指数関数的な感染者増に逆戻りし、(感染者数・死者数とも最悪の)ニューヨーク州と競うことになる可能性がある」と発言している。

しかし、その見解が真実であるならば、より早く感染者が現れ、社会的距離政策が徹底していない3密の日本でニューヨーク並みの感染爆発がすでに起っていなければならない。しかし、そうはなっていないのである。

米『ニューヨーク・タイムズ』紙は3月26日付で「日本のコロナ制御の成功は世界を不思議がらせている」との記事を掲載したが、「日本の運は今にも尽きようとしている可能性がある」との論調で扱った。ところが、日本全国に緊急事態宣言が発令された4月16日、同紙は別の新しい記事を出すのではなく、3月26日付の元記事を加筆改変するという異例の方法で、「緊急事態宣言を必要とするほどの感染者の急増で、日本の運は今にも尽きようとしている可能性」を改めて示した。社会的距離確保の不徹底により、オーバーシュートが起きると強く示唆されている。在日外国人たちの間でも、類似の見解が示されている。

また、米『タイム』誌や英BBC放送は、「外出自粛要請を時期尚早に解除したため、北海道をコロナ第2波が襲っている」との趣旨の記事を配信している。北海道は2月28日に外出自粛要請を行うと同時に、感染経路追跡と感染者の隔離を徹底したことで、感染を抑え込むことに成功した。しかし、感染者が4月に入って再び増加した直接的な理由は、欧米メディアが示唆する「3月19日の外出規制緩和」ではなく、感染拡大中の道外からの人の流入増加ではないだろうか。外出規制を緩和しても、道外との人の往来を制限しておれば、第2波は抑制できたのではないか。

鈴木直道知事は4月30日、札幌市で新規感染が高水準で推移していることを受けて、「わが国でロックダウンはできないが、大型連休中はそれに相当する行動自粛を札幌市民に求めたい」と強く訴えた。だが、同席した札幌市の秋元克広市長が「札幌に行かないよう」呼びかけた移動自粛要請の方が、より重要ではないか。

他方、100万人当たりの感染死亡者が81.2人と比較的少なく、「コロナ対策の優等生」と呼ばれるドイツでは、4月20日からロックダウンを緩和し中小規模の店舗の営業が再開された。だがその結果、1人の感染者が平均して何人に直接感染させるかを表す「基本再生産数」が、指数関数的な感染増をもたらすとされる「1」に再び近付いたとして、ロックダウンの引き締めを図る意向だ。感染者増は、時期尚早な緩和が原因とする論調が多い。

しかし、緩和後の基本再生産数の増加が主に中小店舗の営業再開というロックダウン緩和に帰せられるものなのか、国内の人の移動やその他の要因によるものかという細かい因果関係についての考察は、管見の限りでは示されていない。

ちなみに、3月下旬の東京都における実際の基本再生産数である「実効再生産数」は1.7と推計されたが、指数関数的な感染爆発はまだ起きていない。また、5月1日に新型コロナウイルス感染症対策専門家会議が開いた会見で、「8割おじさん」こと北海道大学の西浦博教授が示した4月10日時点の実効再生産数は東京都で0.5(不顕性感染者を除く)であり、理論的にそれ以降の指数関数的な感染増を示唆するものではなかった。5月2日には都の死者が15人と急増したが、これが実効再生産数の再上昇の結果、あるいは感染爆発の前兆であるかは、経過の観察が必要だろう。

また、100万人当たりの感染死亡者が4.1人と日本並みに低いニュージーランドは、感染者数が数十人と極めて少ない段階で渡航制限と感染者隔離および厳重なロックダウンを行い、4月27日に「コロナとの闘いに勝利した」と高らかに宣言した。だが、その成功は島国としての地理的な隔離に加え、主に早い段階での渡航制限と感染者隔離によってもたらされたのであって、ロックダウンの効果は付随的に過ぎなかったのではないか。

北海道、日本全土、ドイツの第2波襲来、およびニュージーランドの第1波抑え込みのケースについては、より詳細な検証が必要だろう。

相関関係は必ずしも因果関係ではない

オーバーシュートの例外としての3密ユルユル日本の存在は、社会的距離・ロックダウン論者にとっては、不都合な真実だ。このまま日本が成功するならば、峻烈かつ懲罰的で多大な財産と私権の犠牲を強いる欧米のロックダウン政策が間違いということになってしまう。

ハーバード大学で感染学を専門とするマーク・サイドナー教授は未査読の論文において、「米国各州において社会的距離政策が実行された後、7日後には3090件の感染を減少させ、14日後には6万8255件の減少を見た」とする。そのため、「州規模の社会的距離政策はコロナウイルスの感染者数減少と相関関係がある」という。

しかし、それは原因(社会的距離・ロックダウン)と結果(感染の減少)の決定的な因果関係を証明するものなのだろうか。2つの変数の相関は、自動的に一方がもう一方の原因を意味するというわけではない。「イケメン度」と「バレンタインにもらえるチョコの数」には一般的に相関関係がある(ように見える)が、「多くのチョコをもらった男性はイケメンである」とは必ずしも言えないのと同じである。性格や金回りの良さ、人によって異なる「イケメン」の定義などの変数も考えなくてはならない。

「欧米で効果を上げ、流行を収束に向かわせている施策がロックダウン」「一度爆発してしまえば制御できないので、予防的ロックダウンが必要」という因果関係を前提にした単純なモデルは、人的移動制限や感染者隔離・追跡、防御具や人工呼吸器の準備度、医療保険制度の充実、人口当たりの病床数、地理的要因、社会・文化習慣の違い、住環境、世帯家族構成などの複雑な組み合わせを軽視し、前提を間違えている可能性はないだろうか。

たとえば、米トランプ政権が感染者数や死者数の予測に採用しているワシントン大学保健指標評価研究所(IHME)のモデルは、「学校閉鎖、バーやレストランなど必須業務ではないビジネスの閉鎖、ステイホームの遵守、公共交通機関の運行中止を含む移動制限などのロックダウンの手段が実行された場合、これらのうち1つが実施されれば感染件数は数週間で0.67へと減じ、2つであれば0.334、3つあるいは4つの場合は0まで急減する」ことを前提にしている。

つまり、「ロックダウンの徹底=感染者・死亡者の急減」といういまだ証明されていない因果関係が計算の基本になっているのである。しかし、これらのロックダウン政策が厳重に実行されるニューヨーク市やロサンゼルス市などで死者数が高止まりあるいは増加していることは、この公式の大前提の誤りを示唆している。

国民は、ただお上や専門家の予想を無批判に受け取るだけでなく、前提や計算の方法に関する透明性を求めるべきだろう。 英キングスカレッジ・ロンドンの渋谷健司教授は、「日本ではこれから重症者や亡くなる人が増えてくるだろう。安心するのは早いと思う。日本の感染被害のピークはこれからやってくる」との見方を示している。だが、それがどのようなモデルや根拠に基づくのかは明らかにしていない。

もし渋谷教授の発言が「基本再生産数」モデルや、英『フィナンシャル・タイムズ』紙の集計で使われる「初めて1日当たり平均30の感染例が出てからの経過日数」「7日間の移動平均でみた新規感染者数」、また日本の感染者数が実際よりかなり低く報告されている事実などに基づくのであれば、当局および自身が導き出した推定数字やその根拠、計算の前提を明確にさせ、「だから5月、あるいは6月に指数関数的に重症者と死者が増える」というところまで透明化させないと、科学的な説明にはならないだろう。あるいは、欧米で感染爆発が起こったから日本もそうなるはずだという、単なる憶測に過ぎないのだろうか。

専門家が最悪を想定することは当然として、感染者の急増が日本で近い将来に起きると予言するのであれば、「なぜ感染者が世界で最も早い時期に現れた3密ユルユル日本で、今まで爆発的な感染にならなかったのか」という疑問に対し、明確なエビデンスとモデルと比較を示して説明できなければならないだろう。そのための専門性である。

信仰の域に入っているロックダウン論

思えば経済学の分野において、「失業率が低下すれば、インフレ率はいずれ上昇する」とするフィリップス曲線のモデルは、20世紀後半からまるで科学法則のように崇められてきたが、現実の経済の動きと乖離し、破綻したと言われるようになって久しい。感染症学のモデルである基本再生産数もまた疫病の現実と乖離し、破綻しているのではないか。ロックダウン論を導き出す思考はエビデンスや複雑性を超越し、「そうなるはず」と願う信仰の域に入っているように見える。

より極端な論理の飛躍として、感染者数も死者数もガッチリ抑え込んだハワイ州の「成功神話」がある。その言説によれば、「米本土または他国と陸続きでなく渡航制限が容易であることに加え、ロックダウンが徹底され、州民の大多数が人々の健康と安全を優先事項とする民主党寄りのリベラル派であること」などが成功要因だという。民主党のデイビッド・イゲ知事(日本名: 伊芸豊)のコロナ対応を批判する声はあるものの、確かにハワイはコロナ感染確認者数が5月2日現在で約620人、死者は16人と全米50州の中で絶対値・相対値とも最も被害が軽微な部類に入る。渡航制限と低死亡率には相関関係もあろう。

だが、「人々の健康と安全を優先事項とする民主党寄りのリベラル派」が政治を掌握するニューヨーク州が厳重なロックダウンを実施したにもかかわらず、全米一の感染者数(約30万8000人)と死者数(約1万8600人)をたたき出し、絶対値・相対値ともダントツであることはどう説明するのか。

また、「人々の健康と安全を優先事項とする民主党=コロナ制御の成功」というナラティブが真であるならば、共和党支配が続くアラスカ州における全米でも最も低い部類に入る感染者数(364人)や死亡者(9人)の絶対値・相対値の少なさも説明がつかない。表面的な相関関係は必ずしも因果関係ではない。

こうした中、感染確認者数が減少傾向にあるジョージア州など一部の地域から徐々にビジネスを再開させる動きが出ているが、「時期尚早」として反対する声も高く、国論が割れている。再始動で感染者数が再び上向く州もあろうが、そうではない州が多く出てきた場合、「ロックダウン=感染の制御」仮説の信頼性は低下する。