
・安倍首相の108兆円経済対策、中身はたった10兆円以下
2020年04月08日
http://www.thutmosev.com/archives/82640639.html
政府の支出は10兆円以下なのに「108兆円」と言った安倍首相
※アメリカは総動員体制、日本は数字飾る
新型ウイルスによる経済的打撃を防ぐため各国は財政支出を表明しているが、日本とアメリカの違いが際立っている。
トランプ大統領はすでに220兆円の「財政支出」法案を成立させ、4人家族に最大3400ドル(約37万4000円)給付する。
中小企業向け融資(予算規模約3500億ドル)、失業給付の拡充(2500億ドル)、航空産業などの産業支援(5千億ドル)などを行う。
他にも企業には8週間分の給与を返済不要で融資、フリーランスも含む労働者に給与分の失業給付を行う。
中小企業向け融資と失業給付だけで65兆円、これに4人家族に最大3400ドルや失業者への給与保証などを加えれば200兆円近くに達する
政府が220兆円を支出すると民間への波及効果も同じくらいあるので、合計440兆円はアメリカのGDPを押し上げる。
米GDPは約2000兆円なのでトランプ経済対策はSGDPを約22%押し上げると推測できるが、コロナによるGDP低下は20%に達すると見られている。
コロナのマイナスと財政支出効果によって、うまく行けばプラスマイナスゼロというのがアメリカの青写真と思われる。
対する日本も安倍首相が予想を超える108兆円の緊急経済対策を発表した。
日米のGDPを考えると日本のほうが巨額だが、これは数字を何倍にも膨らませた「まやかし」なのが分かっている。
新聞報道によると108兆円のうち政府支出は39兆円で、今年度政府が支出するのは「たった16.8兆円」になっている。
足りない22兆円は19年度補正予算の未執行分などで、要するに以前から決まっていた支出を今決めたかのように偽装した。
まやかしの108兆円
今年度予算の16.8兆円も今年度に支出するとは書いていないので、最悪の場合ゼロかも知れません。
話を整理すると22兆円は以前から決まっていた前年度分、今年度の16.8兆円は来年以降に執行する可能性がある。
公共工事のような支出は計画から執行まで何年も掛かるからで、すぐに支出するのは現金支給の6兆円くらいです。
その現金支給だが結局「月収が半減し非課税水準になった世帯」と「非課税水準から減少した世帯」しかも減収を証明する書類が無ければ支給しない。
「なるべく支給しない」方針が明らかであり、これでは受け取っても絶対に使おうとは思いません。
アメリカは国民全員に220兆円をばらまく方針で、日本は6兆円を国民の1割程度に支給するだけです。
それにしても中身がたった10兆円以下なのに「108兆円の経済対策」とはコントを通り越して妄想ではないか。
中小企業に最大200万円、フリーランスを含む個人事業主には最大100万円を支給としているがこれも「収入半減を書類で証明」する必要がある。
ポイントは「売上」ではなく月収半減を書類で証明しろと言っている事で、個人事業主やフリーランスは膨大な書類が必要になる。
個人事業主は売上から必要経費を引いたものが「収入」なので経費の証明書全てを用意しなくてはならない。
それを役人が1枚1枚チェックしてふるいにかけて、膨大な手間を掛けさせて大半は不合格にされる。
こんな事をするくらいなら最初の案通り全世帯に一律20万円をばらまいた方がましだった。
・「緊急事態」という危機感が感じられない、緊急経済対策の中身(DIAMOND ONLINE 2020年4月10日)
慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授 岸 博幸
※4月7日に安倍首相は緊急事態宣言をするとともに、政府は事業規模108兆円の緊急経済対策を決定しました。この経済対策を一読し、関連する情報を調べた上での率直な感想は、緊急事態宣言を出したわりには、それに見合った危機感が全く感じられず、とても評価できる代物ではないということです。
危機感のない緊急経済対策 事業規模の大きさは意味がない
経済対策を評価する場合、必ず最初に議論となるのが“事業規模”と“真水”(財政支出)の額です。
今回の緊急経済対策は、事業規模108兆円とリーマンショック時の経済対策(約57兆円)の2倍近い規模となっています。その一方で、財政支出の額は約40兆円で、特に補正予算で手当てする新規の財政支出は約17兆円と、リーマンショック時の経済対策での財政支出額(約15兆円)とあまり変わりありません。
これらの数字をどう評価するかですが、米国のコロナ対応の経済対策(220兆円)と比べるとまだ少ないとか、感染者数や死亡者数が欧米より圧倒的に少ない中では多すぎるとか、色々な議論があるものの、事業規模や財政支出の額だけで議論するのはあまり意味がないと、個人的には思っています。
というのは、それ以上に中身に問題があり過ぎるからです。実際、個人的に感じた最初の疑問は、今回の経済対策は余計な部分にお金を使い過ぎていないかということです。
緊急経済対策での具体的な政策は、「感染拡大防止策」「雇用の維持」、「次の段階での経済活動の回復」「強靭な経済構造の改革」「今後への備え」という5つのパートに分かれています。前二者は感染拡大期における政策対応、後三者は感染終息後の政策対応と言っていいでしょう。
感染拡大期と感染終息後で事業規模と財政出動額を比較
そこで疑問に感じるのは、なぜ政府は緊急事態宣言を出すほど現状が深刻と考えているはずなのに、経済対策では今やるべきことに集中せずに、いつ感染が終息するのわからないにもかかわらず、感染終息後の政策を今から用意して、多額の予算をそれに割くのでしょうか。事業規模と財政出動の額をこの2つの時間軸で分けると、以下のようになります。
●感染拡大期の対応/事業規模82.5兆円、財政支出24.5兆円
●感染終息後の対応/事業規模25.7兆円、財政支出15.0兆円
こう見ると、企業への無利子融資や税金・社会保険料の支払い猶予などで頑張ったので、感染拡大期の事業規模が大きくなっているのは評価できるものの、財政支出については感染終息後のためにも多額の予算を回したため、結果的に感染拡大期に使う予算の額は約25兆円と少なくなり、結果的に今バラまくべき財政資金が不十分になってしまったのではないでしょうか。後述するように、今が一番苦しい時期であるにもかからずです。
ちなみに、米国の経済対策は完全に感染拡大期への対応のみにフォーカスしているにもかかわらず、事業規模は220兆円と巨額で、財政出動も100兆円近いことを考えると、感染拡大期への対応としては見劣りすると言わざるを得ないと思います。
もっと言えば、本来は感染終息後の対応は不要だったのではないでしょうか。リーマンショックでは金融システムが崩壊し、東日本大震災では物理的なインフラや家屋などが崩壊しました。これらの危機への対応では社会のストックが傷んでしまったので、長期にわたる政策対応は必要不可欠でした。
ところが、今回はコロナというウイルスが蔓延して社会が恐怖から行動を自粛・我慢しているだけで、ストックは何も傷んでいません。感染拡大が収まれば、放っておいても経済の需要は急回復します。場合によっては、長期にわたって我慢していた分、消費は過熱するかもしれません。
そう考えると、そもそも感染終息後に向けた政策対応は不要、少なくとも今の段階で決めておく必要などまったくなかったはずです。
1世帯あたり30万円の給付金は本当にダメな制度
次に疑問に感じるのは、家計や企業への給付金の規模や中身です。これはちょっとひどすぎると思います。
まず家計向けの支援として、1世帯あたり30万円の給付金が配られることになりましたが、この制度は本当にダメです。なぜ個人ではなくて世帯が対象なのか、なぜ世帯主の収入だけで見るとかという問題もありますが、受給の条件が、(1)月収が住民税非課税水準まで減少した世帯、(2)月収が半分以下となって住民税非課税水準の2倍以下になった世帯、というのもひどいです。
現実には、(2)に該当する世帯はそう多くないと思いますので、実質的に(1)の低所得世帯を中心に配るのを考えているのでしょうが、そのための予算はわずか4兆円で、1300万世帯分の予算しかありません。日本全体の世帯数が5800万世帯であることを考えると、全体の2割程度の世帯のみが対象となります。
これは少な過ぎないでしょうか。日本では共働きの世帯が圧倒的に多く、たとえば世帯主である男性の収入が半分まで下がっていなくても、妻のパート収入が激減して、子どもの教育費や家のローンの返済などに支障が生じるケースもあると思います。
また単身世帯でも、収入が半分の手前のたとえば40%下がったら、家賃などの支払いに支障が生じるケースもあるでしょう。でも、これらの世帯は給付金の対象外なのです。
参考まで、米国では年収ほぼ1000万円(9万9000ドル)までの個人には給付金が配られるので、働く人全体の86%が給付対象となっています。また、米国の経済対策の中身を見ると、個人への給付金で2500億ドル、そして失業給付の充実で2500億ドルと、合計約55兆円が個人への給付に使われています。これと比較すると、わずか4兆円で住民税非課税世帯を中心に全世帯の2割だけに給付というのは、なんとも情けない気がしてきます。
ちなみに、世帯への給付金で気になるのは、受給するためには市町村の窓口に自己申告する必要があるということです。自己申告のために必要な書類を揃えるのが大変ということもありますが、市町村が予算の執行主体ということは、具体的な給付の時期がかなり遅くなることを認識しておくべきです。
というのは、手続き的に、まず政府が補正予算案を成立させた(おそらく4月中)後、市町村議会でも補正予算案を成立させる必要があります。市町村では6月に定例議会が開催されることを考えると、6月中にやっと予算が成立し、かつ事務手続きの準備にもかなり時間がかかるでしょうから、多くの世帯が今まさに困っているにもかかわらず、実際の給付は8月頃になってしまうのではないでしょうか。米国では4月中に個人に給付金が支給されることを考えると、このスピード感のなさには絶望感すら感じてしまいます。
この金額では焼け石に水?中小企業、個人事業主給付の問題点
緊急経済対策では、収入が前年同月比で50%以上減少した事業者に対しても、中小企業には200万円、個人事業主には100万円を上限に給付金を配ることにしています。
この予算は政府の中小企業庁が執行するので、世帯への給付金のようにタイミングを逸することはないと思いますが、ここで気になるのは、個人事業主の100万円はいいとして、中小企業の200万円が適切かということです。
政府の中小企業の定義を見ると、特に自粛による影響をもろに被っているサービス業では、社員100人までの企業が中小企業に属します。たとえば、数十人の社員を抱える中小企業が200万円を給付されても、焼け石に水ではないでしょうか。金額が少な過ぎるのです。
かつ、この事業者向け給付金のための予算はわずか2.3兆円で、130万の事業者に給付することを想定しているようです。しかし、日本の企業の99%は中小企業と小規模企業者(個人事業主を含む)であり、その数は358万に上ります。
つまり、給付金の対象となるのは全体の3分の1程度しかないのです。コロナが業種を問わず多くの中小企業と個人事業主に深刻な影響を与えていることを考えると、130万事業者というのは少なすぎるのではないでしょうか。
ちなみに米国の経済対策では、社員500人以下の中小企業への緊急融資に約38兆円(3500億ドル)が用意されています。融資ではあるのですが、この資金が社員の給料などに使われ、かつ社員が解雇されなかった場合は返済が不要なので、事実上給付金に近いと考えられます。そう考えると、日本と米国の予算額の違いにはがっくりきてしまいます。
・見せかけだけの安倍「108兆円」コロナ経済対策。その寄せ集めのハリボテっぷりに驚愕(HARBOR BUSINESS ONLINE 2020年4月11日)
※「緊急事態宣言」とともに出された緊急経済対策
2020年(令和2年)4月7日。火曜日の夕刻5時30分。ほとんどのテレビ各局は通常の放送を切り替え、総理大臣官邸で開かれている新型コロナウイルスに関する政府対策本部の生中継を始めた。
長テーブルの真ん中に座った安倍晋三首相は東京都、千葉県、埼玉県、神奈川県、大阪府、兵庫県、そして、知事から要望のあった福岡県の7都府県に対して緊急事態宣言をした。首相は「全国的かつ急速な蔓延(まんえん)により、国民生活および国民経済に甚大な影響を及ぼす恐れがある事態が発生したと判断した」とペーパーを読み上げた。
ニュース速報が流れ、大都市の繁華街にあるビジョンなどでも緊急事態宣言が発出されたことを伝えた。午後7時過ぎからは記者会見も開かれ、民放テレビ局でも通常の夕刻の楽しいバラエティ番組を差し替え報道特番に切り替えるところも出た。
この日、首相は前日からメディアで流布されてきた緊急経済対策を正式に発表した。その規模を特に強調した。諸外国にも引けを取らないGDP(国内総生産)20%にもなる総額108兆円の新型コロナウィルスへの緊急経済対策だという。
それまで、国民や企業に幾度となく自粛は求めても、補償や援助に関しては単発で案や方向性は出たとしても、具体的で大規模なパッケージでの発表はなかった。私も108兆円という数字を聞いて胸を撫で下ろした。これで、産業も国民も腰を入れて、戦後最大の国難である新型コロナウィルス と戦えると思ったからだ。
数字だけ一人歩きする「108兆円」の不自然さ
108兆円。その日から日本の1年分の国家予算に匹敵する数字が一人歩きしている。テレビや新聞、雑誌でも、対策予算は108兆円と繰り返し喧伝される。しかし、私はあれ?と思った。首相がことさらに強調する1世帯あたり30万円の給付金や中小企業や個人事業主への援助もあまりにもハードルが高い。WHO(世界保健機構)が役に立たないという布製の通称アベノ・マスクの466億円を含めても108兆円との隔たりがあまりにも大きい。
少し調べていくと驚くことがわかった。108兆円の対策をするために発行される赤字国債はたったの14兆4767億円だった。108兆円の対策をするのであれば、108兆円をどこからかお金を引っ張ってこなくてはならないと思っていた。しかし、実際は約14兆5000億円。この差はいったいどういうことなのだろう。
第二次世界対戦以降初めての全地球規模で人類に襲いかかる生命の危機であり、最悪の経済のダメージでもある新型コロナウイルス問題。ここで政府は、断固として国民の生命と生活を守り、このコロナ危機が去った後に経済をV字回復させるために、産業を保全しながら一時は休ませなくてはならないはずだ。そのために十分な金を使わなくてはならない。今は平時ではない。非常時なのだ。民主主義の戦後日本で初めてと言っていい私権の制限も含む緊急事態宣言が発出されたのである。この安倍首相の言う108兆円の経済対策は私たちが期待していい108兆円なのか?
自粛と我慢を受け入れていた国民
緊急事態宣言に対して異議を唱える国民は少数派だ。逆に宣言自体が遅すぎると言う声が大きいほどだ。なぜなら、この1月からコロナウィルス問題はひとりひとりの生活と健康、いや命に関わる個人の最大の関心ごとであり、最重要の国内問題でもあるからだ。
1月に隅田川の屋形船で新年会を開いたタクシードライバーや東京と関西を結ぶ中国人観光客を案内したドライバーやガイドなど、国内でコロナウィルス 感染者が出てからは、中国武漢で起きた他人事から自らの問題となった。それから3か月近く、私たちはマスクの着用やアルコール消毒、手洗いなど行動様式を一変させた。
2月6日に横浜港に大型クルーズ船、ダイヤモンドプリンセス号が着岸してからは、報道や情報番組のほぼ全てがコロナウィルス問題一色になった。2月27日には首相自ら「ここ1、2週間が極めて重要な時期」とし、地方自治体に小中高の休校を要請し、3月2日からほどんどの学校教育がストップした。
国民のコロナウィルスに関する自粛にアクセルが入る。前日の2月26日には全国規模の大型イベント、スポーツ、パフォーミングアーツなどの自粛が求められ、ほとんどのものが休止となった。首相が極めて重要な期日の開けた3月16日ごろから一部で再開されたが、すぐさらに10日間の自粛延長を求められた。大相撲など無観客で開催されたものもあったが、戦後初の中止に追い込まれたセンバツ高校野球などほぼ全てのパフォーミングアーツ、スポーツイベントなどがそれから中止となったままだ。重要な時期は1・2週間ではなかったのだ。
こうして、国民は緊急事態宣言が出るまで3か月近く自粛と我慢の毎日を過ごしてきた。マスクや消毒液が品切れになっただけでなく、トイレットペーパーから食料品まで先の不安を思ってかスーパーなどで少し多めに買い物をする人が増えた。中には不安に耐えきれず必要以上に買いすぎた人もいる。人々は外出や旅行、スポーツやコンサートなどを楽しむこともできなくなり、外食も消費も抑えるようになった。何しろ年に一度の花見を今年は歩きながらする人が多く出た。それでも気が緩んでると批判が起きたほどだ。
国民の生活は甚大な被害を被っている
もちろん経済にも多大な打撃を与えている。深刻なのはひとりひとりの個人の収入だ。
今や働く人の約4割、2000万人以上が非正規労働者の日本。最初にインバウンドも柱の一つとなっている観光業が壊滅状態になった。外国人だけでなく日本人も旅行をしなくなった。このため航空、鉄道、バスなど交通、宿泊施設全体が大幅な減収となっている。外食産業はそれでなくても来客が減る2月ではあるが、例年以上に客足は急速に落ち、歓送迎会のある3月に持ち直すかと思いきや本格的な自粛が始まりさらに落ち込んだ。そこで働く人は勤務時間が減らされ、中には解雇され収入が激減した。
製造業では中国など海外のサプライチェーンから部品の納入が止まったり需要そのものの落ち込みで減産や製造中止となり、真っ先に非正規労働者らが雇い止めなどの煽りを食らった。
パフォーミングアーツやスポーツなどに関わる人たちも現場があって初めて収入となる人たちだ。俳優や選手、演奏家だけでなく、舞台設営、照明、会場案内、業種は多岐にわたる。前年比で8割、9割の所得が減ったと言う人は珍しくない。そして、すでに5月以降のイベントや興行も中止が発表されている。
こうした非正規労働者だけでなく、正社員として働く人からもため息が聞こえてくる。通常は支払われる残業代がテレワーク、リモートワークの場合には払われないことが多く、実質の手取りが大きく目減りしているのだ。
今やコロナウイルスによって収入に影響を受けていない人は少数派といってもいい状態になってきてるのではないかと推測される。そのため、3月頃から本格的な経済対策を行政に求める声があがった。自粛と補償はセットでなされるべきと言う声だ。しかし自粛は発令されても、具体的な補償の話はほとんど出てこなかった。
世界各国が迅速な経済対策を打った背景
日本経済はリーマンショック、ブラックマンデー、バブル崩壊以上の深刻な経済の落ち込みが確実視されている。4月9日に日本銀行の支店長が集まり、全国を9つの地域にわけて景気の現状を分析する「地域経済報告」をまとめた。9つすべての地域で景気判断を引き下げた。リーマンショック直後の2009年1月以来だ。特に北海道と東海地区は「下押し圧力が強い」とした。これは、日本経済に最後のダメ押しをしたようなものだ。それでなくても日本経済はコロナ以前に失速していたからだ。
2019年10月に消費税を10%にしたため、個人消費・住宅・設備投資は深刻な打撃をすでに受けていた。10ー12月期のGDP(国内総生産)は年率換算でマイナス7.1%。3月末の月例経済報告では景況判断から6年9か月続いて記されていた「回復」の文字が消え「急速に厳しくなっている」とされた。これに加えてのコロナショックなのだ。
リーマンショックの後は中国が世界経済を回復させる牽引役になったが、今回はリーマンショック後でさえもプラス成長だった中国経済が1992年に市場経済を取り入れて以来、初めてのマイナス成長になる。失業率30%になるとされるアメリカもマイナス成長、さらにイギリスのブレグジットで混乱の渦中のヨーロッパもユーロ圏統合後で最悪のマイナス成長になることは間違いない。
このために各国は大規模で中身のある経済対策をスピード感を持って発表した。アメリカは3月27日に230兆円の経済対策予算を通し、4月2週目には早くも27兆円の追加予算をまとめた。国民個人への支援も厚い。
ヨーロッパ各国も極めて異例の予算を次々と組んで支援を始めた。フランスは法で定めら最低賃金の4.5倍を上限に給与の100%、イギリスはフリーランスも含めて賃金や収入の80%、ドイツは時短勤務となった場合には給与の補填を最大67%することに加え、社会保障費の全額肩代わりを提示した。そのほか休業に追い込まれた中小の店舗などに家賃や光熱費の補助などを実施するなど、国民が安心して自宅待機でき、中小企業も含め休業しやすい対策を打ち出した。
数字だけは立派な日本政府の108兆円対策だが……
日本政府が4月7日に発表した108兆円も数字的には欧米に決して劣らない、この規模なら国民が渇望している緊急経済対策のはずだ。しかし、新たな赤字国債の発行は14兆5000億円ということに私は疑問を持った。そして、その経済対策の中身を見ていくと、驚くばかりのことばかりだったのだ。
メディアでは108兆円という数字ばかりが強調されるが、その前につく言葉をご存知だろうか?「事業規模」という言葉だ。108兆円は事業規模なのだそうだ。加えて財政支出は39兆5000億円とある。つまり政府の支出を伴うものは40兆円に満たないわけだ。支出は108兆の3分の1強。支出を伴わないものも含む108兆円の事業規模にはどんな事業があるのだろう?
最初に目がついたのが26兆円分の事業である。これは、資金繰りが苦しくなるであろう企業などの税金や社会保障費の納入を1年間猶予するものだった。経済対策の4分の1の26兆円は、国に収めるカネを1年間待ってやるという事業だった。さらに、支出を伴うものであっても、昨年の台風19号などの一連の災害からの復旧、復興などのため2019年12月に決定した経済対策のうち19兆8000億円分を108兆円の一部として組み込んでいた。
4月7日に発表された緊急経済対策は新型コロナウイルス対策に対してのものだと国民の多くが思っているはずだ。メディアもそういう趣旨で報道しているが、実際は去年の台風などの災害ですでに発表されている経済対策をもう一度カウントしていたのである。
「寄せ集め」の「ハリボテ」だった108兆円対策
私が飲み会の席で、多くの人に向かって皆に10万円だそうと言ったら、誰もが10万のカネを支払うと思うだろう。ところが、実際は今まで奢ってきた飲み食いの5万円や、クーポンや店舗に交渉して3万円分負けさせていた分も加えての10万円分だと言ったらどう思うだろうか? 実際に財布から出すのは2万円だけだったら、誰もがそれは10万円出すのとは違うと言うはずである。
ところが、4月7日に閣議決定された、緊急経済対策の中身を見ていくとコロナウィルス対策にしては不思議な項目が次々と出てくるのだ。
例えば、住宅市場安定化対策事業(住まい給付金)、「マイナンバーポイント」を活用した消費活性化策、事業継承・世代交代支援事業、地方創生拠点整備交付金、首都圏空港の機能強化、スマート農業技術の開発実証プロジェクト、一人一台端末の前倒し整備、学習データ基盤の検討、遠隔教育による家庭学習環境の整備、公共施設における花きの活用拡大支援、 JAPANブランド育成支援事業、酒類の海外展開推進事業、労働力不足の解消に向けたスマート農業の導入実証など、驚くような事業のオンパレードなのだ。
これらは、新型コロナウィルス対策のために発案されたものだろうか? それとも前からあったものをコロナ対策として半ば強引に組み込んだものだろうか? 果たしてこれは私たちが待っていた感染予防や経済対策なのであろうか?
私は頭を抱えてしまった。そして、私が新型コロナ対策予算だと思うものを令和2年度一般会計補正予算にやっと見つけた。
新型コロナウィルス 感染症緊急経済対策関係経費16兆7059億円とあった。この予算のために特例公債(赤字国債)14兆4767億円を当てることも記されている。108兆円という数字ばかりが国民に浸透しているので、あまりにも差がありすぎるが、これがコロナウイルス対策予算の本丸なのだろう。その中身を見ていこう。雇用の維持と事業の継続のために10兆6308億円、感染拡大防止策と医療提供体制の整備及び治療薬の開発に1兆8097億円、経済活動回復のために1兆8492億円、強靭な経済構造の構築に9172億円、予備費1兆5000億円である。
つまり、条件が合わないと支給されない1世帯あたり30万円の給付金や、前年度の事業収入の落ち込みを支給する制度などから、コロナウィルス問題が終息した後の旅行補助、イベント関連のクーポン、1億枚の布製マスクを1世帯2枚づつ配る事業の466億円などもここに入るというわけだ。
これでは中身のほとんどない張りぼての経済対策だと言われても仕方がない。安倍政権は緊急事態宣言を出しても財布をほとんど開かないつもりなのだ。これなら、新規の赤字国債は14兆5000億円というのもうなづける。
国民が確実にもらえるのは、児童手当の上乗せ1回のみ1万円と、1世帯につき布製のマスク2枚なのである。
ここまで読んできていただいてがっかりしたかたも多いと思う。ほとんど報道されないのでご存知ないかたも多いだろうが、立憲民主党、日本共産党、国民民主党、れいわ新鮮組など野党各党は、今回の対策では不十分だと財務省、与党に繰り返し詰め寄っている。与党では公明党からも声が上がり始めた。
太平洋戦争後、最大の危機であるのに、これだけ出し渋る理由がわからない。出し渋るだけでなく、さも出しているように108兆円という数字までぶち上げるのに至っては、少しずるさまで感じてしまう。政治というのはそういうものなのか?
なんとかこの無能政権の無策を乗り切るために
さて、ここで私がなすべきことは、拙文をここまで読んでくださった皆さん個人が申請すればもらえる給付金などについて、できるだけ分かりやすく説明して、ひとりでも多くの人に、事業をされてる方にこの難局を乗り越えるための資金を得てもらうことである。まず企業の方にぜひ考えてもらいたいものが、雇用調整助成金である。なぜなら4月から6月までの期間限定で、解雇をせずに従業員を休業(今は家にいた方が安全なのでオススメ)などをした場合の補助率が引き上げられている。大企業で通常が2分の1なのが4分の3まで。中小企業は3分の2から10分の9まで引き上げられている。1日の上限金額などもあり不十分かもしれないが、非正規の労働者も対象になるというので検討に値するはずだ。雇用調整助成金の仕組みなどはネットで厚生労働省の「雇用調整助成金ガイドブック」が簡単にダウンロードできるので見てもらいたい。
次に「持続化給付金」という名称になる予定のもので、事業収入が前年同月比 50%以上減少した事業者に、中堅・中小企業は上限 200 万円、個人事業主は上 限 100 万円の範囲内で、前年度の事業収入から減った金額を給付するもの。ネットで申し込めるようになる予定。具体的な申請方法などについては経済産業省のホームページで今後発表になる。
そして、誰もが知りたい1世帯あたり30万円の給付金についてである。ハードルは高く評判も悪い。この基準が4月10日に変わった。できるだけ分かりやすく説明したい。
今まであった住民税非課税世帯という枠がなくなった。2月から6月までの間で1か月間だけでも、収入が単身者なら10万円、2人世帯なら15万円、3人世帯で20万円、4人世帯で25万円以下になることがあったならもらえるようになった。もしくは、世帯主の収入が半分以上減って、上記水準の2倍未満になれば良くなった。単身者なら20万円、2人世帯なら30万円以下になれば基準をクリアするわけだ。例えば、単身者で40万の給与をもらっていた人が、1か月でも半分以下の19万5000円になったのなら、30万円もらえるということになる。
国民民主党の玉木雄一郎代表は、「50%以下では基準が厳しいので、せめて30%以上減った世帯に支給できるようにするべき」と声を上げている。
また、世帯主の収入を基準としているので、例えば、妻が解雇され世帯全体としては半分以下の収入になったとしても対象にならないということもある。これも見直されるべきだと思う。
申し込みはまだ先のことになるが、郵送での申請が原則だが、ネットでの申し込みも可能になる可能性がある。給与明細が提出書類として必要になるので、用意しておきたい。
ちなみに、この働く人なら最も気になる30万円の給付制度であるが、安倍首相が言う108兆円の緊急経済対策予算のうち、組まれた金額はたった4兆円ほどである。追加の経済対策、それも真の経済対策が早急に求められている。
<文/佐藤治彦>
【佐藤治彦】
さとうはるひこ●経済評論家、ジャーナリスト。1961年、東京都生まれ。慶應義塾大学商学部卒業、東京大学社会情報研究所教育部修了。JPモルガン、チェースマンハッタン銀行ではデリバティブを担当。その後、企業コンサルタント、放送作家などを経て現職。
・アベノマスク配布466億円 想定外の額にどよめき(日刊スポーツ新聞社 2020年4月10日)
※安倍政権が、新型コロナウイルス対策として全世帯に布マスク2枚を配る経費が、何と466億円と見積もられていることが9日、分かった。これまでは200億円程度とみられており、実際は2倍以上の費用がかかることになる。国民のマスク不足はいっこうに解消されない中、「アベノマスク」とやゆされる政策が、その額に見合ったものであるのか、議論を呼びそうだ。
◇ ◇ ◇
アベノマスクにかかる諸費用の額は、9日開かれた野党会派の会合で明らかになった。政府から総額が示されると、想定外の額に「えー」などと、どよめきが起こった
政府側の説明によると、配布には、公表済みの20年度補正予算案で明示していた233億円に加えて、20年度当初予算の予備費からも233億円を充てる。枚数については、余裕を見込んで1億3000万枚と想定しているという。
マスクの単価は1枚200円程度と受け止められ、事業費も200億円程度とみられていた。しかし立憲民主党の蓮舫参院幹事長に対する政府の説明では、マスクは1枚260円で買い上げ、費用は338億円になる。残りは日本郵政の配送費やパッケージ代などという。
蓮舫氏は自身のツイッターで「マスク生産可能工場への設備投資や支援などに回した方が現実的」と指摘。「まだ間に合う。見直すべき」と、ただしている。
マスクをめぐっては菅義偉官房長官が、この日の会見で「迷言」を展開。配布する1億枚が洗濯によって平均20回使われれば「使い捨てマスク20億枚分の消費を抑えられる」というナゾの試算を披露。野党は緊急経済対策が不十分だとして「そんなことをやっている場合か」と反発している。
アベノマスクは来週以降、東京など感染者の多い地域から配布が始まる。菅氏は会見で、多くの人にマスクをしてもらうことや医療機関などに必要な量を届ける狙いに触れ「代替できる手段はない」と語ったが、果たして…?。
・米専門家、布マスクの防御力低い 限界指摘「理解し使用を」(共同通信 2020年4月11日)
※布マスクはフィルターとしての機能が弱く、新型コロナウイルス感染を防ぐ効果は低いとする見解を、感染防御などが専門の米イリノイ大の研究者らが11日までに公表した。日本では安倍晋三首相が全世帯に2枚配布する方針を表明。今後、無症状の感染者や軽症者らの自宅療養も想定され、専門家は「布マスクで感染を完全には予防できないことを理解して使ってほしい」と呼び掛ける。
米国立労働安全衛生研究所の実験によると、微粒子に対するフィルター効果は、医療現場などで使うN95マスクが95%以上。タオルが40%前後、スカーフが10~20%程度、布マスクは10~30%程度だった。
※ブログ主コメント・・・そんなものを500億円近く無駄遣いして配布するとか、安倍政権は馬鹿なのか?ただの布マスクよりタオルの方が防御力高いじゃん!どこの家にでもあるタオルの方がまし!タオルで自家製マスクを作ろう!
・「マスク2枚で給付金ゼロ」 国民の絶望感と政府への不信感(NEWSポストセブン 2020年4月8日)
※東京、大阪など7都府県を対象区域とする緊急事態宣言の発令にあわせ、事業規模だけは108兆円と巨額の緊急経済対策(財政出動は38兆円)が発表された。だが、なかでも国民に関心の高い「給付金」はどうにも不十分で不公平な形となった。果たしてどこが最大の問題で、国民の最たる不満につながっているのか──。ジャーナリストの山田稔氏が検証する。
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コロナ感染発覚から2か月以上たって政府がようやく緊急の経済対策を強化しているが、スピード感のなさ、決断力不足、実効性への疑問など批判の声が渦巻いている。
「国民の命と生活を守り抜くことを最大の目的とし、前例にとらわれることなくあらゆる政策手段を総動員することで思い切った措置を講じている」
4月7日午前の政府与党政策懇談会でこうアピールした安倍首相は、緊急経済対策の財政出動が39兆円であることを明らかにした。108兆円の事業規模と言いながら「真水」は3分の1程度。家計や中小企業などへの現金給付は総額で約6兆円どまりである。
◆前例にとらわれない「思い切った愚策」
緊急経済対策の柱である現金給付。政府・与党は4月3日、所得の減少を条件に1世帯当たり30万円を支給することを決めた。前日までは20万円と報じられていたから、1日で10万円上積みされたことになる。これまでに明らかとなった現金給付のポイントを整理してみよう。
・給付先は個人ではなく世帯
・対象は2~6月のいずれかの月に世帯主の収入が感染拡大の影響で半分以下に減少し、年収に換算した場合に住民税が非課税になる水準の2倍以下の世帯
・減収幅がそれより小さくても、年収ベースで住民税非課税の水準の世帯も対象
・給付による所得は非課税
・申請方式で、申請先は市区町村窓口
・対象は全5800万世帯のうち約1000万世帯(見通し)
・給付時期は5月中を目指す
リーマン・ショック後の現金給付は国民1人1万2000円だったから、それに比べると金額的には大幅な増額になるが、今回は国民の多くが期待していた一律給付が見送られてしまった。リーマン時の一律給付は貯蓄に回り効果がなかったという理由からだ。この決定を受けネット上には、「私はもらえるの?」という不安の声に始まり、給付金への不満、怨嗟、疑問の声が集中している。
「これこそ全世帯に支給すべき。あれこれ条件付けないで住民登録している国民にすんなり支給すべき」
「経済対策だよね? 困窮者支援、保護じゃないんだよね。だったら、一律給付にしないと経済の活性化にならないんじゃない」
「全国民一律給付のほうがいい。役所の手間が恐ろしいことになるし、自治体によって対応にばらつきが出そう」
「給料が4割までしか減ってない人は見殺し、世帯主は変わらずとも奥さんが収入半減の家も見殺し…」
「所得減少がコロナ禍によるとの証明はどうやって確認するのか」
「本当に、前例にとらわれない、思いきった愚策ですね」
◆5800万世帯の8割は給付金を受け取れない!
国民の不満の最たるものは、給付世帯の線引きのハードルが高すぎることだろう。そもそも政府・与党間の会談で20万円が一気に30万円に引き上げられた経緯や算定根拠が不明である。
最初に20万円という数字を報道機関にリークしておいて、首相と自民党政調会長の会談で30万円に引き上げたという結果にすることで、「首相の政治決断」を強調したかったのだろうか。〈思い切った支援が必要との首相判断で急きょ上積みが決まった〉(4月4日付東京新聞)との報道もあった。
給付の線引きに当たっては、給付を受けられるハードルが高すぎる。困窮者、低所得者の支援にはなっているが、サラリーマン世帯の消費を喚起する経済対策には程遠い。
サラリーマンの場合、勤務先の業績悪化で減収となるのは残業代や諸手当が多いだろうが、月収が半分以下まで減ったケースは少ないだろう。むしろ夏、冬のボーナス大幅カットで年収のがた減りを心配している世帯が多いのではないか。こうした世帯までカバーしないことには話にならない。
また、減収の対象者を世帯主に限定している点も欠陥制度だ。世帯主=稼ぎ頭という旧来の発想にとらわれ過ぎている。世帯主よりも同居人のほうが収入が多いケースもあるだろうし、共働き世帯で奥さんが収入ゼロになっても、夫の収入が半減しなければ対象にならない。その結果、5800万世帯のうち対象となるのは1000万世帯超とみられ、8割以上の世帯は給付金とは無縁の存在となってしまう。
4月7日に発表された緊急経済対策で線引き内容や水準の具体額などは明らかにされたが、国民のモヤモヤ感は解消されていない。
◆怒りや失望の根源にある「不公平感」
今回の30万円給付金の最大の問題は不公平感が顕著になってしまったことだ。極端な例かもしれないが、こんなケースを比べてみよう(あくまで仮定の設定)。
【A子さん(36歳)】
看護師として都内の病院に勤務し、コロナ患者を担当。高齢の患者に対しては食事や排泄の介助もしなければならず、常に感染の危機にさらされている。自身はもちろん、子どもや夫への感染リスクもあるなか、日々業務に追われ、へとへとだ。世帯主の夫は残業代が減ったぐらい。
【Bさん(28歳)】
単身世帯の男性フリーターで、さまざまなバイト生活で暮らしてきた。コロナ騒動以降、バイト先の飲食店が営業不振に陥り、2月以降仕事がなくなった。月収はほぼゼロ。今は裕福な親からの資金援助で家賃、光熱費など生活費を賄っている。日中は部屋でオンラインゲームをやり、夜はたまに憂さ晴らしに“街コン”に出かけている。
【Cさん(38歳)】
昨年秋の消費税増税、コロナショックで勤務先の観光関連会社が経営不振に。解雇こそ免れたが、新年度の4月から給料が2割ダウンした。妻は乳児の子育て中で無収入。この分では4月の給与は35万円あるかないか微妙だ。
さて、このうち30万円の給付を受けられるのはどのケースか。感染リスクの恐怖と闘いながら患者の面倒を見ているA子さん一家は、対象外。Bさんはそもそも収入が低いうえ、2月以降は親からの援助以外の収入がないので、申告すれば給付される可能性が高い。Cさんは3人世帯。3人世帯の住民税非課税世帯水準の年収目安は204万円。月収で約17万円だ。給付対象はその水準の2倍以下だから34万円未満(東京都の場合)。まさにボーダーラインだ。
それぞれ、いろんな形でコロナの影響を受けている3つの世帯だが、給付を受けられるかどうかはマチマチなのである。
こうした不公平感はネット上にも溢れている。
「マジメに所得税を納めているのに支給されない人がほとんどのような気がする。なぜ平等に給付してくれないのか」
「5人家族です。学校が休校で食費がすごくかかっている。仕事には影響ないから給付の対象にならない。出費増をどうしてくれるのか」
「同じ日本人なのに。給付金が条件付きって優劣をつけること自体おかしい」
「休みたくても休まず、命がけで働いてくれている医療従事者の方たちが対象にならないのはどう考えてもおかしい」
「国民全員に自粛要請しているのだから全員に支給すべき」
国民の怒りは爆発寸前だ。
◆30万円給付の微々たる効果
条件付き30万円給付にはもう一つ大きな論点がある。その目的と経済効果だ。菅官房長官は4月3日の会見で30万円の給付額について、「生活に困窮をきたす恐れのある家庭を対象に、生計維持のための給付水準を検討した」と説明したが、これは低所得者支援という一種の福祉政策。給付金による消費増で落ち込んだ経済活動を活性化させる経済対策とは別物だ。位置付けからして疑問が残る対策だ。
さらに対象世帯が約1000万ということになれば、給付総額は約3兆円。これはGDP(約550兆円)のわずか0.55%である。仮に30万円すべてが消費に回ったとしても、その景気浮揚効果は微々たるものである。
緊急事態宣言が発令したからといって、新型コロナウイルス感染が直ちに終息に向かうわけではない。専門家の間からは1年、2年といった長期化を予想する見方も出ている。
今回の給付条件をクリアして30万円の給付を受けられた世帯は、その後の生活が劇的に改善するのだろうか。家賃、光熱費、食費などの支出を行えば手元にいくらも残らないだろう。一度だけの30万円給付で、その先、何か月も生計を維持していけるのだろうか。子育て世帯支援のため児童手当の1人1万円増額するというが、これも1回限り。今後、収入が減る家庭へのケアはどうなるのか?
いつ終息するか分からない恐怖、命と生活がどうなってしまうのかという不安──。すべての国民が感じている恐怖と不安に政府はどこまで真摯に向き合っているのだろうか。
「マスク2枚で給付金ゼロ」の恩恵しか受けられない圧倒的多数の国民の絶望感、政府への不信感は高まるばかりである。
・都の休業要請、協力金50万~100万円 対象業種公表(朝日新聞DIGITAL 2020年4月10日)
※新型コロナウイルス対応の緊急事態宣言を受けた休業要請などの使用制限をめぐり、東京都は10日午後、対応策を公表した。ネットカフェやパチンコ店、映画館など幅広い業種で休業を求めるほか、飲食店には午前5時~午後8時の短縮営業を要請する。協力事業者に「感染拡大防止協力金」を支払う制度も創設し、2店舗以上を持つ事業者に100万円、1店舗の事業者には50万円を支払う方針を表明した。
使用制限の適用は11日からで、小池百合子知事は10日午前、報道陣に「今日発表させていただき、実際には明日からということにしたい。体制を今日整えてもらいたい」と語った。
要請は原則、新型コロナ対応の特措法に基づいて行われる。ただ、小規模な商業施設については一部、特措法ではなく、都独自の協力の呼びかけになる。「密閉、密集、密接の3密の空間の除外」という観点から、遊興施設から教育機関、商業施設まで幅広く対象に含めた。
都内の感染拡大は夜の繁華街で広がっていることを懸念し、キャバレーやナイトクラブなどを加えたほか、合意直前まで国が難色を示していたゲームセンターやマージャン店なども対象となる。
また、居酒屋を含めた飲食店については休業は求めないが、営業時間を午前5時~午後8時、酒類を提供する場合は午後7時までにするよう要請するという。
一方で、都は9日の国との最終協議を踏まえ、「生活に必需である」として、理美容業、百貨店やホームセンターの生活必需物資売り場などは要請対象としないことも決めた。
東京都の感染者の累計は1500人を超えている。社会の混乱を避けるため、休業対象を絞る姿勢を見せていた国との調整は難航したが、都関係者は「ほぼ満額回答を得られた。これからいかに事業者の協力を得られるかがカギになる」と話している。
※日本政府は日本国民を虐待する一方、諸外国へはバラマキをしていた・・・
・日本がIMF大災害抑制基金への拠出表明へ、低所得国支援=財務省幹部(REUTERS 2020年4月8日)
※新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、低所得国債務救済のため、日本政府が国際通貨基金(IMF)の大災害抑制・救済基金「CCRT」への資金拠出を準備しており、来週にも表明することが8日、明らかになった。財務省幹部がロイターに語った。
麻生太郎財務相が、来週テレビ電話会議で行われるIMF総会、G20財務相・中央銀行総裁をはじめ一連の会議のいずれかで拠出を表明する。
拠出金は、政府が打ち出した総額108兆円に上るコロナウイルス対応の緊急経済対策の中から捻出される。
大災害抑制・救済基金(Catastrophe Containment and Relief Trust:CCRT)は、大規模自然災害やパンデミックといった外生ショックに起因する資金ニーズに迅速に対応するために設立された。
・消費税「ゼロの発想ない」 新型コロナ対策で―麻生財務相(時事ドットコム 2020年03月18日)
※麻生太郎財務相は18日、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて与野党の一部から出ている消費税減税案に関し「直ちにゼロにする発想はない」と述べた。参院財政金融委員会で西田昌司氏(自民)に答えた。
麻生氏は、昨年10月の消費税率10%への引き上げについて「少子高齢化を考えた社会保障制度維持のために必要だった」と説明。過去に2回消費税増税を延期したことに触れ、「一回(消費税率を)下げると、いつ上げるのか。また(引き上げが)繰り延べになったら日本の財政は持たなくなる」と指摘し、消費税減税は難しいとの認識を示した。
・麻生財務相、消費税減税に否定的 現金給付にも慎重(日本経済新聞 2020年3月19日)
※麻生太郎財務相は新型コロナウイルスの経済への打撃を抑えるための緊急経済対策で現金給付の案が浮上していることについて「財務省内では検討していない。自分が首相の時も現金給付をしたが、あまり効果はなかった」として、慎重な考えを示した。19日の閣議後の記者会見で述べた。
与党内から消費税の減税を求める声も出ていることについて麻生氏は「今の段階で消費税について考えている訳ではない」と話したが、消費税以外の税目で減税措置を検討すること自体は否定しなかった。
政府・与党は4月にも緊急経済対策をまとめる予定で、子育て世代への現金給付や中小企業の資金繰り対策に重点が置かれる見通しだ。
・麻生財務相「消費税引き下げ 考えていない」(NHK NEWS web 2020年4月13日)
※新型コロナウイルスの感染拡大を受けた経済対策として、消費税の減税を求める声があることについて、麻生副総理兼財務大臣は衆議院の決算行政監視委員会で「今の段階で消費税を引き下げることは考えていない」と述べました。
この中で麻生副総理兼財務大臣は、感染拡大を受けた経済対策として今後、消費税を減税する可能性はあるのかと問われたのに対し「去年、消費税率を引き上げたが、全世代型の社会保障に大きく転換しないと、少子高齢化というこれからの日本の社会では、なかなか対応できないのは、はっきりしている。今の段階で消費税を引き下げることは考えていない」と述べました。
また、緊急経済対策による財政出動で国債の発行が増加することに関連して、政策に必要な経費を税収などでどれだけ賄えているかを示す「プライマリーバランス」を、2025年度に黒字化するという目標を見直すことがあるか問われたのに対し、麻生副総理は「今回、借入金が増えるのでプライマリーバランスが悪くなることになるが、この目標を放棄するという考えはない」と述べました。
その理由として、麻生副総理は「借金を返していくという姿勢がなければ、マーケットでとたんに日本の国債が売りを浴びせられかねない。マーケットをよく見ながら、考えていかなくてはならない」と述べました。
・真の経済効果は28兆円 空前絶後の閉店招く粉飾コロナ対策(日刊ゲンダイDIGITAL 2020年5月30日)
※事業規模200兆円超のコロナ対策について安倍首相は「GDPの4割に上る空前絶後の規模、世界最大の対策」と自画自賛。芸人のサンシャイン池崎を連想させるフレーズで自ら酔いしれているが、2次補正予算案の事業規模117・1兆円のうち一般会計の歳出増加額は約32兆円。さらに精査するとGDP押し上げ効果のある本当の「真水」と呼べるのは10兆円ソコソコだ。水増しの「粉飾」対策に自民党内でも異論が出ている。
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「2次補正予算案では『資金繰り対応の強化』に11兆6390億円を充てますが、中身は日本政策金融公庫や民間金融機関が既に実施中の『無利子・無担保融資』の拡充に過ぎません。『融資』の効果は極めて限られるのに政府はなぜ、理解できないのか」と憤るのは、自民党の若手議員のひとりだ。こう続ける。
「コロナ禍で需要が消えた今、無利子・無担保とはいえ、『融資を受けろ』と言われても、返済のめどが立たなければ受けられません。だから、堅実な経営者ほど『余力のあるうちに』と廃業を選ぶ。『融資はする、補償はしない』の方針を変えない限り、本当に困っている人を救えません」
約32兆円から融資枠の約11・7兆円を差し引けば20・3兆円。安倍首相が「もう答弁に立ちたくない」とサッサと国会を閉じるために積んだとされる10兆円もの法外な予備費も除けば、10・3兆円しか残らない。
■2次補正予算案の本当の「真水」は10兆円余り
1次補正の歳出増加額は25・6兆円。大マスコミはこの分を「真水」と伝えるが、2次補正予算案と同様に融資メインの「資金繰り対策」(約3・8兆円)や「予備費」(1・5兆円)、不要不急な「Go Toキャンペーン事業」(約1・7兆円)を排除すれば、「本当の真水」と呼べるのは約18・6兆円になる。
1、2次合わせて本当の真水28・9兆円は、事業規模約234兆円の12%、GDP比20分の1だ。“サンシャイン安倍”が「空前絶後」とハイテンションで誇れるシロモノではないのだ。
支給は8月末まで待たされる家賃支援
しかも2次補正予算案の柱である「家賃支援給付金の創設」(約2兆円)も見掛け倒し。賃料の3分の2を支給と言いながら、複数の店を持つ事業者でも月100万円の上限付き。こんなチンケな額では都市部の家賃は補えないし、支給条件もメチャクチャ。売上高が前年同月比50%以上減が1カ月、あるいは連続3カ月の合計で30%以上減が条件だが、起算月はナント5月以降。4月7日からの緊急事態宣言で営業自粛を強いられた先月分は含まれていないのだ。
「せめて感染が拡大した3月分の家賃から支援すべきです。3割減で給付を申請するには7月まで待ち、給付は早くても8月末。気の遠くなるような話で、その前に閉店・廃業が相次いでしまう。一事が万事で安倍政権のコロナ対策はやることなすこと遅すぎます。見た目を繕うだけの『やってる感』のアピールはもうやめてほしい」(経済評論家・斎藤満氏)
このままだと、閉店ラッシュで雇用が失われ、コロナ不況へと一直線だ。
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