・「温暖化対策」100兆円をドブに、日本はバカなのか?(JBpress 2019年11月15日)

渡辺 正

地球温暖化問題。もともとは国連の組織「IPCC」が火をつけた騒動だ。日本は国連の言うことをみじんも疑うことなく無条件に飲み込んでいる。東京理科大学の渡辺正教授(東京大学名誉教授)はこの状況を「カルト宗教めいた状況」と批判する。日本は効果のない膨大な温暖化対策費をいつまで捨て続けるのか?

本稿は『「地球温暖化」狂騒曲』(渡辺正著、丸善出版)の本文および『「地球温暖化」の不都合な真実』(マーク・モラノ著、渡辺正訳、日本評論社)の「訳者あとがき」から一部を抜粋・再編集したものです。

※日本が使う100兆円、その効果は?

過去ゆるやかに変わってきて、今後もゆるやかに変わる地球環境を気象や気候の研究者が論じ合うだけなら実害は何もない。私たち部外者のほうも、ときおり聞こえてくる研究の成果を楽しませてもらえばよい。まっとうな研究者なら、大気に増えるCO2とじわじわ上がる気温のプラス面をきっと教えてくれるだろう。

だが、1988年、国連のもとにある「IPCC」(気候変動に関する政府間パネル)という集団が温暖化を「人類の緊急課題」にしてしまった。各国の官公庁と主力メディアがたぶん国連の権威に屈した結果、問題視するまでもないことに巨費が投入されつづけることになった。その巨費が生む「おいしい話」に政・官・財・学会がどっと群がり、日頃は政府を攻撃したがる一部メディアも声をそろえてカルト宗教めいた状況になったのが、地球温暖化騒ぎの素顔だと思える。

いま日本では年々5兆円超(1日に150億円!)の「温暖化対策費」が飛び交っている。

日本の「温暖化対策」は2016年秋のパリ協定発効をにらんだ同年5月13日の閣議決定をもとにしている。日本は温室効果ガス(大半がCO2)の排出量を2013年比で、2030年に26%だけ減らすのだという。

内訳は、「エネルギー起源CO2」が21.9%、「その他温室効果ガス」が1.5%、「吸収源対策」が2.6%だという。3番目は「森林がCO2を吸収する」という非科学だが、こまかい考察をしても空しいだけなので無視したい。要するに日本は、2013年から2030年までの17年間に、CO2排出量を21.9%だけ減らすと宣言した。減らせるはずはないけれど、減らせたとしたらいったい何が起こるのだろう?

2015年に世界のCO2排出量の内訳は、以下のとおりだった(欧州共同体の発表データ)。

 29.4% 中国

 14.3% アメリカ

 9.8% 欧州経済圏 

 6.8% インド

 4.9% ロシア

 3.5% 日本

 31.5% その他

2013~30年の18年間に、地球の気温はどれほど上がるのか? 2014年のIPCC第5次評価報告書(第2章)に登場した世界の年平均気温推移(陸地+海面)と同じ勢いなら、0.27℃になる。

人為的CO2の寄与はその一部である。IPCCの報告書によると、過去100年で地球の気温は1℃ほど上がったと言われるが、その半分(半分以上)は数百年前からつづいてきた自然変動や20世紀後半から進んだ都市化のせいであろう。人間活動から出るCO2の効果はせいぜい0.5℃と推定できる。0.2~0.3℃や0.1℃くらいとみる研究者もいる。

ここでは多めにみて0.27℃のほぼ半分、0.15℃になるとしよう。それなら、CO2を世界の3.5%しか出さない日本が21.9%だけ減らしたとき、地球を冷やす効果は「0.15℃×0.035×0.219」つまり0.001℃にすぎない。超高級な温度計でも測れない変化にあたる。

その18年間、従来のまま温暖化対策費を使いつづけるとすれば、総額はほぼ50兆円になる。また、やはり温暖化対策のためと称して2012年に民主党政権が導入した「再エネ発電賦課金」が40~50兆円ほど使われ、それを合わせると約100兆円に迫る。

使った巨費がエネルギー消費(CO2排出)を促すため、「0.001℃の低下」も甘い。つまりパリ協定のもとで日本の約束は、100兆円も使って地球をほとんど冷やさない営みだ。

100兆円をつぎ込んで最大0.001℃しか冷やせない──という明白な事実を政府が正直に発表し、それをメディアが報じてくれれば、集団ヒステリーめいた「温暖化対策」騒動も沈静化に向かうのではないか。

英独の策略と京都議定書の顛末

温暖化論や温暖化対策の話は当初から国際政治の道具となり、巨費が飛び交い続けるせいで、「まっとうな科学」ではなくなっていた。

1997年2月採択、2005年2月発効の京都議定書を振り返ろう。京都議定書は「2008~2012年の5年間(第1約束期間)に先進国が、CO2排出量を基準年(1990年)比でそれぞれ決まった率だけ減らす」と定め、削減率はEUが8%、米国が7%、日本とカナダが6%だった。

採択年を考えれば、基準年は翌98年とか、キリのいい2000年にするのが筋だったろう。だがEU(とくに、排出量でEU全体の40%近くを占めていた英国とドイツ)が1990年を強く主張した(京都会議に出たドイツの環境相は現首相のアンゲラ・メルケル)。なぜか?

ヨーロッパでは1990年から東西融合が進んだ。旧東独と合体したドイツは東独の古い工場や発電所を更新してCO2排出を大きく減らし、1997年時点の排出量は90年比で14%も少なかった。かたや英国は同時期に燃料の切り替え(石炭 → 天然ガス)を進め、CO2排出を10%ほど減らしていた。だから基準年を1990年にすれば、両国つまりEUはCO2排出を「増やしてかまわない」ことになる。

当時の日本や米国にとって、CO2排出量を6%や7%も減らすのは不可能に近いのだが、日本政府は「6%」を呑んでしまう。なお、日本は当初「2.5%」を考えていたところ、議場に乗り込んだ米国の元副大統領アル・ゴアの剣幕に押されて「増量」したと聞く。

私には理解できない国際政治の力学により、京都議定書の時代から2016年発効のパリ協定に至るまで、「CO2排出を減らすべき先進国」は、EU諸国の一部と米国、日本、カナダ、オーストラリア、ノルウェー、スイスに限られる。つまり「温暖化対策」の話になると、中国やロシア、インド、ブラジル、韓国、シンガポール(1人あたりGDPは日本の約1.4倍)、中東諸国やアフリカ諸国はみな「途上国」の扱いになり、排出削減を強制されない。中国が世界最大の排出国になったいま、理不尽きわまりない状況だといえよう。

そんな状況を嫌った米国は京都議定書を批准せず、早々と2001年3月末にブッシュ(息子)政権が議定書から離脱した。カナダは2007年4月に「6%削減の断念」を発表し、2011年12月に正式離脱を表明している。

日本では京都議定書の採択も発効もメディアと一部識者がこぞって称え、小中高校の教科書にも「画期的な出来事」だと紹介された。担当官庁になった環境省では、議定書の発効から第一約束期間終了(2012年)まで歴代の環境大臣(小池百合子氏~石原伸晃氏の10名)が温暖化対策を率いている。

とりわけ熱心な小池大臣(2003年9月~2006年9月)の任期には、クールビズやウォームビズ、エコアクション、エコカー、エコバッグ、エコポイント、エコプロダクツなどなど、あやしいカタカナ語が続々と生まれて世に出回り、関連の業界を活性化させて、おそらくは国のCO2排出量を増やした。

安直な「CO2による地球温暖化」説は疑わしい

そもそも、地球の気温は、過去どのように変わってきたのかも、どんな要因がいくら変えてきたのかも、今後どう変わっていきそうかも、まだ闇の中だといってよい。

アル・ゴアが2006年の書籍と映画『不都合な真実』で「CO2が地球を暖める」証拠に使った「CO2濃度と温度の関係」を示すグラフがある。過去42万年に及ぶ南極の氷床コア分析から推定されたCO2濃度と気温の関係を示している(下の図)。



(環境省「地球温暖化の影響 資料集」より)
 
その推定値が正しければ、間氷期のピーク(約32万年前、24万年前、13万年前)にあたる気温は、いまの気温より1~2℃くらい高かった。そのときCO2濃度はいまよりだいぶ低かった。つまり、単純に「CO2が温暖化を起こす」と思うのは、完璧に間違っている。

また、以後の研究により、過去42万年間の因果関係は「まず気温の変化が起き、数百年かけてCO2濃度が変わった」とわかっている。気温が上がれば海水からCO2が出て、下がれば海水にCO2が溶け込むからだ。

もっと古い時代にさかのぼると、たとえばCO2が現在の何倍も濃かった約4.5億年前に気温が急降下して氷河期になった。そのことだけでも、やはり安直な「CO2による地球温暖化」説は疑わしい。

人為的温暖化説を批判する科学者たち

日本と違って海外には、人為的温暖化説を声高に批判する人が多い。米国の気象予報士アンソニー・ワッツ氏や、米アラバマ大学ハンツビル校のロイ・スペンサー博士、デンマークの政治学者ビヨルン・ロンボルグ氏、ハンガリー生まれの化学者イストヴァン・マルコ教授らがその例になる。また、当初は人為的温暖化説を疑いもせず受け入れながら、真相に気づいて「転向」した大物も少なくない。

米国議会上院「環境・公共事業委員会」の委員だったこともあるジャーナリスト、マーク・モラノ氏が2018年2月末刊の著書 “The Politically Incorrect Guide to Climate Change”(邦訳:『「地球温暖化」の不都合な真実』)に、そんな人々の言動を詳しく取り上げている。世界の健全化を願う人たちのごく一部を紹介しよう。

・超大物の物理学者

米国プリンストン高等研究所の物理学者、「アインシュタインの後継者」と評されるフリーマン・ダイソン博士は、左翼系人間として民主党支持を貫きながらも、オバマ政権の温暖化政策だけは手厳しく批判した。2015年にはウェブサイト『レジスター』の取材に応え、次のような発言をしている。

環境汚染なら打つ手はあります。かたや温暖化はまったくの別物。・・・CO2が何をするのかつかめたと研究者はいいますが、とうていその段階にはなっていません。そもそも、植物の生育を助けて地球の緑化を進め、人類社会をも豊かにするCO2を減らそうというのは、正気の沙汰ではないでしょう。気候を理解したというのは、気候学者の思い上がりにすぎません。彼らが頼るコンピュータシミュレーションなど、変数をいじればどんな結果でも出せる代物ですからね。・・・私自身、科学の話ならたいてい多数意見に従いますが、ただ1つ、気候変動の話は違います。科学の目で見るとナンセンスそのものですから。

1973年のノーベル物理学賞を江崎玲於奈氏と共同受賞したアイヴァー・ジエーバー博士も、温暖化の「脅威派」から「懐疑派」に転向した大物のひとりだ。

・ガイア博士

地球の環境を「地圈・水圏・気圏と生物界が働き合う生命体」とみなす「ガイア仮説」は、英国出身の化学者ジェームズ・ラブロック博士が1960年代に唱えた(ガイアはギリシャ神話に登場する地母神)。彼は、1980年代の末に始まった地球温暖化ホラー話をまず額面どおりに受け入れ、2006年1月(88歳)の時点でもこんなことをいっていた(『インディペンデント』紙への寄稿)。

地球温暖化が進むと、2040年までに60億人以上が洪水や干ばつ、飢饉で命を落とすだろう。2100年までには世界人口の80%が死に、この気候変動は今後10万年ほどつづくに違いない。

だが2010年ごろにラブロックは目覚めたらしく、2016年9月30日の『ガーディアン』紙に彼のこういう発言が載っている。

地球の気候は複雑すぎます。5年先や10年先のことを予測しようとする人は馬鹿ですね。・・・私も少しは成長しました。・・・温暖化対策を含めた環境運動は、新興宗教としか思えません。なにせ非科学のきわみですから。

今世紀中期でも化石資源が世界を支える

日本の政府も企業も庶民も、景気浮揚や収益・所得増を望み、メディアは温暖化問題を盛大に報じる。どれもエネルギー消費(の排出)を増やす話である。

IT化やAI化も同類。10年近く前から増殖したスマホだけで中型火力1基分の電力を食い、国の排出を増やしてきた。そんななかCO2排減を唱える政治家や識者やメディア人は、二重人格者か偽善者なのだろう。

今世紀の中期でも世界エネルギー消費の80%は化石資源が担う──と2016年に米国エネルギー情報局(EIA)が予測している。それを知りつつ「2050年までに、排出ゼロ」などと叫ぶ人々は、いくら自身が退職ないし他界後の話だとはいえ、無責任きわまりないと思う。


・再エネ固定価格と設備無料使用廃止で日本の再エネはようやく「再生」する

2020年01月04日

http://www.thutmosev.com/archives/81888984.html

※ばかなエコロジー発電

2011年の原発事故をきっかけに始まった再生可能エネルギー買い取り制度は、制度廃止に向けて動き出している。

経産省は再エネ事業者の負担を増やし報酬を減らしており、今後申請予定の事業者の多くは取りやめる可能性がある。

こうなった原因は菅直人政権下で40円という法外な買取価格を設定した事にあり、制度を存続できなくなった。

2011年頃に参入したソフトバンク等は実際の発電に要するコストの2倍もの値段で買い取ってもらい、しかも20年間保証される。

電力会社は再エネ買取で損失を受けるが、割高な買取価格は再エネ賦課金として全額を電力利用者に請求しれている。

再エネ賦課金は今までの合計が約2.4兆円、2020年は各家庭で年平均1万円ほどを負担する事になっている。

再エネ発電が増えれば賦課金は増え続け、20年間価格固定なので競争原理やコスト削減は一切行われない。

例えば東北電力は約3000億円で洋上風力発電を建設し、今後全国で15兆円もの洋上風力が建設される計画がある。

ところが洋上風力発電は地上の風車と比較して、土地価格を除いて10倍ものコストがかかる。

確かに土地を買わなくて済むが海上に風車を並べて維持管理する費用は半端ではない。

福島県沖で洋上風力1基建設するのに100億円かかり、しかも台風で破損して発電できずに撤去されている。

太陽光発電のコストが20円程度なのに洋上風力は40円超、軌道に乗れば20円に下がるかも知れないなどと言っている。

地球を守る悪の事業者

洋上風力は国の補助金で建設され、失敗しても金を払うのは国つまり納税者で事業者は儲かる。

実際福島沖の洋上発電1基は1日も発電できず撤去されたが、メーカーや事業者は逃げ出して国が費用を支払った。

こんな事が再生可能エネルギーの実態で、太陽光発電も環境破壊や災害を各地で引き起こしている。

台風のたびに太陽光パネルが吹き飛んで近隣住宅に被害を与え、豪雨のたびに土砂崩れの原因になっている。

各地の豪雨ではメガソーラーを設置するために森林伐採し斜面を削った結果、メガソーラーが土砂崩れを引き起こした。

メガソーラーを設置するため河川の堤防を削り、そこから決壊して大洪水を引き起こした例もあった。

災害でソーラーパネルが吹き飛んで隣りの家を破壊しても、法律上ソーラー事業者は撤去費用すら払わなくて良い。(民事裁判で賠償を命じられる可能性はある)

こうしてやりたい放題の再エネ事業者は日本中の森林を破壊し土砂崩れを起こしながら、「地球環境を守る活動をしています」と言っている。

再エネ事業者は大手電力会社に電気を売って送電しているが、送電や配電などの設備一切を大手電力が負担している。

大手電力会社が保有する送電網を、日本中で再エネ買取や送電可能にするにはGDPと同じ500兆円必要という試算もある。

つまり再エネ事業者は数百兆円分もの設備を無料で使ったうえ、2倍の価格で大手電力から買い取らせていた。

こんな事が通用する筈がなく、日本では高すぎる再エネコストが原因で電力会社が買取拒否し、経産省は買い取り制度廃止に動いた。

再エネ買取り廃止

経産省は現在の「固定価格買い取り」を廃止して最も安い価格で買い取る「入札制度」への変更を計画している。

現在化石発電が13円程度、原発は補償金や事故対策込みで13円程度なので、再エネ価格も市場原理でその辺に落ち着くでしょう。

環境への負荷という点では最も評判が悪い原子力が最もよく、CO2などを大気中にほとんど放出しない。

代わりに事故を起こすと放射能を放出するが、皮肉にもチェルノブイリや福島原発周辺は動物の楽園になっている。

動物や植物にとっては原発の放射能で受ける被害よりも、周辺に人間が住まなくなる事で栄えています。

経済産業省は再エネの送電線や配電線の費用を大手電力消費者が負担しているのは問題だとして、再エネ事業者に負担させることにした。

当たり前の事なのだが負担額は10年間で1兆円にもなるというので再エネ事業者は猛反発している。

逆に考えれば大手電力消費者は欲しくもない太陽発電の設備費を年間1000億円も負担している。

経産省の再エネ優遇措置廃止によって「日本の再生可能エネルギーは後退する」とエコロジー論者は主張している。

実際には逆に経産省や政府が優遇しすぎたため、固定価格買い取り制限し、それ以上買い取れない状況になっている。

欧米の多くの国は入札制度で日本より買取価格が低いので、再エネ発電量が増えている。

原発や火力なら10円で発電できるのに、太陽光を40円で買い取ってしまったのでコスト高でそれ以上買い取れないのです。

固定価格買取廃止、設備の無料使用も廃止にし火力や原子力と同条件1KW10円程度で発電出来たら、太陽光は火力や原発に変わり得るでしょう。

無理やり高く買い取っても、自然破壊や災害を引き起こしたうえ、日本経済を停滞させるだけです。


・温暖化対策税の引き上げに意欲 首相「どんどん増やす」(共同通信 2021年2月5日)
 
※菅義偉首相は5日の衆院予算委で、化石燃料の利用に課税する地球温暖化対策税について「(温室効果ガス排出削減を)徹底するためには数千億円ではなく、これからどんどん増やしていかないといけないのは事実だ」と述べ、税率引き上げに意欲を示した。

地球温暖化対策税は12年に導入されたが、税率は他国と比べて低い。このため排出抑制効果は不十分だとの指摘がある。

菅首相は昨年10月、50年までに国内の温室ガス排出を実質ゼロにする目標を掲げたのに続き、12月にはCO2排出に価格を付ける制度「カーボンプライシング」の導入について、連携して議論するよう環境省と経産省に指示した。


・日本政府の脱炭素は失敗する、洋上風力に経済性なし

http://www.thutmosev.com/archives/85246576.html



これに風速100メートルの風と10メートルの高波を当てたらどうなるか

※脱炭素の切り札は官僚の妄想

日本政府は脱炭素社会の実現に向けてロードマップを作成し、ヒアリングをスタートさせると説明している。

これに先立つ2020年10月には就任したばかりの菅首相が、2050年にco2排出ゼロのゼロ宣言を行っていました。

日本政府が脱炭素実現の確信を持ったのは、報道によると洋上風力発電実現の見通しが立ったからだと言われている。

洋上風力で経済的に成功した例はないが、技術自体は完成されていて海に囲まれたイギリスでは大規模建設が始まっています。

イギリス洋上風力の発電コスト目標は100ポンド/MWh(約1万4900円/MWh)つまり1キロワット時あたり約15円になる。

これを達成できたとして世界の陸上風力発電は7円/kwh、太陽光は9円/kwh(日本の資源エネルギー庁)なので陸上施設より高くなる。

一般的な原発は事故処理コストを見込まないと5円から7円/kwh、定期的に福島原発レベルの事故が起きても10円/kwh以内とされている。

洋上風力発電はカミカゼに勝てるか

キロワット15円で洋上風力をつくり、日本の海を取り巻けばco2ゼロにできるというのが日本のゼロ宣言の中身です。

ところが現実には日本で洋上風力の成功例はまだ一基もなく、福島沖の実験では600億円かけて1ワットも発電せず廃棄されました。

佐賀県唐津市の発電施設は建設中に強風と荒波で水没し、福島沖の発電施設も同様の理由で失敗している。

日本は秋になると必ず台風が襲来、蒙古軍も撃退した「神風」が吹き荒れるが、こんなのは欧米にはありません。

台風直撃に耐えられる洋上風車を設置するには台船を大型にするか、地面にしっかり固定し風車を小さくする必要があります。

建設費と維持費はイギリスの数倍になり、発電量は半分程度になるのが容易に予想できます。

イギリスが15円/kwhで発電できるとしても、日本は30円/kwhはかかり技術的進歩があっても20円/kwh以下にはなりません。

高コストで悪名高い日本の太陽光発電買取価格は14円/kwh以下で、将来は8円/kwh以下まで下がるとされています。

陸上ソーラーには土地の価格が含まれるが、洋上では台風に耐えられる強固な施設が必要になります。

風速100メートルの風や10メートルもの荒波に数十年間耐えられるようにするには、一基が非常に高額になります。

そんなのを数万基も建設するくらいなら、原発1基ポンと作れば100万キロワット発電可能です。

福島原発が爆発したのは技術的に未熟だったのと、津波を想定しなかったこと、加えて菅直人と民主党が現場を妨害したからでした。

最初から津波や大地震を想定して建設すれば、安全な原発は建設可能です。

結局日本は10年くらい洋上風力を試すが、「やっぱりダメだった」と言う羽目になるでしょう。



・ドイツ「風車大増設計画」の危うすぎる中身…ハーベック経済・気候保護相はどんな風景を夢見ているのか(現代ビジネス 2023年6月2日)

※経費は国民が電気代で負担

5月23日、ロベルト・ハーベック経済・気候保護相(緑の党)が「陸上風力戦略」なるものを発表した。

ドイツでは、風力は再エネの中では比較的頼りになる電源として、政府の期待を一身に背負っており、すでに陸海合わせて3万本近い風車が立っている。しかし、実は、風車の新設は、2017年のピークを境に年々減っていた。

そこでハーベック氏は、新政府の経済担当の大臣に就任してまもない22年初頭、風車建設のピッチを上げることを宣言。今回の新目標はそのダメ押しのようで、陸上風力の設備容量を30年に115GWに、35年には160GWに増やすという。現在の風力発電の設備容量は58GW弱なので、今年から毎年10GW近くの新設が必要になる。
ハーベック氏は、昨年の新設が一昨年に比べて2割増の2.1GWだったこと、また、今年の第1四半期の建設認可数が前年比6割増だったことなどを挙げ、すでに成功の兆候が出ていると楽観的だ。

ただ、大手経済紙である『ハンデルスブラット』によれば、設備容量を年間で10GWずつ増やすためには、今年より7年間、毎日5.8基の風車を建設しなければならず、どう見ても不可能であるとのこと。

設備容量というのは、適度な強さの風が吹き(強過ぎても弱過ぎてもダメ)、風車が100%の能力を発揮した時の1時間当たりの出力なので、実際の発電量とは異なる。現在、実際の発電量は、年間で平均すると、設備容量の2割に過ぎない。風車は止まっているのが常態だといわれる所以だ。

つまりドイツでは、風車が3万本近く立っている現在でも、全発電量における風力電気の割合は9%ほど。というか、風車はたとえ10万本あっても、そもそも風がなければ発電はゼロだ。

しかし、その反対に、全国的に適度な風が吹いた場合には、3万本近い風車が突然、能力をフルに発揮するため、何十基もの原発にスイッチが入ったような状態になる。その場合、送電線を保護するため、過剰な電気は急遽、どこかに流さなければならない。

そこで、安価で、時にはマイナス価格で外国に出すことになるが、それでも捌けない場合は、発電事業者に補償を払って風車を止めてもらう。どちらの経費も最終的に国民が電気代で負担する。


風が吹いても止んでも電気代は上がる

直近の例をあげる。5月28日、29日は日曜日と祝日で、全国的に快晴。風は弱かった。問題は太陽光だ。工場が動いていなかったにもかかわらず、220万枚の太陽光パネルがフル稼働したので、両日とも正午には、太陽光電気が需要のほぼ8割を占めた。

ドイツでは法律で、再エネは優先的に買い取ることが決まっているので、そうなると、石炭・褐炭火力はすべてトロ火運転を強いられ、コストだけが嵩む。しかし、日が翳ったら瞬時に立ち上げなければならないので、止めてしまうわけにはいかない。

その結果、正午の電気の市場値段は、日曜日は1MWh当たりマイナス130ユーロ、月曜はマイナス109ユーロという負の値段になった。

不幸中の幸いは、両日ともそれほど風が吹かったなかったこと(29日の正午の風力電気はたったの4GW)。しかし、これから夏になれば、太陽が照って風が吹くという日が増えることは間違いない。

つまり、どう考えても、これ以上風車を増やすと、風が吹いても止まっても、今でさえ困難な電力の調整がさらに困難になり、電気代も上がる。しかし、その問題をどう解決するつもりなのかを、ハーベック氏の口からは一度も聞いたことがない。それどころか、「陸上風力がエネルギー供給の鍵」だというから、そんな問題などまるで世の中に存在しないかのようだ。

現在、氏は各州に、面積の2%を風車の建設に充てるようにと強く要請し、また、認可の簡素化も指導している。さらに法律も改正し、これまで住民が起こしていた建設反対の訴訟も素早く片付けるつもりだ。風車の建設はこうした政治の強い意志によって、強力に進められていく。

ただ、風車の建設に残された今後のハードルは、やはり立地だ。これまで、一番たくさん風車が建てられたのは17年で、年間6GW弱の新設を記録した。当然のことながら、風車は、一番風域が良く、建設しやすい場所から立てられていったので、問題は、今後、どこに立てるかだ。

風車は出力が大きくなるにつれ、どんどん巨大化している。今や支柱は100m、一枚の羽の長さが60m以上というものも珍しくない。


風車の建設が滞っている原因

現在、立地に関する規制はどんどん緩和されてはいるものの、それでも集落のすぐ横に、そんな巨大な物を立てることはできない。しかし、人里離れたところに建設するとなると、風車の部品をそこまで運ぶのが一苦労だ。

支柱の方はいくつかに分けるが、60mの羽はそのまま運ぶ。超重量貨物なので、夜中に一般道路やアウトーバーンを封鎖して、巨大な特殊車両でゆるりゆるりと運搬する。しかも、運ぶ物はその他にもたくさんある。風車を設置するための超重量級のクレーン、風車の基礎部分の工事のための多量のセメントやその他の重機等々。

最近は、風車が山の上の方や、森の中に立っているのを見かけるが、そういうケースでは、現場までの道路や橋を一から作ることもあるという。いずれにせよ、風車一本立てるのに、特殊輸送車が少なくとも10回は往復する。その車両のお値段が750万ユーロ(約10億円)というから、輸送コストも推して知るべしだ。

なお、これらの輸送には当局の許可が必要なのだが、ドイツのお役所仕事は悪名が高い。許可に時間がかかり、輸送の期日に間に合わず、運送会社が施工主にペナルティを請求されるという事件が、ここ数年、しばしば起こったという。

そのため、リスクを嫌った多くの運送会社が引いてしまい、それも、風車の建設が滞った原因の一つとなった。そこで、ここでもハーベック氏が介入し、今年は風車の建設が増える見込みだ。

ただ、投資額が大きいだけに、投資家にしてみれば、いったいそれに見合う利益が得られるのかどうかという問題がつきまとう。

風況が良いのはドイツの北部で、特に海沿いは安定している。当然、風車が急増しているのが、北海に面したニーダーザクセン州と、バルト海に面したシュレスヴィヒ=ホルシュタイン州。海沿いではないが、ノートライン=ヴェストファーレン州も結構多い。いずれも平地で、輸送が比較的容易という共通点があるし、港からも近く、水利が良い。ノートライン=ヴェストファーレン州にはライン川が流れる。

それに比して、裕福な南ドイツの2州、バーデン=ヴュルテンベルク州とバイエルン州では投資が進まない。決定的な原因は、内陸で風が弱いことだが、風車が本当に環境のために役立つのかどうかという懐疑的な声もかなり高い。

バイエルン州は保守のCSU(キリスト教社会同盟)が州政権を握っているが、彼らは風車による景観の乱れをひどく嫌っている。だからかどうか、余計に認可が滞り、建設が遅れる。22年、バイエルン州で造られた風車はたったの14基だったから、緑の党にしてみれば、まさにスキャンダルのレベルだ。


緑の党の目的は「CO2削減」ではなかった

ただ、風車をどんどん増やせば心置きなく火力を停止できて、緑の党の思い描いているような再エネ100%の理想社会に近づけるのかというと、そうはいかない。一番のネックは、当たり前のことだが、風を人間がコントロールできないこと。

直近では21年、風が非常に弱く、折りしもドイツは、原発、石炭、褐炭による発電を軒並み減らしていた最中だったので、必然的にガスに需要が集中した。その後のウクライナ戦争で、ガスの逼迫、および高騰が顕著になったが、実は、それらはもっと前から始まっていたのだ。かといって、将来の有望な電源と目される水素は、掛け声だけは勇ましいが、まだ商業ベースには程遠い。

そこで、ハーベック氏の「陸上風力戦略」なるものが出てきたわけだが、何のことはない、風のない時は褐炭や石炭を焚き増すのだから、今や、ドイツはポーランドと並んで、EUで一番CO2排出の多い国になってしまった。しかも、ポーランドは現在、原発の建設に前向きなので、そのうち、ドイツだけが置いてきぼりになる可能性は高い。

原発を再エネで代替することが無理だというのは、皆がわかっていたことだ。だから今、化石燃料で代替しているのだが、これでCO2が増えることも、もちろん皆がわかっていた。

CO2の削減が目的なら、先に石炭から止めていき、原発と再エネで釣り合いを取りつつ、本当に原発を代替できるクリーンな電源や技術を、時間をかけて開発していくべきだった。結論として、緑の党の目的は、CO2の削減ではなかったということだ。

しかし、今さら何を言っても遅い。緑の党がエネルギー政策を仕切っている限り、電気代は高止まりで、電気の供給は綱渡りが続く。

現在、そんな不利な条件に見切りをつけ、すでに多くの企業が中国や米国に脱出し始めているが、それに対して政府がとる対策は、産業用の電気代を下げるための補助金ぐらいで、抜本的な改革は行われないだろう。

バルカン半島南西部の小国アルバニアは、冷戦時代は共産主義国で、極貧の中で孤立していた。

当時、独裁者ホッジャは、他国から攻撃を受けるという強迫観念に捉われており、国中に75万基もの掩蔽壕(コンクリート製の地上の小型防空壕で、かまくらのような丸形のものが多い)を造らせた。

以前、アルバニアに行った時、そこかしこにあるその残骸を見て、異常さに驚いたが、ドイツの風車も、いつかそうなってしまう気がする。風車が取り壊された後も、おそらく巨大コンクリートの基礎だけが数万個、放置されるだろう。

いったいハーベック氏は、どんなドイツの風景を夢見ているのだろう。



・ドイツ経済・気候保護省スキャンダルで注目される「環境ロビーネットワーク」の闇の実態(現代ビジネス 2023年5月19日)

川口 マーン 惠美

※目に余る縁故採用の実態

ドイツで人気絶頂だったロベルト・ハーベック経済・気候保護相(緑の党)の人気が、真っ逆さまに墜落している。長らく政治家の人気ランキングでは1位だったのに、5月初めには13位。

5月17日、ようやく自分の右腕だったパトリック・グライヒェン事務次官(51歳)を更迭したが、これもいささか遅すぎた。グライヒェン氏というのは、今回、経済・気候保護省を襲っているスキャンダルの“主役”である。

日本ではまだあまり報道されていないが、ここ数週間、このグライヒェン氏の目に余る縁故採用の実態が大問題となっている。

たとえば、経済・気候保護省の管轄下にある連邦エネルギー庁の長官に彼が推薦したのが、自分の結婚の時の証人であるミヒャエル・シェーファー氏。それも、この重要な人事は公募ではなく、最終的に候補者はシェーファー氏一人だけで、しかもグライヒェン氏が選考に加わったという。

結婚の証人というのは、普通、無二の親友、あるいは兄弟姉妹といった一番身近で信頼している人間であるから、誰が見ても、これは真っ当な人事ではなかった。

しかし、これがまもなくさらに大スキャンダルに発展していったのは、他にもおかしな縁故人事がたくさん報道され始めたからだ。

やはり経済・気候保護省の事務次官の一人であるミヒァエル・ケルナー氏は、グライヒェン氏の妹の夫で、しかも、妹、ヴェレーナ・グライヒェン氏自身は、BUNDという環境NGOの最高幹部の一人だった。

BUNDはベルリンに本部を持つ会員58万人の巨大な環境NGOで、2014年から19年の6年間に公金から受けた補助金の総額は2100万ユーロ(現在のレートで約29.4億円)に上る。

また、グライヒェン氏の兄弟のヤコブ・グライヒェン氏は、エコ研究所の幹部。こちらはフライブルクに本部を持つ強力な環境シンクタンクで、環境省に政策提言をしている。


メディアは全て知っていたはずなのに

これらの事実が問題視され、5月10日には、ハーベック氏とグライヒェン氏が国会議員による質疑に応じた。

しかし、これらはまだグレーゾーンではあっても、違法ではないということで、ハーベック氏は「過ちは修正すれば良い」として、あくまでもグライヒェン氏を庇い続けた。

ところが、とうとう庇いきれなくなったのは、昨年の11月、グライヒェン氏が、助成金を与えるに妥当であると推奨したプロジェクトのうちの一つが、彼の妹が総裁を務めるBUNDのベルリン支部が提出したものだったからだ。

申請額は60万ユーロ(約8400万円)。本来ならば、身内の関わっているこのプロジェクトの承認に、グライヒェンは関わってはならず、これが省の汚職を防ぐための規律に引っかかったらしい。

そこで、冒頭に記したように、17日、保ちきれなくなったハーベック氏が急遽、記者会見を開き、グライヒェン氏の早期退職を発表した(51歳の氏は、今後、毎月15000ユーロ=約210万円という潤沢な年金、プラス、自分の意思の退職でなかった場合の給付金を3年間受けられるそうだ)。

メディアはというと、今、初めて知ったような報道の仕方だが、そんなはずはない。

たとえば21年4月末、ディ・ヴェルト紙は、「過小化されるグリーン・ロビーの権力」として、環境NGO、シンクタンク、政治家、官僚の密接なネットワークや、NGOに対する資金の出所について詳しい論文を載せていたし、今年になってからは、独立系のメディアであるTichys Einblickが、さらに詳しく報道していた。

そもそも、21年9月上梓の「SDGsの不都合な真実」(12人の共著・宝島社)では、私もそれをテーマとして取り上げたぐらいだから、主要メディアは、環境という名の下で何が、いつから進行していたのかは、すべて知っていたはずだ。

それなのに、ニュースで記者たちが、「ハーベック氏はもっと以前に知っていたのではないか」などとしたり顔で言っているのを見ると、私としては、「あなたたちこそ知っていたでしょうに」と言いたくなる。


「アゴラ・エネルギー転換」の闇

ドイツの主要メディアには緑の党のシンパが非常に多いと言われる。だから、これまでほとんどのメディアは、緑の党、および社民党が主導する過激で、時には無意味な環境政策も、抜本的に検証するような記事は書かなかった。

そんな彼らが今、一番、気にしているのは、このスキャンダルのとばっちりが、環境シンクタンク「アゴラ・エネルギー転換」に行くかどうかということだろう。

現在のNGOは、巨悪に立ち向かう弱小な組織などではなく、世界的ネットワークを持ち、政治の中枢に浸透し、巨大な権力と潤沢な資金で政治を動かしている強大な組織だ。そして、ドイツでその中枢にいるのが、“アゴラ・エネルギー転換”である。

“アゴラ・エネルギー転換”は、2012年の創立の時から、当時の経済・エネルギー省と密接な関係を持っており、人材の行き来も盛んだった。シンクタンクというよりも、まさに巨大なロビー組織だ。

問題のグライヒェン氏も、経済・気候保護省に抜擢される前は、“アゴラ・エネルギー転換”の局長だった。

今では、アゴラは、“アゴラ・交通転換”、“アゴラ・農業”、“アゴラ・インダストリー”、“アゴラ・デジタル・トランスフォーメーション”と、全ての部門でCO2削減を掲げつつ、政策を牛耳っている。

35年からのガソリン車・ディーゼル車の販売禁止も、今後、農地が縮小されることも、もちろん、風車が倍増されることも、こういうロビー組織の活動の賜物だ。


掌を返すメディアの露骨な印象操作

それにしてもすごいのは、今や、経済・気候保護省、外務省、環境省、農林省などが全て緑の党の手に落ち、その政策を進言している組織が、やはり緑の党の支配するロビー団体となってしまっているという事実だ。

しかも、政府はそれらに助成金を出しており、いわば、持ちつ持たれつの関係でもある。

つまり、ハーベック氏がアゴラ・エネルギー転換を潰したくないのは当然のことで、そのためには、メディアの力が必要になってくるのだろうが、ただ、私の目には、メディアはハーベック氏をどう料理するか、まだ思案中といった感じに見える。

国民の間では、ハーベック自身も引責辞任をするべきだという声が結構高くなっており、メディアの判断でハーベック氏の梯子を外し、その代わりにアゴラ・エネルギー転換を助けるということも、あり得るだろう。

あるいは、この問題をグライヒェン問題として収束させ、ハーベックとアゴラ・エネルギー転換の両方を助けるということも考えられる。しかし、メディアが、これまでの環境政策を根本的に見直すことだけは、おそらくないと思う。

興味深いのは、今、これまでどのメディアでも常に好感度満点だったハーベック氏の写真が、突然、悪党ヅラの写真ばかりになっていること。まさに印象操作で、これにはメディアの質の低下を感じる。あたかもメディアが政治家に、自分たちの権力を誇示しているかのようだ。


ヒートポンプ式暖房を巡る謎の法案

なお、人気絶頂だったハーベック氏が急に落ち目になっている背景には、実は、もう一つ、大きな理由がある。ハーベック氏が夏までに強引に通そうとしている法案(建造物エネルギー法)、通称「暖房法案」のせいだ。

これは、来年2024年よりガスと灯油の暖房器具の販売を禁止し、徐々に電気のヒートポンプ式の暖房に切り替えることを国民に強制する法律で、従わない場合は年間5000ユーロ(約70万円)の罰金という項目まで入っているというので、ドイツ国民は驚愕した。

ヒートポンプは日本のエアコンに使われている技術で、最近は給湯器や床暖房にも普及している。ただ、ドイツの家庭の暖房設備は家全体を暖める大掛かりなもののため、これをヒートポンプでやろうとすると、床暖房となるらしい。

ヒートポンプはまだ、ドイツでは普及しておらず、そうでなくても高価な上、床暖房となると当然、床を剥がすため、工事費が膨大だ。ようやく家のローンを払い終えて年金生活に入った人たちが、高価な暖房設備を購入し、大規模リフォームをするなど非現実的だし、年金生活者でなくても負担が大きすぎて、最悪の場合、家を手放さなければならなくなるかもしれない。

また、家主にとってもすごい出費で、それが家賃に反映されれば借家人も困窮する。

将来、暖房がだんだん電化されていくことはわかる。しかし、なぜ、今、国民に多大な負担をかけてまで、これほど急激にヒートポンプに取り替えなければならないのかの説明が全くない。全て惑星を救うためと言われても、国民の財力には限度がある。

しかも、まだ、電気を作るのに石炭やガスを燃やしているのだから、CO2の削減にも役立たない。それどころか、これは、政府による自由市場への介入であり、ひいては国民の自由の制限である。そして興味深いことに、この法案の生みの親もやはりグライヒェン氏だ。


都合が悪いと犠牲者ぶる悪い癖

現在、国民の信頼を急激に失いつつあるハーベック氏だが、グライヒェン氏を更迭した後、「ネット上で極右勢力がこの件に関してフェイクニュースを拡散しているのは許し難い」と言っていた。都合が悪いと犠牲者ぶるのは緑の党の悪い癖だ。

彼を批判する者は「極右」にされてしまうらしいが、もちろん今、野党CDUも緑の党の批判には余念がない。

さて、今後、本当に追求されるべきは、環境政策に託けた大掛かりなネットワークの実態だ。

それにしても、多くのNGOやシンクタンクが、すでに緑の党系の人材に占められてしまっていること、そして、莫大な資金援助が、ほとんどアメリカから流れ込んでいることなどは、もっと追求して然るべきだ。

また、今、行われている環境政策について、真に中立な立場から、もう一度検証し直してほしい。

なお、報道に関しては、主要メディアはあまりあてにならないが、是非ともその他の独立系のメディアに期待したい。