・朴槿恵を笑えない安倍首相の側近政治! 原発推進もTPPも一億総活躍も70年談話も裏にひとりの人物の入れ知恵が(LITERA 2016年11月12日)

※朴槿恵大統領の親友・崔順実(チェ・スンシル)容疑者による国政介入事件は、収拾のつかない事態となっている。安鍾範(アン・ジョンボム)・前大統領府政策調整首席秘書官やチョン・ホソン元付属秘書官など、朴大統領の側近秘書官たちが逮捕された後も、新たな疑惑が次々と噴出。朴政権は完全に機能停止に陥っている。

この事件が韓国に激震をもたらしているのはもちろんだが、韓国と同じくらい大騒ぎしているのが日本のメディアだ。ワイドショーは連日トップ扱いで、朴大統領がいかに崔容疑者に操られていたか、崔容疑者にどんな人脈が連なっていたかを大きく報じ、コメンテーターたちは「日本ではあり得ない事件」「日本より遅れた二流国家だから」「まるで韓流ドラマのよう」などと発言をしている。

しかし、韓国で起こっていることは本当に「日本ではあり得ない」ことなのか。実は、日本の総理大臣・安倍晋三についてもかなり前から、ある人物に「操られている」という指摘がなされてきた。

その人物とは、本サイトでもたびたび報じてきた総理首席秘書官の今井尚哉氏。今井秘書官は経済産業省出身の元官僚で、第一次安倍政権で内閣秘書官を務めて以降、安倍首相と急接近。第二次安倍政権で、5人の秘書官を統括する首席秘書官をつとめているのだが、永田町ではいまや“影の総理大臣”とまでいわれるくらい、大きな力をもっているのだという。

「今井さんは安倍首相の行動日程やスピーチ原稿をすべて仕切っているのはもちろん、政策決定プロセスにも大きく関わっている。安倍首相がメリットも実現性もないTPPに前のめりになったのも、原発再稼働にやたら熱心なのも、今井秘書官の入れ知恵が大きい。安倍首相は何かを決めるとき『今井ちゃんがこう言ってたから』というのが口癖で、経済や外交の重要政策は今井氏に必ず相談して、ほとんど今井氏の言う通りにしている。細い詰めも全部今井さん任せ。その仕事の任せ方は全権委任に近く、その影響力は盟友と言われる菅義偉官房長官や麻生太郎財務相よりもはるかに大きい」(政治評論家)

実は、今井氏の側近政治については、過去に月刊誌や週刊誌で何度も記事になっている。

たとえば、「文藝春秋」(文藝春秋)2015年12月号は「首相を振りつける豪腕秘書官研究」(森功)と題するルポで、これまでの安倍政権の重要政策に、いかに今井秘書官が深く関わってきたかを官邸関係者の証言をもとにつまびらかにしている。

その代表が、アベノミクスの三本の矢だ。同記事で官邸関係者がこう証言している。

「前の三本の矢もエール大学の浜田宏一名誉教授の金融緩和や京大の藤井聡教授の国土強靭化計画を取り入れ、実際の政策に落とし込んだのは今井さんでした。総理に対し、『一年後はこうなって、五年後には、こうなる』とプレゼンをすると、『さすが今井ちゃん、なんて頭がいいんだ』となる」

また、安倍政権は安保法制を強行採決した直後、これからは経済に重点をおくとして「新アベノミクス」「一億総活躍社会」をぶちあげたが、これも今井秘書官の発案で「今井さんは経産省の素案を受け取ってから事実上、 一〜二日で新アベノミクスを仕上げました」との証言が同誌に掲載されている。しかも、このとき、今井秘書官は「今度のアベノミクスは、安保から国民の目をそらすことが大事なんです」とうそぶいたという。

どうも、この首相側近は単純な政策提言だけではなく、政局運営や世論誘導まで仕切っているらしいのだ。実際、14年11月の消費増税先送りを名目にした電撃的な衆院解散も今井秘書官がシナリオを書いたものだ。「文藝春秋」にはこの舞台裏に関する証言も掲載されている。

「総理の外遊に同行していた今井さんは十月初め、ASEAN会場のミャンマーから一人抜けて帰国し、現財務次官の田中一穂さんに消費増税先送りの直談判をしています。(略)その報告を受けた総理は、豪州からの帰りの飛行機で今井さんをそばに置き、麻生太郎財務大臣を説得した。そうして今井さんの描いたスケジュールに沿って解散を決めたそうです」

今井秘書官は外交にも深く関与し、2015年夏の「戦後70年談話」も手がけている。周知のように、70年談話は、表向き謝罪の姿勢の継続を示しながら、「子や孫、先の世代に謝罪を続ける宿命を負わせてはならない」とする詐術的なものだったが、これも「文藝春秋」によれば、〈「二十一世紀構想懇談会」の報告書を下敷きにし、事実上、今井が談話の原稿をとりまとめている。ドイツサミット後の六月から、原稿作成に着手し、安倍と直接やり取りをしながら、三度ほど書き直した〉ものだったという。

ちなみに、この談話のあと、中国から大きな反発がなかったことがわかると、今井秘書官は「あの談話はあらかじめ中国の反応を探っていたから、とうぜんだ」と鼻を膨らませたという逸話もある。

まさに、影の総理という評判がぴったりの驚くべき暗躍ぶりだが、しかし、今井秘書官による側近政治を指摘しているのは「文藝春秋」だけではない。複数の週刊誌が同様の問題点を指摘している上、今井秘書官が安倍首相を囲い込んで、コントロールしている実態まで明らかにしている。

「総理に会おうと思って、日程を管理している今井さんに連絡を取ろうにも、秘書官室にはいないし、携帯電話にも出ない。話が出来ても、『どうしても総理じゃないとダメですか?』と、こう来る。会う会わないは総理が決めることなのに、今井さんの判断で止められてしまうんです」(「週刊新潮」(新潮社)2014年4月3日号より 自民党関係者のコメント)

「総理の日程調整を今井氏が一手に引き受けているから、どうしてもみんな遠慮してしまう。国対委員長の佐藤勉氏でさえ総理への面会を断られ、『おいおい何様だよ』とこぼしていた。」(「フライデー」(講談社)2016年6月13日号より 自民党職員のコメント)

囲い込みだけではない。首相の諮問機関や官邸主導のプロジェクトにも、今井秘書官は自分の人脈をどんどん投入している。たとえば、その典型が今井秘書官の叔父である今井敬・元経団連会長だ。敬氏は11月からスタートした天皇退位問題を議論する有識者会議の座長を務めているが、皇室問題の専門家でもない今井元会長が抜擢されたのは、もちろん、甥の今井秘書官の推薦だった。

「最近も、今井秘書官の安倍首相への影響力はどんどん強まっています。今年5月、消費増税再延期を正当化するために、伊勢志摩サミットで、「世界経済の状況がリーマンショック前に似ている」とした資料を各国首脳に配布しましたが、今井氏の指揮のもと作成したものでした」(全国紙官邸担当記者)

こうやってみると、秘書官か民間人かという違いだけで、特定の人物が政権を操り、政策を牛耳っている状況は、韓国とほとんど変わりがないように思えてくるではないか。

そういえば、朴大統領と崔容疑者の親密関係は、朴大統領の父親である朴正煕(パク・チョンヒ)大統領と崔容疑者の父親との側近関係から始まったと報道されているが、安倍首相と今井秘書官の関係も安倍首相の祖父、岸信介元首相にルーツがあるのだ。岸元首相は戦前、経産省・通産省の前身である商工省で大臣を務めていたのは知られているが、その部下が今井氏のもうひとりの叔父で、ドラマ化もされた作家・城山三郎の『官僚たちの夏』(新潮社)のモデルとなった今井善衛・元通産事務次官だった。また、昭恵夫人を通じて両者は縁戚にも当たるという。

かつて権力者だった血縁者から引き継いだ人脈、という意味でも、今井秘書官と崔容疑者はそっくりなのだ。

もっとも、こうした指摘をすると、おそらく安倍応援団から「財団をつくらせて私物化していた民間人の崔容疑者と首相秘書官として国益のために働いている今井秘書官をいっしょにするな」という反論が返ってくるだろう。

たしかに、今井秘書官は首相の手足となって働く公的な役職にあり、今の所、財団などを設立させていたという形跡もない。しかし、選挙で選ばれたわけでもないただの秘書官がここまで、政策をコントロールしているというのは危険極まりないだろう。しかも、今井秘書官の動きを検証してみると、国益のためなどではなく、自分の関係する団体の利益のためではないかと疑いたくなるものが多々あるのだ。

そのひとつが、原発推進だ。もともと、今井氏は経産省で産業政策・エネルギー畑を歩んでおり、原発輸出政策の立案をした中心人物だった。そして、2011年、福島原発事故が起きた後も、資源エネルギー庁次長として民主党政権や再稼働に反対する橋下徹大阪府知事(当時)などを直接説得、「原発ゼロ政策」を撤回させている。

そして、第二次安倍政権が誕生すると、安倍首相を動かして、強硬な原発再稼働を推し進め、トルコやインドなどへの原発売り込みをさせていったのだ。

「ようするに、今井さんはもともと経産省の原発ムラに属し、電力会社や原子力産業とべったりの関係にあったんです。その意向を反映した政策を安倍政権で次々と実現させている。もともと安倍政権に接近したのも、経産省と原子力ムラが送り込んだのではないかといわれているほどです」(経産省関係者)

もうひとつ、今井秘書官の大きな問題は、先日、強行採決されたTPPへの関与だ。このTPPについては、以前、安倍首相が反対を表明していたにもかかわらず、政権に返り咲いた途端、賛成に転換し、明らかに日本に不利な、農業がガタガタになるのは必至の条件を丸呑みして大筋合意。しかも、米大統領選で先行きが不透明になった後も、姿勢を変えず、先日の大統領選でTPP反対のトランプ当選後に衆院で強行採決をし、世界中に恥さらす結果となった。自民党内でも安倍首相がなぜ、ここまでTPPにこだわるのか、首をひねる向きが多かったが、実はこれも今井秘書官の動きが大きかったという。

「安倍政権は2013年の段階で「TPPによって10年間でGDPが3兆2000億円上昇」、今年の所信表明演説でも、「TPPの誕生は、我が国のGDPを14兆円押し上げ、80万人もの新しい雇用を生み出します」などと、恣意的に操作したデータを並べていましたが、これは、今井さんが安倍首相に持ち込んだんです。実はTPPは経産省の悲願で、とにかく何が何でも成立させようとしており、今井さんはその意を受けていた。当初、安倍さんはそこまで積極的ではありませんでしたから、途中で今井さんに洗脳されてしまったんでしょう」(前出・経産省関係者)

原発にTPP推進……こうしてみると、国家への悪影響という意味では、文化政策を私物化した崔容疑者よりも、むしろ今井秘書官のほうが問題が大きいとさえいえるのではないか。

しかし、安倍首相からの恫喝にすっかり萎縮しきった日本メディアは自国で起こっているこうした事態を決して報じようとはしない。お隣の国の国家スキャンダルを嬉々として報じている場合ではないと思うのだが。


・総理のためだけに動く「官邸官僚」。今井補佐官の正体(HARBOR BUSINESS Online 2019年11月21日)



(上)安倍晋三首相(中央)に続いて自民党本部に入る今井尚哉氏(右) 

※国家を私物化する安倍晋三・国民を裏切り続けた七年間

11月20日で桂太郎(第11・13・15代内閣総理大臣)を抜き、憲政史上最長の在職日数となった安倍晋三総理。この間、安倍総理は官僚人事を壟断し、自身の手駒として動く忠実な下僕を主要ポストに据え、自身の「身内」に利権を分け与え、嘘を嘘で糊塗し、法や民主主義を踏みにじり、公文書を捏造させ、国家を私物化してきた。

安倍総理は「政治は結果」というが、その結果は、粉飾だらけのアベノミクス、失敗だらけでカネをばらまく外交とろくな成果も見られない。

『月刊日本 12月号』では、総特集として、長期政権の驕りと緩みが噴出しまくっている安倍政権を批判する「国家を私物化する安倍晋三 国民を裏切り続けた七年間」を掲載している。

今回はその特集から、ジャーナリストの森功氏の論考を転載し、ここに紹介したい。

国家・国民ではなく安倍首相のために働く官邸官僚たち

── 第二次安倍政権では、首相秘書官兼首相補佐官の今井尚哉氏を中心とする「官邸官僚」が突出した力を持ち、霞が関を牛耳っています。森さんは『官邸官僚』(文藝春秋)で、この官邸官僚の弊害を指摘しています。

森功氏(以下、森):今井さんをはじめとする官邸官僚は、決して古巣の省庁のトップを走ってきたわけではありません。安倍さんの絶大な信頼を獲得し、思いのままに権勢を振るっているのです。その権勢は安倍さんの威光なしには成り立ちません。

本来ならば、国の政策を決める際に、各省庁の幹部が総理に対して直言しなければならないはずです。ところが、官邸官僚に抑え込まれて、各省庁がまともに政策を提示できなくなっています。「内閣人事局」によって省庁の幹部人事を握られている恐怖もあり、官邸の意向には逆らえなくなっているのです。

各省庁はそれぞれの専門分野に精通しています。問題点を総理にきちんと説明し、それを整理した上で政策を練るべきです。ところが、そのプロセスがなくなってしまっているのです。霞が関システムの崩壊と言ってもいいでしょう。

首相が掲げる政策を、官邸官僚が経産省に丸投げし、経産省が政策を作っています。その政策に他の省庁が従わざるを得ない状況です。安倍政権が「経産内閣」と呼ばれる所以です。

── 今井氏らは、総理の分身であると同時に、総理の振付師とも呼ばれています。

森:「一億総活躍社会」というスローガンを作ったのも今井さんやそのブレーンたちです。今井さんは古巣の経産省のブレーンを使って政策を作っています。その一人が、最近タレントの菊池桃子さんと結婚した新原浩朗・経済産業政策局長です。彼は、内閣府政策統括官として、働き方改革や幼児教育の無償化などの目玉政策を進めてきた人物です。

── 今井氏の頭の中には安倍内閣の支持率をいかに上げるかしかないと指摘されています。

森:今井さんの危うさはそこにあります。確かに彼らは安倍さんのために必死に働いています。しかし、国家、国民の利益のために働いているように見えないのです。

今井さんは、ひたすら安倍さんを守るということに徹し、そのためには手段を選びません。9月の内閣改造で今井氏が首相秘書官に加えて首相補佐官を兼務することになったのも、安倍さんを守ってきた論功行賞でしょう。

第一次安倍政権の崩壊を教訓として、彼らは内閣支持率低下を極端に恐れています。とにかく、国民受けする、耳障りのいい政策を打ち上げることばかり考えています。ところが、国民受けを狙った政策はことごとく失敗しています。

── 今井氏はなぜ安倍総理の信頼を得られるようになったのでしょうか。

森:今井さんが特別優秀なのかどうか私にはわかりませんが、安倍さんは「今井ちゃんはなんて頭がいいんだ。本人の頭の中を見てみたい」と語るほど、高く評価しているようです。

もともと今井さんは経済産業省で主に産業政策・エネルギー畑を歩んできましたが、第一次安倍政権が発足すると内閣官房に出向し、総理秘書官に就任しました。

今井さんは経団連会長を務めた今井敬さんの甥に当たりますが、敬さんの兄が通産事務次官を務めた今井善衛さんです。安倍さんのお祖父さんの岸信介が商工大臣だったときに、その秘書官を務めていたのが善衛さんです。安倍さんはそのことを知り、それから二人は急接近していったようです。

2007年9月に第一次政権は幕を閉じました。安倍さんは潰瘍性大腸炎に悩まされ、誰もが政界での再起を危ぶんでいました。そんな中で、同じ経産官僚の長谷川榮一さんとともに安倍さんを励まし続けたのが、今井さんでした。長谷川さんの発案で、今井さんは安倍さんを高尾山登山に誘い、三人で山道に挑戦したといいます。こうして、今井さんは安倍さんと特別な関係を築くことになったのでしょう。

支持率アップのために歪められた外交

── 今井氏は経済政策だけではなく、外交政策にも介入しています。

森:官邸が外交を主導すること自体は批判すべきことではありません。しかし、外交においては、外務省の情報や経験の蓄積をうまく活用しなければいけません。問題は、今井さんが外務省に無断で動いていることです。

もともと経産省にはジェトロがあるので、国際的なパイプがあるのは事実です。今井さんはそれを利用して、外務省と異なるルートで外交を動かそうとしました。最も象徴的なケースが、日露外交です。北方領土の解決は難しいことは今井さんにもわかっているはずです。しかし、あたかも二島が返還されるかのように演出し、支持率アップにつなげようとしたのでしょう。

2015年11月に、プーチンの盟友とされ、ロシアのエネルギー産業に絶大な影響力を持つ石油大手「ロスネフチ」社長のイーゴリ・セーチンが来日した際、今井さんは彼を官邸に招待しています。こうした人脈を使って、安倍政権は日露による北方領土の共同経済活動を華々しく打ち上げました。日本側からカードを切って、ロシア側にお願いする格好です。これでは、ロシアに足元を見られただけです。今井さんは、通常の外交でやってはいけないことをやってしまったのです。

プーチンには、日本から援助を引き出す狙いはあっても、二島の先行返還など認めるつもりはありません。結局、日露関係は動きませんでした。

── 2017年5月には、安倍首相が、訪中する二階俊博幹事長に託した習近平主席宛ての親書を、今井氏が書き換えたとも報じられています。

森:そもそも、首相の外交親書は外務省が草案を書き、外務省出身の官邸の事務秘書官を通じて首相に確認を求めます。そして、最終的に外相の決裁を経て、首相が了承することになっています。ところが、今井さんは外務省や国家安全保障会議(NSC)とのすり合わせもなく、日中関係改善に前向きな内容を付け加えたのです。今井さんにインタビューした際にも、「一帯一路についても可能であれば協力関係を築いていきたい」との文言を付け加えたことを認めました。

しかし、これは外務省やNSCの顔をつぶすことになり、なにより従来の政策、方針の変更ですからもっと慎重であるべきです。国家安全保障局(NSS)局長(当時)の谷内正太郎さんが激怒し、「なぜ書き換えたんだ」と今井さんに詰め寄ったそうです。このとき今井さんは、例によって「総理の意向です」と言い返したそうです。今井さんの親書書き換えは、アメリカの不興を買っただけだったと思います。

官邸主導にはチェック機能が必要

── 今井氏は、安倍政権の原発輸出も主導しました。

森:安倍さんと今井さんの関係は持ちつ持たれつという関係だということです。今井さんにとっては、安倍さんを支えることで、自分が温めて来た政策を実現できるということです。原発輸出はその象徴です。もともと、貿易経済協力局時代の今井さんは、中東への原発輸出に最も力を入れていました。

第二次安倍政権成立まもなく、今井さんは安倍さんを連れてトルコを二度訪問しています。2013年5月には、日本はトルコと原子力協定を締結しました。しかし、結局原発輸出も失敗に終わりました。

── 森友学園への国有地売却をめぐる財務省の決裁文書改ざんをめぐり、理財局長(当時)の佐川宣寿氏が刑事告発されましたが、安倍夫妻を守ろうとした今井氏が佐川氏に改ざんを指示した疑いが指摘されています。

森:今井さんと佐川さんはともに1982年入省の同期で、仲がいいとされています。また、今井さんは秘書官という立場上、安倍ファミリーの面倒も見ていました。昭恵夫人が雑誌のインタビューを受けるときも、そばについていました。さらに、昭恵夫人付き秘書を務めていたのは、今井氏の経産省の後輩である谷査恵子さんです。だからこそ、野党議員たちは「今井―谷─昭恵ライン」に注目し、今井さんの証人喚問を要求してきたのです。

昨年4月、今井さん本人から文藝春秋の担当編集者に「しっかり説明にうかがいたい」との連絡が入り、彼にインタビューしました。その際、彼は疑惑を否定しましたが、疑惑は払拭できていないと思います。

── ポスト安倍政権の時代にも、今井氏のような官邸官僚が政権を支えることになるのでしょうか。

森:実は官邸官僚には二種類あります。一つは安倍さんの特別な信頼を得ている今井さんたちの官邸官僚です。もう一つは菅官房長官に近い首相補佐官の和泉洋人さんや官房副長官の杉田和博さんらの官邸官僚です。

仮に菅さんが安倍さんの後継者になれば、異なる顔ぶれの官邸官僚が跋扈することになるでしょう。目まぐるしい情勢変化に対応し、スピーディーな政策立案が求められていることは否定できません。しかし、官邸主導の政権運営に対するチェック機能が健全に働かなければ、権力の暴走を招くことにしかならないと思います。

(聞き手・構成 坪内隆彦)

森功●もりいさお。1961年福岡県生まれ。岡山大学文学部卒。出版社勤務を経て、2003年フリーランスのノンフィクション作家に転身


・「毎晩声をあげて…」安倍首相のオカルト行動を昭恵夫人が証言! 慧光塾や池口恵観の“お告げ政治”がいまも?(LITERA 2016年11月20日)

※先日、安倍首相が韓国の朴槿恵大統領と同様、ひとりの側近(※今井尚哉)に操られているという記事を配信したが、どうも安倍首相と朴大統領の間にはもうひとつ共通点があるらしい。それは、オカルトや占いにやたら依存していることだ。

つい最近ウェブメディア「BLOGOS」(11日9日)に掲載された安倍首相の妻・昭恵夫人のインタビューの中にもその片鱗が垣間みえた。このインタビューでは昭恵夫人自身も、自分の行動が「神様に動かされている」など、オカルトめいたことをいくつか語っているのだが、その中で、夫である安倍首相のこんな“行動”を暴露したのだ。

〈主人自身も特別な宗教があるわけじゃないんですけど、毎晩声を上げて、祈る言葉を唱えているような人なんですね〉

〈神様なのか、先祖なのか、分からないですけど。何か自分の力ではないものに支えてもらっていることに対しての感謝を〉

安倍首相は毎晩、何に声を上げて祈っているのか。昭恵夫人は特別な宗教はないといっていたが、このオカルト的行動でまっさきに想起するのは、第一次政権のときに取りざたされた「慧光塾」のことだ。

「慧光塾」は光永仁義なる人物(故人)が代表をつとめていた経営者向けのコンサルタント会社だが、その内実は代表の光永代表が“神のお告げ”によって取引の良し悪しを判断したり、オフィスに大量の塩を巻き“悪霊祓い”をするなどの、オカルトまがいの新興宗教だった。

しかも、光永代表は会員企業に法外なコンサルティング料を要求する一方、穴吹工務店やホテルニューオータニなどのように、慧光塾のオカルト経営指導のせいで逆に倒産や経営不振、内紛状態に陥った会社も少なくなかった。また、光永代表は慧光塾の会員企業から自分の関連企業への融資をさせ、一時は東京地検特捜部が詐欺事件で捜査に乗り出したこともあった。

ところが、安倍首相はこのオカルト団体とべったりともいえる親密関係を築き、その胡散臭いビジネスにも全面協力していた。

光永代表は、毎年自身の誕生日にパーティを開いていたが、安倍首相は母親の洋子夫人とともに毎年のように出席。光永代表の長男の結婚式では、媒酌人までつとめた。

光永代表は一時、カメラ販売会社や携帯電話販売会社の役員も務め、慧光塾の会員制企業からこの2つの会社に巨額の融資をさせていたが、安倍氏はこの2つの会社の役員を務めるなど、光永代表の政財界人脈作りのパイプ役にもなっていた。

断っておくが、これは、政治家によくある資金集めや名義貸しのようなレベルの話ではない。安倍氏は光永代表に「心酔」し、依存していた。

2002年、日朝首脳会談で拉致問題がクローズアップされた直後の光永代表の誕生パーティでは、当時、官房副長官だった安倍氏がこんなとんでもない挨拶をしたVTRが残されている。

「私は毎年11月、光永さんの誕生会にお邪魔をさせていただいていております。いろいろめまぐるしいことがあるわけですが、これも本当に光永さんのご指導のお陰だと感謝しております。ぜひ、光永さんのパワーをですね、今、北朝鮮と交渉をしている鈴木勝也大使とか斎木昭隆さんに送っていただいて、このパワーで北朝鮮を負かしていただきたい。そして、向こうに取り残された子供たちを取り返したい。こういう風に思っております」

“霊力”で拉致問題を解決しようなんてことを口にするのはとてもまともな政治家のスピーチとは思えないが、話はこれだけで終わらない。

この慧光塾は、光永代表の長男が社長をつとめる関連会社で「神立の水」なる水を販売しており、これまた〈老化防止だけでなく、延命効果もある〉〈飲む人を美しくします〉などという触れ込みで売られている怪しげな水なのだが、安倍氏はこの「神立の水」を愛飲し、幹事長時代にはこの水のHPの有力ユーザー欄に〈自由民主党 幹事長室〉〈衆議院議員 安倍晋三事務所〉と掲載されるなど、広告塔の役割も務めていた。

愛飲は首相になってからも続いていたようで、第一次政権が崩壊した直後、「週刊文春」(文藝春秋)07年9月20号が掲載した上杉隆によるルポでは、この水を切らしたスタッフに安倍氏が「ダメだ。あの水じゃなくちゃ、ぜったいダメなんだ」と怒鳴ったというエピソードが記されている。

しかも、安倍首相はこうした慧光塾との関係を、政治の意思決定に持ち込んでいた。前述した「週刊文春」は安倍氏の官房長官時代の人事にまつわるこんな事実を明かしている。

〈官房長官に就任した際、秘書官選びに迷った安倍は(「慧光塾」に)「お告げ」を求めた。そこで選ばれたのが内閣府職員の井上義行だった。秘書の飯塚洋や天川幾法は、神から見放されたということだ〉

ここまでくると、恐怖さえ覚えるが、この安倍首相と慧光塾の異常な関係は、光永代表が急死したこと、第一次政権のときに散々マスコミに報道されたことで、フェードアウトしたといわれていた。

ところが2015年、「日刊ゲンダイ」(1月17日付)が、安倍首相の政治資金収支報告書(2010年分)に事務所費として「神立の水」計3万1920円が計上されていたとすっぱ抜いた。

前述したように「神立の水」は今も光永氏の長男が経営する「光ジャパン」という会社が販売している。ようするに、安倍首相は第一次政権崩壊後、いまにいたるまでもずっと慧光塾への依存を続けているという可能性は捨ててきれないのだ。

しかも、安倍首相の“オカルト政治”“お告げ政治”の噂は、慧光塾の他にもいろいろとささやかれている。たとえば、“炎の行者”として知られる鹿児島最福寺法主・池口恵観氏も第一次安倍内閣時代に月に1回ほど安倍首相を訪ね“指南メモ”を渡していたというのは有名な話だ。

〈例えば、これまでのメモには《マスコミは支持率の急落をあれこれ言うが、国の指導者である首相はぶれない姿勢が大事。一喜一憂せず、美しい国作りに邁進すべき》《閣僚の不祥事の任命責任は確かに首相にある。だが、後継は今のところ、麻生氏しかいないので、もっと自信を持つべき》〉(「週刊朝日」07年9月28日号/新潮社)

そして、慧光塾と同様、池口氏の“指南メッセージ”は安倍政権の人事を左右してきた。

〈外遊中の安倍の携帯電話にかけたある法主は、安倍に次のようなメッセージを残したのだ。

「先生(安倍のこと)、わが最福寺の総代(信徒の代表)である鳩山邦夫、森山裕を、どうぞよろしくお願いします」
 
その甲斐あってか、鳩山は法務大臣、森山は財務副大臣に就任した〉(前出「週刊文春」07年9月20号)

さらに12年9月の自民党総裁選出馬の際も、周囲が皆反対する中、池口氏は安倍氏に〈予想される人を見てきたが運気は負けていません。自信を持って進んでください。長期政権を祈っています〉とのメールを送り、それが安倍氏を後押ししたと言われる。

この総裁選出馬には、他の“オカルト”も関わっている。それが”算命学“だ。算命学とは人の運命を占う中国の占星術だ。「週刊ポスト」(小学館)13年2月22日号には、安倍側近のこんなコメントが掲載されている。

「総理はマスコミ関係者たちと懇談した際、『総裁選出馬を決断したのは、算命学に詳しい中原(伸之・安倍首相の経済ブレーンで元東亜燃料工業社長)さんから(昨年)9月は運気が最高だから出馬すべきだと背中を押してもらったんですよ』と秘話を明かし、中原氏の算命学に深く感謝していた」

昭恵夫人が証言した「安倍首相が声をあげて祈っている相手」がこれらの宗教や占いかどうかはわからない。しかし、少なくとも、安倍首相が極度のオカルト体質があり、その“お告げ”によって政治的決定をしてきたのは紛れもない事実なのだ。

しかしそうした恐ろしい実態について、第一次安倍政権下では熱心に報じていたマスコミも、いまは、官邸による恫喝と狡猾な懐柔で完全に押し黙り、触れなくなってしまった。我々が知らない間に、“お告げで政治決定をする”恐怖の オカルト政治が着々と進んでいるかもしれないのに……。