(グレース・ハルセル著 越智道雄訳 核戦争を待望する人々-聖書根本主義派潜入記 朝日選書 386 より)

記録を当たってみると、レーガン(注 元大統領)は核兵器の飛び交うハルマゲドンでサタンに率いられた軍隊とアメリカが戦う運命にあるという発言を、長年にわたって繰り返していることが分かる。

ニューヨーク在住の研究者ラリー・ジョーンズと宗派横断的(超教派的)なワシントン・キリスト研究所のアンドルー・ラングの二人が調査した結果、レーガンがハルマゲドンを世界最終核戦争に結び付け、その必然性を信じる解釈を少なくとも1986年までは受け入れていた確証をつかんでいる。(p.11-12)

ところが、リンゼイによれば、今や神は彼やジェリー・フォルウェル(フォーウェル?)、ジミー・スワガート、パット・ロバートスンらにご自分の最終シナリオを示されたので、彼らが一斉にハルマゲドン説を唱え始めたというのである。

リンゼイ、フォルウェル、ロバートスンをはじめ大半のテレビ説教師たちが口にするこれらの7つの時代が神の啓示の時代と呼ばれるので、この信仰体系自体が天啓史観、これを信じる者たちは天啓史観論者と呼ばれる。

ジェリー・フォルウェルやジミー・スワガートのような天啓的史観論者は、自分たちの信仰体系を聖書の無謬性を信じるが故にそれを文字通り解釈する正統派の根本主義と見なしている。

しかしこの「正統派教義」はわずか150年の歴史しかなく、しかも戦争を求め、「平和を実現する人々は幸いである。」というキリストの「山上の説教」を否定するような教義を持つキリスト教に、「聖書を文字通り解釈する」とか「聖書根本主義」などの呼称を与えるのは、正確さを欠くことになるだろう。(p.13)

ハルマゲドンと天国移送(Rapture)説を支持するキリスト教徒が増えて来ていることを示す証拠があるのだ。彼らもまたスコフィールド同様、キリストがボーン・アゲイン・キリスト教徒らに新しい天と地を約束してくれていると信じている。
 
そう信じている以上、彼らにとって地球はかけがえのない惑星などではないから、どうなろうと知ったことではないのだ。使い古されればあっさり捨ててしまえばいい。地球まるごと。そしてキリストから我々選ばれた者たちに新しい天と地を用意してもらえばいいではないか。

レーガン政権で内務長官を務め、差別発言で辞職したジェームズ・ワットも、この地球に対して典型的な天啓史観を披露している。

アメリカの森や川の汚染を心配する連邦下院のある委員会の面々に向かって彼は、自然資源の破壊は大して気にならないと答えたのだ。その理由は、「イエスの再臨まで後何世代もかかるわけじゃないですからな」というわけだ。(p.16)

この本を書くにあたって、私は特定のグループの活動を暴き立てる気にはなれなかった。むしろこれだけ膨大な人々に信じられている信仰体系のことについて書きたかったのだ。ハルマゲドン説の信奉者たちには、貧富、有名無名の別がない。(p.18)


・キリスト教福音派と終末論

http://ww4.tiki.ne.jp/~enkoji/hon1.html

※アメリカでは、聖書に書かれていることは一字一句正しいと信じている聖書根本主義(福音派)の人たちが全人口の25~40%を占めています。彼らは天地創造やアダムとイブの話、ノアの箱船の物語などは歴史的事実であると信じているのです。日本人にはちょっと理解しがたいことです。

となると 、福音派の人たちは地球の歴史は何年だと思っているのでしょうか。
聖書の記述によると、神の天地創造は紀元前約四千年前のことだそうです。しかし、エジプトや中国の歴史はそれよりも古いですね。

岡崎勝世『聖書VS世界史』は、聖書に書かれていることを文字通りに信じていた中世の西洋人が、天地創造を紀元1年とすれば、それははたして何年前の出来事だったかを真剣に研究したことを教えてくれます。

では、現在のアメリカ人はどう考えているのでしょうか。

「1991年のギャラップ調査によれば、アメリカ人の47パーセントが、「過去一万年以内に、神がいまとそっくりの人類をつくった」と信じているという。

また、「人類は原始的なレベルから数百万年以上の時間をかけて進化してきたが、その創造を含めて、すべての流れは神によって導かれたものだ」とする中道的な意見は、40パーセントを占めていた。

わずか9パーセントの人々だけが、「人類は原始的なレベルから数百万年以上の時間をかけて進化してきた。神はそこになんら関与してはいない」と信じている。

そして残りの4パーセントは「わからない」と答えている」

(マイクル・シャーマー『なぜ人はニセ科学を信じるのか』)

アメリカでは約半数の人が進化論を信じていないわけです。特に福音派は、進化論はアメリカの道徳観と文化をおとしめるあらゆるものの根源であり、ゆえに子供に悪影響をおよぼすとして嫌っています。

「進化論は、人間至上主義の悪の部分、つまりアルコール、妊娠中絶、カルト、性教育、共産主義、同性愛、自殺、人種差別、猥褻な書籍、相対主義、麻薬、道徳教育、テロ、社会主義、犯罪、インフレ、非宗教主義、そのうえいちばんの悪徳であるハードロック、そしてじつにけしからん子供と女性の権利の容認といったものとともに滅びるべきだ」

(マイクル・シャーマー『なぜ人はニセ科学を信じるのか』)

福音派の圧力で1920年代に公立学校で進化論を教えることを禁じた法律が各州で次々と作られました。それでも1968年にやっと進化論を教えることを禁ずる法律は違憲とされました。

ところが今度は、1960年代末~70年代初頭から、福音派は創世記の記述と進化論に同等の授業時間をで教えることを要求し、進化論は事実ではなく単なる仮説にすぎないと記載されるべきだとする運動を起こします。

1981年アーカンソー州で、1982年ルイジアナ州で、創造科学と進化論は学校教育の場では平等なあつかいを受けることが法律で定められました。しかし、1986年、ルイジアナ州の「創造科学と進化論の均等教育法」の合憲性の判断が最高裁で行われ、違憲判決が出ました。

それでもなお、創造科学(創造論は科学的根拠を有するという主張)は宗教色のない科学的証拠にもとづいているから進化論と同じように授業で取りあげるべきだという圧力がかけつづけられています。

このあたりの経緯はマイクル・シャーマー『なぜ人はニセ科学を信じるのか』に詳しく書かれています。

マイクル・シャーマーは「創造論者の言い分によれば、進化論に基準をおく生物学を認めないだけでなく、初期の人類の歴史にほとんど触れることもせず、宇宙論や物理学、古生物学、考古学、地質学、動物学、植物学、生物物理学の大半を否定しているのだ」と言います。

つまり、福音派は科学を否定しているわけです。ですから、科学を子どもに教えたくないために学校に行かせない親は少なくありません。

町山智浩『アメリカ人の半分はニューヨークの場所を知らない』によれば、「100万を超える自宅学習家庭のうち75%がキリスト教原理主義だ。高等教育を受けていない親が子どもを教え、それが下の世代に継承されていく」とのことです。

代わりに福音派だけの大学を作り、聖書に基づく教育システムを作っているそうですが、どういうことを教えているのでしょうか。

アメリカに住んでいた人の話だと、福音派にかぎらずアメリカ人は自分に関係のないことには本当に無関心で、身のまわりのことだけにしか関心を持たないそうです。世界のことも知らないし、知ろうともしないのです。

町山智浩『アメリカ人の半分はニューヨークの場所を知らない』にはこんなことが書かれてあります。

2006年に18歳~24歳のアメリカ人に対して行なった調査によると、88%は世界地図を見てもアフガニスタンの位置がわからず、63%はイラクの場所を知らなかった。

パスポートを持っているアメリカ人は国民の2割。

ナショナル・ジオグラフィックの調査によると、アメリカの地図をみてニューヨーク州の場所を示せない者が5割いる。

アメリカの成人の2割は太陽が地球の周りを回っていると信じている。

テレビや新聞のニュースを見ない人が多く、18歳から34歳のアメリカ人で新聞を読むのは3割に満たない。

なぜアメリカ人の多くはこんなに無知なのでしょうか。これもキリスト教の影響らしいのです。

小林由美『超・格差社会 アメリカの真実』によると、「アメリカ人は単に無知なのではない。その根には「無知こそ善」とする思想、反知性主義があるのだ」そうです。

「アメリカの大半の地域では、高等教育を受けた人に対する反感は一方で未だに根強い。本から得た知識や、理屈を捏ね回して出てきた結論よりも、原始的で直感的な判断の方が正しいという感覚や信念が強く、こうした直観的な判断力は、人工的な教育を受けた人ではなく、自然を教師にして素朴に育った純粋な人間の方が優れている、という暗黙の前提がある。だから、人々の感情に訴える現象は、大きな反響を呼ぶ」

「その背後にあるのは、開拓時代に普及したエヴァンジェリカル(福音主義。アメリカでは、カソリックに対する宗教改革派の総称)の教えだ。

エヴァンジェリカルの基本思想は、聖書を神の言葉とし、キリストを信じることによって、人々は聖職者というミドルマンを介在しなくても神と直結でき、救われるというものだ。そして神が人間に授けた基本的な知恵は、強い信仰によって強化され、強い信仰をもって優れたキャラクター(人格)に成長した人は、正しい判断が下せる。だから知識や教育よりも信仰の方が遙かに大切である。人工的な教育は信仰を弱め、神が人間に与えた本来の知恵を壊し、優れたキャラクターを作るうえで逆効果である。したがって高等教育を受けた人間は信用できない―、とつながるわけだ。(略)

だから大統領選挙になると、候補者は大統領たるにふさわしいキャラクターであることを強調し、決して学歴を宣伝しない」

余計な知識は聖書への疑いを増すだけであり、無知なものほど聖書に純粋に身を捧げることができるというわけです。

問題は、こうした聖書に書かれてあることは100%正しいと信じ込んでいる、世界のことに関心を持たない人たちがアメリカの政治を動かしているということです。

そして、キリスト教は困ったことにいつかこの世の終わりが来るという終末論を説いているということです。

善と悪との勢力の最終戦争で世界は終わりになり、その時にキリストが再臨して、最後の審判が行われる。

グレース・ハルセル『核戦争を待望する人びと』には、このことを文字どおり信じる人が大勢いて、かなりの勢力を持っていることが述べられています。

神の定められたことの成りゆきでは、善であるアメリカとサタンに率いられた軍隊とが核兵器を駆使するハルマゲドンが避けられない。しかし、このことは歓迎すべきことである。なぜなら、キリストが再臨すれば自分たちは天上に引き上げられるからである。善と悪との勢力の最終戦争で世界は終わりになり、その時にキリストが再臨して、最後の審判が行われる。

このように信じている以上、彼らにとって地球はかけがえのない惑星ではありません。資源が枯渇しようと、環境が破壊されようと、もうすぐ人間の歴史が終わるわけですから。

アメリカでは、テレビ、ラジオで宗教放送がなされて人気を集めています。そこでは多くの牧師がこうした教えを説いています。

自分は特別な人間であり、選ばれた人間であると考えることは気持ちのいいことでしょう。しかし、イエスを救世主として認める者のみが救われ、あとは永遠に地獄で苦しむと信じ、「友人や身内が地獄に堕ちても、彼らの苦しみは天国で生き延びた者たちの心を悩ませないことになっている」と平然と語る人の、他者に対する徹底した無関心には恐怖を感じます。

あるいは、アメリカの歴代大統領と親交があるテレビ福音伝道者ビリー・グラハム牧師について、レイチェル・ストーム『ニューエイジの歴史と現在』は次のように書いています。

「道徳に関するビリー・グラハム理論では、犠牲者は犯した罪に対する責任を負ってその犠牲を担っているのだ、と考える。だから、黒人は、人種差別の罪を負っているし、北ベトナム人たち自身が、自分たちの国に破壊をもたらしたのだ。こうしたことはすべて、罪を犯した者が地獄を作り出す、という原理に基づいている」

自分の都合のいいように教えを歪める人は珍しくはありません。しかし、人の痛み、苦しみをまったく見ようせず、苦難は自分(その人自身の罪の)のせい、自己責任だと決めつけるたわごとを信じる人が大勢いることは本当に不思議です。


・ポンペオ国務長官に限らず、米国はキリスト教系カルトの思想に影響されている

https://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/201903250000/

2019.03.25

※アメリカのドナルド・トランプ米大統領がシリア領のゴラン高原におけるイスラエルの主権を認める時期だと表明した頃、​マイク・ポンペオ国務長官​はイスラエルを訪問していた。そこで同長官はクリスチャン放送網のインタビューを受け、その中でトランプ大統領が現れたのはイランの脅威からユダヤの民を救うためなのかと聞かれる。その答えは「キリスト教徒として、それは確かにありえると思う」だったという。

ポンペオはマイク・ペンス副大統領と同じようにキリスト教系カルト(ファンダメンタリスト)で、トランプ大統領がアメリカ軍にシリアから撤退するように命じたときは激しく反発していた。その命令にはペンスとポンペオだけでなく、アメリカの有力メディアや議員たちも同じように反発していた。

バラク・オバマ政権の政策は東部シリア(ハサカやデリゾール)にサラフ主義者(ワッハーブ派、タクフィール主義者)の支配国を作ることになる可能性があると2012年8月にDIAは警告していたが、その当時のDIA長官、マイケル・フリンをトランプは国家安全保障補佐官に任命した。そのフリンを有力メディアや議会は激しく攻撃、2017年2月に解任される。その直後の3月、​トランプ大統領を排除してペンス副大統領を後釜に据えるという計画​があるとする情報が流れた。

1991年当時、国防次官だったネオコン(イスラエル至上主義の一派)のポール・ウォルフォウィッツはイラク、シリア、イランを殲滅すると口にしていた。これはウェズリー・クラーク元欧州連合軍(現在の作戦連合軍)最高司令官の話。

ネオコンは1980年代にも似たことをホワイトハウスで主張していた。イラクのサダム・フセイン政権を倒して親イスラエル体制を樹立、シリアとイランを分断して両国を殲滅すると言っていたのだが、ジョージ・H・W・ブッシュ副大統領(当時)などイラクをペルシャ湾岸産油国の防波堤と考えるグループと対立、スキャンダルが発覚する一因になった。

キリスト教系カルトがイスラエルへ接近したのは1970年代のこと。ネオコンがアメリカで政治の表舞台へ出てくる時期、つまりジェラルド・フォード政権と重なる。ベトナム戦争でアメリカ軍が苦しんでいた1967年に引き起こされた第3次中東戦争でイスラエル軍が圧勝、カルトの信者たちはそこに新たな「神の軍隊」を見たようだ。

キリスト教の「新約聖書」は何人かが書いた文書を集めたもので主義主張に違いがあるわけだが、その中で最も強い影響力を持っているのが「ヨハネの黙示録」。そこで日本語版を読んだことがあるのだが、おどろおどろしい妄想にしか思えなかった。

新約聖書を研究している田川健三によると、黙示録にはふたりの人物、つまり原著者と編集者によって書かれた文章が混在している。ギリシャ語の能力が全く違い、思想も正反対であることから容易に区別できるという。原著者は初歩的な文法についてしっかりしているのに対し、編集者の語学力は低く、知っている単語や表現をまるで無秩序に並べ立てただけだというのだ。(田川健三訳著『新約聖書 訳と註 第七巻』作品社、2017年)

この説明を読み、黙示録の支離滅裂さの理由がわかった。本当の問題は語学力ではなく、その思想の違いにあるのだ。元の文章を書いた人物はすべての民族、すべての言語の者たちを同じように扱い、ユダヤ人の存在そのものが意識されていないのだが、元の文章に加筆した人物は極端に偏狭なユダヤ主義者で、異邦人は神によって殺し尽くされると考えている。

後のキリスト教は異邦人を異教徒に読み替え、侵略、破壊、殺戮、略奪を繰り返してきた。十字軍の中東侵略やアメリカ大陸での先住民殲滅と略奪は勿論、ピューリタンはカトリックの信者が多いアイルランドなどへ攻め込み、アジアやアフリカも植民地化して殺戮と破壊の限りを尽くした。

そうした流れの中、中国(清)を略奪するために始めたのがアヘン戦争であり、イギリス(シティ)は兵力の不足を補うために日本人を傭兵として使った。その戦略はアメリカ(ウォール街)が引き継いでいる。

ポンペオ長官のトランプ大統領に関する話が事実だったとしても、驚くほどのことではない。アメリカとはそういう国なのである。


・ウォルフォウィッツ・ドクトリンを捨てられないネオコンは人類を破滅へ導く

https://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/201902020000/
 
2019.02.03

※ドナルド・トランプ政権はロシアや中国に対する攻撃を強め、石油に対する支配力を強めようとしているが、これはビル・クリントン、ジョージ・W・ブッシュ、バラク・オバマといった大統領の政策も基本的に同じだった。ヒラリー・クリントンはロシアとの核戦争を厭わない姿勢を見せていた。

アメリカの支配層は1991年12月のソ連消滅によって自国が唯一の超大国になり、世界の覇権を手中に収める寸前だと信じた。そして新しい新秩序を確立するため、1992年2月にネオコンは国防総省のDPG草案という形で世界制覇プランを作成している。

当時のアメリカ大統領はジョージ・H・W・ブッシュ、国防長官がディック・チェイニー、国防次官がポール・ウォルフォウィッツ。リチャード・ニクソンがウォーターゲート事件で失脚した後、副大統領から昇格したジェラルド・フォード大統領の下でこの3名は重要なポストについている。

この政権ではデタント派が粛清され、ブッシュはCIA長官へ、チェイニーは大統領首席補佐官へそれぞれ就任、ウォルフォウィッツはブッシュCIA長官が指導させたCIA内の反ソ連プロパガンダ集団チームBのメンバーに選ばれた。ジミー・カーター政権では国防副次官補だ。
 
DPG草案はウォルフォウィッツを中心に書き上げられたことからウォルフォウィッツ・ドクトリンとも呼ばれる。このドクトリンに基づいてネオコン系シンクタンクのPNACが2000年に「アメリカ国防の再構築」という報告書を出した。この年に行われた大統領選挙で大統領に選ばれたジョージ・W・ブッシュはこの報告書に基づいて国際問題に関する政策は決めた。

国防政策を「革命的に変化させる」としているのだが、そのためには「新たな真珠湾」のような何かが必要だとも主張している。ネオコンに好都合なことに、2001年9月11日にそうした衝撃的な出来事が引き起こされた。

ウォルフォウィッツ・ドクトリンの第1の目的は新たなライバルの出現を阻止すること。敵対勢力が資源を支配することも防がなければならないとしている。

ウェズリー・クラーク元欧州連合軍(現在のNATO作戦連合軍)最高司令官によると、このドクトリンが作成される直前、ウォルフォウィッツはイラク、シリア、イランを殲滅すると語っていた。(​3月​、​10月​)

また、2001年9月11日にニューヨークの世界貿易センターやバージニア州アーリントンの国防総省本部庁舎(ペンタゴン)が攻撃されてから数週間後、国防長官の周辺で攻撃予定国リストが作成され、そこにはイラク、シリア、レバノン、リビア、ソマリア、イラン、そしてスーダンが載っていたともいう。

ところが、この後にウラジミル・プーチンがロシアを再独立させることに成功する。2014年にネオコンはネオ・ナチを使い、ウクライナでクーデターを成功させるが、それを切っ掛けにして中国とロシアが戦略的な同盟関係に入った。アメリカに対する危機感を中国も抱いたということだ。

ロシアは世界有数の資源国だということもあり、米英支配層はロシアを再属国化しようと目論む。その一方、エネルギー資源を支配するために中東、そしてベネズエラを支配しようとしている。

ロシアや中国の制圧が先か、資源国の制圧が先かでアメリカ支配層内で対立があるようだが、結果として同時進行する形になっている。ウォルフォウィッツ・ドクトリンに執着しているとも言えるが、このドクトリンはロシアの再独立で破綻している。この事実を認めたくないネオコンは正気を失ったようで、人類を破滅へと導きつつある。


・安倍政権に戦争の準備を進めさせているのは92年に作成されたネオコンの政策で、中露との戦争も

https://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/201505150000/
 
2015.05.15

※安倍晋三首相に限らず、日本の「エリート」はアメリカ支配層の強い影響下にある。関東大震災からJPモルガンをはじめとするウォール街の巨大資本に操られてきた。1970年代にジェラルド・フォードが大統領に昇格するとシオニストが台頭、ネオコンと呼ばれるようになるが、安倍政権はそのネオコンに従属している。

ネオコンの暴走はソ連の消滅と共に始まる。1991年6月、ロシア・ソビエト連邦社会主義共和国の大統領に就任したボリス・エリツィンは、その年の12月8日にベロベーシの森で秘密会議を開き、ソ連からの離脱を決めた。いわゆる「ベロベーシ合意」で、同席したのはウクライナのレオニード・クラフチュクとベラルーシのスタニスラフ・シュシケビッチ。この合意でソ連の解体は決定的になった。

ソ連消滅後、西側の支配層を後ろ盾とするエリツィンは独裁色を強め、1993年9月には憲法を無視する形で議会を強制的に解散すると発表した。議員側は大統領の行為をクーデターだと非難、自分たちの政府を樹立すると宣言して少なからぬ議員が議会ビル(ホワイトハウス)に立てこもると、エリツィン大統領は戦車に議会ビルを砲撃させ、殺された人の数は100名以上、議員側の主張によると約1500名に達する。この虐殺を西側は容認した。

議会制民主主義の体裁を木っ端微塵にしたエリツィンは新自由主義的な「改革」、つまり私有化と規制緩和を推進して国民の資産を二束三文の値段で叩き売る。買い手はクレムリンの腐敗分子と手を組んだ連中。その腐敗分子の中心にはエリツィンの娘、タチアナ・ドゥヤチェンコがいた。そして「オリガルヒ」と呼ばれる富豪が誕生、庶民は貧困化していく。その象徴的な存在であるボリス・ベレゾフスキーを含め、オリガルヒの大半がイスラエル系だったことを偶然で片付けることはできない。

その当時、アメリカの大統領はジョージ・H・W・ブッシュで、国防総省はネオコンに支配されていた。国防長官のリチャード・チェイニーも、国防次官だったポール・ウォルフォウィッツもフォード政権で表舞台に出てきた好戦派だ。

この好戦派の軍事的な戦略を立てていたのが国防総省のシンクタンクONA(ネット評価室)で室長を務めてきたアンドリュー・マーシャル。シカゴ大学で経済学を学んだ後、米軍系シンクタンクのRANDに入って核戦争について研究、1973年にONAが創設されると室長に就任している。

デタント(緊張緩和)へ舵を切ろうとしたリチャード・ニクソン大統領の失脚を受けて登場したフォード政権では好戦派が主導権を握り、ソ連との緊張を高めようとする。そこで標的になったのがCIAの分析部門。ネオコンにとって事実は重要でなく、軍事的な緊張を高めるためにはソ連は脅威だと人びとに思わせる必要があった。

そこで始動したのが「チームB」。チームを率いることになったのはハーバード大学のリチャード・パイプス教授、メンバーの中にはウォルフォウィッツも含まれ、その背後にはマーシャルがいた。後にネオコンと呼ばれる人脈だ。ソ連消滅後にマーシャルは中国脅威論を主張、ネオコンは東アジア重視を言い始める。

そして1992年に作成されたのが「ウォルフォウィッツ・ドクトリン」。マーシャルの戦略をベースにして、ウォルフォウィッツ国防次官、I・ルイス・リビー、ザルメイ・ハリルザドといったネオコンが作成したDPG(国防計画指針)を指している。この指針ではアメリカを「唯一の超大国」と位置づけ、潜在的ライバル、つまり西ヨーロッパ、東アジア、旧ソ連圏、南西アジアを潰すという方針を示している。

当然、「潜在的ライバル」には日本も含まれるのだが、安倍政権は日本を守ろうとはしていない。そうではなく、日本の自然とそこに住む人びとをアメリカ支配層へ叩き売ろうとしている。1929年に樹立した浜口雄幸政権はJPモルガンと緊密な関係にあった井上準之助を大蔵大臣に据え、日本の庶民を貧困化させた。失業者が急増、農村では娘が売られるという悲惨な状態になったのだが、その浜口内閣より安倍政権は醜悪だ。

安倍政権の好戦的な政策も「ウォルフォウィッツ・ドクトリン」が基盤になっている。その戦略に従ってアメリカは絶え間なく侵略してきた。ユーゴスラビアにしろ、アフガニスタンにしろ、イラクにしろ、リビアにしろ、シリアにしろ、ウクライナにしろ、根は一緒だ。その同盟相手がイスラエルとサウジアラビアであり、手先として使われているのがアル・カイダ系の武装集団やネオ・ナチ。チェチェンでこの両武装集団は連結している。

こうしたアメリカの侵略、例えば中東/北アフリカの体制転覆プロジェクトやウクライナのクーデターを直視しなければ、安倍政権の恐ろしさは理解できない。23年前にネオコンが始めたクーデターの日本における総仕上げをしているのが安倍首相であり、そのクーデターは全面核戦争を引き起こす可能性がある危険なものだ。こうした問題に関して口を閉ざして安倍政権の戦争法案を批判するのは単なる「アリバイ工作」にすぎない。