安倍政権はエンゲル係数も偽装しようとしていた! 安倍首相の国会答弁のあと、数値が低くなるよう分母変更する新方式(LITERA 2019年3月4日)

※官邸による関与の実態が次々に暴かれている統計不正問題だが、ここにきて、政府によるとんでもない“統計偽装”の事実があきらかになった。
 
なんと、総務省統計局が「エンゲル係数」について、HPで新たな算出方法で「修正エンゲル係数」なる指標を公表していることがネット上での指摘によりわかったのだ。

エンゲル係数は言わずもがな、家計の消費支出総額に占める食料費の割合のこと。一般に、エンゲル係数が高ければ高いほど生活水準の低さ(生活の苦しさ)を表している。このエンゲル係数は中学校で習う生活水準を示す基本的な経済指標であり、総務省は基幹統計である「家計調査」で算出をおこなっている。
 
そして、このエンゲル係数が、第二次安倍政権において急上昇。「家計調査」によれば、2005年に22.9%(2人以上世帯)の最低を記録してからは長らく23パーセント台となっていた。ところが、アベノミクスが始動した2013年から急激に右肩上がりをはじめ、2016年には25.8%を記録。これはじつに約30年前と同じ水準であり、2017、18年も高止まりしたままだ。
 
昨年1月31日の参院予算委員会では、この問題について民進党・小川敏夫議員(現・立憲民主党)が追及。小川議員は“アベノミクスがはじまって以降、実質賃金が下がっており、家計調査の消費支出も落ち込んでいる”と指摘した上で、「生活の豊かさを示すエンゲル係数は顕著に上がっているという状況であり、こうした統計から明らかに言えることはアベノミクスによって国民生活は苦しくなったのではないか」と質問。

すると、安倍首相は、またぞろ聞かれてもいないのに有効求人倍率や名目賃金のベースアップなどを持ち出し、アベノミクスで景気は上向きになっているとアピール。そして、エンゲル係数の上昇については、「物価変動のほか、食生活や生活スタイルの変化が含まれているもの」などと主張。つまり、外食も増えたし割高な総菜を利用するなど食料費は増えている、生活は豊かになっているのだと強調したのである。
 
この国の総理大臣はエンゲル係数の意味をわかっているのか、庶民が置かれた状況を把握しているのかと多くの人を驚嘆させたが、この答弁の翌日には、「Wikipedia」における「エンゲル係数」の項目が、なにものかによってまるで安倍政権に都合よくするかのように書き換えられる事案まで発生。大きな話題となった(詳しくは過去記事参照→“生活苦の指標”エンゲル係数アップに安倍首相がデタラメ言い訳! 直後にWikiのエンゲル係数解説が改ざん)。
 
だが、驚いたことに、安倍首相を追随したのは、ネットの安倍応援団だけではなかったようだ。この答弁から約4カ月後に、安倍首相のトンデモ強弁を正当化するような新調査方式を、統計を司る総務省が発表していたのだ。
 
それが、総務省統計局が打ち出した「修正エンゲル係数」なる指標だ。
 
総務省統計局のHP上に「統計Today」という〈統計作成者から統計の利用者、調査の対象者にあててお送りするメッセージ〉の連載があるが、同局は昨年6月8日に阿向泰二郎・統計調査部消費統計課長による「明治から続く統計指標:エンゲル係数」というタイトルのレポートを掲載。ここで「修正エンゲル係数」なる謎の指標を打ち出したのだが、その中身があまりにご都合主義的なトンデモだったのである。

総務省統計局が公表した「修正エンゲル係数」のトンデモな中身

まず、同レポートでは、2015、16年にエンゲル係数の上昇幅が大きくなったことについて、〈この2年間でエンゲル係数は1.8ポイント上昇〉と認めながらも〈1.8ポイントの上昇のうち半分の0.9ポイント(総務省統計局試算)は物価変動の影響によるもの〉と主張したかと思えば、〈近年、急速に存在感が増しているのが、デパ地下やスーパー、コンビニで売られる惣菜や弁当、冷凍食品などの「調理食品」で、最近の食料支出の牽引役ともなっています〉などと強調している。
 
つまり総務省は、安倍首相と同様の主張を繰り広げていたのである。
 
だが、驚くのはこのあと。総務省のレポートは、〈世帯が得た所得は、商品・サービスの消費に支出されるだけでなく、住宅の取得や将来に備えた貯蓄など、消費以外の金融資産・不動産資産の形成等にも支出されます。所得から支払われるこれらの支出も、消費と同じく世帯の生活を支え、国民生活の豊かさとも関係しますが、消費支出ではないため、エンゲル係数の分母には加味されません〉などと、ダラダラと解説を加えたあと、いきなりこう宣言するのだ。

〈物価変動の影響を除去した実質食料支出の実質可処分所得に占める割合を「修正エンゲル係数」とし〉その上で、この修正エンゲル係数の推移を本来のエンゲル係数の推移に重ね合わせた以下のようなグラフを掲載している(以下、同レポートより転載)。



(上)総務省統計局HP「統計Today No.129」より「図9 エンゲル係数と修正エンゲル係数(1980年~2017年) (二人以上の世帯のうち勤労者世帯)」
 
ようするに、修正エンゲル係数で計算したら、2015〜2017年の数値は本来のエンゲル係数より著しく低くなると言いたいらしい。
 
しかし、それは当たり前の話だろう。本来のエンゲル係数は前述のように、「消費支出総額」を分母としており、消費したお金のうち食料費が占める割合のことだが、この「修正エンゲル係数」が分母にしている「可処分所得額」は手取り収入全体。貯蓄や金融資産、住宅ローンに回す分の収入も含まれている。分母が大きくなるのだから、数値が低くなるのは当たり前ではないか。

総務省は、持ち家のローンが分母にカウントされないからエンゲル係数は実態を反映していないというが、同じ方式でずっとやっているなかで数値が上昇しているのだから、何の言い訳にもならない。しかも、持ち家の場合に個別に補正をかけるならまだしも、分母を消費支出から可処分所得に変えてしまったら、もはやそれはエンゲル係数でもなんでもない。

修正方式公表は安倍首相の答弁の4カ月後、構造は厚労省の統計不正と同じ

はっきり言うが、第二次安倍政権下でエンゲル係数が上昇したのは、消費支出が伸び悩んでいるからだ。富裕層が金融資産や不動産を増やす一方で、庶民は「生活のために使えるお金」がどんどん少なくなっているのだ。
 
そして、その消費支出の減少に追い打ちをかけたのが、2014年の消費税の増税だ。2月12日の衆院予算委員会でも共産党の志位和夫委員長が安倍首相に追及をおこなったが、2人以上世帯の実質家計消費支出は、2013年の平均は363.6万円だったのに、2018年には平均338.7万円。じつに約25万円も減っているのである。
 
だが、総務省はそうした現実をないことにするように、「消費支出」ではなく、富裕層による貯蓄や金融資産までもが含まれる「実質可処分所得額」をいろんな言い訳にまぎれてこっそり持ち出し、そうしてはじき出された数値を「修正エンゲル係数」だと言い張っているのだ。

統計不正問題の発覚によって、昨年の実質賃金は、より生活実感に近い「参考値」で大半の月でマイナスになることが野党の試算で判明している。賃金が伸びず、生活の基本である食費も精一杯という厳しい生活を強いられている人が大勢いるというのに、そうした現実を反映した「エンゲル係数」さえ、考え方を根本から覆した「別な何か」をつくりあげて「修正エンゲル係数」などと称してすり替えることは、統計不正問題と同根の“アベノミクス偽装”そのものではないか。
 
しかも、注目すべきは、経済指標を歪めたこの驚きのレポートが公表された時期。前述したように、安倍首相が小川議員から「実質賃金が下がり、エンゲル係数は急上昇している」と追及を受け、「物価変動のほか、食生活や生活スタイルの変化が含まれているもの」と強弁してから約4カ月後の2018年6月8日だということだ。
 
この「修正エンゲル係数」は、つまり、安倍首相の主張を正当化するために、偽のエンゲル係数を流通させてしまおうという、総務省の意図があらわれたものではないのか。

もしかしたら「毎月勤労統計」における厚労省と同様、官邸から「エンゲル係数が上昇しているのをどうにかしろ」と圧力がかけられた可能性もある。
 
総務省は統計不正問題で、つい先日も、統計委員会の西村清彦委員長が国会に参考人として出席することを拒否すると記した文書を、勝手に捏造して野党に送付していたことが発覚したばかり。やりかねない話だ。
 
ともかく、この「トンデモ」としか言いようがない「偽エンゲル係数」問題についても、国会とメディアの徹底追及が必要だろう。


・安倍首相が統計不正追及に「だから何だってんだ!」と逆ギレ野次! 「私が国家」とまた独裁発言もポロリ(LITERA 2019年2月28日)

※「不適切な取り扱いや事実と異なる虚偽の説明をした」ことを認めつつ、「隠蔽は積極的に隠すこと」という“独自要件”によって「組織的隠蔽はない」とした特別監察委員会の追加報告書が、昨日公表された。この報告書では、やはりと言うべきか、肝心の官邸の関与については調査がおこなわれずじまい。再び「お手盛りだ」と批判が起こっている。
 
いい加減な報告書の内容からは、さっさと統計不正問題の追及から逃げたいという安倍首相の本音が透けて見えるようだが、きょうの衆院予算委員会では、またも安倍首相が付け上がった姿勢を見せた。

それは、2018年1月からの「毎月勤労統計」調査において産業構造や労働者数などの変化を統計に反映させるための「ベンチマーク更新」でさかのぼり補正をおこなわなかった問題について立憲民主党の長妻昭議員が追及をおこなっていた際のこと。この「ベンチマーク更新」にともなう補正を廃止したことは、2018年の賃金伸び率引き上げに大きくかかわっているのだが、厚労省の有識者検討会では補正をおこなうことで中間的整理案がまとめられていたにもかかわらず、補正を廃止してしまったのだ。
 
この問題について、石田真敏総務相は話を誤魔化すような答弁に終始。だが、その答弁の不正確さを長妻議員が指摘している最中、こんな発言が飛び出したのだ。

「総理、いま変なヤジ飛ばされました?『だからなんだってんだ』と。いま聞こえましたよ」
 
長妻議員の発言中の出来事でもあり、音声で安倍首相のヤジは確認できなかったが、安倍首相は2月18日の同委でも「選挙に5回勝ってる」とヤジを飛ばし、20日には根本匠厚労相に「いったん下がれ」と自席から指示をおこなうという“事件”まで起こしている御仁だ。
 
その上、この長妻議員との質疑応答では、“消えた年金”問題の追及で開き直った無責任な態度をとったことに非難の声が飛んだ際、安倍首相は「席からヤジるのだけは、やめてもらえませんか?」「誠意をもってお答えしているんですから」と述べていた。「ヤジはやめろ」と言った本人が、そのすぐあとヤジを飛ばしたというのである。

だいたい、この「ベンチマーク更新」にともなう補正を検討会のとりまとめを覆して廃止した問題は、前述したように2018年の賃金伸び率引き上げに大きくかかわる重大な問題だ。それを「だからなんだってんだ」と開き直るようなヤジを飛ばすとは……。
 
いや、安倍首相がもっとも矮小化に必死になっているのは、首相秘書官が圧力をかけていたという事実があきらかにされてしまったことだ。
 
2月22日に公表された、官邸による圧力を証明するメール。これは厚労省の有識者検討会で座長を務める中央大学・阿部正浩教授に対し、厚労省の手計高志統計情報部雇用・賃金福祉統計課長補佐(当時)が2015年9月に送ったもので、「官邸関係者に説明をしている段階」「委員以外の関係者(中江元哉首相秘書官)から部分入れ替え方式で行うべきとの意見が出てきた」といった文面が登場する衝撃的な内容だった。
 
そもそも、中江前首相秘書官は参考人招致された国会で、同年3月に厚労省職員と面談した事実について「専門家の意見を聞くなど改善の可能性をについて問題意識を伝えた」「(検討会の)議論やその結果について報告を受けた記憶はない」と答弁してきた。それがどうだ。実際には検討会の報告を受けていた上、「部分入れ替え方式で行うべき」と明確に指示を出し、結果として「専門家の意見」を覆させていたのである。

安倍首相の指示でなく個人の判断で動いたと強弁する首相秘書官たち

そして、有識者検討会にまでわざわざ介入し、度重なる圧力をかけるというこの行為は、中江氏が仕える安倍首相の意向がそこにはあったとしか考えられないものだ。
 
もはや言い逃れはできない状態に追い込まれた、中江前首相秘書官と安倍首相。だが、驚くべきことに、中江前首相秘書官は25日の衆院予算委員会で公然とこう開き直ったのだ。

「総理秘書官は、担当する分野・政策について、各省庁から説明を聞いて議論することは常々ある。議論するなかで個人的な見解を伝えることも往々にある」
「総理の指示とか、他の秘書官の指示ということではなくて、私の単独の意思で申し上げた。もちろん公務の一貫です」
 
圧力ではなく「個人的見解」であり、誰にも指示を受けていない「単独の意思」だ──。この中江前首相秘書官の主張は、あの釈明にそっくりではないか。そう、加計学園問題で「首相案件」と発言していたことが愛媛県文書で発覚した、柳瀬唯夫・元首相秘書官の答弁だ。
 
実際、柳瀬元首相秘書官も、中江前首相秘書官とまったく同じように、当初は加計学園関係者や今治市、愛媛県職員と面談していた事実を「記憶にない」と国会で答弁、その後、愛媛県文書が出てきたことによってその事実を認めるも、「政府の外の方からアポイントがあれば極力お会いするようにしていた」「加計学園の件につきまして、総理に対して報告したことも、指示を受けたことも一切ありません」と言い張った。

こんなバカな話があるだろうか。中江氏も柳瀬氏も、その業務は安倍首相の命を受けて政策の補佐や関係各所との調整を担うものだ。それなのに、このふたりは「安倍首相の指示はない」と強弁し、かたや柳瀬氏は誰彼構わず官邸に招いて親切丁寧にアドバイスをおこなったと言い募り、かたや中江氏も「個人的見解」「単独の意思」で統計調査の手法について何度も厚労省に介入していたと主張するのである。
 
これが事実だというのならば、首相秘書官は、仕えている総理をすっ飛ばして特定の法人に肩入れするわ、政策に口を出すわのスタンドプレーを連発する異常な特権集団というほかない。無論、そんなわけがあるまい。質疑に立っていた立憲民主党の小川淳也議員は「2015年ごろから、国有地の処分、学校法人の認可、統計制度の変更、すべてにおいて本来、職務権限がないはずの総理秘書官が暗躍しているケースが目立つようになった」「不透明な介入や政治的影響力を、責任もない権限もない人たちが事実上行使することは大問題」と指摘した。
 
だが、すると安倍首相は、さっそくこんな話をはじめたのだ。

「総理大臣秘書官というのは何の責任もない(なんて)そんなことありませんよ。総理大臣を支えるっていう、とっても大切な責任があるんですよ。その使命感のもとね、夜遅くまで働いてますよ。それがまったく責任がないかのごときの言動というのは驚くべき発言であって、民主党政権時代の秘書官ってみんなそんなつもりだったんですかね」

「私が国家です」また出た安倍首相の傲慢発言! 自民党では4選の動きも

あまりにもわかりやすい首相秘書官の暗躍が次々と発覚していることを追及されているのに、十八番の民主党政権批判にすり替える──。みっともないにも程があるだろう。しかし、いくら話を誤魔化しても、この政権で官邸による官僚支配が進み、安倍首相に仕える首相秘書官たちが“お友だち優遇”や“アベノミクス偽装”に関与したことは、歴然とした事実だ。
 
そして、こうした権力の濫用を象徴するような出来事が、きょうも起こった。長妻議員は「ギリシャも統計の問題が発端で経済危機が起こった。統計の問題を甘くみないほうがいい。扱いによっては国家の危機になりかねない、そういう認識はあるか」と問うと、安倍首相は長々と答弁するなかで、こう発言したのだ。

「いま、長妻議員はですね、国家の危機かどうか(と訊いた)。私が国家ですよ。総理大臣が国家の危機という、重大な発言を求めているわけでありますから、まず説明をするのが当然のことではないでしょうか」

「国家の代表として」とかほかにも言い方があるだろうに、よりにもよって「私が国家」って……。「私は総理大臣ですから、森羅万象すべて担当しておりますので」だの「我々の法律の説明はまったく正しいと思いますよ。私は総理大臣なんですから」だの、最高権力者として思い上がった安倍首相の発言は枚挙に暇がないが、こうした態度こそが力によって行政を歪め、「隠蔽、改ざん、偽装」を横行させたのではないか。
 
しかも、ここにきて、安倍首相の自民党総裁4選に向けた動きまでが出てきた。
 
2月10日に二階俊博幹事長がオフレコで安倍4選を希望するような発言をおこなった(日刊ゲンダイ2月12日付)ことを皮切りに、昨日には“ポスト安倍”として囁かれてきた加藤勝信総務会長も「国民から『さらに』という声がでてくればそういう状況は生まれるかも」と講演で発言。その上、昨晩おこなわれた二階幹事長と麻生太郎副総理の会談では、先日、安倍首相との同期会で林幹雄幹事長代理が「4選もある」と言ったという話に、麻生副総理は「おもしろいね」と言ったという(毎日新聞Web版2月28日付)。
 
こうした動きに、当の安倍首相はきょうの国会で4選を否定せず、「自民党のことは自民党においてしっかり議論していくことなんだろうと思う」と述べたのである。

現在、安倍首相の総裁任期は2021年までだが、またも党則を変えて2024年まで総理の座に居座るつもりなのか──。「私が国家」と付け上がる「隠蔽、改ざん、偽装」総理の暴走を思えば、まさに背筋が凍る恐怖のシナリオだろう。