・だから「移民」を受け入れてはいけない、これだけの理由(ITmedia ビジネスオンライン 2018年10月30日)
 
※日本の未来を左右する極めて重要な問題がしれっとスルーされている。安倍政権が今国会で押し通そうとしている「移民政策」だ。
 
政府が臨時国会で通したいと意気込んでいる出入国管理法改正案の骨子案では、介護、農業、建設、外食など14の分野において、「相当程度の知識または経験」を有する外国人労働者に、在留が最長5年の「特定技能1号」を付与。さらに、試験を受けたり、「熟練した技能」があると判断されたりすれば、「特定技能2号」へとバージョンアップする。こちらは在留期限無制限で、家族の帯同も認めている。
 
「バーカ、安倍ちゃんたちが進めているのは、“外国人労働者の受け入れ”で“移民”じゃない。もっと日本語を勉強しろ、この反日サヨクめ!」という憎しみのこもった声があちこちから聞こえてくる中で大変申し上げづらいが、そういう「言い換え」こそ、安倍首相がお気に入りで使っていた「印象操作」と言わざるを得ない。
 
「移民」というものに正式な定義はないが、政府の言う「外国人労働者」は一般的な国際感覚では「移民」であることは明白だ。例えば、国連経済社会局は以下のような見解を述べている。
 
『多くの専門家は、移住の理由や法的地位に関係なく、定住国を変更した人々を国際移民とみなすことに同意しています。3カ月から12カ月間の移動を短期的または一時的移住、1年以上にわたる居住国の変更を長期的または恒久移住と呼んで区別するのが一般的です』(国際連合広報センターのWebサイト)
 
つまり、特定技能があれば5年在留できるとか、期限も無制限で家族と暮らせる、なんてのは世界的に見ればゴリゴリの「恒久移住」なのだ。
 
百歩譲って、今回の在留資格拡大によって訪れる方たちを「外国人労働者」と我々が頑なに呼び続けたところで、遅かれ早かれその実態は「移民」となっていく。
 
「外国人への労働力依存」というのは覚醒剤と同じで、「辛いからちょこっとだけ」と軽いノリで手を出したら最後、それなしでは生きられない体になってしまう。今回の受け入れ先とされる14業種はみな深刻な人手不足だ。その解決策として「外国人労働者」が注入されれば、もはやそれ抜きでは現場が回らなくなってしまうのは小学生でも分かる。
 
ちょっと苦しくなれば、「もっと外国人を」「外国人労働者がいないと話にならない」と懇願をする、いわば“移民中毒”に陥ってしまうのだ。こういう業界が政治を突き動かして、今回のような改正案ができたわけだから当然、モアモアというバイアスも強まる。そうなれば、在留期限もなし崩し的に取っ払われるだろう。

●「外国人労働者の拡大ありき」の不安
 
数年ごとに、新しい外国人労働者を受け入れてOJTで育成するより、日本語や日本企業のカルチャーをしっかりと理解して、なおかつ高い技能を有する「ベテラン外国人労働者」を長く雇い、彼らに後進の育成にあたらせたほうが会社としては遥かにありがたいからだ。もちろん、外国人側にしても数年でポイっと使い捨てにされるより、せっかく慣れてきた環境なのだから、長く雇われたいのは言うまでもない。
 
つまり、「移民じゃなくて外国人労働者だからセーフ」というのは極めて建前的な言葉遊びに過ぎず、将棋で「歩」が「と」に成るように、一度大量に受け入れてしまえば、ごく普通に「移民」へと変わっていくのだ。
 
このシビアな現実を理解した上で、「移民」を受け入れようという人たちも増えている。読売新聞社が10月26~28日に実施した全国世論調査では、『外国人が定住を前提に日本に移り住む「移民」の受け入れについては、全体で「賛成」43%と「反対」44%が拮抗した』(読売新聞 10月29日)という。2~3年前まで同じ質問をすると「反対」は7割程度だったことを踏まえると、明らかに社会ムードが変わってきているのだ。
 
気の早い人たちの間では、「高齢化した外国人の介護とか社会保障はどうするんだ」「受け入れとともにモスクなどの宗教施設も必要だぞ」なんて議論も交わされている。
 
ただ、個人的には「外国人労働者の拡大ありき」で進んでいることには危機感しかない。というよりも、人手不足に関してもまだまだやれることが十分あるので、安易に移民政策へ突き進むべきではないと考えているからだ。
 
なんてことを口走ってしまうと、「サヨクじゃなくて、外国人ヘイトを撒き散らすネトウヨだったぞ!」と先ほどとはまったく逆の方向から、憎悪の矢がビュンビュン飛んで来てしまうだろうが、筆者が安倍政権の「移民政策」に反対しているのは、外国人が増えると治安うんぬんや、「世界一美しい国ニッポンは大和民族だけが住めばいい」的な愛国イデオロギーからでははない。
 
外国人労働者を受け入れてしまうと、日本人労働者の「賃金アップ」のチャンスはなくなる。おまけに、ようやく兆しが見えてきた日本社会の生産性向上も足を引っ張られる。要は、日本にとって「得」がまったくないからだ。

●多くの人が誤解をしている最大のポイント
 
おいおい、人手不足で悲鳴をあげる業種が救済されるのに「得がない」なんて、こいつの頭は大丈夫かと心配してくださる方も多いかもしれないが、実は多くの人が誤解をしている最大のポイントがここにある。
 
「外国人労働者の受け入れ拡大」で救われるのは、「現行の賃金でコキ使うことができる労働力がほしい経営者」だけであって、労働者側にはまったく恩恵はない。
 
むしろ、これまで以上にシビアな状況に追いやられる。そもそも、なぜ日本の賃金が上がらないのかというと労働力が「過剰」だからだ。2017年の労働力調査では15歳から34歳の就業者は1643万人と年を追うごとに減っている。ここだけ見れば、「貴重な労働力」なので賃金も上がっていくはずだが、そうならないのは、55歳以上の「高齢労働者」がまだあふれかえっているのと、外国人留学生と技能実習生という「短期移民」が5年前から倍に膨れ上がっているからだ。
 
あと数年で高齢労働者がどっと減れば賃金アップのチャンス到来だが、入れ替わりで単純労働を担う移民がわっと入れば、低賃金がビタッと定着する。そこに加えて、上司から「お前、今度やって来たムハンマド君に完全に負けてるじゃん」なんて嫌味を言われる方も現れる。
 
というと、必ず「人手不足でバタバタと企業が潰れたら、路頭に迷う人があふれるぞ」とノストラダムスの大予言ばりの恐怖訴求をする人がいるが、1999年7の月になっても恐怖の大王が空から降ってこなかったように、人手不足が進行しても我々庶民へのダメージは限定的だ。
 
確かに、「低賃金労働者」をどれだけ確保できるか、なんてビジネスモデルの企業はバタバタと潰れてしまうだろう。ただ、こういう「ブラック労働」を前提とした企業がちまたにあふれていることが、日本の労働者の賃金アップを妨げている最大の原因なので、正直、潰れてくれてもブラック経営者が労働者に変わるだけで、そこまで庶民の生活に影響はない。
 
また、人手不足が深刻化していけば、企業は労働力を使い捨てにせず、大事に囲い込まざるを得ない。賃金アップはもちろん福利厚生など環境整備もされる。当然、これまで日本企業の至るところにあって「これってどう考えても効率悪くね?」という無駄な慣習などをサクサクと削って、生産性向上を進めることも余儀なくされる。
 
働きやすくて金払いも良いとなれば、これまで「雇用ミスマッチ」が指摘されるような不人気業種にも労働力が集まってくる。つまり、人手不足が進めば、一部の経営者は苦境に追いやられるだけで、労働者全体の地位は向上するし、生き残りを目指す企業が続々と生産性向上の動きも促進されるなど、日本にとっては悪い話ではないのだ。

●日本の宅配サービスは崩壊していない
 
なんて指摘は何も筆者だけではなく、これまでもさまざまな専門家がおっしゃってきたが、そのたびに「机上の空論だ」「外国人に頼らざるを得ない現場の苦しさを分かっていない」と猛反発にあってきた。
 
ただ、「人手不足で労働者が得をして、企業の生産性向上も促進される」ということが机上の空論ではないことは、誰もが知るあの業界が証明している。
 
宅配業界だ。
 
もはや忘れてしまった方も多いが、この世界は「深刻なドライバー不足」で少し前に「宅配クライシス」だと大騒ぎされてきた。Amazonのせいでドライバーが死にそうになっているんだから、なんでもかんでもポチポチ買い物するのは控えるべきなんて言い出すジャーナリストや評論家も多くいた。
 
だが、あれから2年ほど経過したが、日本の宅配サービスは崩壊していない。もちろん、いまだに大変な苦労を強いられているのは事実だが、「もう終わりだ」「崩壊だ」と大騒ぎされたほど壊滅的な事態にはなっていない。
 
いろいろな見方があるだろうが、これは人手不足によって、賃金アップと生産性向上が進んだ結果だと見ている。その象徴が、宅配クライシスを受けて今年4月に設立したラストワンマイル協同組合だ。
 
「何それ?」という人も多いだろうが、1都3県(東京、千葉、神奈川、埼玉)の大手配送会社の下請けを行ってきた運送会社23社が参加した組合で、広域で連携して大手と比べてかなり廉価な宅配サービスを提供している。
 
絶望的なドライバー不足の中で安さをウリにするなんて自殺行為では、と心配するだろうが、組合理事長である志村直純氏は、通販協会の会報誌で「組合のドライバーの待遇」について、こんな風におっしゃっている。
 
『あとはもう給料が良くなっていくだけなので、3~4年経つと週休2日で初任給50万円というバブル期くらいになると思います。逆に言うと、そのようにやらなければ配送ネットワークが維持できないことを、組合員は皆これまでの経験でよくわかっている』(JADMAニューズ 9月・10月号)

●人手不足で恩恵を受ける人たち
 
もともと、彼らはみな宅配大手の「下請け」なので、市場の運賃よりもかなり安い価格で仕事を請け負っていた。『一般的には「廉価」であっても、十分すぎるほど利益となるので、ドライバーの給料も倍増できる』(志村理事長)のだ。
 
人手不足というクライシスによって、彼らのような下請けが新たなプレイヤーとして求められて結果、労働者の賃金アップにつながったわけだ。
 
もちろん、これはラストワンマイル協同組合だけではない。ご存じのように、業界大手のヤマト運輸では、7万6000人という社員への「残業代未払い」が明らかになり彼らへの支給が行われた。今後はこれまで「サービス残業」として片付けられてきた賃金も払われるというわけなので、賃金アップ以外の何物でもない。
 
もともとこの問題は、横浜の営業所でドライバーの方が訴訟を起こすなど、労働者からの突き上げによって発覚した。そのような意味では人手不足によって、労働の価値が上がったとも言えるのだ。
 
だが、人手不足が本当に素晴らしいのは、これまでの業界の常識からすればあり得ない「生産性向上」がもたらされることにある。
 
クライシスの後、宅配ボックスの活用、日付指定、置き配(玄関先に置いておく)などの形で、宅配業界では効率化が進められているのはご存じの通りだ。これまでヤマトのドライバーと、佐川のドライバーはライバルなので競い合うように配送をしていたが、タワーマンションでは協力をして、一社がまとめて他社の荷物を配る試みも進められている。
 
また、山奥の村などの場合、それぞれの宅配会社がトラックを出してそこまでたどり着くだけでも大変な労力なので、乗り合いバスの一角に各社の荷物を、相乗りさせてもらい、現地で委託先の業者が配送をする、という「公共交通機関の活用」も当たり前になってきた。
 
ヤマトでは、無人の宅配車両が指定された場所へ荷物を届ける「ロボネコヤマト」という実証実験を進めている。佐川は10月29日から、京都府南部のタクシー会社「山城ヤサカ交通」と協力して、タクシードライバーが荷物の集荷や客に届ける事業を始めている。佐川的にも助かるし、タクシードライバーも「副業」ができてハッピーというわけだ。

●人手が足りれば生産性向上の動きにブレーキ
 
これらの「生産性向上」は「クライシス」がもたらした。「深刻な人手不足」によって尻に火のついた巨大組織が、生き延びるために「変わらなきゃ」と進化の道を模索し始めたのである。
 
このような宅配業界の今を踏まえて、想像をしてほしい。もし仮に「深刻なドライバー不足」を解消しようということで、日本語も達者で、安全運転もできる外国人ドライバーを迎え入れていたら、ヤマトや佐川の経営陣は「変わらなきゃ」と思っただろうか。思うわけがない。
 
人手不足が解消されてしまうので、ラストワンマイル協働組合のドライバーたちも「下請け」の仕事が増える。つまり、給料は倍増しない。ヤマト社員たちの賃金も上がらない。むしろ、従来並の賃金でキビキビと働く外国人ドライバーが増えていけば、「サービス残業くださいよ」なんて面倒臭い社員たちはどんどんうとまれていくだろう。
 
生産性向上の動きにもブレーキがかかる。人手が足りれば、各社でサービスやインフラを共有しようなんてぬるいことではなく、「我が社が一番」というシェア争いに邁進する余裕が生まれるからだ。
 
人手不足というクライシスは、低賃金労働に依存する経営者を追いつめて、「生産性向上」と「賃金アップ」を踏み切らせる。だが、安易に外国人労働者を受け入れて経営者を甘やかすと、そのイノベーションはすべてパアになる。
 
安倍政権の移民政策は、このような残念な結末を招く恐れが極めて高いのだ。
 
外国人労働者に依存をしようという14業種が深刻な人手不足にあるのは事実だが、ではクライシスに直面した宅配業界のように、労働者の待遇改善や、徹底した生産性向上を行なっているのかというと首を傾げる。
 
そこまでの抜本的な改革や、これまでの常識ではあり得ないような効率化が行われ、それでもまだ人手不足だというのなら「移民」もいよいよ考えなくてはいけないが、まだそこまでではないという印象だ。

●「人手不足=悪」という考え
 
日本はサービスも品質も、さらには労働力に至るまで、さまざまなものを「過剰」に配置するきらいがある。
 
例えば、人手不足だと騒ぐわりには、コンビニの新規出店数は閉店数よりも上回っている。ドミナント戦略のせいで、同じエリアでこれだけあれば十分という数をはるかに超えて出店して、外国人留学生をバイトに雇って回している。
 
建設現場も人がいなくて大変だというが、いまの職人不足は、東京五輪の影響も大きい。終わった後に確実に不況が訪れ、インフラも金食い虫になることが見えているイベントのために、貴重な労働力が奪われるのは、生産性の悪い話である。
 
太平洋戦争時に刷り込まれた「産めよ増やせよ」という思想のおかげで、日本人の多くは人口が増えることは何よりもめでたいことで、「人手不足=悪」という考えが骨の髄まで染み込んでしまっている。だから、人手不足という恐怖をあおられると、「じゃあ、移民でもなんでもじゃんじゃん持ってこい」と安易な方向へ流れがちだ。それが頭数だけが合えばいいという日本型組織の「員数主義」にもつながっている。
 
今国会の所信表明演説で、安倍首相はノーベル賞を手にした本庶佑氏を引き合いに、『私たちも、これまでの「常識」を打ち破らなければなりません』と力説した。
 
ならば、まずは「減った人口をどうにかして頭数を合わせなくちゃおしまいだ」というこれまでの常識を打ち破って、日本を衰退させる「移民政策」を思い直していただきたい。

(窪田順生)


・人手不足の原因に製造業衰退とサービス業の増加

2018年10月22日17:00

http://www.thutmosev.com/archives/77915845.html



画像引用:資料3-2-1.答申用参考資料(データ編) - 1299347_3.pdf http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo10/shiryo/__icsFiles/afieldfile/2010/12/15/1299347_3.pdf

※製造業衰退なのに人手不足

人手不足が深刻化していて人手不足倒産も急増し、過去最高になっています。

だが良く考えるとおかしな話で、それほど好景気でもなく消費者が急に増えたわけでもない。

日本の人口は年20万人以上減っているので消費も減少し、その分生産も減っている筈です。

「人口が減るから人手不足」という主張の矛盾は、人口が減るなら消費者も減るので需要も減少する点です。

生産者人口が年20万人減れば消費者人口も20万人減るので、差し引きすればゼロなので釣り合うはずです。

輸出が急激に増えたなら計算は合うが、そういう事もなく疑問が多い。

労働者の生産量はGDPで表されるが、GDPはせいぜい年1%成長なので、国全体の「仕事量」も年1%しか増えていません。

日本の労働年齢人口は減っているが女性と高齢者の就労率向上によって、むしろ労働者は増え続けています。

それなのに各業界が人手不足を連呼しているのは、「高賃金の労働者は要らないが、低賃金労働者が不足している」という事かも知れません。

代表的な例が今問題になっている海外実習制度で、日本人の最低賃金以下で雇用できるので、漁業や農業や低生産性の工場で多い。

時給1500円では雇いたくないが時給300円の労働者が不足しているというふざけた業界が存在する。

資本主義ではこういう業者や業界は淘汰されて消えるのだが、日本政府が海外実習制度を作って保護しています。

業者は低賃金の外国人にカキの殻剥きをさせているが、政府が保護しなければ淘汰されて自動化されている筈です。

これらは淘汰された方が良い低賃金雇用ですが、高い時給を払っているのに人手不足という業界もあります。

背景にサービス産業の急増

飲食業界では現在、求人8件に対して応募者一人、一人の労働者を8軒の飲食店が奪い合っているそうです。

特に店が希望するのは若くて有能な若者だが、そういう人はスタバとか有名店に行ってしまいます。

有名でなく資金力もない店は、8軒のうちバイトを雇えない7軒になっています。

GDPがあまり拡大しないのに労働者だけ不足しているのは、一人当たりの仕事量というか時給がが減っているのを意味します。

80年代の日本の主要産業は重厚長大の製造業で、工場で働く正社員こそ労働者でした。

今や日本のGDPに製造業が占める割合は20%でサービス業は21%で逆転し、今後差が開いていきます。

製造業は効率化された工場によって生産性が高いが、サービス業の効率化は難しいので生産性が低くなります。

日本の生産性が下がっている一因は、非製造業が増加していて、特に人手作業に頼っているサービス業が増加している。

昭和55年(1980年)と比べてGDP比率が伸びているのはサービス業と「その他」でした。

「その他」はおそらくインターネット関連と推測され、製造業、農業、建設業が縮小しました。


・イギリスはブレグジットで好景気 40年ぶりの低失業

2018年10月27日07:00

http://www.thutmosev.com/archives/77938686.html

※EU離脱で好景気になっていた

イギリスは2016年6月のEU離脱国民投票で離脱が多数になり、以来ブレグジット(EU離脱)を巡って混乱している。

国内外の対立を見るとイギリスの景気はとても悪そうだが、EU離脱を決めてから失業率は低下し続けている。

理由はそれまでEUからイギリスまではパスポートなしで無制限に入国出来たので、東欧や中東やアフリカからも低賃金労働者が押し寄せていた。

離脱を決めたことで安い労働者たちは入国できなくなり、イギリスの失業率はどんどん下がっている。

2018年5月の失業率は43年ぶりの低さになる3.9%で、これだけ見れば「空前の好景気」だと言える。

イギリスはアメリカと同じ転職社会なので、失業率3%台は完全雇用状態に近い。

最近のインフレ率は2.5%と適度なインフレ状態で、日銀や日本政府が聞いたら羨ましくなるような数字を保っている。

2018年のGDP成長率は年率1%台で推移していて、高くはないがマイナスでもない。

イギリスは離脱投票後の2017年後半にGDPでフランスに抜かれ世界6位になっていました。

これは成長率より離脱投票後に英ポンドがユーロに対して下落したのが原因で、1割以上ポンドが安くなった。

ユーロ・ポンド相場は2007年まで1.48前後だったがリーマンショック後は1.1台になり、2015年にまた1.4前後になっていた。

英仏の戦いはフランスの暫定勝利

1.4前後では英ポンドの評価が高すぎたのが、離脱で適正価格まで下がったと解釈するべきかもしれない。

通貨安はイギリスの国際競争力を強め、EU離脱のデメリットを吸収する効果がある。

EU離脱は離脱したほうが経済成長できると言っていたが、実際はフランスに抜かれたことで批判されていた。

そのフランスの失業率は9.5%で3.9%のイギリスよりずっと悪く、失業者は過去最多で若年層失業率は20.2%だった。

原因は言うまでもなくEUには国境がないので東欧やアフリカから無制限に労働者が流入し失業者を増やしている。

EU全体の失業率も7.5%とイギリスの2倍近く、雇用という点ではEU離脱したイギリスが圧勝している。

フランスの2018年GDP成長率も1%台で、イギリスより少し高いがほとんど変わらない。

現在はポンド下落でイギリスのGDPが下がっているが、長期的にはイギリスが抜き返す可能性もある。